8月に行われる世界選手権北京大会(世界選手権)の選考レースを兼ねた日本選手権が新潟にて開催された。世界選手権には惜しくも手が届かなかった早大勢だが、学生だけでなく実業団の選手たちを相手に堂々としたレースを展開。なかでも古谷拓夢(スポ1=神奈川・相洋)が男子110メートル障害で2位に入るなど、成長を見せつけた。
★本領発揮で初の表彰台!
決死のラストスパートで銀メダルを獲得した古谷
男子110メートル障害には古谷拓夢(スポ1=神奈川・相洋)が出場。若干18歳ながら、日本最高峰であるこの舞台に立つのは2度目となる。すでに日本トップレベルの実力を誇る古谷だが、今月行われたアジア選手権では力を出し切れず予選落ち。世界のカベを痛感する結果となった。しかし、ここから立て直すのがスーパールーキーと言われるゆえん。予選では追い風の中自己ベストを更新し、ジュニア日本最高記録を塗り替えた。組1位で予選を突破し、迎えた決勝。他選手への警告により仕切り直された2度目のスタートで出遅れたものの、安定したハードリングで猛追を見せる。最後は首位争いに一気に食い込み、会場を沸かせた。結果は優勝した高山峻野(明大)と同タイムとなる13秒83だったものの、わずかな差で2位。この大会で自身初の表彰台に輝いた。これから大学生として初めての夏を迎える。合宿など多くの試練が待ち受けていることは間違いない。「ワセダから世界へ」。この言葉の体現者となるべく、さらなる飛躍を目指す。
(記事 杉田陵也、写真 戸田郁美)
★3選手が決勝の舞台へ!
共に入賞した出口(左)と田中主将
早大から4名もの選手が出場を果たした男子800メートル。実力者が集う大舞台で、エンジのランナーたちが大いに存在感を見せ付ける。大会2日目に行われた予選では、それぞれの選手が手応えを口にするレース運びを展開。特に1組で出走した田中言主将(スポ4=東京・早実)と出口翔(スポ4=東京・開成)はともに自己新記録を更新する快走で予選を通過した。また続く2組でも今季好調を維持する吉田貴洋(スポ4=和歌山・田辺)が、序盤からレースを引っ張る積極的な走りで同じく予選を通過。国内最高峰のレースのスタートラインに、3名の選手が名を連ねる快挙となった。迎えた決勝のレースは「周りがけん制しそうだったら、自分からいこうと思っていた」と話す出口が飛び出し、集団をけん引。田中と吉田は後方からスパートの機会をうかがった。レース中盤500メートルを過ぎ順位を落とし始めた出口と対照的に、田中はラスト200メートルで上位の選手を猛追。関東学生対校選手権(関カレ)を欠場し約2ヶ月ぶりの実戦ながら、強烈なスパートで早大勢トップの5位でゴールに飛び込んだ。決勝でのレースには各選手が悔しさをにじませたが、学生の中では他の追随を許さない層の厚さは圧倒的。次なる目標である日本学生対校選手権(全カレ)での表彰台独占も視野に、早大中距離陣の躍進は止まらない。
(記事 三井田雄一、写真 菅真衣子)
★平、今季2度目の13分台
今季2度目の13分台を記録した平
男子5000メートル決勝には早大から平和真(スポ3=愛知・豊川工)が出場。箱根後の故障で長らく試合からは遠ざかっていたが、今季2戦目となるこの大舞台で堂々たる走りを披露した。
「前の方で勝負できればと思っていた」という言葉通り、集団前方でレースを進める。先頭が入れ替わる中ペースは安定して刻まれ、平も集団から離れることなくついていく。レースが動いたのは4000メートルを過ぎたところ。村山紘太(旭化成)が一気にペースを上げ集団を崩しにかかる。平は第2集団で何とか前を追おうと粘るも徐々にほかの選手にかわされていく。しかしラストの1000メートルを2分45秒前後で走り切り、13分53秒64と今季2度目の13分台で大会を終えた。
一方、この春からプロランナーとしてアメリカで世界を目指すことに決めた大迫傑(平26卒=現ナイキ・オレゴン・プロジェクト)はラスト一周の鐘の合図とともに先頭に出る。スピードを強化して臨んだ今大会であったが、村山紘太に日本一を譲る結果となった。
(記事 戸田郁美、写真 和泉智也)
★OGも躍動!柴村が王座奪還
王座奪還を果たした柴村
向かい風という悪天候の中、女子100メートル障害決勝には紫村仁美(平25スポ卒=佐賀陸協)が出場。毎年、日本選手権においてしのぎを削っているライバル・木村文子(エディオン)は隣のレーンでの出走となった。0.01秒差のタイムで予選を通過した2人の優勝争いに注目が集まる。両者共に勢い良くスタートし、ここから激しい接戦が展開するかと思われた。しかし木村がハードルの1台目で足を引っ掛けると、2台目でまさかの転倒。失格という無念の結果に終わる。一方の紫村は、序盤の勢いは衰えるどころか、中盤以降さらに加速。他選手を寄せつけない圧倒的な実力で、同大会2年ぶりの優勝を果たした。レース後には笑顔を見せた紫村。世界選手権代表の座をほぼ確実に射止め、2大会連続出場の可能性が高まった。かねてから12秒台を目標としていた彼女だが、自己ベストは13秒02と、日本人初の大記録に期待が掛かる。今後も女子ハードル界をけん引するため、挑戦は続く。
