ディーン、五輪参加A標準記録突破!

陸上競技

 ロンドン五輪代表選手選考会を兼ねた第46回織田幹雄記念国際大会が29日、広島広域公園陸上競技場で行われた。日本トップレベルの選手が集結した今大会、ワセダからは4人の選手が出場。それぞれに好記録が生まれたが、一際目立った活躍を見せたのはディーン元気(スポ3=兵庫・市尼崎)。やり投の五輪参加A標準記録を突破する84メートル28をマークした。紫村仁美(スポ4=福岡・筑紫女学園)も100メートル障害で五輪参加B標準記録を突破するなど、早大競走部からの五輪出場が現実味を帯びてきている

★念願の五輪参加A標準記録突破!

ディーンは日本歴代2位のビッグスローでA標準突破

 何か起きそうな雰囲気はあった。やり投の前に行われていた競技で好記録が続出。チームメイトたちの好パフォーマンスにも影響を受けたであろうディーンは、1投目で勢い余ってラインぎりぎりに倒れこむほどの豪快な投てきを見せた。起き上がるとすぐに好記録を確信し、手を高く挙げてスタンドへガッツポーズ。そして、電光掲示板に表示された記録は79メートル60の自己記録を大きく上回る84メートル28。「出すつもりで来た」というロンドン五輪参加A標準記録の82メートル00をいきなり突破する見事な投てきを披露した。その後は試技をパスし続け、外国人選手に記録を抜かれたために6投目に登場したが、1投目を超える記録は出ずに2位で試技終了。84メートル28は村上幸史(スズキ浜松AC)の自己記録をも上回る現役日本最高、そして日本歴代2位の学生新記録だ。「次は日本選手権でしっかり結果を出して、五輪に向けて準備するだけ」。父の故郷で行われる五輪へ、大きく近づいた。

(記事、写真 浜雄介)

★紫村も五輪参加標準記録を破る好走

予選に続き自己新の快走を見せた紫村。こちらはB標準突破

 ことしついに最終学年を迎える紫村は100メートル障害に出場。「あまり良いとは思っていなかった」という状態にもかかわらず、予選から13秒34の好タイムを記録する。組2着に入り確実に決勝進出を決めると同時に、自己ベストとワセダ記録を塗り替えた。迎えた決勝では、13秒15と再び自己新記録をマーク。ディーンら仲間の活躍に「負けていられない」と奮起した紫村が五輪参加B標準記録をも突破した。飛躍の要因を「みんなの先頭に立たなきゃいけないという思い」だと語った紫村。関東学生対校選手権(関カレ)でもさらなる好走を見せてくれるに違いない。

(記事 菅原理紗子、写真 浜雄介)

★100メートルで自己新!

九鬼は先日から好調を維持。タイムは「出来すぎ(笑)」

 今季早くも200メ—トルで自己新記録を出していた九鬼巧(スポ2=和歌山北)。この日も100メートル予選で自己記録10秒34を更新する快走で、五輪参加B標準記録に0.01秒と迫る10秒25をたたき出した。決勝では予選のタイムを越えられなかったものの、日本代表のメンバーが大勢いる中で経験を積むことができた。本人も「10秒25というタイムは出来すぎ」と語るが、このタイムは九鬼の次へのステップに繋がっただろう。同組で10秒08をマークし、五輪参加A標準記録を突破した慶大の山縣亮太と同様に学生短距離界の主役の1人となりそうだ。シーズンはまだ始まったばかり。今後も九鬼の走りから目が離せない。

(記事 西脇敦史、写真 浜雄介)

★憧れの「エンジ」をまとい

本調子ではなかったが、ハイレベルなレースを経験した北村

 北村拓也(スポ1=広島皆実)の地元、広島で行われた今大会。大学入学後初のレースで、数々の有力者が集う中100メートルに出場した。高校3年時の冬に負ったケガの影響で、2カ月ほど練習を積めなかったという北村。そのため自己ベスト更新はならなかったものの、「(調子は)徐々に上がってきている」と確かな手応えを感じたようだ。今回初めてワセダのユニホームに袖を通し、「とても光栄に思っています」と語る一方で、「もっと頑張らなければいけない」と決意を新たにしていた。

(記事 野宮瑞希、写真 浜雄介)

結果

▽男子やり投

ディーン元気 84メートル28(2位)自己新記録 大会新記録 早稲田新記録 日本学生新記録

▽男子100メートル

九鬼巧 (予選2組)10秒25(2着)自己新記録

(A決勝)10秒42(5位)

北村拓也(予選1組)10秒66(8着)

(B決勝)10秒68(7位)

▽女子100メートル障害

紫村仁美(予選1組)13秒34(2着)

    (A決勝)13秒15(3位) 自己新記録 早稲田新記録 日本学生新記録


コメント

紫村仁美(スポ4=福岡・筑紫女学園)

