悔しさの残る東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)から4カ月。雪辱を誓う長距離ブロックに、宍倉健浩(スポ1=東京・早実)と黒田賢(スポ1=東京・早実)の早実コンビが加わった。同じ陸上部出身の2人は、高校時代ぶつかり合いながら共に成長してきた。場所を早大競走部に変え、2人はこれからどのような道を歩んでいくのだろうか。
※この取材は5月18日に行われたものです。
「2011年の箱根を見て、ワセダの競走部に憧れを抱いた」(黒田)
終始笑顔で質問に答えてくれた黒田
――もう5月ですが、新生活には慣れましたか
宍倉 だいぶ慣れてきました。寮の雰囲気にも慣れてきて、寮の仕事もスムーズにこなせるようになってきたかなと思います。
黒田 もともと1人暮らしみたいな感じだったので寮とかで生活するのは慣れていたんですけど、いろいろ当番とか1年生の仕事が多くて、やっと慣れてきたかなという感じです。
――大学の授業はいかがですか
宍倉 自分のやりたい授業を選んでできるので、好きなことができているのかなと思っています。
黒田 スポーツ科学部は自分の一番興味があって選んだところだったので、(宍倉選手と)一緒で興味あることが出来ているのでだいぶ充実していると思います。
――先ほどもおっしゃっていましたが、寮での当番が大変だと思いますが具体的に大変なこととは
宍倉 仕事量が(笑)。朝4時に起きてそこから掃除をして、朝練もあって部活があって夕掃除や食事の準備、消灯準備があって。1日ずっと仕事がある感じで。1番大変なのがひとつミスるとやり直しがあって、次の日もやらなきゃいけなくなってしまうので緊張感があります。1日ずっと気を張ってなければいけないというのが疲れますね。
黒田 宍倉と大体似たようなことなんですけど当番が。ルールが決まっている以上はしっかりとこなさなければいけないので、そこはミスしてはいけないです。マニュアルの量も多かったりして、覚えるのも大変だったなっていうのはあります。
――逆に寮生活で楽しかったことはありますか
黒田 寮生活といっていいかわかりませんが、陸上競技という共通の趣味を持った人たちが集まっているので話も合うし、一緒にご飯とか何度か練習後に行っているのですごく楽しいなと思います。
――学年の雰囲気などいかがですか
宍倉 個性が強いというか。結果を出している人が多いのでそれぞれ自分の意志や意見を持っている人が多いので、そこの価値観の違いがあってうまくいかない部分もあるんですけど、それだから逆にぶつかり合っていい学年になっているのかなと思います。
黒田 実力差は学年の中でもいろいろあるんですけど、インターハイで優勝するレベルから、自己ベストが(学年トップの選手より)2分以上遅い人とかいるんですけど、実力差関係なく言いたいことが言い合えているのはいい雰囲気かなと思います。
――特に仲のいい選手とかいますか
黒田 一年生だと本郷(諒、商1=岡山城東)とかと仲いいですね。宍倉も早実なので結構しゃべったりするかなと思います。
宍倉 僕はA、B、Cとチームが分かれていて、Aチームが3人で吉田(匠、スポ1=京都・洛南)、渕田(拓臣、スポ1=京都・桂)と自分なんですけど。そこの二人が京都で一緒だったので二人でいつもくっついていて、僕もその横にいます。でも、割とみんなという感じですね。
――先輩とかで仲のいい選手はいますか
黒田 早実の先輩とかは結構話しますけど、基本的に後輩が先輩に話しかけてはいけないルールがあるので、こっちから馴れ馴れしくというよりかは、共通の趣味を持っている人とか同じことで悩んでいることで先輩が話しかけてくれることがあって、そのくらいですね。
宍倉 全体でみると馴れ馴れしくしてはいけないんですけど、でも中距離の飯島さん(陸斗、スポ2=茨城・緑岡)とは結構いろいろあって(笑)。言い方が変なんですけど、結構仲良くさせてもらっているかなという感じです。
――陸上の話に移ります。陸上を始めたきっかけを教えてください
黒田 小学3年生の時から始めたんですけど、小学校1、2年生のときから持久走があって。そのときからほとんど一番とかだったので「自分は足早いんだ。」と思って(笑)。専門的にやってみたいなと思って親に言って始めました。
