5位という悔しい結果で終えた東京箱根間往復大学駅伝(箱根)から1カ月。新チームの初戦となる神奈川マラソンでは、井戸浩貴(商2=兵庫・竜野)が序盤から先頭集団を引っ張り初優勝。大学初となるタイトルを勝ち取った。また石田康幸(商1=静岡・浜松日体)も自己ベストを記録。さらなる飛躍の2年目へ向け好発進に成功した。
前回の箱根では3区を任され、しっかりと役目を果たした井戸。この日も売りである抜群の安定感は健在だった。海からの強い風が選手たちの体力を奪う難コースで行われた今大会。井戸は他の選手をうまく使って風を避けるなど、柔軟な対応を見せて自分のペースを守り抜いた。終盤、先頭集団から抜け出すと、優勝争いは前回の箱根10区・区間2位の安藤悠哉(青学大)との一騎打ちに。両者一歩も譲らない激しいレースを繰り広げるも、最後の直線で井戸が抜け出し、そのまま一気にゴールを駆け抜けた。井戸は1時間3分27秒で見事初優勝。自身初のタイトルを勝ち取った。
笑顔でゴールテープを切った井戸
直前練習に参加するも、調子が上がらずにメンバー入りがかなわなかった初の箱根。あの悔しい思いから1カ月、一段成長した石田康の姿がそこにはあった。一つの目標としてきた自身2度目のハーフマラソン。「しっかりと練習を積めてきた」と、自信を持ってこの大会に臨んだ。石田康は目標通り上位を走る選手に食らいつき、好位置を守り抜く。そして最後まで粘りの走りを貫き通し、結果は22位。自己ベストを30秒以上上回る、1時間5分15秒でレースを終えた。自己記録更新も石田康は「主力の先輩方との差を少しでも詰められるように練習していきたい」と、その目線はすでに先を見据えていた。
自己記録を更新した石田康
箱根後、最初のレースを良いかたちで終えた井戸と石田康。しかし、「(優勝は)なるべくしてなった」(井戸)、「65分を切れなかったことは悔しいこと」(石田康)と、自らの結果をそれぞれ冷静に受け止めていた。2人が掲げる次の目標は、ユニバーシアードの出場権がかかる立川ハーフ。各大学の主力が集うこの大会は、自身の実力を測るとともに、新チームの今後を占う大事な指標となる。この2人の活躍が新チーム躍進への起爆剤となるのか。ことし果たすことのできなかった箱根総合優勝に向け、まずはロードシーズンをチーム一丸となって乗り越えたい。
(記事 杉田陵也、写真 高畑幸、井上莉沙)
大学初タイトルを獲得した井戸
結果
▽ハーフマラソンの部(大学男子)
井戸浩貴(商2=兵庫・竜野) 1時間3分27秒(1位)
石田康幸(商1=静岡・浜松日体) 1時間5分15秒(22位)自己新記録
佐藤淳(スポ2=愛知・明和) 1時間6分33秒(44位)
谷口耕一郎(スポ1=福岡大大濠) 1時間7分43秒(71位)自己新記録
柄本勲明(スポ2=早稲田佐賀) 1時間7分44秒(72位)
河合祐哉(スポ1=愛知・時習館) 1時間7分56秒(76位)自己新記録
藤澤怜欧(スポ3=神奈川・多摩) 1時間9分52秒(110位)
コメント
井戸浩貴(商2=兵庫・竜野)
――きょうのレースを振り返っていかがでしたか
きょうは相楽さん(豊長距離コーチ、平15人卒=福島・安積)からもしっかり優勝を狙って勝てるレースをするように言われていたので、実際に勝てましたし、それが素直に良かったと思います。
――優勝は狙っていたのでしょうか
優勝を狙っていました。
――ゴールテープを切る瞬間はどんなお気持ちでしたか
最後まで安藤(悠哉、青学大)と一対一になっちゃったので、ちょっと気になっていたのですけど、角を曲がって勝ったと思いました。素直に「よし!」という感じでした。
――強風でしたが、その点についてはいかがでしたか
途中向かい風が強くて自分が先頭に出る場面もあったのですけど、極力避けて他の選手に頼るようにして、向かい風のために抜けないように気をつけました。
――目標タイムやレースプランは事前に考えていましたか
できれば63分を切りたかったのですけど、なかなか難しいコースなので出なかったというのは悔しかったです。レースプランは周りの状況を見ながら最後は突き放すというプランだったので、予定通りということで良い試合になりました。
