【特集】関カレ直前ルーキー特集『NEW STEP』金井直

陸上競技

 早大がハードル王国と化す。昨年入学した古谷拓夢(スポ2=神奈川・相洋)に続き、ことしもハードル部門に期待の新星が現れた。金井直(スポ1=神奈川・市橘)、古谷に次ぐ高校歴代2位の記録を有する実力者だ。入学早々、4月末には織田幹雄記念国際大会でエンジデビュー。次なる大会、関東学生対校選手権大会(関カレ)でも上位入賞が期待されている。そんな金井に関カレへの意気込みと今後の展望を伺った。

※この取材は4月20日に行われたものです。

「1年生としてできることをやれるように」

真剣な表情で質問に答える金井

――大学生活には慣れてきましたか

 学業の面もそうですし、部活動の雰囲気ですとか、一番大きく変わったのは寮生活の部分なんですが1カ月ここで過ごさせていただいて、まだまだ至らぬ部分もあるのですが、先輩からいろんな話を聞いて少しずつ慣れてくるところは慣れてきています。でも、まだまだ寮のこととか競走部のこととか、大学のことでまだできていないなと思うところはあると思うので、しっかり1年生としてできることをやれるようになっていって、それらができるようになった上で、もう少し自分のための時間を作りつつやっていけたらなと思っています。

――高校では実家暮らしだったのでしょうか

 はい。実家でした。

――当番制はきつく感じたりしませんか

 少し慣れない部分があるのですが、どちらにせよ1年生としてやるべきことですし、できて当たり前のことですし、掃除であったり食事のこと、あとは先輩との接し方とか、できて当たり前のことなので、あまり悲観せずにやるべきことの一つとして捉えられればと思っています。

――実家から寮に持ってきたものは

 洋服系は練習着も含めて結構持ってきましたし、あとは、この間やっと余裕ができたので漫画を持ってきました。まだ読んだりはしていないんですけど。あとは冷蔵庫とかテレビとか、パーソナルスペースなので自分で使うものは持って来ています。

――どのような漫画をお読みになられているのですか

 「ワンパンマン」という漫画なんですけど(笑)。あまり集めたりはしないんですけど、読ませていただいています。

――漫画は多くの種類をお持ちなのでしょうか

 あまり普段から読む方ではないのですが、少し自分の暇をつぶせるものがあればと思って実家から持ってきたものなので。

――趣味は何ですか

 これだ、というものはないのですが結構、買い物が好きですね。あまり買ったりはしないのですがお店を見て回るのが好きです。

――最近どこかへ行かれたりしましたか

 はい。入間のアウトレットモールに行きました。同期たちと行きましたね。

――マイブームは

 いまは時間のある時に「ダイヤのエース」というアニメを見ています。野球の部活動の話なのですが見ていて自分のモチベーションが上がっていくのでいろんな意味で楽しんでいます。

「ずっと背中を追っていた先輩」

――では、ここから陸上競技関連の質問をさせていただきます。まず、陸上競技を始めたきっかけを教えてください

 僕はもともと野球をやっていまして、中学に進学するときに硬式野球のクラブチームに入りました。そういうわけで中学では野球部には入らずに兄が所属していたこと、体力づくりをするという目的で陸上競技部に入りました。でも、その時にリレーを走らせていただいて陸上競技の楽しさを徐々に感じるようになり、のめり込んでいきました。そして、陸上競技を本格的に始めたというのがきっかけです。

――110メートル障害という競技を選んだのはなぜですか

 中学1年生の冬頃に顧問の先生に四種競技をやろうという話をいただいて、ハードルや高跳びの練習をしているときにハードルが思っているよりも楽しくて、というかうまくいったということもあって、もともと自分は足が速いほうではなくて100メートルでは川崎市で決勝にいけるかいけないかぐらいだったのですがハードルを始めて決勝に残れるようになり、県大会にも出場できるようになり、ハードルにのめり込んでいきました。

――高校3年間で伸び悩んだり、挫折といった経験はありましたか

 高校2年生の時に出場した日本ユース(日本ジュニア選手権)という大会で初めて同期のハードルの選手に負けて予選落ちをしました。その時に自分はまだまだなと実感して、そこから日本一というのを目指すようになりました。そこでの負けが挫折というか、いまとなってはその出来事があってのいまなので。その時はうまくいかなかったなという思い出があります。

――早大に進学を決めた理由を教えてください

 さまざまな理由があるのですが、いろんな方の話を聞いたり、一度、早大の練習に参加させていただいた時に、先輩の練習に対する姿勢ですとか取り組み方、考え方というのに感動というか、素晴らしいなという風に思いました。またハードルブロックの先輩方も素晴らしい方が多くいらっしゃったので、この方たちの下で自分が強くなるために頑張りたいなと思ったのでこの早稲田大学を選ばさせていただきました。

