【特集】競走部特別インタビュー『華の女子対談』第1回 溝口友己歩

陸上競技

 近年勢いにのる早大競走部の女子選手。そんな女子部の長距離ブロックをけん引するのが競歩の溝口友己歩(スポ2=長野東)だ。入部1年目から、エンジのユニフォームを着たレースで表彰台に立ち、海外のレースでも入賞を果たすなどそのポテンシャルは計り知れない。終始笑顔で話が進む中、溝口選手の強さの秘訣、そしてこの4年間の目標について語っていただいた。

※この取材は6月14日に行われたものです。

「1番は全カレ」

穏やかな口調で質問に答えてくれた溝口

――きょうのメニューはどのようなものでしたか

 きょうは1万2000のペース歩でレースペースよりはゆっくりのペースで、1万2000を歩きました。

――早大の競歩の女子選手は溝口選手おひとりですが、練習もひとりでされているのですか

 はい、そうですね、メニューはひとりでやっています。

――メニューは自分で組まれるのですか

 いまは自分で考えてやるようにしています。日本陸連の合宿に月に1回程度呼んでいただいていて、そこで競歩の先輩方とも一緒になるので、たくさんアドバイスをもらってメニューに生かすようにしています。

――競走部としては高橋和生選手(社3=岩手・花巻北)、高橋雄太選手(スポ3=千葉・佐原)がいらっしゃいますが何かお話しされたりはしますか

 そんなに頻繁に話すとかはあまりないんですが、同じ種目をやっているので私としては大きい存在というか刺激をいただいています。

――いまはどの試合に向けて練習されているのですか

 次は7月の記録会に2本出る予定で、そこに向けてまず6月はしっかり練習積んでいこうと思っています。1番は9月あたまに全カレ(日本学生対校選手権)があるので6、7、8月しっかり継続していってそこにつなげたいと思っています。

――いまの段階での課題は

 この前の関カレ(関東学生対校選手権)のときは前半5000まではいままでよりも納得のいく入りができたんですけど、後半にペースを持続させていったり、さらにラスト上げたりっていう力がまだ足りないのでそこを付けていきたいなと思っています。

「競歩をやっていなかったらここまで陸上は続けていなかった」

――溝口選手が競歩を始めたきっかけは何だったのでしょうか

 小学校5年生からずっと中距離、長距離とか1000メートル走から中学は3000メートルとかを走っていたんですけど、中2のときに部活で突然「きょうは競歩やるぞ」って先生が言って(笑)。近所に競歩の選手がいて、知り合いだったみたいでその選手を連れてきて。そこで初めて競歩をして「お前の動きが一番近いんじゃないか」みたいなことを言ってもらって、そこから大会に出てみたりとかしました。

――初めて競歩をしたときはどんな感じでしたか

 こんな競技があることを知らなくて。中学校2年生で初めて知った競技だったのでびっくりしました。

――競歩のどこに魅力を感じられたのですか

 普段なにげなく歩くっていう動作をこんなにも極めている人がいるんだって思ってそこがすごく衝撃でした(笑)。

――競歩に出会っていなかったらどうしていたと思いますか

 競歩をやっていなかったらたぶん走っていたと思うんですけど、ここまで陸上は続けていなかったかもしれないです。

――高校時代は総体で優勝するなど実績を残されてきましたが、高校の競技生活を振り返っていかがですか

 高校で駅伝校に進学したんですけど、私としては走りも速くなりたいっていう思いがあって競歩はそのサブというか。両方できればいいかなとは思って、走りもまだやりたいっていう気持ちがありました。でも高校1年目で両立するのが難しくなってしまって。競歩の方ではインターハイに出て1年目で入賞もできて、やっぱり全国で戦える競歩がすごい楽しく感じてこっち1本で頑張ろうと思ってやり始めました。駅伝でも都大路に出ているチームだったので駅伝の選手みんなから力をもらって練習していました。

