トラックアンドフィールド日本一を決する日本学生対校選手権(全カレ)。トラック優勝を目指す早大だが、初日から入賞ラッシュが訪れる。女子1万メートル競歩で溝口友己歩(スポ1=長野東)が3位で表彰台に立つと、女子走高跳の仲野春花(スポ2=福岡・中村学園女子)、男子1500メートルの齋藤雅英(スポ1=東京・早実)がそれぞれ優勝。さらに1日目の最終種目である男子1万メートルでは武田凜太郎(スポ4=東京・早実)と井戸浩貴(商4=兵庫・竜野)が日本人1、2位に輝く。関東学生対校選手権(関カレ)とのトラックの部『二冠』に向け、まずは幸先の良いスタートを切った。
(記事 平野紘揮)
★表彰台一番乗り!期待のルーキーが3位入賞
溝口はトップバッターとして勢いを作った
大会初日。早大勢の先陣を切ったのは、期待のルーキー溝口友己歩(スポ1=長野東)。関カレ女子1万メートル競歩優勝の実力通り、スタート直後から集団を抜け出し二番手を歩く。大会二連覇中の五藤伶奈(中部学院大)に引っ張られ、最初の1000メートルを4分28秒のハイペースで通過。しかし「2週間前に感じた足の不調により、練習でしっかり左足を使えなかった。フォームが少し崩れてしまった」と本人も振り返ったように、徐々にいつもの軽やかさが欠け始める。4000メートル手前で3位の選手に捕らえられると、しばらく並走するもその距離は次第に開いていった。その後は1周2分のペースを守りきり、3位でゴール。関カレに続く二冠とはならなかったが、見事表彰台に立った。7月に行われたU20の世界選手権でも8位入賞と、好成績を残し続けている溝口。数々の大舞台で得た経験と自信を糧に成長し続ける新星から目が離せない。
(記事 太田萌枝、写真 末満まろか)
★仲野春が優勝!関カレとの2冠を達成
自己記録を更新する1メートル81で優勝した仲野
女子走高跳決勝に姿を現したのは今季絶好調の仲野春花(スポ2=福岡・中村学園女子)。気温の高さや人数の多さを考慮した仲野は、試技数を減らすために、1メートル70からの登場となった。「試合では初めて」(仲野春)という170センチからのスタートだったが見事成功。そのまま1メートル78センチまでを難なく跳び、迎えた1メートル81センチ。「今までで一番集中したと言って良いくらい集中した」と語るように、無駄のない助走から洗練されたジャンプを披露し、なんと1回目で成功させる。その後の1メートル84センチでは失敗してしまったものの、試技数差で見事優勝を果たした。関カレでも同種目で優勝するなど勢いに乗る仲野。飛躍を遂げたことしは「一回一回の試合を大切にして臨めた」ことが大きいと語る。これからの秋シーズンの試合からも目が離せない。
(記事、写真 平野紘揮)
★全力のラストスパートで優勝
ラストの直線でトップに立った斎藤
「正直優勝したことが信じられません」。本人も想定外の結果を残したのは齋藤雅英(スポ1=東京・早実)。男子1500メートルに出場し、予選は混戦。着順で予選通過とはならなかったが、自己ベストを更新し決勝に進んだ。「入賞だけを目標にしていました」と振り返るように、本人は対校得点を取ることを考えていたようだ。そんな中、迎えた決勝レースはラスト300メートルまで牽制が続く展開。齋藤は冷静に先頭についていく走りで、ラスト200メートルからトップに躍り出た。思い切ったスパートが功を奏し、そのまま1着でゴール。見事優勝を果たした。そんな齋藤の次レースは1週間後に迫る早慶対抗競技会。ここでも積極的な走りでチームに貢献する姿が期待できそうだ。
(記事 朝賀祐菜、写真 大庭開)
★加藤、悔しさ残る6位入賞
リオ五輪後すぐの大会に臨んだ加藤
男子400メートルには、愛敬彰太郎(スポ4=三重・桑名)と8月のリオデジャネイロ五輪男子4×400メートルリレーでアンカーを務めたの加藤修也(スポ3=静岡・浜名)が出場した。各組1着もしくは2着以下タイム上位2名が決勝に進出することができる400メートル予選。愛敬は積極的なレースを展開したが組2着でゴール。惜しくも予選敗退となった。一方、2年ぶりの優勝を目指す加藤も僅差で組2着に。しかし、タイム順でプラスの枠に入り、決勝進出を決めた。迎えた決勝は2レーン。前半はインコースから落ち着いたレース運びをし、200メートル通過後からペースを切り替えた。ホームストレートに入り、持ち味のラストスパートで前を行くウォルシュ・ジュリアン(東洋大)らを追った。しかしラストで伸び切らずに6位でゴール。悔しさの残るレースとなったが、あすからの4×400メートルリレーでの活躍にも期待したい。
