【特集】関カレ直前特集『自律した個から強い早稲田へ』 第2回 古谷拓夢主将×田村優主務

陸上競技

 昨年の関東学生対校選手権(関カレ)では、男子トラックの部5位に沈んだ早大。ケガなどで戦力が整わず、男子で表彰台に登ったのは古谷拓夢主将(スポ4=神奈川・相洋)ら3人のみ。リレーでは4×400メートルリレーは5位入賞したものの、4×100メートルリレーで予選敗退と力を発揮できずに終わった。「悪い夢を見ているようだった」(田村優主務、スポ4=埼玉・早大本庄)。あれから1年。今年こそ男子トラック優勝を成し遂げたい――。そんなチームの主将・主務に、関カレに向けての意気込みを伺った。

※この取材は5月9日に行われたものです。

「今までよりも全体でまとまっている」(田村)

チームに関して真剣に語り合うお二人

――昨年のシーズンが終わってから、チームとして、古谷選手であれば個人として、振り返っていかがでしょうか

田村 昨年のシーズンが終わって、秋に代替わりしたんですけど、そこから新しいチームになって冬季練習に取り組みました。短距離だけで言うと、今までよりも全体でまとまっている印象です。まとまって練習をするという印象が強くて、去年までだったら短距離は100(メートル)系と400(メートル)系で分かれていたんですが、今年の冬は一緒になって練習していたので、そういう意味ではお互いにコミュニケーションを取りやすくなっていましたし、いい意味でまとまっていると思います。

古谷 去年のシーズンを振り返って、個人もそうですし、チームとしても対校戦で勝ち切れなくて、すごい悔しい思いをしたというのがあります。僕の中では全カレ(全日本学生対校選手権)で勝てなかったのが悔しくて。個人としてもトッパー(110メートル障害)で決勝に残って、ハードルにぶつけてしまって失格になって。チームとしても先輩たちの最後の試合でトラック優勝を掲げていたにも関わらず、自分としても貢献できなかったですし、チームとしてもできなかったのでそういう思いで今年こそ勝てるチームを作りたいという思いで冬季練習に入りました。

――冬季練習で短短、短長に関わらずまとまって練習をしていたという方針はどなたが示したんでしょうか

田村 監督(礒繁雄監督、昭58教卒=栃木・大田原)やOBの欠畑岳さん(平27スポ卒=岩手・盛岡第一)がメニューのサポートをしてくださって、そういった監督、コーチ陣のサポートで方向性は決まりましたが、そこに僕ら学生の意見もいれてもらって、そのような全体でまとまってやるというような方向性になりました。

――最近の部内の様子はいかがでしょうか

古谷 六大学(東京六大学対校大会)で始まって、トラックとしては優勝できなかったんですけど、去年よりは点数が取れたというのはあります。ゴールデンウィークに入って、個々に試合があって、関東インカレに向けてという記録会のグループと、織田記念(織田幹雄記念国際大会)や静岡国際といったグランプリシリーズのグループに分かれたんですが、記録が出た者もいれば出なかった者もいて、それは毎年同じですが、今(5月9日)の現状は流れとしてはいい流れを作れた者が多いので、これから関東インカレに向けた2、3週間は大事になってくるかなと思います。

田村 古谷が言っていったことは同じですが、この前の日曜日(5月6日)で関東インカレの記録の期限が決まって、部内でエントリーメンバーが出そろって。それで出れるものと出れないものという明暗がはっきりしたので、その温度差は今だけ考えれば正直ありますが、これからの練習やミーティングなどでならしていくことは可能だと思います。チームとしてまとまることはできますし、それだけの力があるチームだとは思っているので、最上級生の引っ張り方次第だと思います。

――ピリピリしているような様子ではないんでしょうか

田村 集中力は出てきました。日曜に記録の期限が終わって、昨日(5月8日)から練習が始まったんですが、雰囲気は変わったなと思います。

――練習の様子も関カレに向けてという

田村 そうですね。目の前に迫ってきているので、選手もですけど、スタッフもそうですね。

古谷 今の段階で、ブロックがあるんですが、400系だったり、トッパーはゴールデンウィークで結果を残せた選手がいる中で、100、200系が振るわなかったというのが事実なので、そこは流れのいいブロックはそのままいくべきですし、いい流れというのを全体でやることによって、全体でいい流れになればいいなと思います。