――そのときはきっぱりと走りを諦めることができたのですか

 そうですね。走りの方では、中学でも県大会に行くのが精いっぱいだったので。競歩では1年目でインターハイに出ることができてほんとに嬉しかったです。

――大学女子の競歩の強豪校だと、日本女子体育大学や国士舘大学、または関西の大学などがありますが、なぜ早大を選ばれたのでしょうか

 関東の中で女子の競歩の選手は国士舘とかにたくさんいらっしゃると思うんですけど、全カレとかで上位入賞する選手はこの大学にいるっていうのはなくて。男子だったら東洋大学にすごく強い競歩の選手が集まっているんですけど、女子はまだ各県にばらばらしているところがあるので、だったらこの大学に入ったら強くなれるとかっていうのはなくて、どこに行っても自分次第なのかなと思いました。高校でもメニュー自体はほとんど1人でやっていたので1人で練習することへの不安とかもありませんでした。

――長野からの上京ということで環境が大きく変わったと思いますが

 高校3年間は同じ長野県だったんですけど家からは通える距離じゃなくて、駅伝部のみんなと先生の家に住んでいました。女子10人以上で1つのお家に住んでいて、その3年間があったので親元を離れて寂しいとかはそんなにありませんでした。でも高校の時は一緒に過ごす人がいたので、上京して最初のうちはちょっと寂しかったです。高校時代は先生の奥さんとか先生がすごく近くにいて支えてもらって、頼れていたんですけど、大学はほんとに1人なのでそこが全然違うなと思います。

――競走部は女子寮がありませんが、練習面での苦労はありますか

 朝練習は男子以外は女子は各自なので自分で家の周りでやっています。高校のときは決められていたのでそれに流されてやっていればよかったんですけど、自分でしっかりとやらないといけなくてそこが大学だなと思います。

――入学して1年間過ごしてみていかがですか

 1年目は環境の変化で寂しかったりとかあったんですけど、2年目になってから思いっきり競技ができる環境に、親とかの支援もあっておかしてもらっているのがすごい幸せなことだから、しっかり自分で考えて自己管理をして頑張ろうっていうプラスの方向に考えられるようになりました。そこは少し高校よりも自立してできてるなと思います。

――後輩が入ってきて心境に変化は

 女子の後輩が4人入ってきて自分が先輩になったんだって、すごく早いなって思って。小山(佳奈、スポ1=神奈川・橘)とか1年生なのに全国の舞台で優勝とかしているのを見てほんとに刺激をもらっています。

――レベルの高い周りの選手に刺激を受けますか

 リオ五輪にも出られた野澤さん(啓佑、平24スポ卒=現ミズノ)とかも練習によく来てくださって短距離のハードルの選手とかを教えてくださっていて。同じくリオに出られた加藤さん(修也、スポ4=静岡・浜名)もいらっしゃり、世界で戦っている選手が近くにいてくださって、私も世界で戦いたいなって思っているのですごく勉強させてもらっています。

――ルーキーイヤーの昨年は、関カレ、全カレ、世界ジュニアなどで実績を積み重ねてこられましたが、振り返って評価するといかがですか

 1年目で初めて海外を経験させてもらえて、世界ジュニアで8位入賞できたのもすごく大きな経験だったなと思います。でもやっぱり高校の3年間の積み上げもあっての1年目の結果だったと思うので、大学に入って2、3年目がすごく大事でまだまだこれからかなと思っています。

――3月の日本学生20キロ競歩大会では自己記録・早大記録を更新しました。しかしながらユニバーシアードには届きませんでした。この大会に心残りはありますか、また得たものはありますか

 20kmは全然学生の中でも戦えなくて。もうジュニアではなくて、世界で戦うにはユニバーシアードとかも20キロになるので、まだまだ20キロの力が足りないなと痛感しました。

――大学ではどんな勉強をされているのですか

 スポーツ科学部なので自分の競歩に生かせるような勉強をしたいなと思っていて。競歩のフォームとかについてどうやったらもっと速くなれるかとか、科学的な面から勉強できていると思います。

