総力戦でつかめ、男子トラック優勝・女子総合5位/関カレ展望

陸上競技

 前半シーズンの山場となる関東学生対校選手権(関カレ)がいよいよ明日に迫った。昨年同様、神奈川県の相模原ギオンスタジアムで開催され、4日間にわたってトラックからフィールド種目まで、各校の威信をかけた戦いが繰り広げられる。早大からは男女合わせて46人がエントリー。エンジのユニホームを躍動させ、対抗得点で男子はトラック優勝、女子は総合5位なるか。各種目の展望をお伝えする。

(以下記事 岡部稜)

★充実の布陣。大量得点でチームに勢いを(短距離種目)

前回大会は400メートルに3位入賞を果たした伊東。今年はさらに上位を目指す(写真 岡部稜)

 昨年は伊東利来也(スポ3=千葉・成田)が400メートルで3位入賞を果たしたほかは誰一人個人種目での入賞がなかった男子短距離。だが今年は充実のメンバーが顔をそろえている。何と言っても注目は男子400メートルだろう。伊東をはじめ、3月のシンガポールオープンで3年ぶりの46秒台をマークした小久保友裕(スポ3=愛知・桜丘)やこちらも46秒台の自己記録を持つ村木渉真(スポ3=愛知・千種)の3人がエントリー。若林康太(駿河台大)や北谷直輝(東海大)、鈴木泰地(日大)といった実力者が並ぶ中で決勝への狭き門を突破し、トリプル入賞を成し遂げたい。

 短短種目も上位進出が期待される。4月の東京六大学対校大会(六大学)の100メートルに優勝したルーキー・三浦励央奈(スポ1=神奈川・法政二)は100メートルと200メートルに、同種目2位の髙内真壮(スポ4=栃木・作新学院)は200メートルに出場する。特に三浦は六大学の100メートル予選で10秒45(+0.6)の自己ベストを叩き出し、200メートルでも静岡国際大会で無風ながら21秒00の好タイム。関カレでは表彰台を狙う。

 女子は昨年同様、400メートルでの活躍に期待がかかる。400メートル障害を主戦場とする小山佳奈(スポ3=神奈川・橘)と村上夏美(スポ2=千葉・成田)、800メートルメインの竹内まり(教4=愛媛・松山西中等)の3人が上位を目指して戦う。この種目の関東学生記録保持者の広沢真愛(日体大)など53秒台の記録を持つ強力なライバルがエントリーしている中で複数入賞となるか。

 短距離種目は4日間のうちの前半に多く並んでいる。対校戦では『流れ』が重要となる中で、前半戦での得点の有無がチームの浮沈を大きく左右すると言っても過言ではない。短距離種目の活躍が早大の上位進出の大きな鍵となるはずだ。

★西久保は3度目の優勝へ。1500メートルの飯島にも注目(中距離種目)

800メートルで3度目の優勝を狙う西久保。主将としてチームに8点をもたらしたい(写真 喜柳純平氏)

 昨年は中距離種目で15点を獲得し、トラック4位に大きく貢献した男子中距離。その時の入賞メンバーが全員残っており、今年も大量得点の獲得を予感させる。中でも800メートルでは今年度の主将を務める西久保達也(スポ4=埼玉・聖望学園)は2016(平28)年、2018(平30)年に続く3度目の優勝に焦点を当てる。今季は5月3日の静岡国際大会で1分48秒52、19日のセイコーゴールデングランプリ(GGP)で1分48秒26と自己記録の1分48秒13に近いタイムを連発しており、優勝の大本命と言えるだろう。800メートルには昨年6位の飯島陸斗(スポ4=茨城・緑岡)、六大学で西久保に次ぐ2位に入った徳永翼(人4=岡山操山)も名を連ねる。徳永は六大学で自己ベストの1分51秒04をマークしており、上り調子であることが伺える。3年前には早大の3人全員が決勝に進出した。それを今回達成することができるだろうか。