――新入生が最近加入しましたが、新入生の様子はいかがですか

田村 力のある選手はたくさん入って来ましたが、練習の様子や寮での様子を見ていると、正直にまだまだ高校生だなという感じはあります。1つ1つの発言にしろ、行動にしろが、幼いという訳ではないかですが、大学生の僕らと比べると、もっと言えば競走部員としてやってきた僕らと比べると、レベルの差があるなと思います。そこをレベルの差があるからといって、突き離すわけにはいかないですし、そこをどうやって引き上げていくのかというのは僕ら上級生の役割だと思っています。そういう意味では練習はもちろんですが、私生活の面でしっかり見るようにしています。

古谷 実力のあるメンバーが入って来たので。1年生を当てにするようでは、関東インカレは戦えないと思うので、まずは2、3、4年生が戦う必要があって、その中でやはり1年生が結果を残せるのが一番です。ただ、そこに頼り切るようでは勝てないかなと思います。あとは、田村が言っていたように高校生として入ってきたのでそこをどうやって競走部の部員にしていくかというような指導だったりとかやっていかなければいけないと思います。

――話は脱線しますが、110メートル障害にも力のある新入生が入部しました

古谷 インターハイの1番、2番が入ってきて、上には野本さん(周成、スポ4=愛媛・八幡浜)もいらっしゃいますし、5人いる中での学内選考という厳しい選考があるので、その中で日本一のハードルブロックを目指すということ。それと、結局最後は個人なので個人でいかに結果を残すかという部分ですね。一番は僕が主将なので僕が結果を残すことが後輩たちに与える影響もあるのではないかと思ってます。細かいこともありますが、まずは自分が結果を残して、下に結果をつなげていけばいいかなと思っています。

――主将・主務になって自分にとって変わったことはありますか

古谷 僕は2年の夏からマネージャーをやっているのですが、その時からチームのことはしっかりと見ようという意識はありましたが、一番上の学年になって、主務という肩書きがついてそれに対する責任感だったりとか、自分が中心になって新しい競走部を作っていかなければいけないという責任感は感じています。今まで2、3年でやってきたマネージャーのときよりも重みとか責任というのは感じます。

古谷 4年生が一番大事ということは監督もおっしゃっていましたが、4年生の色が組織として出ると思います。自分が今までやってきたことが正しいのかとか、行動で示していく必要があると思っていますし、模範となるような行動をする部分と、前に立って言うことが増えました。部員数もいるので、今まで以上に自分が未熟だったということに気付かされたのでもっといろんな広い視野で見ていかないといけないと感じました。あとは、伝統も感じて、いろんな大学があると思いますが、早稲田大学競走部はその色があるのでそこは大切にしていかないとと思います。というのも、色んな方々の支えや支援を受けているので、そこは大学の名前を背負ってやるので結果の部分と人間性の部分というのをすごい大切にしています。

「言い合える同期」(田村)

1つ1つの質問に真摯(しんし)に答える田村

――話は変わります。主将・主務という立場から見て、学年のカラーというのは

田村 僕らの学年は人数が少ないのもありますが、それぞれの色が強烈で。一見すると対立しているように思いますが、それを遠目で見ると1つの色にまとまっているというかり個々の色が強烈なのでチームとしてはまとまりがあるという、言い合える同期です。そこはすごいいいところかなと思います。

古谷 僕らの学年に関しては、種目が被ってなくて。それが一番の特徴というかわかりやすい所ですね。考え方も違ったりするんですが、目指すところは一緒なので仲がいいです。あとは、女子が多いので。今までに無かったのかなと思います。多様性というか。

田村 それぞれの種目が違うのもあるし、女子が多いのもあるんですが、それぞれの意見が強いし通りやすいです。

――3年生はいかがですか

田村 あいつらは面白いよね(笑)。

古谷 個性的な感じです。

田村 僕らの学年以上にキャラが強烈な感じがします。

古谷 あとは、ブロックごとのつながりが、僕らには無いというか。僕らはブロックの中で1人だったので。そういうことを考えるとブロックの人数が多いので、そういう部分があります。中々、一区切りでくくるのは難しいかもしれません。

――部員の中で、頭がいいなと思う部員だったり、面白いなといった部員を紹介していただけますか

田村 頭がいいというのも色々とあると思うんですが同期だったら根岸(勇太、スポ4=千葉・成田)ですね。冷静に全体を見ていると思います。冷静に見ながらも個人個人に対して適切なアプローチができると感じます。僕らもそういうところで助けられているので。そういう意味では頭がいいというか、賢いし冷静だなと思います。