――東京箱根間往復大学駅伝(箱根)後の練習はいかがでしたか
ちょっと疲れが残っているという感覚はありましたが、先々週くらいから順調に戻してこれましたし、きょうも良い状態で臨めたので、なるべくしてなった結果だとは思っています。
――次回出場予定の試合について教えてください
次は立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)に出ます。ユニバーシアードの選考になっているのですが、そこ(立川ハーフ)に合わせられないときょう優勝しても、日本代表になれなかったら意味がないので、そこに気をつけてまた一からやっていこうと思います。
――最後に今シーズンの目標について教えてください
とりあえずは3月にある立川ハーフで日本代表を勝ち取れるようにそういう練習をするということです。またきょねんは(1万メートルが)28分台に入りましたが5000(メートル)がまだ14分台なので、5000(メートル)で13分台に入ることと、しっかり1万(メートル)で28分50秒切りは目指したいところです。
石田康幸(商1=静岡・浜松日体)
――箱根のメンバー落ちを経験しての今回のレースだったと思いますが
箱根のメンバーを決める集中練習の前半で全く走れず、足の調子も悪くなってしまい、(エントリーメンバーから)外れてしまいました。本当に悔しかったのですが、そこは割り切って年末の漢祭りを始め今回の神奈川マラソン、立川ハーフに向けやるしかないという気持ちで切り替えていけました。しっかりと練習も積めていましたし、メンバーから外れたことに対する悔しさを糧にもっともっと強くなれるのではないかと思っています。
――ご自身にとって上尾シティマラソンが初のハーフマラソンでしたが、そこから見えてきた課題はありますか
最初のハーフ(マラソン)は、距離に対する力不足もありましたし、レース前から気持ちの面で負けていた部分もありました。今回は距離に対する不安を練習で徐々になくしていき、気持ちの面でも前半からいかないとちゃんと走れないというのが前回の上尾で分かっていたので、前半から前の方でレースをするというのを考えてできました。
――今回のレースプランはどのようにお考えだったのでしょうか
箱根が終わり一か月が経ち、練習を重ねた上での試合でした。3月に立川ハーフがあるのですが、そこで記録を狙うためにも前半から前の方でレースをしたいと考えて臨みました。
――自己ベスト更新となりましたが、いかがですか
今回のレースでしっかりと65分を切って64分台で走り、立川ハーフで63分台を出すというのが自分の中ではプランでした。自己ベストは更新できましたが、65分を切ることができなかったのは悔しいところではあります。そこをしっかりと反省して次のレースに生かしたいと思います。
――部内2位という結果をどのように受け止めていますか
部内2位ではあるのですが、ほとんどの主力がこの大会には出ていません。今回出場していた井戸さん(浩貴、商2=兵庫・竜野)には1分近く離されてしまっているので、主力の先輩方との差を少しでも詰めれるように練習していきたいです。
――きょうは風が強かったですが、レースへの影響はありましたか
海沿いのコースということで、曲がり角も多く、曲がったり折り返したりしたところで急に風が強くなってそこでペースが落ちることがありました。追い風でペースに乗るのですが、強い向かい風となったときにペースが落ちてしまいました。きついコンディションではありましたが、駅伝やロードレースでは想定されることなので、きょう優勝された井戸さんのようにそのような条件の中でもしっかり走れるようにやっていきたいと思います。
――立川ハーフへ向けて意気込みをお願いいたします
立川ハーフはユニバーシアードへの選考もかかっている大会なので、どの大学からも主力が出てくると思います。その中でどこまでくらいついていけるかというのが一つの鍵になってきます。自分の中で64分切って63分台でさらに自己ベストを更新したいというのがあります。この1カ月で更に距離を踏み、目標を達成し、トラックシーズンにつながる良い大会にしたいと思います。