――古谷拓夢選手が在籍していることもやはり大きかったですか

 同じ神奈川の先輩でずっと背中を追っていた先輩なので古谷さんの存在は大きかったですね。

――高校時代から古谷選手のことは意識されていたのでしょうか

 そうですね。ずっと目標にしている先輩で、一度は勝とうという風に高校2年の時に挑んではいたのですが勝たせていただけずに、まだ勝ててはいないです。古谷さんは一人の人間としても、先輩としても、競技者としても尊敬できる先輩なのでいつかは勝てるように、いつかはというか勝てるように頑張りたいと思っています。

――古谷選手と一緒に練習をするようになり感じたことはありますか

 本当に普段の生活や練習の場面では、一人の競技者として尊敬できる部分がたくさんあって古谷選手を見ていて自分なんかまだまだだなと感じることがあります。また普段、生活をしているときの人との接し方ですとか発する言葉なども素晴らしいなと思わせていただいています。でも、ふざけるときはふざけていて、そのキャラもまた素晴らしくて、また周りの人を寄せ付けるような雰囲気を持った方です。

――早大には古谷選手や加藤修也(スポ3=静岡・浜名)選手などのハイレベルな選手が多く在籍しています。そんな環境に身を置いてみて感じることはありますか

 もちろん練習の中で、一緒のメニューをさせていただいてすごいなと感じる部分はあります。走りの練習だけでも感じることもありますし、ずっと一緒に生活をさせていただいているということで私生活のところでも、学ばせていただくことが多いです。それはもうそのお二人の先輩以外の方もそうですし同期にも強い選手がたくさんいるのでそういう人から、何気ない話からでも教わることは多いです。

――ライバルとして見ている選手はいますか

 もちろん高校時に競っていた選手もそうですが、彼らに負けないように頑張っていこうという気持ちもあります。一番は古谷さんの存在が大きくて古谷さんが僕のことをライバルとして見ているかどうかわからないですが、そう思ってくれるように頑張りたいと思っています。いつか勝ちたい存在である古谷さんに競技の面でも人間性の面でも、古谷さんを目指して、というか古谷さんに勝ちたいと言っているからにはそれなりの努力をしていきたいと思っています。

世界の舞台へ

金井は織田記念でエンジデビュー

――ここからは話題を世界の舞台についてということに変えて質問させていただきたいと思います。現時点でその舞台を意識はしていますか

 そうですね。高校3年生の時にデカネ―ション2015という国別の大会に出場させていただいて、その大会は大学生の全カレ(日本学生対校選手権)の期間と被っていまして、僕が出場することになりました。その時に世界のトップ選手の方たちと走らせていただいて自分なんかまだまだなんだと感じましたし、一番はその景色を見て、もう一度ここで走りたい、走れるような選手になりたいという気持ちが強くなりました。まだまだいまの時点では全くかなわない世界の舞台ですが、いつかは基礎を積んでいってそこで走れるような選手に、まずは世界を目指せる選手になることが一番の目標です。

――ことしは世界ジュニア選手権が開催される年ですが

 まだ出場できるかどうかは決まっていなくて、これからの成績次第なので目の前のことをしっかりやって自分の実力を出して、結果を残していくことが重要かなと思っています。

――もし出場機会を得ることができたなら、どのような走りをしたいですか

 出場させていただくからには結果を求めなければならないでしょうし、世界の舞台というのを経験しておくということはとても重要なことなので自分の現状を見ながら、自分の目指せる一番高いところ、優勝やメダルなどの具体的な目標を立てるわけではないのですが、自分が目指せる一番高いところをしっかり目指していきたいと思っています。

――リオデジャネイロオリンピック(リオ五輪)も開催される年ですが

 まだまだ僕のタイム的、実力的には届くところではないと思うのでしっかりと目の前のことを積んでいった結果、オリンピックを目指せるような選手になれるように頑張りたいというのが正直なオリンピックに対する姿勢ではあります。

――2月末に台湾で行われたジュニア海外合宿に参加されてたと思うのですが、いかがでしたか

 そうですね。高校の同期のトップの選手と一緒に練習ができるのと、また場所が海外というのもあり少し違った環境、フレッシュな環境で専門的な練習もできました。僕とは違う種目の100メートルや400メートルで高校トップの選手や僕の一番の課題であるスプリントに長けた選手と走らせていただく機会もあって、とても良い経験、良い合宿になったと思います。

――その合宿には昨年の世界選手権に出場された平松祐司(筑波大)選手も参加されていたと思います。平松選手から得られたものはありましたか

 やっぱり、そういう選手はみなさん、自分の考え、ぶれない軸というものを持っていて、なおかつ、ここを目指すという目標も明確なので、そういう選手たちの先を見据えた姿勢が素晴らしいなと感じました。僕も大学に入って、自立した考え方ですとか自分でやっていかないといけないこととかが増えていくと思うので目標をどこに置いていて、そのために何をしなくてはいけないのかを自分で考えられるようにやっていくのが大切なのかなと。素晴らしい方々を見てそう感じます。