――予選から早稲田記録を更新する素晴らしい走りでした

昨日まではどうなるか分からなくて、自分自身はあまり(調子が)良いと思っていなかったので、びっくりしています。

――予選を走って手応えを感じましたか

昨日とおとといは休んだんですけど、その溜めがちょっとは結果として出てくれたのかなと。でもやはり決勝が勝負だと思っていました。

――きょうのレースはどのような位置付けでしたか

五輪参加標準記録は出れば良いかなと思ってはいたんですけど、まずは関東学生対校選手権(関カレ)があるので、そこに向けた刺激として出場しました。

――決勝で出した13秒15は五輪参加B標準記録を突破しています

いけたら良いなと思ってはいたんですけど、それがかたちになってきたので自信になりました。

――ここまでの結果が出た一番の要因は何ですか

4年目でみんなの先頭に立たなきゃいけないという思いが大きな力になったと思います。

――他のワセダの選手やOBの選手が良い結果を残していたことも影響しましたか

本当に刺激をもらいました。ディーンに関しては五輪参加A標準記録の突破だったので、負けていられないと思いました。

――日本選手権、そしてその先に向けて抱負をお願いします

目指せロンドン五輪!そしてその先のリヨンも目指しながらやっていきたいと思います。

ディーン元気(スポ3=兵庫・市尼崎)

――1投目から狙っていたのでしょうか

(五輪参加A標準記録を)出すつもりで来たので、やることをやった、それだけです。

――きょうは記録を出そうと思っていたのですか

とにかく記録とか考えずに自分の投てきをして、記録は後からついてくると考えていました。記録を意識するとやはり力んでしまうので。練習投てきは記録を意識してしまったせいで上半身を振り回して投げていました。1回集中し直してから1投目はやることをやったので、結果がついてきたのかなと思います。

――完璧な軌道でしたか

そうですね、現段階では。フィンランドに行って、スペインにも行って、そこでやってきたことをとりあえずは出せたのかなと思います。

――具体的に何を出せたのでしょうか

自分が習得してきた技術やトレーニングを全てやりに伝えることができたかなと。

――いきなり記録が大きく伸びました

でもこれくらい出すとは思っていました。やはり日本にいると視野が狭いので、世界に行って合宿をする中で自分もそんなに弱い方じゃないなという感覚に気付かされましたね。そういう意味では、基礎体力的にも84~5メートルを出せる力があると言われていたので、あとはどれだけそれを再現するかだと思っていました。

――では84メートル28の記録にもあまり驚かなかったのですか

実際に現実になると驚いて、すごく興奮しちゃいましたけど(笑)、ようやく出たというか。次は日本選手権でしっかり結果を出して、五輪に向けて準備するだけかなと思っています。

――きょうのフォームについてはいかがですか

(良い時は)上半身が開く前に踏み切る足が着くんですよ。そうするとやりを押す距離が長いんです。足からの振動もあったので、振動が下から上に伝わってくるようなそんな感じです。

――上半身の開きを我慢するということですか

上半身の開きを我慢するというよりは、開く前に足を着くんです。去年までは上半身が開かないように我慢するというふうに考えていたんですけど、踏み切る足の着地が遅いと絶対開いちゃうんですよ。なので上半身が開く前に足を着くようにしています。

――そうすることでやりを押す時間が長くなるのですね

そうですね。開くということは腕が動いてきて、それだけのロスがあるので。(上半身が開く前に)足を着くと30センチくらいの差が出ますね。

――それはフィンランドの合宿で学んだことですか

はい。大きく成長した分身体の負担も爆発的に伸びているので、本当にケガだけはしないように気をつけてやらないといけないと思っています。

――フィンランド合宿はいつ頃だったのでしょうか

2月6日から28日です。スペインに行ったのが2月12日から28日まででしたね。最初1週間フィンランドに行って、そこからきょう出場しているアンティ・ルースカネンを含めた7人くらいの選手と一緒に、スペインの暖かいところで合宿をしていました。

――フィンランドの代表合宿だったのでしょうか

そうです。フィンランドのナショナル合宿に混ぜていただきました。

――合宿では1日に何投ほど投げていたのでしょうか

あの時は技術をものにできてきて、日本でのトレーニングもすごくハードにしていたので、背中のあたりに疲労が溜まっていて。だから1週間で2回くらいしか投げていないです。それ以外にホテルなんかで技術面での話をする中で、いろんな発見がありました。

――お父さんの故郷で開催されるロンドン五輪に大きく近づきました

親孝行できました、それだけです。親孝行できたのでもう大満足です。

――五輪でも戦えるような記録が出ました

記録を意識してしまうと投げられないので、周りのレベルを気にせずに自分の出せる力を出し切れば、後から結果がついてくると思います。そういう考えでいかないと、力んでしまうので。どれだけ自分の試合をできるかが課題になると思います。

――ケガをしていて本調子ではなかったとはいえ、村上選手に勝ちました

結果的に超えただけであって、村上さんは絶対にもっと投げる力があるので。とにかく日本選手権までに治していただいて、そこでもう1回お互い良い状態で勝負がしたいなと思います。

――競いたかったということでしょうか

競いたかったというよりは、今回は記録を出さなければいけなかったので。まず五輪参加A標準記録を超えないことには同じ土俵にも立てないので、五輪参加A標準記録を超えてからが2人の勝負になるのかなと思っていました。

