悲願のトラック優勝を達成した関東学生対校選手権(関カレ)から2週間。今回の日本体育大学長距離競技会には、関カレに出走したメンバーを含め、長距離の主力陣が複数エントリーした。約2年半ぶりの1万メートルに挑戦した鈴木洋平(スポ4=愛媛・新居浜西)が自己ベストを更新すると、5000メートでも石田康幸(商3=静岡・浜松日体)が高校以来の自己新記録で走りきる。タイム的には低調した選手もいたが、「派手な記録はなかったが、収穫があった2日間だったのではないかと思う」(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)と、手応えをつかむ記録会になった様子だ。
1日目には鈴木洋が1年生の秋以来の1万メートルに出場。前回の同記録会で5000メートル13分台をたたき出した鈴木洋は、この日も好調を維持しながら試合に臨んだという。スタート直後から先頭が外国人選手と設楽悠太(Honda)らで形成され、その後ろについた鈴木洋だったが、2000メートルの通過タイムが5分40秒であることを確認すると「この集団でいくのは少し厳しい」と、冷静なレース判断をする。渡邉利典(GMO ATHELETES)に引っ張られるかたちで第二集団で歩を進めたが、4000メートル手前で渡邉が後退すると一人で前を追う展開となる。風も吹き、難しいコンディションではあったものの、そこからフィニッシュまでのほとんどを一人でレースメイクした鈴木洋。自己記録を大幅に更新する29分19秒76で走りきり、学生では組トップでゴールした。
『おしていける力』を相楽監督から認められた鈴木洋
翌日の5000メートルには、大木皓太(スポ1=千葉・成田)や岡田望(商2=東京・国学院久我山)、今井開智(スポ4=神奈川・桐光学園)など関カレに出走したメンバーや、今季自己記録を伸ばした西田稜(政経2=東京・早大学院)らがまず姿を見せた。大木が組2着でフィニッシュしまずまずの走りを見せたが、全体的にタイムは伸び悩み気味。エンジに袖を通した経験のある選手も多かっただけに、次戦では修正が求められる。注目の石田康、安井雄一(スポ3=千葉・市船橋)は最終組の1つ前の組に出場した。石田康が最後まで粘り切り自己ベストを更新したが、安井は後半に失速。「自己ベストを狙っていたが、それにはほど遠い結果になってしまったので悔しい」(安井)と唇をかんだ。しかし、安井の持ち味である前半から積極的に前でレースを進めるというスタイルは、本人の中で再確認されたようだ。
スピード練習の期間が短いながらも自己記録を更新した石田康
大きな視点から見ればけして満足のいく結果とは言えない。しかし、悪コンディションの中、鈴木洋が単独走でもペースを刻む走りを見せたことや、直前までハーフマラソンの練習をしていた石田康がトラックで好タイムをマークしたことはプラス要素だ。春先にはなかなか選手ごとの調子が合わないこともあり、「記録についてはチャレンジさせる機会を逃してしまっている部分があった」と相楽監督は振り返る。「次の試合までしばらく空く。しっかりトレーニングをして(5000メートル)13分台、(1万メートル)28分台を1人でも多く増やして夏合宿へ入っていけたら」(相楽監督)。きょう見えた課題や収穫を踏まえ、残りのトラックシーズンを良いかたちで締めくくることができれば、鍛錬の夏の充実度は増してくるはずだ。
(記事 平野紘揮、写真 平野紘揮、太田萌枝)
結果
▽男子5000メートル
大木皓太(スポ1=千葉・成田) 14分31秒06(23組2着)自己新記録
岡田望(商2=東京・国学院久我山) 14分55秒86(23組18着)
今井開智(スポ4=神奈川・桐光学園) 14分46秒02(26組20着)
西田稜(政経2=東京・早大学院) 14分53秒84(26組21着)
石田康幸(商3=静岡・浜松日体) 14分16秒29(29組16着)自己新記録
安井雄一(スポ3=千葉・市船橋) 14分34秒03(29組19着)
太田智樹(スポ1=静岡・浜松日体) DNS
佐藤淳(スポ4=愛知・明和) DNS
車田颯(スポ2=福島・学法石川) DNS
▽男子1万メートル
鈴木洋平(スポ4=愛媛・新居浜西) 29分19秒76(9組4着)自己新記録
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コメント
相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)
