『日本一』を懸けた真夏の祭典・日本学生対校選手権がことしも幕を開けた。主力の相次ぐ故障により、欠場が目立つ早大勢であったが、仲野春花(スポ3=福岡・中村学園女)が見事日本学生女王のタイトルも獲得。今季国内負けなしの実力を全国に知らしめた。また太田智樹(スポ2=静岡・浜松日体)は短独走をきちんと走り切り、粘りの7位入賞。男子1500メートルの昨年覇者である齋藤雅英(スポ2=東京・早実)は、ペースの上げ下げが激しい展開を制することができず、連覇を逃す結果に。男子110メートル障害など得意種目が控える2日目以降、どんな戦いが待っているのか。そして早大の行方は――。エンジの戦士たちの激闘から、目が離せない。
(記事 鎌田理沙)
★仲野が連覇達成!
1メートル79の試技に成功し、優勝が確定した仲野
今季国内負けなしの仲野春花(スポ3=福岡・中村学園女)。資格記録もランキングトップで日本学生対校選手権(全カレ)に臨んだ。165センチの高さをパスし、挑んだ170センチはまさかの1本目を落としてしまう。その後チームメイトに撮ってもらったビデオを見直し、修正に成功。170センチ、175センチと試技の精度を上げていく。178センチではバーがまったく揺れることなく完璧な跳躍を見せ、ただ1人この高さをクリアした。優勝が決まった後にも記録に挑戦し、181センチも1回目で飛び越える。自己ベスト更新を狙った184センチでは失敗に終わってしまうも、圧巻の強さを見せ優勝となった。表彰式後に行われた優勝インタビューでは「もう1つ上のレベルで戦える選手になりたい」と語った仲野。国体では目標としている185センチ超えで優勝を狙いたいところだ。
(記事 杉野利恵、写真 太田萌枝)
★6位入賞、自己ベスト更新まであと少し
自己ベスト更新に近づいた内之倉
風が強く、助走に迷うコンディションの中、女子走幅跳には内之倉由美(スポ3=鹿児島・甲南)が出場した。今度こそ自己ベストの更新が期待された1本目、風の影響を受けて低めの跳躍となり、5メートル70の記録となった。続く2本目では力強く踏み切り、関東学生対校選手権と同記録の5メートル88を記録。しかし内之倉はここで満足はしなかった。そして臨んだ3本目。1、2本目からフォームを改善し、追い風2.9メートルの参考記録ではあるが5メートル97の今シーズンベストをたたき出し、ベスト8進出を決めた。
このまま勢いをつけたい4本目。風速1.5メートルと穏やかな風でコンディションも内之倉に味方したかのように見えた。だが足が踏切板を越え、惜しくもファウル判定となってしまう。5本目はパスし、迎えた6本目。助走のタイミングが合わせられず5メートル65に留まり、6位で試合を終えた。内之倉にとって今回の入賞は大きな収穫となっただろう。だがここで留まってはいられない。内之倉の挑戦はこれからも続いていく。
(記事 茂呂紗英香 写真 吉村早莉)
★連覇ならず。来季はリベンジを
周りのスパートに対応する齋藤
実力者が多くエントリーした男子1500メートルには飯島陸斗(スポ2=茨城・緑岡)と昨年に続き連覇を狙う齋藤雅英(スポ2=東京・早実)が出場した。予選1組目の齋藤は集団後方でレースを進めていくも、ロングスパートをかけ組3着となり順当に決勝へと駒を進めた。2組目の飯島は終盤にピッチが上がらず組5着で予選敗退となった。
激戦の予選を勝ち抜いた12人で行われた決勝。風の影響からかけん制が続き1000メートルを2分54秒で通過するスローペースの中、齋藤は集団の前方で様子をうかがう。ラスト400メートルでレースは急激にスピードアップし集団は縦長に。齋藤は予選同様1200メートル付近からのロングスパートで勝負をかけるも集団は崩れない。優勝した去年はこのレース展開で抜け出し、そのまま勝ち切ることができた。しかしことしはさらにペースの上がったラスト200メートル以降、他選手のスパートに着いていくことができない。ホームストレートでも粘れず、10位に終わった。
去年の優勝や予選の走りから期待が大きかっただけに、悔しさの残るレースとなった。今季はケガに苦しみ、思うような結果を出すことはできなかったが、この悔しさを糧に来年こそ王座奪還に期待したい。