――84メートル28をたたき出した1投目は、手応えをつかむのが早かったように感じました

リリースから飛んでいくやりの軌道を見たら、もうすぐにわかりました。

――その軌道は練習でも目にしていたのでしょうか

もちろんあります。練習でも80メートルくらいはずっと投げられるようなレベルになってきているので。

――1投目を終え、コルセットを外していましたが

もう覚えてないです(笑)。嬉しくて…。

――目の前でスチュアート・ファーカー選手(ニュージーランド)に86メートル31を出されていかがでしたか

最後さすがに抜けないかなとは思ったんですけど、意識してしまったためにやはり上半身が開いてだめだったなという感じでした。86メートルには本人もびっくりしていましたよ。ケガをしていたことで、先月くらいまで練習で75メートルほどしか出せていなかったようなので。とにかく「amazing!」と言っていました(笑)。

――お父さんはイギリスにいらっしゃるのですか

いえ、日本に住んでいますし、きょうも来てくれています。

――英語が話せることで合宿も馴染みやすかったのではないですか

日本人より外国人選手の方が社交的ですし、自分がどうするかでしたね。日常会話は英語でできるのですごく馴染みやすくて、みんなもフレンドリーで良い人でした。

――フィンランドは誰かの紹介で行かれたのでしょうか

ことしくらいからアンダー21の選手を強化する制度ができて、その一環として行かせてもらいました。普通はコーチとかが帯同するんですけど、英語ができるということで「1人で行ってこい」と言われましたね(笑)。

――昨年と比べて筋力はアップしていますか

アップはしていますね、まだまだ弱いですけど。

――それは具体的に数字となって表れていますか

メインの3種目がベンチとスクワットとスナッチなんですけど、スナッチが冬だけで15キロ、ベンチが10キロ、スクワットが30キロくらい伸びたんじゃないですかね。去年1年は膝をケガしていたことということもあったので。

――現在の体重はいくつですか

88キロです。去年は85キロでした。

九鬼巧(スポ2=和歌山北)

――予選から自己ベストを更新されました

大学に入ってから一番調子が良くて、アップの時点で調子が良いなと思っていました。10秒45が日本選手権参加A標準記録なんですけど、とりあえずそれを切って日本選手権に出たいなと思っていたので、それを切れるかなというところでした。正直10秒45は切れるかなと思っていたんですけど、追い風2.0メートルだったり決勝で自分の走りができなかったりしたので、やはりまだ10秒2台の力はないのかなと思います。

――スタートも良かったと思うのですが

そうですね。いつも五輪に出られているような選手の方々が1組にいて、僕は2組の端っこの方で走らせてもらったので、自分の走りができて良い記録につながったんじゃないかなと思います。

――15日の東京六大学対校大会ではトップスピードに課題があるとおっしゃっていましたが

予選に関して言えば、きょうは本当に自分の走りができたと思っています。10秒25というタイムは出来すぎなんですけど(笑)。でも10秒30くらいは出ている感覚があったので、そこは良かったです。

――先日行かれたアメリカでの経験も生きたのでしょうか

アメリカに行かせてもらって200メートルで自己ベストが、100メートルは追い風参考記録になってしまったのですが10秒40と良い記録が出ていたので、それでことしは走れているなという感覚がありましたね。

――今後はどのような予定でしょうか

5月6日のセイコーゴールデングランプリ川崎に急きょ出させていただくことになりました。当初計画していなかったので、関カレに向けて走らせていただくという感じです。

――その後は日本選手権も控えています

同級生の山縣亮太(慶大)とどうしても比べられちゃうと思うんですけど、まだまだレベルが違いますし、まずは自分がレベルアップしないと同じ土俵には立てないと思っています。日本選手権の決勝できょうみたいに戦いたいですし、大阪開催の日本選手権には高校時代の先生や友達が見に来てくれると思うので、そこで良い結果が出せたらと思います。

北村拓也(スポ1=広島皆実)

――大学に入学されてから初めてのレースでした

ケガをしていて走れなかった分ここでタイムを狙っていて、リレーメンバーもタイム狙っていかないと取れないので、今回は決勝に残ることではなくてタイムにこだわって走りました。

――ケガというのはいつ頃なのでしょうか

高校3年生の12月頃に捻挫をしてしまって、2ヵ月ほど走れなかったので痛かったですね。

――初エンジの感想はいかがですか

歴史ある競走部のエンジのユニホームを着ることに憧れていたので、とても光栄に思っています。もっと頑張らなければいけないなと感じました。

――地元である広島でのレースでしたが

広島には自分を知ってくださっている方がたくさんいるので、応援していただいて力になりました。

――現在の調子はいかがでしょうか

まだ上がりきってはないですけど、練習して徐々に上がってきているかなという感じです。

――大学生活にはもう慣れましたか

はい、もうだいぶ慣れました。寮生活なので先輩方が色々と教えてくださったりして楽しいです。

――今後はどのような予定でしょうか

まだよくわからないのですが、徐々にタイムを出していかないと上がっていけないので頑張ります。