――今回の記録会の総括をお願いします
関東学生対校選手権(関カレ)に出場したメンバーについては、少し調整の遅れていた安井(雄一、スポ3=千葉・市船橋)や石田(康幸、商3=静岡・浜松日体)には刺激を入れるという意味でも出させまして、トレーニングがしっかりと積めていなかった中で石田は自己ベストで走ってくれたので、そこは及第点かなと思います。1日目では、鈴木(洋平、スポ4=愛媛・新居浜西)の状態が良かったので1万メートルで記録を狙わせてあげたかったのですが、思ったよりコンディションが良くなかったですね。ですが自己ベストを更新してくれて手応えを得られた感じもありますし、中盤は全て自分でレースを作っていて、一人でもおしていける力があることも確認できました。派手な記録はなかったですが、収穫があった2日間だったのではないかと思います。
――春シーズンでは、今のところ3人が13分台を記録しましたが
春の合宿が順調にいった割に、数名がシーズン前に体調を崩したり足を痛めたりしていた中で、関カレは最低限の結果が出たかなと思いますが、記録についてはチャレンジさせる機会を逃してしまっている部分がありました。次の試合までしばらく空くので、しっかりトレーニングをして(5000メートル)13分台、(1万メートル)28分台を1人でも多く増やして夏合宿へ入っていけたらと思います。
――春合宿、そして春シーズンを経て成長した選手は
やはり鈴木でしょうね。故障がちだったのですが、トレーニングがしっかり積めるようになってからは僕も正直あそこまで走るとは思ってなかったくらい5000メートルでも1万メートルでもかたちにしてくれました。チームにも良い勢いを与えてくれている代表のような選手です。
――関カレで選手選考の決め手になったものは何だったのでしょうか
やはり標準記録を突破している選手は優先的に使いました。また、順位を争うレースですから、記録にプラスして勝負できる選手というのを選びました。
――次のレース予定は
月末の記録会、それからホクレンチャレンジディスタンスになると思います。また、ことしは男鹿駅伝という大会にも出場する予定です。駅伝の経験が乏しい選手に、そこで経験を積んでもらおうと考えています。
――いま駅伝というお話も出ましたが、今季の駅伝について意気込みを教えてください
チームの目標として、学生三大駅伝全てで3位以内に入り、そのうち一つは優勝しようというのが目標になっています。今のところ、どの学校を見ても青山学院さんや東洋さん、そして駒澤さんと、いわゆる三強と呼ばれているところはそれぞれ強いという印象がありますし、それ以外にも力を付けている大学がたくさんあり、厳しいなと思うところもあります。しっかり目標を達成できるよう、きっちりトラックシーズンを締めて合宿を迎えられればと思います。
鈴木洋平(スポ4=愛媛・新居浜西)
――今回は久々の1万メートルになったと思いますが、意気込みなどは
レースの展開次第でしたが、とりあえず全カレ(日本学生対校選手権)標準の28分55秒を目標に臨もうと思っていました。
――実際に久しぶりの1万メートルを走り終えて、いかがですか
一人で走る場面が多かったのでキツかったですが、久しぶりにしてはあまり長く感じなかったというか、しっかり楽しめたかなと思います。
――調子が良いと伺っていましたが、レースを終えていかがですか
動きは良かったですね。ですが(2000メートルを)5分40秒で入って、そこで少し前の集団でいくのが厳しいなと思ってしまって。そこで我慢しないと28分台は出せないと思うので、そこは次の7月のレースで修正したいと思います。
――今回の記録は自己ベストとなりますが
記録は狙っていたものがあっただけ悔しいですが、全カレB標準を切れたということで、最低限の結果は得られたかなと思います。また、学生トップでゴールできて、最後しっかり勝ちきれたというのは今後の収穫になるかと思います。
――中盤では一人でレースを進める場面が続きましたが、振り返っていかがですか
中盤キツかったところもありました。周りの人の声援がやはり僕の背中を押してくれたかなと思います。
――今回は風の強いレースとなりました
ホームの直線を走る時には風を感じたんですが、条件はみんな一緒ですし、途中で記録は難しいかなと思ったので勝負に専念しようと思い頑張りました。
――次のレース予定を教えてください