(記事 末満まろか、写真 朝賀祐菜)
★早大勢が日本人ワンツーフィニッシュ!駅伝へ向け弾みをつける
表彰台に立つ武田
早大からは井戸浩貴(商4=兵庫・竜野)、武田凜太郎(スポ4=東京・早実)が出場した男子1万メートル決勝。レースは序盤、ややスローペース気味の展開となる。2000メートル付近で2人は第2集団の前方に位置していたが、自分のペースを守った方が良いと判断した武田は5000メートル過ぎから徐々にピッチを上げ、それに井戸もついていく。8000メートル地点を過ぎると武田は集団から抜け出し、前を行く外国人選手を追った。井戸は武田から少し離れた4位集団で、スパートのタイミングを見計らう。武田はその後も追随を許さぬ走りを見せ3位でゴール。一方、残り1周時点で4位集団にいた井戸はジェフリ・ギチア(第一工業大)とのラストの一騎打ちを制することができず、惜しくも5位に。武田と3、4位フィニッシュは達成することができなかったものの、日本人ワンツーフィニッシュとなった。今回日本人トップ2の結果を残した早大であるが、「青学大や東洋大など出てきていない大学が出てきたら、どうなるのかというのを考えなければいけない」(井戸)と言うように、選手は冷静にレースの分析をしている。秋へ向けた戦いは、もう始まってきている。
(記事 鎌田理沙、写真 平野紘揮)
結果
▽男子100メートル
予選
須田隼人(スポ3=神奈川・市橘) 10秒42(-1.3)(3組1着)
橋元晃志(スポ4=鹿児島・川薩清修館)10秒63(-0.3)(4組3着)
準決勝
橋元晃志 10秒51(+0.5)(1組5着)
須田隼人 10秒34(+0.3)(2組2着)
▽男子400メートル
予選
加藤修也 46秒94(1組2着)
愛敬彰太郎 47秒37(3組3着)
決勝
加藤修也 47秒03(6位)
▽男子1500メートル
予選
齋藤雅英 3分47秒35(2組4着) 自己新記録
飯島陸斗 DNS
決勝
齋藤雅英 3分50秒01(1位)
▽男子1万メートル決勝
武田凜太郎 29分25秒95(3位)
井戸浩貴 29分46秒41(5位)
▽男子4×100メートルリレー予選
早大(竹吉-須田-橋元-根岸) 40秒08(4組3着)
▽男子ハンマー投予選
中川雄太(スポ4=近畿大和歌山) 58メートル09(21位)
▽女子400メートル予選
西村緋菜乃(スポ1=神奈川・相洋) 57秒92(3組7着)
▽女子1万メートル競歩決勝
溝口友己歩 48分26秒30(3位)
▽女子走高跳決勝
仲野春花 1メートル81(1位)自己新記録
コメント
井戸浩貴(商4=兵庫・竜野)
――今回の意気込みを教えてください
前評判にもあったように今回は青学大や東洋大がいないので、その中で日本人の争いをどうしていくかということでダブル入賞が目標だったので、そういう意気込みで挑みました。
――具体的なレースプランはありましたか
強い外国人選手が前に出ると思っていたので、そこは一旦置いておいて、日本人の集団でしっかり勝負ということを話していて、そのレースプラン通りに進められたのではないかと思います。
――終盤に4位争いでけん制し合っていましたが、どのようなことを考えていましたか
あそこまでいったら、400メートルを切って残り300メートルで(ペース)が上がったところで、(相手が勝つか自分が勝つか)どっちかだなと思っていたので、あとはもう仕掛けるタイミングだけでした。100メートル手前から仕掛けるのが自分では1番最後まで粘れるのではないかと思い、そのスパートをかけるだけの準備を残り200メートルで考えていました。
――最終的には競り負けてしまうという結果に終わりましたが、いかがですか
自信は持っていましたし、相手も思っていたより疲れているので絶対いけると思っていたんですけど、意外と相手も(力を)貯めていたので今回に関しては、自分の考えていたタイミングがずれていたのかと思います。残り400メートルで仕掛けた方が良かったのかなと。
――今回の良かった点や合宿から生かされた点はありましたか
粘りを出せるように、合宿ではしっかり走り込んで終えようということを自分に課していたので、凜太朗(武田、スポ4=東京・早実)にはついていけませんでしたが、日本人2位でしっかり粘りを出せたことは合宿の成果が出たと思います。
――早大で日本人1位、2位をとったことに対していかがですか