宍倉 小学校にマラソン大会があって、小学校6年間中、5回小学校内のトップで。6年生のときに友達に誘われて、小学校の陸上のクラブに入ったというのがきっかけです。
――お二人はその前に別のスポーツはしていましたか
黒田 自分は2歳から水泳をしていて。6年生までずっとしていました。
宍倉 僕は小学校でサッカーをずっとやっていて。あとは、中学校に陸上部がなかったので中1でサッカー部入って、顧問ともめちゃって(笑)。そこからバスケ部でやっていました(笑)。
――中学時代、陸上はどこのチームで続けていたのですか
宍倉 小学校の陸上のクラブに交じって練習するというような感じで、週2日ぐらい自分で練習していました。
――お二人とも早実ですが、どういった理由で早実に入ろうと思ったんですか
黒田 僕は中学校の最後の方にあった合宿で、早実の顧問の北爪先生(貴志、平23スポ卒=東京・早実)の恩師がいるチームと合宿して、どこの高校に行きたいか聞かれて、まだ決まってなくて。でも「大学は早稲田大学に行きたいです。」と言ったらたまたまそういうつながりがあって、お話をいただきました。
宍倉 僕は実家が千葉県の君津市というところなんですけど、近くに陸上の強い高校がなくて。千葉県だと市立船橋や八千代松陰が強いんですけど、そこに始発で毎日通うか、自分で寮とかアパートに住むかという選択しかなくて。ずっと悩んでいたんですけど、市立船橋とか陸上は強いんですけど学力的に微妙だと思っていて。そのときに小学校の陸上クラブのコーチに早実を勧められました。「7年計画でワセダで箱根を走ろう」と言ってくださって、それでその計画に乗ったという感じです。
――早実から早大へ進学し、学生三大駅伝『三冠』メンバーである北爪先生に指導を受けていたと思いますが
黒田 2011年の箱根駅伝を見て、ワセダの競走部に憧れを抱いたので、(初めて会った時に)「8区の北爪さんだ!」という感じだったんですけど、入ってからは性格とかを分析してくれていて、悩んだときとかは親身になって話を聞いてくれて。精神的な面で助けていただきました。
宍倉 考え方がすごく似ていた部分があって。一緒に話をしたら自分の話をよく聞いてくれますし、それで意見が似ているため参考になる部分がたくさんあって。大学行くときも相談に乗ってくれて、感謝しています。
――高校時代の思い出はありますか
黒田 意見が食い違うことが多くて(笑)。1年生の時から喧嘩しているみたいな感じで(笑)。二人とも陸上に対して本気でやっているのでぶつかってしまう部分もあるんですけど。高3の夏合宿が一番とんでもなくもめちゃって(笑)本気でぶつかったからこそ、夏が明けたくらいから頑張っていこうって仲間意識とライバル意識とで相乗効果という感じで。高3の最後は雰囲気よくできたかなと思っています。
宍倉 高3の夏合宿はかなりもめて、いわゆる大喧嘩ですね(笑)。ただそれをきっかけに今までよくなかった雰囲気がミーティングとかもするようになって、雰囲気は改善されたと思います。
――3年間同じだったということで、それぞれ他己紹介をお願いします
黒田 宍倉は効率がいいというか。考え方がはっきりしているので、みんなに分かってもらいやすいのもありますし、カリスマ性もあると思ってて。上に立って物事を進めていくタイプだと思っています。
宍倉 お互いに言えることなんですけど、すごく負けず嫌いで。そのせいでもめたというのもあったんですけど。あとは自分の考えをすごく持っていて一回自分が考えたことをぶらさないので、僕が言っても聞いてくれないこともあって(笑)。けど自分の考えを持っていることはすごくいいことだと思っています。それと考えすぎなところもあります。楽天的に考えられないというか。
黒田 そうですね、間違いない(笑)。
「日の丸を背負いたい」(宍倉)
力強く自らのビジョンを語ってくれた宍倉
――大学に入ってからの話になります。最近の練習はどのようなことをされていますか
