日本グランプリシリーズのプレミア大会として第35回静岡国際大会が開催された。この試合は7月にイタリア・ナポリで開催されるユニバーシアード競技大会(ユニバーシアード)の選考レースも兼ねており、最後の標準記録を突破する大会として学生も多数参加した。早大からは4種目に計8人が出場。男子800メートルに出場した西久保達也主将(スポ4=埼玉・聖望学園)はユニバーシアードの標準記録にわずかに届かず涙を飲む結果に。一方で女子400メートル障害では小山佳奈(スポ3=神奈川・橘)が3年目の挑戦でグランプリを初めて獲得。以前から目標にしてきたユニバーシアード出場に向けて大きくアピールする一戦となった。
(記事 岡部稜)
★日本選手権標準届かずもサードベストでいざ木南記念へ(男子200メートル)
終盤に伸びを見せた三浦。木南記念でのさらなるタイム短縮を誓った
期待の新人が今回も存在感を見せた。日本選手権参加標準Aの記録である20秒80をターゲットに大会に臨んだ三浦励央奈(スポ1=神奈川・法政二)。「スタートの6歩で少し詰まってしまった」と話す三浦だが、順調に加速するとコーナーを出るときには三浦を含め、トップ争いは三人に絞られる。「力まないようにリラックスを心がけた」と接戦の中でも少しずつ相手をリードし、1着でゴールラインを駆け抜けた。
記録は21秒00(0.0)。サードベストをマークしたものの日本選手権の参加標準記録には届かず、「微妙ですね」と三浦。スタートの動きとコーナーを抜けてからスピードに乗ることに関して物足りない部分を感じたようで、「まだまだ行けます」と頼もしく話した。次は6日に行われる木南道孝記念大会の200メートルに出場予定。今大会の動きを分析、修正し、大阪の地で再び20秒80の記録を狙いに行くつもりだ。
(記事 岡部稜、写真 宅森咲子)
★小久保、新たな走りに手応えつかむ。伊東は苦しい走りに(男子400メートル)
自身の走りに変化をつけた小久保。理想を実現させた時の爆走に期待がかかる
4×400メートルリレーの核となっている伊東利来也(スポ3=千葉・成田)と小久保友裕(スポ3=愛知・桜丘)の二人が400メートルに出場。1組目に出場した小久保は、「体感的に向かい風で、スピードに乗らなかった」というものの、スタートから飛ばすと残り100メートルを切ってもトップを譲ることなくフィニッシュ。今年の3月に、3年ぶりにマークした46秒台となる46秒87を再び叩き出した。しかし狙っていた45秒台には届かず、「なかなか出ない」と心境を口にした。もともと後半の伸びが特徴の小久保だが、世界を見据えて前半の走りを重視するようになったという。その走りを取り入れた東京六大学対校大会では後半に失速してしまったが、今大会では「求めてきた動きができつつある思う」と手応えをつかんだ様子だ。2016(平28)年総体同種目チャンピオンの完全復活はもう目の前だ。
その一方で伊東は苦しいレースとなった。300メートル付近までトップに位置していた伊東。しかし、最後の局面を迎える前に、「ピッチが上がってしまい、疲れる走りをしていた」と伸びのあるラストの走りは影を潜め、順位を落としてしまう。46秒77と自己記録より1秒近く遅れてゴールした。4月24日まで行われていたアジア選手権に出場していた伊東だが、「疲れは残っていない」ときっぱり。世界リレーの代表に選ばれたことにも、「実際に走るかどうかはわからないので、与えられた役割を果たすだけ」と身を引き締めた。今大会の走りに真正面から向き合った伊東。課題としている200メートルから300メートルの走りを克服すべく、一歩ずつ進んでいく。
(記事 岡部稜、写真 宅森咲子)
★ユニバ標準まであと一歩及ばず(男子800メートル)
ユニバーシアードの標準記録に0秒52及ばなかった西久保。ゴール後はトラックに拳を叩きつけ悔しさをあらわにした