(記事 菅真衣子、写真 杉田陵也)
結果
1日目
▽男子200メートル予選
橋元晃志(スポ3=鹿児島・川薩清修館) DNS
▽男子1500メートル予選
岡崎達郎OB 3分50秒12(2組5着)
▽女子走高跳決勝
仲野春花(スポ1=福岡・中村学園女) 1メートル70(11位)
▽女子棒高跳決勝
濱名愛OG 4メートル00(1位)
上原あずさ(教4=埼玉・不動岡) NM
2日目
▽男子100メートル予選
竹下裕希OB 10秒38(+0.2)(3組3着)
北村拓也(スポ4=広島皆実) 10秒65(+0.2)(3組5着)
九鬼巧OB 10秒42(+0.7)(5組3着)
江里口匡史OB DNS
▽男子400メートル予選
木村賢太(スポ4=大分・杵築) 46秒56(2組5着)
愛敬彰太郎(スポ3=三重・桑名) 46秒94(3組6着)
▽男子800メートル予選
出口翔 1分49秒35(1組2着) 自己新記録
田中言 1分49秒59(1組4着) 自己新記録
吉田貴洋 1分50秒26(2組2着)
伊澤賢人(スポ4=栃木) 1分51秒27(3組4着)
▽男子1万メートル決勝
佐々木寛文OB 29分55秒77(21位)
大迫傑OB DNS
▽男子110メートル障害予選
早川恭平OB 14秒23(+0.3)(1組7着)
古谷拓夢 13秒79(+0.4)(2組1着) 自己新記録、ジュニア日本新記録
▽男子400メートル障害予選
野澤啓佑OB 49秒76(1組1着)
▽男子棒高跳決勝
土井翔太OB 5メートル40(2位)
笹瀬弘樹OB NM
▽女子100メートル障害
予選
柴村仁美OG 13秒36(+0.6)(2組1着)
決勝
柴村仁美OG 13秒27(-0.2)(1位)
▽女子走幅跳決勝
岡山沙英子OG 6メートル21(+0.6)(1位)
内之倉由美(スポ1=鹿児島・甲南) 5メートル57(-0.3)(16位)
仲野春花 5メートル48(-0.1)(17位)
3日目
▽男子100メートル準決勝
竹下裕希OB 10秒62(-1.4)(2組5着)
九鬼巧OB 10秒75(-1.4)(2組6着)
▽男子800メートル決勝
田中言 1分51秒84(5位)
出口翔 1分53秒81(7位)
吉田貴洋 1分56秒15(8位)
▽男子5000メートル決勝
大迫傑OB 13分37秒72(2位)
竹澤健介OB 13分42秒57(9位)
平和真(スポ3=愛知・豊川工) 13分53秒64(25位)
八木勇樹OB 14分10秒96(36位)
▽男子110メートル障害決勝
古谷拓夢 13秒81(-1.4)(2位)
▽男子400メートル障害決勝
野澤啓佑OB 50秒72(5位)
▽男子やり投決勝
ディーン元気OB DNS
コメント
田中言主将(スポ4=東京・早実)
――5位入賞おめでとうございます。現在の率直なお気持ちはいかがですか
きょねんの(日本選手権)決勝で手応えをつかんでいたので、あわよくば3位、表彰台を狙っていたのですが、厳しかったなということを感じました。
――予選のレースを振り返って
11人と人数が多く、いつも通りの一番後ろから行くレースをするのが厳しいのはわかっていたので、中盤からいこうと思っていました。そこからが得意だった200(メートル)でつまずいてバランスを崩して、そこで駄目かなと思ったのですが、粘ることができました。2組、3組の結果で(タイムで)拾われたので、救われたかなと思います。
――自己ベストも更新されました
うれしい気持ちはありますが、自己ベストを出したのがきょねんの関カレ(関東学生対校選手権)の3本目だったので、更新しなければいけないタイムだったかなとも思います。うれしさもありますが、まだまだかなという感じですね。
――決勝のレースプランはありましたか
スローペースなら中盤から、予選と同じようなレースで、ハイペースなら一番後ろから拾っていって、最後に3番を目指そうと考えていました。
――早大から3人が決勝へ進出されましたが、レース前に何か話したりはしましたか
どちらかというときのうのレース後は伊澤(賢人、スポ4=栃木)を含め4人で喜んでいましたが、きょうはインカレのようなワセダという括りではなく個人で戦うので、レースプラン等を話し合ったりは特にしませんでした。一人の敵として、戦っていたという感じです。