(記事 斉藤俊幸 写真 石名遥)
★太田、「最低限」の7位入賞
序盤から先頭集団で積極的な走りを見せる太田
男子1万メートル決勝には、太田智樹(スポ2=静岡・浜松日体)が出走。風速2メートル近くの風が吹くものの気温は23度と比較的涼しい気候で行われた。サイモン・カリウキ(日本薬科大)など留学生を先頭に集団は1キロ2分50秒前後の速いペースで進んだ。太田はその集団の前方で積極的にレースを進める。6000メートルを過ぎ、6人に絞られた集団は留学生のペースアップによりばらけると他の日本人選手から後れをとってしまい、単独走となる。「一人になってから本当にきつくて」と振り返る太田は、ピッチが落ちペースも3分超えとなる。それでも6番手を守る粘りをみせたものの、9000メートル付近でジェフリ・ギチア(第一工業大)に追いつかれてしまう。その後は2人でレースを進め、残り1周で太田が仕掛けるが勝ち切れず、惜しくも7位でゴール。「着順で入賞するというのが最低限の目標だった」(太田)と言うように満足する結果は得られなかったが、入賞を果たし、自己記録も更新した。合宿の疲労が取れ切れないなか出場し好ペースを刻んだ太田は、秋シーズンでの活躍をにらむ。
(記事 岡部稜 写真 吉村早莉)
結果
1日目
▽男子1500メートル予選
齋藤 3分54秒44(1組3着)
飯島 3分56秒26(2組5着)
▽男子400メートル予選
小久保 DNS
村木 48秒39(4組4着)
加藤 DNS
▽男子100メートル予選
南山義輝 10秒58(+3.5)(4組6着)
▽男子1500メートル決勝
齋藤 4分02秒60(10位)
▽男子1万メートル決勝
太田 29分09秒06(7位)
永山 DNS
▽男子4×100メートルリレー予選
早大(野本-徳山-根岸-高内) 40秒10(5組2着)
▽女子400メートル予選
小山 DNS
▽女子走高跳決勝
仲野 1メートル81(1位)
▽女子走幅跳決勝
内之倉 5メートル97(6位)
コメント
――内之倉由美(スポ3=鹿児島・甲南)
――今大会の目標は
今回は調子が上がってきていて短い距離をたくさん走る練習を取り入れていて、その中で質力が上がってきていたので、自己ベストを狙っていました。でも4日前に筋膜炎のようになってしまって、7月に肉離れしたところが少し痛くなってしまっていたので不安はあったんですけど、その中でベストなパフォーマンスをしようと思って挑みました。
――具体的な記録や順位の目標というよりは現状の調子に合わせた目標ということでしょうか
そうですね。不安がある中でどれだけ自己ベストに近い記録が出せるかで、具体的には6メートルを跳ぼうと思ってました。
――夏の練習はいかがでしたか
夏は肉離れをしていたので合宿には参加せず所沢に残っていました。その中でケガ明けだったんですけど、しっかりやりました。
――昨日の調子はいかがでしたか
ウォーミングアップの最後で助走からの跳躍を入れた時にハムストリングに痛みが出てしまって。開始直前まで痛かったんですけど、ピットに入った瞬間に痛みがなくなって痛みを気にせず試合に臨めました。
――決勝の5本目の跳躍をパスした理由を教えてください
決勝が決まって一気に痛みが出てしまって。多分それは自分の中で安心感があって痛みを感じてしまったので、そこが甘いところかなって思います。
――予選の8位以内に入らない中挑む3本目の跳躍の心持ちはいかがでしたか
いつもだったら怖いっていう不安な気持ちで挑むんですけど、今回はこうすれば大丈夫っていう自分の中で自信があってどんどん改善していけたので、3本目も自信を持って挑みました。
――予選の3本目を跳んだ感触はいかがでしたか
2本目でベスト8に入っていなかったので、いつもはびびって(助走を)下げてスタートするところを今回は勝負かけて前に出したのが良くて、3本目を跳び終わって5メートル97だった時は正直安心しました。
――最終的な5メートル97という記録に対してはいかがですか
記録も順位も喜んではいけないと思うんですけど、大学に入って1番良い記録というか全国の大会で入賞していなかったので、そこは良かったと考えを変えてこれから頑張っていきたいと思います。
