注目の大会で九鬼主将が2位

陸上競技

 昨年、男子100メートルで10秒01という好タイムが出たことで話題となった織田幹雄記念国際(織田記念)がことしも開催された。ワセダからは九鬼巧主将(スポ4=和歌山北)や竹下裕希(スポ4=福岡大大濠)といった短距離の主力選手が出場。予選を経て行われたA決勝のメンバーは日本選手権の決勝とも違わない、そうそうたる顔ぶれ。そんな中、九鬼は見事2位に入り、ワセダのエースとして堂々たる結果を残した。

10秒2台の好記録をマークした九鬼主将

 記録が出やすい競技場ということで、日本人初の100メートル9秒台を期待し、多くの観客が訪れた今大会。会場は九鬼の出走するA決勝レース開始前から「雰囲気は良かった」(九鬼)と大いなる盛り上がりを見せていた。しかし、優勝の大本命と見られていた桐生祥秀(東洋大)の欠場が直前のアナウンスで告げられると会場は騒然。優勝争いが読めない混沌(こんとん)とした状況の中、スタートの号砲が鳴った。序盤から前に出たい九鬼は、低い姿勢から抜群のスタートを決める。さらに、持ち味のぐんぐん加速する力強い走りで、一時はトップに立つ。50メートル付近で隣のレーンの高瀬慧(富士通)にかわされてしまうも、最後まで崩れることなく自分の走りを貫き、価値ある2着。ワセダのエースとして、そして主将として、全てを背負う九鬼が大舞台で貫禄を示した。

竹下は2着と100分の2秒差だった

 織田記念には調子が悪い状況で臨んだ九鬼。試合前のアップのやり方を変えるなど、最善の方法を模索し、2位という好成績につなげた。「この大会がきっかけで上がっていける感じがある」と対応力の高さが導いた結果に充実感を漂わせた。
一方、竹下はタイムを狙いにいきながら、B決勝で4着と納得の走りとはならなかった。しかし、「(足の)挟み込む動作が遅れ気味となっていた」と具体的な課題は見つかっている。次戦の静岡国際は得意の200メートルに出場予定。「記録も順位も狙う」という意気込み通りの走りを見せてくれるだろう。

表彰台で笑顔を見せる九鬼

 九鬼や竹下などが出場したグランプリに先立って行われたノングランプリ100メートルでもワセダ勢は及第点の記録をマーク。月初めに開催された東京六大学対校よりチームの状況は確実に上向いている。リレー種目の早大新記録そして、学生新記録という大いなる目標へ、好スタートを切った短距離陣。ここから一気に加速していく。

(記事 石丸諒、写真 中澤佑輔)

結果

▽男子100メートル

予選

竹下裕希 10秒36(+2.4)(2組5着)

九鬼巧  10秒24(+2.6)(3組3着)

橋元晃志 12秒51(+2.6)(3組8着)

B決勝

竹下裕希 10秒43(+1.8)(4着)

A決勝

九鬼巧  10秒25(+0.7)(2位)

▽ノングランプリ100メートル

北村拓也(スポ3=広島皆実)   10秒48(+2.9)(2組3着)

須田隼人(スポ2=神奈川・市橘) 10秒49(+1.3)(1組2着)

永沼賢治(スポ3=大分舞鶴)   10秒71(+2.9)(2組6着)

コメント

九鬼巧主将(スポ4=和歌山北)

――2位という結果でしたがきょうのレースはいかがでしたか

六大(東京六大学対校大会)もそんなにぱっとせずに冬季からずっとやってきたことが出せずにもどかしい感じできてたんですけど、この大会も日本選手権っていうのをこの春のシーズンの大前提と置いていたので、そこに向けてのステップアップにできる試合にできたらなと思ってこっちに来ました。アップからすごく調子が悪くて良くないなあと思っていたんですけどいつもとは違うアップをしてみたりとか、臨機応変に対応してみたら動けてきて、予選でそこそこ走ることができました。A決勝にも残れるとはあまり思ってなかったんですけど残れたので、予選の修正をもう一回決勝でやろうと思って走ったら(10秒)25というタイムだったので良かったんじゃないかなと思います。