素直に安心しているんですが、欲をいえば(全体で)3、4番を取りたかったです。青学大や東洋大など出てきていない大学が出てきたら、どうなるのかというのを考えなければいけないと思っています。
――ゴール後に謝るようなポーズをしていましたが、それはどんな意図がありましたか
ラスト競っていたのに負けてしまったので、最後くらいかっこ良い姿を4年生として後輩の目の前で見せたかったというのとチームの得点に対しても申し訳なかったという気持ちで「ごめん」でした。
――今後の大会予定を教えてください
今後はどうなるか分からないのですが、とりあえず岩手の3次合宿に参加して、その中で調子がいかに上がるかで、駅伝につなげるかその前に1つ試合を出るかですね。当面は出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)に向けてです。
――出雲での目標を教えてください
去年は走りたかった6区で結果が出なかったというのがあるので、長い距離への適性をしっかり使って去年のリベンジをしっかりしたいです。
武田凜太郎(スポ4=東京・早実)
――きょうのレースプランを教えてください
前半はリラックスしていって、後半でどれだけ上げられるかということを課題にしてレースに臨みました。
――今回は集団を引っ張る場面が多かったですが
ペースが遅かったので、集団に合わせて走りを崩してしまうよりは、自分のペースを貫いたほうがいいと思ったので、そのようになりました。
――では集団を引っ張るのは、やりにくい部分などありませんでしたか
多少風は気になりましが、ラストがスプリント勝負になったら厳しいと思っていたので
――7000メートル過ぎに武田選手が3位集団から抜け出しましたが、タイミングなどはどう見極めたのでしょうか
何回も集団を引っぱる場面があり、そこで集団の選手の呼吸などを感じていて、今しかないと思いました。
――その後1人で走っていた時のお気持ちは
正直後ろはかなり気になりましたが、前に外国人選手が2人いましたので、それをしっかり追おうと思い、走りました。
――結果について、早大が日本人1位・2位に入ったことについては
強い大学の選手が出ていなかったので、最低限入賞することが目標だと僕たちも思っていましたし、監督からも言われていました。まずは合宿の成果、いままでやってきたことの成果を出すことができて良かったです。
――では、今後の予定とその目標を
またすぐに合宿がありますので、そこでしっかり足を作り直してから、学生三大駅伝で優勝目指して頑張りたいと思います。
齋藤雅英(スポ1=東京・早実)
――夏の練習について、練習では、スピード練習と長い距離の走り込みは、どちらがメインだったのでしょうか。
僕ら中距離は、今年夏合宿がなく、寮で1週間の集中練習期間がありました。そこで質の高い練習ができたと思います。
――具体的にはスピード練習だったのでしょうか。
はい。
――今後の駅伝については
僕は中距離ブロックなので、駅伝への関わりはほとんどありません。ただ、これから冬のシーズンで5000メートルを中心にやっていくので、そこで良いタイムが出て選考に絡めたら、挑戦していきたいと思っています。ただ、いまの時点で可能性は低いです。
――今回、夏の一週間の集中練習期間で得たものを、最大限生かせたレースでしたか
体力的にも、走りの技術的にも1週間の練習で大きく変わりました。その甲斐もあって、今日は、自分が思い描いたレースができました。
――プラスでの決勝進出でしたが、予選から決勝までの短い間に修正したこと、また、レース中はどんなことを考えて走っていましたか。
プラスでの決勝進出だったので、正直優勝は考えずに、入賞だけを目標にしていました。ラストで、本当に自分でも驚くような走りができて、正直優勝したことが信じられません。レース中は、とにかく前の位置にいることを意識していました。
――ラスト300メートルでペースアップをし、そのままゴールしましたが
予選で同じようにラストで出て、失速してしまったのですが、決勝では最後に差されてもいいから自分の力を出し切ろうと思ってスパートをかけました。そのまま、失速することなく優勝することができました。
――自己ベストも出ましたが、タイム的にはいかがでしたか。
正直記録的には満足はいっていません。これからもっと上げて行きたいと思います。
――今後の出場予定の試合があれば意気込みと一緒に教えてください。