古谷 南山(義輝、スポ2=福岡・小倉東)とかは(笑)。

田村 くだけた感じがあって、良い意味でムードメーカーというか。

古谷 部を明るくする元気な部分があるので。みんながみんな南山だと困るんですが、1人か2人、南山のような選手がいるのは盛り上がるかなと思います。

「1人1人が自律をすることによって、強いワセダになっていく」(古谷)

力強い口調で話す古谷

――主将に決まった経緯というのは

古谷 経緯と言いますか、競走部は自分たちの学年で話し合って、立候補ではないですが自分でやりたいという意志を言ってなったので、僕としても1番上に立つという覚悟を決めて、自分でやりたいですということを言ってなりました。

――それを聞いて田村さんはいかがでしたか

田村 僕らの中でも主将は古谷しかいないと思っていたので。彼、一人だと重荷になる部分もあったのでそこは僕らがサポートしてあげたいなと思って。古谷が先頭に立つんですが、僕らもチームを作っていくというような話し合いは進みました。

――実際に主将となって、どのような主将でしょうか

田村 頑張っているのは当たり前で分かるんですけど、それがたまに空回りしているというのが同期だからこそ見えるところがあって。それを見ていて、こっちも苦しくなりますし、助けてあげなきゃと思います。それもまた、うまく噛み合うときも噛み合わないときもあったので、そういうところはやはりお互いにとっていい経験だったのかなと。それを通して彼が成長できていると思いますし、支える側も成長させてもらいました。やはり彼の持つリーダーシップというのは大きいので、僕はそういうところに助けられている部分もあります。

――逆に主務の田村さんというのはどのような存在でしょうか

古谷 僕としては頼りがいがあるというか、選手を一度やっているというのが、その視点というのがあって。細かい声がけを田村は気を使ってやってくれているかなという感じです。1回選手を辞めたからこそ言える視点というのが、たぶん苦しんでいる選手がいたらそこは声かけしてくれますし、あとはいてくれることの安心感というのを感じています。どうしても1人だとできないので。全員そうなんですけど、僕は結構同期に頼っている主将なので。協力してできる代だと思っているので、そこは感謝していますし、チームとして勝ちたいという思いは出てきます。

――『自律した個から強い早稲田』というのは古谷主将が考えたんでしょうか

古谷 僕と田村ですね。二人で結構話し合っていて。去年勝てなかったので今年は勝ちたいということがあって。でも強さというのも結果がわかりやすい所だとは思うんですが、伝統がある中でやってきたことというのが、人間性という部分も強さと言えるのかなと思って。そのためには1人1人が自律をすることによって、強いワセダになっていくのかなと思っています。

田村 もちろん、学年で話し合いを進めていたんですが、普段のプライベートな時間でどうしようかなというような話をしていて、それをみんなに受け入れてもらえたという感じでした。

――幹部同士では話し合いを重ねてという

田村 組織を動かすのは僕ら学生なので、僕らの方向性が1つに定まっていないと組織全体として方向性にブレが出てくるので、僕らの中で意思疎通をしっかりしてという感じです。

「優勝はする、大前提で勝つ」(古谷)

昨年の関カレでは2位だった古谷。今年は優勝を目指す

――ここからは関カレの話に入ります。昨年の関カレを振り返っていかがですか

田村 ただ、悔しかったですね。僕はマネージャーなので試合出てということはないんですけど、最後のマイル(4×400メートルリレー)が終わって、(男子トラックの部)5位で終わって。初めて自分が出てない試合で、意味がわからなくて、なんで5位なの、と。もっと言えば100、200の個人種目で1点も取れなくて、4継(4×100メートルリレー)も予選で落ちて。マイルはかろうじて5位という。本当に悪い夢を見ているような感じでした。それと同時に、チームに対して何もできなかった自分にすごい腹が立ちましたし、だからこそ全カレはと思ったんですけど、全カレもあまりうまくいかなくて。古谷も最初に言っていたんですけど、シーズン通して関東インカレからただただ悔しいと思っていました。だからこそ、今年はワセダとして結果が欲しいですね。

古谷 僕は個人として関東インカレの前でケガをしてしまって、ギリギリなんとか間に合って出れたんですけど、3位で。でも優勝者数ということを考えたときに僕は3位で勝てなくて。1位を取る選手が何人いるかというのが大事ですし、表彰台に何人というのもありますし。100、200、400のメインのところで取れないというのは今まで無かったことだと思うので、悔しいだけじゃなくて、冷静に見たときにこのままではまずいなという気持ちがありました。そこで持つのは遅いと思うんですが、結果を見て危機感が産まれました。