――6本目の跳躍についてはいかがですか
4本目に足の調子が気になったので5本目にパスをして6本目で勝負をかけようと思っていたんですけど、前半の助走から良くなくて、スピードに乗れなくて。そこが良くなかったですね。
――風が変わりやすかったことに対してはいかがでしたか
それが今回ありがたくて。さっきも言った通り、足が痛くてスピードに乗らなかったんですけど、それが風によって助けられて。すごく運が良かったなと思ってます。
――自身の今大会全体を振り返っていかがですか
今回は追い込まれた時に結果を残せたというところで自分の中で一皮剥けた気がしているので手応えはあって、これからどうしていくかが大切だと思っています。なので、これからまた一皮剥けられるように頑張っていきたいと思います。
――最後に今後の大会予定と意気込みをお願いします
今シーズンはもうあと記録会くらいしかなくて、来シーズンに向けて良い流れを作れるように自己ベストを出したいと思っています。改善点とかは明確なのでそこをしっかり直して記録を出して、来年は関カレ(関東学生対校選手権)、全カレ(日本学生対校選手権)で優勝を狙っていきたいと思います。
仲野春花(スポ3=福岡・中村学園女)
――全国大会での連覇というのは初めてでしょうか
そうですね。初めてです。関カレ(関東学生対校選手権)とかならありますが。
――試合中ひざを気にされていてテーピングもされていましたが、万全の状態ではなかったのでしょうか
5月後半から膝蓋腱を痛めていて最初は気になる程度だったんですけど、どんどん悪化してしまって。治すためにしっかり休養して、と思っていたんですけどあまり良くならなくて、アジア選手権があった時ぐらいから跳躍練習をしたり踏み切り練習をしたりひざに負担のかかる練習をすると痛みが残ったりということもあったので、万全に練習ができなくて、不安な状態で試合に臨むというかたちでした。
――170センチを1回目失敗されましたが、何か関係しているのでしょうか
いつもは試合でも自信満々に臨むことが多いんですけど本当に不安で、その不安な気持ちが跳躍に出てしまったのかなと思って焦りました。
――その後は高さを上げ、試技数を重ねるごとに跳躍が良くなってたように思えたのですが、どうでしたか
高さが上がるごとに自分の跳躍をチームメイトにアドバイスをもらって修正できていたので、良かったかなという風には思いました。
――175センチを1回目で跳べたとき、気持ちに余裕はできましたか
そうですね。でも落としたと思っていたので、跳べてラッキーというか落としてなかった、という風になったので、気持ちに余裕ができました。
――気持ちに余裕ができたことが178センチ、181センチの跳躍へとつながったのでしょうか
周りを気にしないでおこうとは思っていたので、しっかりと自分の跳躍を178センチでも181センチでもやろうと考えていたので、気持ちの面で切り替えることができたかなとは思います。
――成功すれば自己ベスト更新となる184センチにも挑戦されましたが、いかがでしたか
正直ひざの状態があまり良くなくて、100パーセントの跳躍をするのは無理だなという風に自分で判断したので、できる範囲でひざがつぶれてしまわないような跳躍を、と心掛けたんですけどバーをつかんでしまったりという満足のいく跳躍ができなかったので、次の試合に持ち越しという風に考えました。
――今までにない状況での優勝というのは、他の試合の優勝とは何か違いますか
正直今回勝てるとは思ってなかったので、本当にうれしいの一言に尽きるんですけど、記録の面とかであったりあまり高くないレベルで満足してしまっている自分がいるので、181センチで決まった時にホッとしてしまったというのがあって、そういうレベルでまだ自分は戦ってしまっているので、もう1つ上のレベルで戦えるようになりたいな、という風に考えます。
――国体(国民体育大会)に向けての目標をお願いします
国体は今までに県に微力でしか貢献できたことしかないので、恩返しするつもりで貢献できるような結果を出したいです。あと、ことし国内では負けてないので最後勝って終わりたいなという風には思います。