宍倉 僕は3000メートル+1600メートル+400メートルというメニューで。関カレ(関東学生対校選手権)が近いので強い練習で、3000メートルは8分30秒~35秒、1600が4分24と1周66秒ペースで。400メートルはフリーというメニューだったんですけど一緒にやったメンバーが光延さん(誠、スポ4=佐賀・鳥栖工)と新迫さん(志希、スポ2=広島・世羅)の関カレ5000メートルメンバーで。けっこうタイムとしては今までで1番きついメニューで最後の400メートルも出し切りました。
――高校の練習との変化はいかがですか
宍倉 高校時代は自分がチームでトップで引っ張ることも多く強いメニューを一緒にやるメンバーが少なかったので、今は引っ張ってもらったりしてハードなメニューをこなせています。
――黒田選手はいかがですか
黒田 僕は秋に関東駅伝があったんですけど、それ以降ケガをしてしまっていてやっと5月に入ってからポイント練習をしていて、きのうあたりから1000メートルを5本、3分ペースでできるようになって。
7月に初めてレースになると思うんですけど、それに向けて徐々に立ち上げていこうかなと思っています。
――黒田選手はケガをされていたということですが、宍倉選手の調子はいかがですか
宍倉 きのうの練習は自分の中でかなり調子よくて。400のラスト1本も54秒60台で帰ってこられたので、だいぶスピードも戻ってきました。(今季は)日体大記録会(日本体育大学長距離競技会)と法大記録会(法政大学競技会)と2本記録会を走っていて。日体大記録会ではラスト足が動かなくなってしまっていたのでそこを改善しようということで法大記録会に出たんですけど、ラスト2週800メートルを2分8秒で帰って来いと話をされていたのですが達成できませんでした。ラストスピードはなかったんですけどだんだん戻ってきて、関カレに向けてスパートの切り替えというのを意識して練習しているところです。
――練習の中で先輩から指摘されたことアドバイスなどありましたか
宍倉 僕は永山さん(博基、スポ3=鹿児島実)からで。永山さんは1、2年と関カレで5000メートルを走っていて、関カレではどういう展開でレースが進むのかとか雰囲気とかを一緒にジョグをしているときにされました。それを参考に自分も準備しようかなと思います。
黒田 走り方に癖があって、フォームの点で岡田望さん(商3=東京・国学院久我山)に教えてもらったりしています。
――宍倉選手は関東学生選手権に出場されるそうですが目標はありますか
宍倉 まず最低限自己ベストを出したいと思っています。まだ13分台を出したことがないので、13分メンバーに仲間入りするということが一つと、やっぱり出るからには得点を取ることに意味があると思っているので、入賞目指してやっていきたいと思います。
――出場を控えて今の心境は
宍倉 5000(メートル)のメンバーリスト見たときに、やっぱりレベルが高いなというのが正直な感想です。東海大や順大などの強い大学から箱根に出ている選手や、1年生で言えばインターハイ(総体)で優勝している選手が出てくるので、そういったメンバーと勝負するのが正直不安な部分ですね。ただ良い機会なので、挑戦していきたいなと思っています。
――黒田選手は宍倉選手から刺激を受けたりされますか
黒田 今僕は関カレの標準タイムには絡めないで差が開いてしまっているんですけど、そういう風に前線で戦っている高校時代からの仲間がいるので、焦りとかではないですけど危機感を持ちながらできるので、そこは刺激になっているかなと思います。
――黒田選手は次のレースの予定は決まっていますか
黒田 たぶん7月の世競技会になると思います。
――目標はありますか
黒田 レースが半年ぶりくらいなので、まず感覚を取り戻して、14分40から50秒で走れるようにしたいなとは思っています。
――お二人ともご自身の走りの強みは何だとお考えですか
宍倉 あんまり周りに影響されないで、揺さぶられたりしたときに上手く力を使わずに走るということですかね。一気にペースが上がっても徐々に追いついていくとか、逆にペースが一気に落ちたときにだんだん集団の前に行くとか、そういう力を使わない走りができるのかなと思っています。
黒田 これといって誇れるものが思い当たらないんですけど、唯一あるとすれば、ずっと小学校の頃からずっとフォームを気にしていて、効率の良いフォームときれいなフォームを目指してきました。今はだいぶ改善されてかなりきれいなフォームになっているかなと思っているので、そこは自信の持てるところだと思います。