男子800メートルには、中距離ブロックのダブルエースである西久保達也主将(スポ4=埼玉・聖望学園)と飯島陸斗(スポ4=茨城・緑岡)が出走した。1組目の飯島は今シーズン初戦の800メートル。いつも通り序盤は後方に位置取り様子を伺った。2周目に入ると徐々に前を追い、600メートルで4番目に。しかし、最後の直線で後ろから追い上げた田母神一喜(中大)にかわされ組5着でのゴールとなった。先日の兵庫リレーカーニバルまでは1500メートルのレースをこなしていた飯島。その影響で、この日はもともとスピード面に不安があったという。レース後も「やはりスピードが足りていないということがよくわかったレースでした」と冷静に自身の走りを分析した。関東学生対校選手権(関カレ)に向け、課題は明白だ。
2組目に出走した西久保は今シーズンの目標であったユニバーシアードに向けて、標準記録(1分48秒00)切りを目指したレースとなった。今大会はユニバーシアードにおける最後の選考競技会。この日を逃すと後がない西久保は積極的にレースを進めた。開始直後から前方につけると、400メートルを2番目で通過。しかし、2周目に入ったところで村島匠(福井県スポーツ協会)に2番手を譲ってしまう。「2人に前を行かれてしまったのが痛かったです」(西久保)。なんとか村島に追いすがり、組2着でゴールしたが、フィニッシュタイムは1分48秒52。目標としていた標準記録にはわずかに及ばなかった。あまりの悔しさに、レース後しばらく顔をうずめた西久保。それでも「チームにとってはこれからが本番。優勝して、自分の責任を競技で果たしたい」と、主将は関カレに向け前を向いた。
(記事 宅森咲子、写真 岡部稜)
★小山がグランプリを獲得!(女子400メートル障害)
グランプリを獲得し、笑顔を見せる小山
女子400メートル障害には、小山佳奈(スポ3=神奈川・橘)、関本萌香(スポ2=秋田・大館鳳鳴)、村上夏美(スポ2=千葉・成田)が出走した。2組目に出走したのは関本と村上。関本は前半から加速し、4台目付近からトップに立つ。そのまま最後の障害まで先頭を走ったが、ゴール直前で追い上げを許し、わずか0.01秒差の2着でフィニッシュした。村上はスピードが上がらず、7着でのゴールとなった。
貫禄の走りを見せたのはエース小山。「1台目から攻めていった」と、実力者の集まる3組で果敢にレースを進める。「15歩で間伸びしてしまって、切り替えで多少詰まってしまった」と振り返ったが、後半はさらに加速。8台目付近からトップに立つと、ホームストレートで後続を振り切り、1着でゴールラインを駆け抜けた。記録は57秒80。自己ベストに並ぶ好タイムだった。グランプリシリーズで初優勝を飾り、ユニバーシアードの選考においても大きなインパクトを残した小山。しかし、女子エースに慢心はない。「順位の部分ではすごく良かったですが、タイムはもう少し出てもよかったなとと思っていたので、少し悔しいです」(小山)。小山が大きな目標としているのは世界選手権の標準記録の56秒00を切ること。早大が誇るハードラーの成長は、まだまだ止まらない。
(記事 宅森咲子、写真 岡部稜)
結果
▽グランプリ男子200メートル決勝(5組タイムレース)
三浦励央奈(スポ1=神奈川・法政二)21秒00(0.0)(2組1着、総合9位)
▽グランプリ男子400メートル決勝(3組タイムレース)
小久保友裕(スポ3=愛知・桜丘) 46秒87(1組1着、総合6位)
伊東利来也(スポ3=千葉・成田) 46秒77(3組5着、総合5位)
▽グランプリ男子800メートル決勝(2組タイムレース)
飯島陸斗(スポ4=茨城・緑岡) 1分50秒61(1組5着、総合8位)
西久保達也(スポ4=埼玉・聖望学園)1分48秒52(2組2着、総合2位)
▽グランプリ女子400メートル障害決勝(3組タイムレース)
関本萌香(スポ2=秋田・大館鳳鳴) 59秒55(2組2着、総合6位)
村上夏美(スポ2=千葉・成田) 61秒29(2組7着、総合15位)