――落ち着いた入りでしたが、後半にスパートされていました
いろんなことがあって準備不足だったのはわかっていたので、(体が)動かないのはわかっていてあのレースしか自分にはなかったです。ただやっぱり準備不足だったので、もう少し準備をできれば、キレのある走りはできたのかなと思います。
――静岡国際大会から少し間が空いての今大会でしたが
率直なところ今シーズンまだ2、3レース目だったのでレース感というのはないと言ってしまえばないのですが、もう4年目なのでそんなことを言ってられないですし、いろんな経験もしてきているので。体に染みついている部分もあるので、特に支障はなかったです。
――次のレース予定は
全カレ(日本学生対校選手権)か、その前に一本出るかどうかという感じですね。夏に練習を積めたら良いなと思います。
――夏や全カレへ向けての目標をお願いします
四年生、そして主将として迎える最後のインカレになるので、もちろんトラック優勝へ向けてやることはたくさんあると思います。春シーズンはケガ人が主力でかなり出ている一方で、(レースに)出ている人が頑張ってくれたというように良い点、悪い点それぞれあったと思います。今後は中距離も含めいかに戦力を揃えていくかが重要になると思います。中距離だけでなくて、短距離、中距離、長距離としっかり団結して、全カレトラック優勝へ向け頑張ります。
出口翔(スポ4=東京・開成)
――予選、決勝とレースを振り返っていかがでしたか
大学に入ってからの目標が日本選手権で決勝にいくことだったので、まず予選で出し切ろうと思って、しっかりピークを合わせました。予選の前は本当に絶好調で体が動く感じだったので、その通りのレースができたのかなと感じます。予選のレースは展開も完璧でしたし、タイムも1分49秒35ということで、自己ベストも更新して良いレースだったと思います。決勝に関しては、最初から周りがけん制しそうだったら自分からいこうと思っていたので、前に出たのは予定通りだったのですが、100メートル越えたあたりから体が重くなってきてしまいました。付いていければ付いていきたかったのですが駄目で、ずるずると落ちていってしまったので、少し悔いの残るレースだったかなと思います。
――日本選手権では初の決勝で入賞されました
きょねん日本選手権に出て予選10番目くらいで駄目で、ことしこそはと思って、本当にことし(決勝へ)行けたので良かったなと思います。
――関カレときのうの予選、立て続けに自己ベストを更新されていますが好調の要因は
ケガをほとんどしていないことかなと思います。ケガをせずにしっかり練習ができていて、それでも大学3年までは自己ベストが出ずにいて結構苦しんでいたのですが、その分の反動で今シーズン自己ベストが出ているのかなという感じです。
――関カレ後、順調に練習は積めましたか
関カレが終わって一週間後から教育実習があったので、あんまり練習はできていなかったのですが、それでも日本選手権があるということで先生方に配慮していただいて、多少は練習をさせてもらっていたので体が休まったのかなと思います。
――決勝レース前にワセダ勢で何かお話はされましたか
特には何も話さなかったです(笑)。レース前はみんな集中しているので、意外とそんなに話さないかもしれないです(笑)。
――秋以降のレースに向けて改善していきたい点や目標はありますか
全カレが最後の試合になると思います。僕自身12年間陸上をやっていて最後の一番大きい大会になると思うので、そこに向けて夏にしっかり練習して頑張っていきたいなと思います。
――全カレで中距離陣、また個人の目標はありますか
きょうの日本選手権に残った学生がワセダの3人と、近畿大学の田中智則なので、やっぱり全カレではワセダでワンツースリーを狙えるくらいの位置にはいると思うので、そこは狙っていきたいと思います。僕自身も表彰台に乗れるようにするのが目標です。
吉田貴洋(スポ4=和歌山・田辺)
――今大会を振り返っていかがでしたか
予選では先に出口(翔、スポ4=東京・開成)が決勝進出を決めたということで、自分も元々決勝に行きたいという気持ちを持っていたのですが、その姿を見てより(その気持ちが)強くなりました。なんとしても(決勝に)行こうという思いがそのまま前半からの力になって、いつもの自分とは違うレースをしたのですが、最終的に2着でゴールして決勝に行けました。ただこの決勝が日本選手権の結果なのでそこで8位というところで、せっかくの日本一を決める戦いで決勝に行けたのに、なぜ自分はこんなふがいないレースをしてなんの爪跡も残せなかったということが悔しくて、レースを引っ張った出口もタイムは悪いとはいえしっかり最後まで走って、僕は終始後ろにいてそのままずるずるいってせっかくの舞台なのに本当にもったいなかったなという反省ばかり今はしていますね。