齋藤雅英(スポ2=東京・早実)
――レースを振り返っていかがですか
実力と調整不足が露呈した結果となってしまったので悔しさがあります。
――調整不足というお話がありましたが
8月の集中練習期間にシンスプリントになってしまいうまく練習を積めませんでした。
――結果的にスローペースの展開となりましたが、ご自身はどのようなレース展開を思い描いていらっしゃいましたか
風が強かったのでスローペースになることは分かっていたので、位置取りに気を付けてレースに臨みました。自分の中では思い描いていた通りのレース運びはできたのですが、最後は練習不足が出てしまいました。
――優勝した去年と同じような位置で勝負を仕掛けたと思うのですが、連覇に向けてその辺は意識されていましたか
正直、今年は十分に練習を詰めていなかっため連覇というのは頭には無く、去年の事は考えず、とにかく勝つことだけを考えていました。
――今後の出場予定の試合等ございましたら意気込みとともに教えてください
まだ決まってはいないのですがとにかくケガを治すことを優先し、冬季の練習をしっかり積んで来年につなげていきたいと思っています。また、自分の身体と日程が合えば10月下旬のかわさきフェスティバルに1500メートルで出場させていただくことを考えています
太田智樹(スポ2=静岡・浜松日体)
――本日のレースプランはどのようなものでしたか
日本人の先頭で勝負するというのが一つの目標だったので最初から積極的に先頭で戦っていこうと思いました。「後半が勝負」と監督(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)には言われたんですけど、まずは先頭につかなければ意味がないので、しっかり先頭につきました。
――中盤まで1キロ2分50秒という早いペースでしたが、その点に関してはいかがでしょうか
最初は思ったよりペースが速かったんですけど自分の中で余裕はありました。でも途中で急にきつくなってしまってからが反省するところかなと思います。最低限のペースで押せたのが最終的に入賞につながったのかなと思います。
――東海大の松尾淳之介選手に離されてからどのようなお気持ちでしたか
1人になってから本当にきつくて、誰かにいて欲しかったんですけど、後ろを見ても前を見てもあまり人がいなかったので「これで行くしかないな」と思って割り切って行きました。
――単独走になったときはどのようなことを考えていらっしゃいましたか
前はまだある程度見えていたので少しでも(差を)広げられないように同じくらいのペースで頑張って走ろうかなと思っていました。それでも離れてしまったのですが粘り切れたのかなとは思っています。
――ずっとおっしゃっていた28分台とはなりませんでしたが自己ベストは更新されました。今回のタイムについてはどのように受け止められていますか
タイムというのはあくまで着順の後についてくるものだと思っていて、今回は着順で入賞するというのが最低限の目標だったのでそれは達成できたし結果として自己ベストだったのは良かったと思います。ですが途中まで29分を切れるペースで走っていたのに待たれすぎて29分台に変わってしまったというところで、これからまだ改善することもあるし、まだいまは合宿明けで疲労も完全に取れ切っていない状態の中でそれくらいのペースで走れたというのはこれからの秋のシーズンにつながるかなと思います。
――入賞は果たしましたが惜しくも表彰台とはなりませんでした。それについてはいかがでしょうか
途中まで3位とか見える位置だったんですが、3位とは20秒くらい差があってまだまだ力が足りてないのかなと思います。駅伝まで1カ月あるので、しっかりその点でその差を埋められたらいいのかなと思います。
――駅伝シーズンに向けてどのような取り組みをしようと思われますか
これまでしっかり走り込めてきてあと1回合宿があります。あくまでチームの目標は箱根の総合優勝なので、そこに向かってこれからチームに合流して、チーム全体で良い雰囲気で駅伝に向けて走りこんでいけたらなと思います。