小山佳奈(スポ3=神奈川・橘) 57秒80(3組1着、総合1位)
コメント
西久保達也主将(スポ4=埼玉・聖望学園)
――レースを振り返っていかがでしょうか
途中で先頭と2番手を取られてしまって、1人は良かったんですけど、2人に前にいかれてしまったのは痛かったなと思います。
――ユニバーシアード競技大会の選考を意識されていましたか
はい。きょうが最後の選考だったので、タイムと勝ちを狙いにいっていました。
――タイムは標準記録の1分47秒台を目指していたのでしょうか
そうです。
――順位も意識されていたのですか
そうですね。でも、タイムが出せれば順位はついてくるかなと思っていたので、47秒台やもっと速いタイムが出せるようにということを考えていました。
――東京六大学対校大会が終わってからの調子はいかがでしたか
少し落ちぎみだったところもあるんですけど、1週間くらい前からは良くなってきていて、手応えは自分なりに感じていました。でも結果につながらなかったというところで、反省は残るかなと思います。
――きょうの結果はどのように受け止めていらっしゃいますか
ユニバーシアードに出られないというところで、一番は悔しい気持ちです。でもチームにとっての戦いはこれからが本番になってくるので、そこに向けてまた調子を上げていきたいと思っています。
――関東学生対校選手権での目標があればお願いします
800メートルの種目自体は最終日なんですけど、僕がキャプテンとして優勝するというのがチームにとっても当たり前でありプラスになる要素だと思っています。まずは自分の責任を競技で果たして、その前段階でもチームを鼓舞できればなと思っています。
飯島陸斗(スポ4=茨城・緑岡)
――レース展開は振り返っていかがでしょうか
今シーズン初戦の800だったので、少しスピード面で不安があったのですが、流れに乗って最後に順位を上げられたらいいなと思って走りました。
――1500メートルからの切り替えはうまくいきましたか
先日のグランプリ(兵庫リレーカーニバル)から2週間弱ということで、少し練習が足りなかった部分もあって、そのせいで最初の1周目をスピード感的に楽には入れない部分がありました。足りない部分が明確になって、課題もはっきりしました。
――ユニバーシアード競技大会の選考は意識されていたのでしょうか
その面もあったのですが、やはり練習からしてそのタイムを目指すのは厳しいと思っていたので、関東学生対校選手権(関カレ)に向けていい刺激になればいいかなという意識で走りました。
――結果はどのように捉えていますか
やはりスピードが足りていないということがよくわかったレースでした。関カレまで残り3週間ぐらいあるので、800、1500どちらでも狙えるように、スピードを強化しつつ、練習に取り組んでいきたいと思っています。
――関カレでの具体的な目標があればお願いします
2種目とも表彰台を目標にやっていきたいと思います。
伊東利来也(スポ3=千葉・成田)
――きょうの調子は
僕の中ではよかったのではないかと思っています。
――その中で目標は
やはり今シーズンの課題の200メートルから300メートルがあって、今回もそこを克服することでした。
――レースでは300メートルまではトップでした
たしかに300までにトップに出られたんですけど、それを振り返るとピッチが上がってしまって、疲れる走りで走ってしまってなんとか300メートルまでは良い位置で走れたという感じでした。最低限守るべきことができなかったと思います。
――アジア選手権の疲れは残っていましたか
そういうのはなかったと思います。
――世界リレーの代表に選ばれましたが、お気持ちは
実際に走るかどうかというのはわからないのですが、僕に与えられた役割を全うしたいと思います。
――今後の大会へ、どう向かっていこうと考えていますか
目の前のことを一つひとつしっかりやっていこうと思います。