――タイムに関しては良かったというふうに捉えていいですか

はい、そうですね。

――沖縄で調整をされていたと思うんですけど、その効果はありましたか

沖縄ですべて調整したという感じではなかったので流れ的にずっと冬期からやってきたことを最後に仕上げてぱっときたので、そんなにがちがちに仕上げては来なかったです。僕の中でもすごく調子が良くてきょうは走れるなあという感じではなかったのでその中でも2台で走れたことは収穫だと思います。

――調子はあまりよくなかったということですか

本当にあまり上がってこないなあと思って不安なままここに来て走ったので。そういう中でこういう結果が出たので、今後のいい機会になるんじゃないかなと思います

――大会としても注目度が高かったと思いますが、そういう中で走られて会場の雰囲気はいかがでしたか

そうですね、きょねん桐生選手(祥秀、東洋大)が10秒01で走っていたので。でも自分の走りをとにかくするだけだったので周りの雰囲気はすごい良かったですけど、誰が誰がとかではなくてとにかく自分の走りをということだけを考えて走ったので、そんなに気にはしなかったです。

――ライバルの山縣亮太選手(慶大)と久しぶりに走って、勝利しましたがそれに関してはいかがですか

どうですかね(笑)。そんなに勝負しに来たとか、彼を意識していたとかではなく本当に自分の走りに集中して来たので。まあ彼も彼で課題が残ったと思いますけど、そんなに思うことはないです。

――きょうの1番の収穫は何でしょうか

調子が悪いままずるずる行かなかったっていうところですかね。何が良かったということではないんですけど、アップの仕方をちょっと変えてみたりしたのでそれがうまくはまったのかなあという感じです。この大会がきっかけでまたうまく関東学生対校選手権(関カレ)、日本選手権とポンポンっと上がっていけるかなあと感じさせられるようなレースだったのでそこが良かったかなと思います。

――短距離全体としてはきょうの大会はいかがでしたか

ノングランプリもつくってもらってワセダから3名出られて、うちとしてはやっぱりリレーの学生記録だったりとか早大記録の更新っていうのを代が変わってからずっと言い続けてきたことだったので、そう言う意味でこのグランプリで個々の結果を出そうというところでした。個々の良かったところ、悪かったところがはっきりと出てきたと思うので、それを関カレに向けて各々で修正できていったらいいなあと思います。

――次の試合は関カレになりますか

そうですね。ゴールデングランプリ東京にもしかしたらみたいなところはあるんですけど、もし出られたとしてもそんなに調整はせずに行くので。やっぱり関カレがチームとして大事な大きな試合なので、そこに向けてやっていきます

竹下裕希(スポ4=福岡大大堀)

――きょうのレースはいかがでしたか

レベルが高い中でうまく自分のレースを組立てようとして、タイムを狙っていく試合だったんですけど、これからに向けてのいい課題が見つかったレースになったかなと思います。

――スタートは良かったように見えたのですが、課題というのはどういうところでしょうか

いや、そうでもないです。スタートは飛び出しだけじゃないので。まだまだスタートからのつなぎの部分が全然うまくいっていなくて、(足の)挟み込みの動作がちょっと遅れ気味になっているのでそこを改善していきたいです。

――試合前の調子は良かったのですか

まあまあですね。

――六大から変えた部分はありましたか

六大はちょっとから回りした展開になってしまったのでしっかり地面をつかんでいく意識を持っていたんですけど、逆に意識が強すぎて足が流れる結果になってしまいました。

――静岡国際への意気込みを教えてください

ことし初戦の200メートルなんですけど、今回は記録も順位もいまいちだったので静岡国際では記録も順位もどっちも狙っていきたいと思います。