――ここからはこれから出場されるであろう大会、織田幹雄記念国際大会(織田記念)や関カレなどに焦点を当ててお聞きしたいと思います。まず、今月末に行われる織田記念には出場されますか

 はい。出場はする予定です。

――どういう位置づけで織田記念には臨まれますか

 もちろん春先の大会として結果をしっかり出したいと思っている大会の一つでもありますし、また高校時代も含めて、初めてシニアの方たちがメインである大会で走らせていただく機会でもあるので自分の走りをしていくのが一番の目標です。いま、まだハードルの技術で少しずれている部分があるので、それまでに織田記念陸上を見据えた練習をしていって、その織田記念陸上が世界ジュニアの選考にも関わってくるので結果を残したい大会ではあります。

――競技においてご自身の課題は何だと考えていますか

 一番はやっぱりスプリントで。足の速さと言ってしまうと簡単なのですが走ることが僕はまだまだなので走力を上げて、それをハードルにつなげていくことです。それとハードルで言ったら、まだ動きが硬いところがあるので力を入れる場面でどこの部位に力を入れるのか、どう身体を動かしていくのか、などできていないことがあるので、そういった細かい課題も少しずつ克服していきたいなと思います。

――大学に入学してから新たに取り組んでいることはありますか

 高校時代からやっていなかったわけではないのですが、いろんな先輩からアドバイスをいただきながら、もう一度僕の中で走りの部分を見直しています。練習後に走りの面での僕の課題に対するドリルを行ったりだとかはするようにしています。

――織田記念の次に出場されるのは関カレだと思うのですが、どのようなイメージをお持ちでしょうか

 やっぱり、それぞれの大学が対校で競う大会なので自分の走りもそうですし、チームとしてまとまる大会でもあると思うので、そこがまた緊張感もありますし、先輩方の思いなどもしっかり理解して臨まないといけない大会だと思います。

――もし出場する権利を得られたとしたらどのくらいの記録を狙いたいですか

 まだ出場できると決まったわけではないです。先輩が3人いらっしゃるので、まずはその先輩方に勝ってというか枠争いの中を勝ち抜いて、そこは学年は関係ないと思うのでしっかり戦って、もし勝ち取れたら、もちろん結果を残さないといけない大会だとわかっているので自分の自己ベストはもちろん更新していくことが上位に行くための前提だと思っています。誰かに負けてもいいやという気持ちはないので、それなりに狙って行きたいと思っています。

――金井選手ご自身の競技における強みは何ですか

 強みと言えるかわからないのですが、僕はとてもハードルが好きなのでハードルに対していろいろ動画を見たりだとか、まだまだ大学生の先輩方のように具体的にスポーツ科学の視点から競技を見るということはできていないと思うのですが、自分の身体の動きを分析したりするのは好きな方なので、ハードルに対する姿勢、強いて言うならそこかなと思います。

――早大を去る頃にはどのような選手でありたいですか

 競技の面で言ったら、世界で戦えるような選手になるというのがとても大きな目標です。生半可な目標ではないとも思っているので、そのためにできることをやっていきたいというのと、やっぱりワセダにいるからにはワセダ人として人間性もしっかり成長させていくことが目標です。

――これまで取材をしてきた中で、金井選手はとても謙虚で真面目な方だなという印象を受けました

 そうですね。高校時代、陸上部の顧問の先生が競技の面だけではなく人間性の面も重要視していて、いろいろ教えてくださいました。その方から、いろんな指摘を受けたり怒られたりしていく中で自分の中で人間性というものが、競技をやっていく上でも、もちろん応援される選手というのが人間性の豊かな選手でもありますし、競技をやっていく上で、いろんな方々の応援は欠かせないものだと思うので、そういう面を含めて自分の気持ちとしても人間性は大事だなと思うようになりました。そういうきっかけがあります。

――その恩師の方とは頻繁に連絡を取り合ったりしているのでしょうか

 そうですね。大会や競技会があった日などに報告させていただいています。お世話になった方なので、そういった報告はしっかりするようにはしています。

――最後に、今シーズンの目標を教えてください

 走りの部分も含めて基礎がまだまだなのでしっかり基礎を固めていくことが土台としての目標です。その中で競技の中では世界ジュニア選手権がことしあるので、そこにしっかり出場できるように頑張って結果を残すことと13秒台を安定して出せるようになっていくことが、土台作りの結果にそういう道が見えてくると思うので、そこをしっかりやっていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 本田京太郎)

今季の意気込みを書いていただきました!

◆金井 直(かない・なお)

1997年(平9)6月4日生まれのA型。181センチ、72キロ。神奈川・市橘高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:110メートル障害13秒85。休日にはアニメや漫画をよく読むという金井選手。最近は『ダイヤのエース』というスポーツアニメを見て自身のモチベ―ションを高めているのだとか。そのアニメのように、これから『早大のエース』へとなれるでしょうか。