 1500メートルでは3分42秒87のベストを持つ飯島が有力だ。昨年の冬には疲労骨折の影響で練習を休んでいた期間があったものの、六大学では連覇を果たした。今年は1500メートルに主眼を置いている飯島。その実力を十分に披露させたい。また長距離ブロックの中谷雄飛(スポ2=長野・佐久長聖)と半澤黎斗(スポ2=福島・学法石川)もエントリー。駅伝で10キロ以上の距離を走る選手が、1500メートルという短い距離で各校のスピードランナーとどこまで渡り合えるかも見どころの一つである。

 女子は竹内が800メートルで表彰台を視野に入れている。昨年の日本学生対校選手権(全カレ)で早大記録となる2分09秒52をマークして6位に入賞した竹内は、六大学でも優勝を飾り、波に乗っている。400メートルで55秒27の自己記録を持つスピードを発揮して3位以内に食い込みたい。

★入賞果たし、『シード落ち』の汚名を返上せよ(長距離種目)

今年度の駅伝主将を務める太田智は、5000メートルの7位入賞のみにとどまった昨年の雪辱を誓う(写真 石名遥)

 昨年度の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で12位とシード権落ちの屈辱を喫した長距離ブロックが復権に向けて関カレへ挑む。大会初日の1万メートルには太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)が登場。昨年は15位に終わった太田智は、入賞を最低ラインと設定して4年生の意地を見せつける。また同種目には太田直希(スポ2)、鈴木創士(スポ1)がエントリーしており、浜松日体高トリオがどのような活躍を見せるか。さらに1万メートルは早大の出場するトラックで最初の決勝種目であり、1点でも多く点数を獲得して2日目以降につないでいきたい。

 3000メートル障害では昨年5位に入った吉田匠(スポ3=京都・洛南)の活躍が見ものだ。吉田は六大学でこれまでの自己記録を7秒以上更新する8分43秒91をマークして昨年の関カレ覇者・青木涼真(法大)に先着。4月28日の平成国際大学長距離競技会でも独走ながら8分55秒78で走破しており、調子は上々だろう。対校戦では1年時の関カレ以外全て入賞という安定した成績を残している吉田。青木や阪口竜平(東海大)など強豪ぞろいだが、優勝を狙って挑んでいく。また大木皓太(スポ4=千葉・成田)は1年時に5位、2年時に8位に入賞している。昨年こそ12位に終わったが、今年も決勝に進出し、得点を獲得できるか。

 ハーフマラソンでは昨年5位に食い込んだ真柄光佑(スポ4=埼玉・西武学園文理)が今年もエントリー。箱根以降は記録会のみ出場となっているが、前回の経験を武器に今年も上位進出を狙いたい。また3月の日本学生ハーフマラソン選手権で1時間3分46秒の自己ベストをマークした三上多聞(商4=東京・早実)と4月の日体大長距離競技会1万メートルで自己記録を出した伊澤優人(社4=千葉・東海大浦安)も出場。気温の上昇や、細かなアップダウンの多いコースの影響でサバイバルレースとなることが予想される。地道に成長してきた『一般組』が、どれだけ粘り強く先頭集団に残れるかが入賞への鍵となる。

 大会最後のトラック個人種目となる5000メートルには、早大の誇るエース格の選手がエントリー。現チーム最速の13分45秒49の自己記録を持つ中谷は持ち前の積極性を発揮し、主戦場とするトラックで輝きを放てるか。ルーキー・井川龍人(スポ1=熊本・九州学院)と1万メートルに続けて出場の太田智は今年に入って自己記録を更新し、13分台ランナーの仲間入りを果たした。13分台の記録を持つ選手が19人と、上位争いは混戦を極めることが予想されるが、その中で一歩抜け出して上位をつかみ取りたい。

 長距離ブロックの指揮を執る相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)は「インカレの結果がその後のトラックシーズン全体や駅伝シーズンに響いてくるのは明らか」と語る。夏以降、そして駅伝シーズンに向けてステップアップするためにも、まずは関カレで一つ結果を残したい。

 女子は1万メートル競歩で溝口友己歩(スポ4=長野東)に4年連続の入賞がかかる。昨年はけがに苦しんだシーズンだったが、今季初戦となる関カレではどのような活躍を見せるだろうか。