――やはりそこから今年は

田村 今年は絶対にそういう思いはしたくないですね。僕ら自身も最後なので一番きれいなかたちで終わりたいと思っています。今年は結果が欲しいです。

――関カレではリレーも大事だと思います。リレーチームはいかがですか

古谷 メンバーがある程度決まった中で、練習は積めています。去年とかはケガがあって急きょメンバー変更もあって流れが悪かったので。今はそういった面では最低限の役割が1人1人明確になっているのかなと思います。4継に関しては走順に対する役割が大きいと思うので、1人1人が役割を果たす責任があると思います。マイルに関しては走力になるので、伊東がこの前の木南記念(木南道孝記念大会)で46秒09で走ってこの流れというのは短長ブロックとして盛り上がっていて、すごい活きてくると思うので、関東インカレに向けて全体としてレベルが上がっていけばと思います。あとは1年生が徐々に慣れてきて走れるようになってくれればと思います。

田村 伊東はでかかったね。 伊東が46秒09というインパクトのある記録を出したことで同期の村木(渉真、スポ2=愛知・千種)とか小久保(友裕、スポ2=愛知・桜丘)とかが相当刺激を受けていますし、マイルは下級生が中心のチームになることが予想されるので、下級生の中でも彼がインパクトのある結果を残したというのは意味のあることだと思います。それにつられて周りも引っ張られているのはチーム全体としていい流れだなと思いますし、そこをコントロールする3年生の宮川(智安、スポ3=埼玉・早大本庄)や西久保(達也、スポ3=埼玉・聖望学園)がいるので、チームとしていい感じで入ってきているのではないかと思います。

――すべての選手に期待をされていると思いますが、特に注目している選手はいらっしゃいますか

田村 もちろんみんな注目も期待もしてますが、関東インカレでワセダの得点の中心となるのが、110メートルハードルが一番で、あとは伊東がどこまで行くか、あと両リレーですね。110メートルハードルは古谷も言っていたように選手層が厚いですし、実力のある選手がいるので。400に関しては伊東の46秒09がどこまで通用するのかということと、それに刺激を受けた村木や小久保がどこまで走れるのかというのは1つ注目しています。リレーはやっぱり『リレーの早稲田』という伝統があるので、そういうものを背負って選手たちがどこまで実力を発揮してくれるかですね。あとは僕らがどこまでサポートできるかというのは勝負のカギかなと思うので、出ない選手やスタッフも1つになってやっていかなければいけないと思います。

――では、関東インカレでの目標をお願いします

古谷 110メートルハードルで勝つということで、優勝はする、大前提で勝つという、これだけです。 その上でタイムは付いてくればいいかなと思いますし、圧倒的に他を寄せ付けないようなレースがしたいと思っています。あとは気持ちが熱くなると冷静なレースができなくなるので、最後は冷静にやれるようなかたちで。今は練習も積めているので、落ち着いて迎えられるようにしています。

田村 トラック優勝は絶対に成し遂げたいです。僕らは2年のときにトラック優勝を経験させてもらってて、そのときに同期で写真を撮ったんですが、またあの写真を撮りたいというような話をしていて。選手1人1人がそれぞれのパフォーマンスを発揮してくれることが僕らは嬉しいことなので、そうすれば結果も付いてくると思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 平松史帆 写真 大庭開氏 ※2017年関カレ110メートル障害の写真)

早大競走部を支えるお二人。強いリーダーシップでチームをトラック優勝へ導きます

◆古谷拓夢(ふるや・たくむ)(※写真左)

1997(平9)年3月12日生まれ。184センチ。80キロ。神奈川・相洋高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:110メートル障害13秒73。高校時代から高校総体優勝や高校歴代1位の記録をたたき出すなど、世代トップの選手として活躍されてきた古谷選手。今年は、主将として110メートル障害優勝を目指します!

◆田村優(たむら・ゆう)(※写真右)

1996(平8)年12月26日生まれ。182センチ。64キロ。埼玉・早大本庄高出身。スポーツ科学部4年。2年の夏まで競技をされていたという田村さん。自らの競技経験を活かして、苦しんでいる選手に声掛けを行っているそうです。大学最後の1年は主務として早大競走部を支えます!