来週に早慶戦で1500メートルがあるので、そこでしっかり結果を出していきたいと思います。タイムよりも、勝つことが大切な大会なので、チームとしても、個人としても、優勝することが目標です
仲野春花(スポ2=福岡・中村学園女子)
――優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちを聞かせてください
全カレ(日本学生対校選手権)優勝という目標がずっとあったので素直に嬉しいです。去年は試技数の差で負けてしまったので、今回同じことはできないなと思って、今までで一番集中したと言って良いくらい集中しました。ですが最後の試技の時には少し集中が切れちゃいました。
――調子はいかがでしたか
そうですね、全カレにピークを持ってこれるように調整してきたので良かったです。
――夏の練習の充実度は
学校の合宿には参加してないのですが、学連の練習などに参加させていただきました。普段やらない技術の部分をメインに臨んでいました。
――試技数的にもかなり少なくこなせている試合でしたが
人数も多く、暑かったので、なるべく試技数を減らしたいなと思っていました。公式練習の時に170センチが跳べていたので、試合では初めてでしたが170から挑戦しました。178センチで一度落としてしまったのですが、もう一回集中し直して181センチを跳べたという感じでした。
――ことしは関東学生対校選手権(関カレ)での優勝も含め、充実したシーズンとなったと思います。何か意識されていたことはありますか
勝ちきれなかった試合をことしは落とさないようにしていこうと意識していました。一回一回の試合を大切にして臨めたかなと思います。
――スタンドからはご両親も声を掛けられていましたが
大学に入ってから試合を見に来てくれていて、普段は声を掛けられるということはあまりなかったんですが(笑)。きょうなんかはスタンドから「リラックス!」と聞こえて(笑)。私がスタンドに行っているのも、アドバイスをもらうというよりは元気をもらいに行っている面があって、声を掛けてくれたのは力になりました。
――次の試合は
国体があるので、秋の10月までにまた技術を磨いていきたいと思います。
溝口友己歩(スポ1=長野東)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
レースの2週間前くらいから足の調子が少し悪くて、そこに不安が残ってしまったことを後悔しています。
――足の不調はレースに影響しましたか
レース中に痛みは感じていませんでしたが、ここ2週間の練習でいつもと違う感覚でしっかり左足を使えていなかったので、フォームが少し崩れてしまったかなと思います。
――足の不調を抱えてのレースとなりましたが、それを考慮してレースプランは立てられたのですか
1位だった五藤さん(伶奈、中部学院大)が速いのはわかっていたので、この状態でどこまで付いていけるかという感じでした。やっぱり最初の1000メートルからすごく速くて、私の通過もいままでで一番速いタイムだったのですがまだまだ力不足だなと思いました。
――暑い中のレースとなりましたが、影響はありましたか
夏合宿もずっと涼しいところでやらせていただいていたので、久しぶりの暑さで少し体力を消耗してしまったなと思います。
――きょうのレースで良かった点はありましたか
最初の1000メートルを4分28秒くらいと、自分にとっても速いタイムで入れたこと、最低限の結果を残せたことはよかったなと思います。
――7月のU20の世界選手権では8位入賞の結果を残されましたが、レースはいかかでしたか
海外のレースは二度目でしたが、一度目よりも自分らしくできて、海外で自己ベストを出せたというのはすごく自信になりました。
――世界選手権で得たもので、今大会に生かせたことはありましたか
海外の選手は後半が強い、というのは二度の大会通じて感じました。中国の選手などは最初はアップのように入って、中盤から後半にかけてのスピードアップがすごくてそこに全然対応できなかったので、長い距離をやる上で中盤から後半というのを大事にしてきました。
――次のレースの予定を教えてください
10月の国民体育大会(国体)です。
――そこに向けての意気込みをお願いします
5000メートル競歩への出場で、スピードが大切になってくると思います。私はスピードを出すのがあまり得意ではないのですが、そこに向けてしっかりスピードを付けていけたらいいなと思っています。