小久保友裕(スポ3=愛知・桜丘)
――きょうの調子は
普通でしたね。
――狙っていたタイムや目標は
45秒台を狙ってたんですけど、なかなか出ないですね…。体感的に1周向かい風で、スピードが出ませんでした。
――レースの内容を振り返るといかがですか
後半に持ち味のスピード持続能力がうまく発揮できませんでした。
――以前、走り方を変えたとおっしゃっていましたが、そのきっかけは
やはり世界と戦っていく上で、前半の入りはとても大事なものです。なので後半より前半を重視するように少し変えました。
――今回、その出来というのはいかがでしたか
80点くらいですかね。求めていた動きが出来てきたと思います。
――今後に向けては
着実に上の大会の標準タイムを切って、今年は勝負の年にしたいですね。世界選手権などの標準を切って上の大会に駒を進めたいと思います。
小山佳奈(スポ3=神奈川・橘)
――レースを振り返っていかがでしょうか
今回はユニバ(ユニバーシアード競技大会)を決める最後の試合だったので、それを中心に考えていました。シンガポールで試合に出た時に1台目がうまく入れなかったので、このレースはしっかり1台目を入ろうと思って1台目から攻めていったんですけど、どうしても15歩で間伸びしてしまう部分があって、次の切り替えの時に多少詰まってしまう部分がありました。まだまだ課題が多いとわかった試合でした。
――タイムの目標はありましたか
今季の目標は57秒を切って56秒台を出してから、一番大きな大会では世界陸上があるのでそのタイムである56秒00を切ることです。まだまだ遠いタイムなのですが、55秒台という大きな目標に向かってやっていこうかなと思っています。
――きょうの結果はどのように捉えていらっしゃいますか
今回は優勝というのが一つの目標としてあったので、順位の部分ではすごく良かったのです。でもタイムはもう少し出てもいいかなと思っていたので、少し悔しいです。
――自己ベストに並ぶタイムでしたが
まだ満足はしていないです。
――東京六大学対校大会(六大学)が終わってからの調子はいかがですか
六大学はシンガポールの疲れがあって、タイムもレース展開も全く無の状態で臨んでしまった試合で、良くない試合でした。でもそれを練習の一環として出て、この大会で順位がしっかり取れたのは良かったと思います。
――関東学生対校選手権(関カレ)での具体的な目標があればお願いします
関カレは3連覇が懸かっているので、3連覇を目指してやっていくのと、マイルもあるのでチームに貢献できたらいいなと思っています。
三浦励央奈(スポ1=神奈川・法政二)
――きょうの目標は
20秒80を切って日本選手権のA標準を切ることでした。
――レースを振り返ると、スタートから良かったと思いますがいかがですか
そうですね。もっと調子が上がってくれば、カーブを抜けたあたりからもう少しスピードを乗せられればと思ったのと、スタートはやはりもう少し速く行きたいですね。最初の6歩が少し詰まってしまったので、もっと伸びやかに行けるといいなと思います。
――コーナーを抜けてからの走りはいかがでしたか
前に一人か二人いて、力んだら終わりだなと思ったので、力まないように、リラックスを心掛けて走ったら最後少し伸びてくれたのでよかったと思います。
――記録に関してはいかがですか
微妙ですね。
――可もなく不可もなくというところでしょうか
はい。4時台に200メートルを走ったことがないので、集中力を維持できなかったところで、自分の経験不足や弱さが出てきてしまいましたね。
――それでもサードベストでした
そうですね。まだまだ行けます。
――木南道孝記念大会に向けては
今回自分の中でうまくいった点とうまくいかなかった点をビデオなどを見返して、噛み合っていないところやずれているところを分析して、間二日しかありませんが、20秒8を切れるようにできることを絞りつつも最大限努力をしたいと思います。