――これから改善していきたい点はありますか
宍倉 僕はやっぱりラストスパートで勝ち切るというレースが今まで少ないというか、勝ち切れないことが多かったので、単純にスピードを上げるというのもそうなんですけど、やっぱり気持ちの部分で負けないようにしていきたいなと思っています。
黒田 揺さぶりとかペース変化に対応するのがすごく苦手なので、そこの余裕を持って色んなペースに対応できるような走りをできるようになりたいなと思います。
――他大で意識されている選手はいますか
黒田 駒大の神戸(駿介)が、同じ会場でレースをしていて高校1年生のときからライバル意識は持っていたので少し気になってはいますね。
宍倉 誰というのはいないんですけど、13分台を持っている選手とインターハイや国体(国民体育大会)で入賞している選手は自分より結果を出しているので、そこは負けたくないという気持ちはあります。
――尊敬している選手や目標としている選手はいますか
黒田 具体的に目標としている選手はいないんですけど、尊敬している選手では、1年くらい前にOBの竹澤健介(平21スポ卒=兵庫・報徳学園)さんと走る機会があって、その時に色々お話を伺って衝撃を受けたというか…ずっと高いレベルでやってきて自分の哲学を持っていらっしゃっていて。あの話を聞いてから1週間くらいは放心状態みたいな感じでした(笑)。すごい影響を受けていると思いますね。
宍倉 今はやっぱり永山(博基、スポ3=鹿児島実)さんです。1番身近にいるというのもそうなんですけど、大学1年の時の記録会の結果が似たりしているので、いま3年生になってユニバーシアードの標準を狙っていたりしてどんどんレベルが上がっていっているので同じように自分も成長していきたいなと思っています。
――今シーズンの目標は何ですか
黒田 5000メートルを14分20秒で走って、1万メートルとかの長い距離にも対応していきたいです。1万メートルは30分ギリくらいが目標ですね。
宍倉 僕は関カレで13分台を出して、まだわからないんですけどその後ホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)に出て日本のトップレベルの選手と一緒に走ってそこで刺激を受けたいと思っています。あとはその後の全カレ(日本学生対校選手権)にも出場してそこから三大駅伝につなげていきたいと思っています。
――大学4年間における長期的な目標はありますか
黒田 高校を卒業するときに、北爪先生から宍倉と黒田のタスキリレーが見たいと言われてすごくあぁ…って思って(笑)。4年間で、箱根駅伝でタスキをつないで結果を残せるようになれればいいなと思います。どっちかというと僕が頑張らなきゃいけないんですけど、2人でタスキをつなぎたいという気持ちが僕的にはありますね。
宍倉 自分はやっぱり日本代表というのが1番かっこいいなと思うので日の丸を背負いたいというのはあります。後は三大駅伝で区間賞を取って、チームにとってエースという存在でありたいなと思っています。
――ありがとうございました!
(取材・編集 石塚ひなの、平松史帆)
最後はお二人で『W』ポーズを作っていただきました!
◆黒田賢(くろだ・まさし)(※写真左)
1998(平10)年9月7日生まれ。169センチ。東京・早実出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分50秒92。終始笑顔で取材に答えてくれた黒田選手。宍倉選手によると誰よりも負けず嫌いとか。その内に秘めた闘志で、早大を背負う存在になることでしょう。
◆宍倉健浩(ししくら・たけひろ)(※写真右)
1998(平10)年6月19日生まれ。169センチ。東京・早実出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分04秒54。 まだあどけなさが残っていた印象でしたが、今後の話になるとまっすぐ前を見据えて語ってくれました。そこからは早大のエースになるんだという覚悟が。まずは、関カレでの活躍に期待です。