――部員日記を拝見しました。マネージャーブロックの大貫杏さん(人2=東京・駒場)と仲が良いのですね。休みの日に遊びに行かれたりするのですか

 土日の練習が午前中なので、それが終わった後にお昼を食べに行ったりします。あと平日の練習の帰り自転車できているので一緒に帰ったりとかもします。

――走るのが苦手だとか

 競歩を始めたら全然走れなくなって(笑)。たぶん浮いちゃいけない競技なので跳べなくなってきちゃったんです。ハードルが全然跳べなくて、去年の4年生の主将の方がTAをされていたんですけど、全然できなくて恥ずかしかったです(笑)。さっきもダウンはジョグをしていたんですけど、礒先生(繁雄監督、昭58教卒=栃木・大田原)に「お前歩いてないで走れよ」って冗談ですけど言われて。やっぱ全然跳べてないんだなと思いました(笑)。

――最近はまっていることはありますか

 陸上になっちゃうんですけど、冬から筋トレを始めて。いままでは高校とかもそんなにがつがつ筋トレとかやってなくて、長距離選手だからそこまで鍛えちゃいけないんじゃないかっていう考えがあったんです。でも合宿とかで教えてもらったりして、全然筋力が足りないんだって分かって冬からすごい筋トレ頑張ってて。なんかそんなことしかないんですけど、最近はちょっと筋トレが楽しくなってきました(笑)。

「目標は五輪選手」

――自分の強みは何だと思われますか

 一つ決めたことへの執着心というか、一つ決めたことをやり続けるところがあると思います。

――逆に足りないなと感じる部分はありますか

 足りないことだらけで。駄目な試合とかはマイナスなことしか考えられなくて、切り替えがぱっとできないところがあります。ちょっときつくて離れたりしたら、もうそこからずるずるいっちゃうし。切り替えのできる選手になりたいです。逆に世界ジュニアがそうだったんですけど、ほんとに楽しい試合はずっと楽しいです。

――入学してからも試合でしっかりと結果を残されていると思うのですが、その要因というのは自分で何だと考えられますか

 達成できていないことは多いし、まだまだだとは思うんですけど、エンジを着たレースで表彰台には立てているのは、将来五輪に出て戦いたいっていう目標があって。その大きい目標があるのでたぶんどの試合でも気持ちとしては安定していられるのかなと思います。

――大学4年間における最終的な目標は

 大学最後のレースくらいが東京五輪の選考レースなので、1番の大きい目標はそこで五輪の代表に選出されるような結果を出すことです。

――いつ頃から五輪に出たいなと思うようになりましたか

 中学のときから五輪には憧れていました。高橋尚子選手とかテレビでよく見ていて、そのときは走っていたのですごい憧れで。競歩を始めてからも競歩でもこんな選手が五輪に出てこういう結果を出してるんだって知っていったら、自分もという気持ちになりました。

――では、全カレでの目標は

 優勝です。暑い中になるのでいまの大学のレベル的にも、自己ベストに近いか20秒ぐらい遅いぐらいが優勝タイムになるかなと思っているので、暑い中でどれだけ粘れるかなと思っています。

――最後に、早大の一員として部にどう貢献していきたいですか

 すごく刺激をもらっている部分が大きいんですけど、私も学年が上がって先輩になっていくのでしっかり対校戦で1点でも多くチームに貢献したいと思います。また普段の練習からお互いに刺激し合って良い雰囲気を作っていければなと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 吉村早莉)

最後にガッツポーズをしていただきました!

◆溝口友己歩(みぞぐち・ゆきほ)

1997(平9)年12月6日生まれ。163センチ。長野東高校出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000mW22分45秒57。1万mW:46分19秒49。10kmW:46分54秒。20kmW:1時間36分43秒。これまでさまざまな大会で結果を残してきた溝口選手。レースのときには、ご両親にもらったお守りと妹さんが作ってくれたお守りをユニフォームの中につけているそうです。家族や周りからの応援を力に変えて、ますます活躍する溝口選手に期待です。