――今大会に当たってどのような目標、ビジョンを持って臨まれましたか
やはりとりあえずは決勝に行くこと、それだけですね。まずは決勝に行ってその後のことはそれから考えようと。そういう目標で行きました。
――先ほど予選の走りをいつものご自身と違う走りと表現されましたが、具体的にどのような点なのでしょうか
ずっと引っ張っていたので。いつもなら2、3番手に着くレースをするのですが、けっこうけん制すると思ったので、けん制してぶつかって体力を消耗してずるずる行くなら風を受けてでも先頭に出て自分の走りをしようと思いました。予選は自分の走りをした結果、レースとしてはいつもとは異なった展開になったという感じですね。
――前の組で出口選手、田中言主将(スポ4=東京・早実)が自己新記録を出したことについて刺激などはありましたか
かなり刺激がありました。
――決勝に当たって意識した点や、きょうのレースプランなどは事前にどのように考えていたのでしょうか
きのうの引っ張って行く形で負けなかったので、臆さずに前半からいってフロントランをしてでもことしは位置取りよりも自分の走りをするというのを目指して走っていました。忠実にそこを守って自分の走りに合わせて周りは見ないでというつもりで行きました。
――決勝にはワセダの選手が3名残りましたが、そのことに関しては
そうですね、やはりすごいなとは思います。また伊澤(賢人、スポ4=栃木)も行けなかったとはいえ日本選手権に4人出場するという層の厚さもあって、僕はスポーツ推薦なのですがみんなから刺激をもらえて本当にありがたいなと思います。
――決勝は思い描いていた展開とは異なるものとなってしまいましたが、改めて振り返られていかがですか
合わせ切れなかったですね。自分の走りをした結果あのようなかたちだったので。きょうは駄目だったということであまり考え過ぎずに、また次の試合に向けて頑張ろうと思います。
――最後に今大会での収穫と課題を教えてください
決勝は駄目だったのですけれど、予選では決勝に残れるような走りができたので良かったかなと。また自分から引っ張っていくフロントランでも最後まで頑張れるんだ、という新しいレース展開を手に入れたので、そこはこれからの試合で絶対に役に立つなという風に思いました。決勝は駄目だったのですが、今考えている決勝の悪い点はおおよそつかんでいるので、そこはこれからの試合において役立つなと思います。非常に良い経験だったので、次の全カレなどでしっかりそこの課題を克服して冷静に挑もうと思います。
平和真(スポ3=愛知・豊川工)
――きょうのレースを振り返って
レベルの高い大会なのでそれなりの準備をしてきたのですが、それであの結果だったのは、あれがいまの実力だったのかなと思います。
――東京箱根間往復大学駅伝後に故障がありましたが、ここまでどのように調整してきましたか
3月まで走れなくて、4月から走り始めてちょうど3カ月ぐらいだったのですが、日体(日体大記録会)で一本走れて調子は良かったです。練習は3カ月と短かったですが、良い練習ができていたと思います。
――全日本大学駅伝対校選手権関東学生陸上競技連盟推薦校選考会(全日本予選)は出場されませんでしたが
自分も全日本予選に出るようなら出られる準備はしていたのですが、監督(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)含め仲間や先輩方が日本選手権に向けて調整してくれればいいと言ってくれたので、一週間後のこの大会に合わせてきました。
――今大会の目標はどのように考えていましたか
世界選手権に絡めるような力はないので大舞台を経験するためにも、前の方で勝負できればと思っていました。
――ではレースプラン通りに走れたということですか
そうですね、びびらずに行けたと思います。
――有力選手が多く出場していましたが、意識はしましたか
タイムはあまり気にしないですし、僕もタイム以上の力は持っていると思っているので、それなりに勝負ができると思っていました。強さがある人たちが前に出ていたので、そのような強さが自分にはまだないと思いました。
――ラスト1周でペースが上がりました
前でゴールした選手はだいぶレベルが高いので、それについて行くためにはまだまだやることがたくさんあると感じています。
――次のレース予定は
ホクレン(ディスタンスチャレンジ)で一本だけ走って合宿に行くかたちをとります。相楽監督と相談して5000(メートル)か1万(メートル)に出るか決めます。