秋田で行われる駅伝に出場してから、ホクレンチャレンジディスタンスに参加しようと自分で考えています。ホクレンの1万メートルでは最低限28分55秒を狙いつつ、そこからは自分のテンションでいけるところまでタイムを削っていけたらなと。やはり組トップを取れるように頑張っていきたいと思います。
石田康幸(商3=静岡・浜松日体)
――この大会はどのような位置付けで臨まれましたか
ずっと関カレのハーフマラソンに向けて練習していたので、1回5000メートルに出てスピードをいれて動きにキレを戻すいう位置付けで出場しました
――目標タイムなどはありましたか
目標は最高で13分台で、最低でも14分10切りでいきたいなと思っていました。
――レースプランなどはありましたか
5000メートルを大学1年生以来走っていなかったのでまずは8分20に近いタイムで3000メートルを入って、粘ってラストを上げたいと考えていました。
――試合を振り返っていかがですか
3000メートルの集団の通過が予想よりも遅くて8分28秒ぐらいだったのですが、あまりに速くなかったわりに余裕が持てていなくて、後半でも上手くいかない走りになってしまいました。
――関カレのハーフマラソンについてお伺いします。試合を振り返ってみていかがですか
関カレのハーフマラソンは8位入賞という目標のなかで10位だったので、やはり勝負弱さというかカベというのを少し感じました。1つ良いきっかけになったと言えばなったのですが、もう1つ足りないなというのを実感する大会になりました。
――関カレに向けてのハーフマラソンの練習からトラックの練習へと切り替える難しさはありましたか
ハーフマラソンは疲労が抜けるのに時間がかかるので、疲労を抜いてそこからスピードを入れるというふうにやりました。実際には1、2回のスピード練習だけで、それではきょうみたいに13分台を狙うレースではまだまだ足りないのかなと感じました。
――このレースで収穫点や課題点は見つかりましたか
収穫としては、高校以来の自己ベストが出たことが最低限ですが良かったことです。課題としては速いスピードで上手く足が回転できていないなというのが今回感じたので、しっかりとスピードに慣れてホクレンチャレンジディスタンスでは5000メートルに出るか1万メートルに出るのか分かりませんが、13分台、28分台を目指していきたいと思います。
――次戦のレースとその試合へ向けて一言お願いします
7月の初めにある男鹿駅伝に出場します。駅伝を自分はまだ走っていないので、ここで駅伝という感覚をつかもうと思います。
安井雄一(スポ3=千葉・市船橋)
――きょうのレースに向けての目標はありましたか
関カレであまり良い走りができなくて、そこでの課題を改善して臨んだつもりでしたがあまり良い結果が出ませんでした。あわよくば自己ベストを狙っていましたが、それにはほど遠い結果になってしまったので悔しいなと思っています。
――いまお話にもあがりましたが、関カレは改めて振り返ってみていかがでしたか
出るからには入賞するという気持ちで臨みましたが、早々に(先頭から)離れてしまって。マラソンを言い訳にしてはいけないですが、マラソンが終わってから練習が積めていなかったのが一番の原因だと思っているので、もっとしっかり練習を積んで挑まなければいけなかったなとすごく反省しています。
――マラソンに向けた練習をされたと思いますが、その練習で春以降に生かされていることはありますか
マラソンに取り組んだことでスタミナにはすごく自信がつきましたが、マラソンが終わってから足を痛めてしまった期間でスタミナが落ちてしまったのは残念でした。でも、長い距離に関してはとても自信になりました。
――きょうのレースの良かった点と課題を教えてください
高校から意識して行っていた積極的に前でレースをするというスタイルを、関カレでもきょうのレースでも、もう一度初心に戻って貫けたのは良かったと思います。ただ、最初いけても後半落ちすぎてしまったのでまだ練習不足だなと思っています。
――次のレースの予定と、それに向けた意気込みをお願いします
次はまだ未定な部分もありますが、ホクレン(ホクレンディスタンスチャレンジ)が大きな試合になると思います。いま僕は3年生の中でも足を引っ張ってしまっていて。4年生のみなさんが良い結果を出していて、3年生も元気を出していかなければと思っているので、ホクレンでは必ず自己ベストを出して駅伝シーズンに向けてしっかり良い流れを作っていきたいなと思います。