★女子ヨンパーは表彰台独占を目指す。男子は決勝進出なるか(ハードル種目)

400メートル障害で3連覇を目指す小山。GGPでは早大記録をマークし、好調のまま関カレを迎えたい(写真 石塚ひなの氏)

 『日本一のハードルブロック』を掲げ、日々練習に励む障害ブロック。関カレにおいて大きな注目を集めるのが女子400メートル障害だろう。昨年は小山の優勝をはじめ、関本萌香(スポ2=秋田・大館鳳鳴)が3位、村上が4位に入賞する快挙を成し遂げた。今年に入っても勢いは衰えず、小山はGGPで57秒45の早大記録をマークし、関本は5月6日の木南道孝記念大会で58秒40と自己記録を更新している。58秒79の記録を持つ村上のシーズンベストが1分0秒49にとどまっている部分は心配されるが、悲願の表彰台独占へ機運は高まっている。女子総合5位に向けて、この種目での獲得点が大きく左右することになるだろう。

 石田裕介(平30スポ卒=現・日立産機)や古谷拓夢前主将(平31スポ卒=現・鹿児島県体育協会)といった実力者を輩出してきた男子は、その穴を埋めることができるか。400メートル障害の山内大夢(スポ2=福島・会津)は六大学で51秒66、日体大競技会で51秒33と立て続けに自己ベストを更新。昨年の決勝進出ラインは51秒66で、再び自己記録に近いタイムを出せると決勝の舞台が見えてくる。110メートル障害では2017(平29)年の高校総体覇者の勝田築(スポ2=島根・開星)、そして昨年の関カレ6位の金井直(スポ4=神奈川・橘)が六大学で3位、4位に入賞。同大会で先着を許した吉間海斗、樋口陸人の法大勢や、13秒55の自己記録を持つ泉谷駿介(順天堂大)など有力選手がそろうが、その中で決勝へなんとか駒を進めたい。

★男女共に走幅跳での上位入賞に期待(フィールド種目)

昨年は初出場ながら走幅跳に5位入賞を果たした中村健。ハイレベルな展開が予想される中で今年は表彰台を狙う(写真 斉藤俊幸)

 トラック種目での活躍の印象が強い早大だが、フィールド種目も粒ぞろいだ。特に走幅跳は男女共に上位入賞を狙える選手がそろう。男子では中村健士(スポ4=東京・調布北)が前回5位に入賞し、今年は3位以内を狙う。中村は昨年、同好会から入部した異色の経歴を持つ選手で、日本選手権や全カレも経験し、着実に力を付けてきた。ラストイヤーのさらなるジャンプアップに注目だ。女子は漁野理子(政経3=和歌山・新宮)、吉田理緒(スポ1=北海道・立命館慶祥)の二人の6メートルジャンパーが名乗りを上げる。特に漁野は昨年は関カレ、全カレに入賞し、今シーズンも出場した二戦で6メートル台を記録する安定感が持ち味で、六大学では6メートル05(+0.8)の自己ベストを叩き出した。吉田も3月から順調に記録を残しており、今月の水戸招待陸上では5メートル91(+1.3)のシーズンベスト。早大記録の6メートル10に近い記録を出せると表彰台も見えてくる。会場の相模原ギオンスタジアムは、晴天時には強風が吹き荒れることが多い。風をうまく利用することが上位に進出する鍵となる。そしてこの風のために思わぬ好記録が生まれることも予想されており、ハイレベルな試合が繰り広げられるだろう。

 この他にも唯一の投てきブロックの選手である雨宮巧(社4=山梨・巨摩)は、砲丸投で挑み続けた決勝の舞台を駒を進めることができるか。14メートル89の自己記録を更新し、15メートル台に乗せることができればそのステージはぐっと近づいてくるはずだ。

★『リレーの早稲田』復活へ。マイルで男子は優勝、女子は表彰台と早大記録を目指す(リレー種目)

優勝を狙う男子マイル。写真は六大学で3走を務めた小久保(写真 斉藤俊幸)

