野本、最終ハードルで無念の転倒

陸上競技

 今年も天候に恵まれ行われた織田幹雄記念国際大会。100メートルでは東洋大の桐生祥秀が10秒04でゴールするなど、今年も多くの好記録が誕生した。早大からは、110メートル障害に野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)が出場。野本は3週間前の東京六大学対校大会で自己ベストを更新しており、好調なかたちでトラックシーズン入りをしている。そんな野本は今大会で、優勝とユニバーシアードの出場権の獲得に挑んだ。予選では追い風参考ながら自己記録を出すも、決勝では最後のハードリングに失敗し転倒。広島での野本の挑戦は、悔しい結果に終わった。

 予選での野本の走りは、先日からの調子の良さを感じさせた。スタートの合図に素早い反応を示すと、勢い良く前へと躍り出る。「強い追い風で走るのは苦手だった」という野本だが、今回はうまく追い風に乗って加速することができた。そのまま快調にハードルを1つ1つ乗り越え、3位でゴール。追い風参考ながらも、13秒68と自己ベストを0.12秒上回る好タイムをたたき出す。3着ながらもタイムで拾われ、無事にA決勝進出を決めた。

追い風参考記録ながら、予選から素晴らしい記録をたたき出した

 迎えた決勝。実力者が集いハイレベルな戦いが予想されたが、野本がひるむことは決してなかった。序盤から積極的にとばし、波に乗って先頭へと食らいついていく。9台目のハードルまでは、実業団で活躍する選手たちと互角の争いを繰り広げ、目標の優勝も射程範囲内に捉える。しかし、最後に野本を待ち構えていたハードルを越えることはできなかった。「上位を狙える位置にいたので、欲が出てしまった」(野本)。その欲が、これまで順調だった野本の足どりを狂わせたのだろう。転倒後ゴール手前でなかなか立ち上がることができず、やるせなさに打ちひしがれ倒れこむ野本。ここで全選手に追い抜かれ、一気に最下位へと転落する。最終的に22秒95でのフィニッシュとなった。

最終ハードルでの接触。それまでのレース展開が良かっただけに悔やまれる

 今回は芳しい結果を残すことはできなかったものの、この実戦ならではの苦い経験は、今後野本を成長させる原動力となるであろう。試合後野本は、「今まで競走部に貢献できなかったことや、迷惑をかけてしまったことを少しでも返していければ」と語った。野本の次のレースは、春季のヤマ場でもある関東学生対校選手権(関カレ)。昨年はケガで出場できなかったこともあり、ことしはそのリベンジが期待されよう。最終学年として迎える関カレに向けて、野本は再びスタートを切る。

(記事 藤岡小雪、写真 朝賀祐菜)

結果

▽男子グランプリ110メートル障害

予選

野本周成  13秒68(+2.6)(3着)

A決勝

野本周成  22秒95(+1.5)(8着)

コメント

――野本周成(スポ4=愛媛・八幡浜)

――六大学対校大会で自己記録を更新して以来の大会でしたが、具体的な目標はありましたか

目標は優勝することと、ユニバーシアード出場を決めることでした。

――午前中の予選では、追い風参考記録ながら自己記録を更新するタイムでした。手応えの方はどのように感じていましたか

今までは強い追い風で走るのは苦手だったのですが、追い風参考ながらも自己ベストを上回るタイムだったので手応えはありました。

――決勝では、最終ハードルまで先頭争いをしていましたが、それまでの心境は

後半勝負になると思っていましたので、スタートで先行して中盤ハードル間を刻みつつ(ハードル前の踏切が近くならないように)後半競るところで硬くならないことを意識していたのですが、8台目あたりで上位を狙える位置にいたので欲が出てしまい、ハードル間を刻むことができませんでした。

――最終ハードルで接触してしまった要因というのは何でしたか

最後の詰めが甘いというところですね。勝つという意思が弱かったところと僕自身の気持ちの弱さですね。ここは練習ではできない部分なのでいろいろなことを普段の生活の中で考えていくしかないと思います。

――野本選手は今シーズンで好調だと思いますが、シーズン前の冬季練習で意識したことなどはありますか

自分の弱さを理解した上で何が必要かを考えて去年の冬から練習を積んできたことが、今につながっていると思います。

――冬季練習で自分に何が必要か考えられたということですが、具体的に何を考えられて、どう実行に移されたのでしょうか

自分は強くないというところから始めました。簡単なことかも知れませんが強くなるためには単純に練習の量を増やさないといけません。今までよりも全体での練習の後の時間を多く取って、誰よりも競技場にいる、またあるときは誰よりも長くトレーニング室にいて体づくりをするといったように時間を費やすということを意識してやってきました。練習メニューも与えられたメニューをこなすだけではなく、自分で考えたメニューを監督、コーチの意見をもらいながら立てていくようにしていました。当たり前のことかも知れませんが能動的に動けるようになったというのは大きな変化だったと思います。

――関東インカレ(関東学生対校選手権)が迫ってきました。4年生としての関東インカレへの思い入れや、意気込みを教えてください

タイムよりも勝つことを意識してこれから練習していきます。今まで競走部に貢献できなかったことや迷惑をかけてしまったことを少しでも返していければいいかなと思います。