 『リレーの早稲田』と呼ばれるほど、リレー種目において実績を残してきた早大。しかし関カレでは男子は4×100メートルリレー(4継)では2012(平24)年以来7年間、4×400メートルリレー(マイル)では2016(平28)年以降タイトルから遠ざかっている。近年は日本選手権リレーでも結果を残せていないだけに、その復活が待たれる。

 ただ今年は優勝を狙える位置にあると言えるだろう。特にマイルでは伊東、小久保、村木の3年生トリオが中心となって優勝を目論む。その最大のライバルとなるのは東海大か。北谷直輝や井本佳伸といった45秒台のスピードを持つメンバーがそろう豪華な布陣だ。まずは確実に予選を突破し、決勝ではアンカーまでに先頭でバトンをつなぐことが優勝への絶対条件だろう。トラック最終種目のマイルで有終の美を飾り、トラック優勝に華を添えたい。

 前回大会は39秒85をマークしながら予選落ちに終わった早大の4継。六大学で優勝を飾ったメンバーは状態が上向きであることが伺える。1走を務めた佐野陽(スポ2=埼玉・立教新座)は5月4日の越谷市記録会で追い風参考ながら自己記録を上回る10秒43(+2.7)をマークし、4走の南山義輝(スポ3=福岡・小倉東)も5月3日の熊谷市春季記録会で1年7カ月ぶりの自己ベストとなる10秒47(−0.8)。三浦と髙内を合わせ、今年は決勝進出を狙う。

 女子はマイルの10年ぶりの早大記録更新に期待がかかる。ただ、疲労との戦いが懸念材料になるかもしれない。マイルの決勝がある最終日には、出走が予想される村上、関本、小山は400メートル障害の準決勝と決勝が、竹内は800メートルの決勝がそれぞれ控えている。昨年も予選では3分40秒08をマークして記録更新を予感させたが、決勝では3分41秒94に落としてしまった。タイムはレース展開にも左右されるが、やはり複数種目出場による体へのダメージも響いてくる。いかにマイルの決勝までに状態を上げられるかが早大記録への重要な鍵となるだろう。日体大が大きなライバルとして立ちはだかるが、3分39秒台を決勝で出すことができれば十分に優勝の可能性はある。

★激戦必至の男子トラック対抗。3年ぶりの優勝なるか(対抗得点)

 1位・8点、2位・7点~8位・1点と、各種目の順位に応じて獲得できる得点を競う学校対抗の部。ここでは男子トラックと女子総合の展望を紹介する。

 3年ぶりの優勝を目指す男子トラックは、短距離、中距離種目を中心にコンスタントに得点を取ることが必要だろう。長距離種目は外国人留学生が数多くエントリーしており、得点源としては厳しいところがある。それだけに昨年度入賞したメンバーが残る400メートルや800メートル、1500メートル、そしてリレー種目では確実に点数を獲得したい。ライバルとなるのは昨年トラック優勝を果たした東海大か。各種目において実力者が多数おり、大きな壁として立ちはだかるだろう。また日大は短距離種目、東洋大は短距離から競歩まで好記録を持つ選手が勢ぞろい。各校による激戦が予想されるが、これらの大学を上回ればトラック優勝が手に届く位置にある。

 女子総合は、筑波大と日体大が昨年同様優勝争いで、そのあとを中大や順大が後を追うかたちか。そこに早大も食い込みたい。他大学とは異なり、少数精鋭の早大女子部。各種目で取りこぼしなく得点することが総合5位への重要な要素となる。昨年は最終日の4日目で大きく点数を伸ばした。400メートル障害での19点をはじめ、計35点を獲得。今年も400メートル障害や800メートル、マイルが最終日にあり、追い上げが期待される。走高跳の仲野春花(平31スポ卒=現・ニッパツ)や、七種競技の南野智美(平31スポ卒=現・スポーツフィールド)が抜けた穴は大きいが、各種目で確実に実力を伸ばしている女子。昨年を上回るような活躍で総合5位を勝ち取りたい。

前回大会の集合写真。今年も選手たちの笑顔が見たい(写真 岡部稜)