課題残るもそれぞれに手応え

陸上競技

 昨年男子1部総合優勝を果たした関東学生対校選手権(関カレ)まであと10日あまり。3日に行われた第28回静岡国際大会で、選手たちは関カレ前最後となるレースを終えた。ロンドン五輪代表選手選考会も兼ねており、著名選手も多数参加する今大会。先日行われた織田幹雄記念国際大会の良い流れを引き継ぐべく早大勢も五輪参加標準記録を狙ったが、突破はならなかった。しかし、紫村仁美(スポ4=福岡・筑紫女学園)が200メートルで、野澤啓佑(スポ3=山梨・巨摩)が400メートル障害で自己記録を塗り替える好走。おのおのに課題は残ったものの、関カレに向け手応えをつかんだ。

★好調維持!

紫村は自己ベストに笑顔でガッツポーズ

 先日の織田記念では100メートル障害の自己ベストを更新し、ロンドン五輪参加B標準を突破した紫村。きょうも200メートルの自己新記録をたたき出す走りで魅せた。タイムレース決勝の1組に登場した紫村は、ほぼ無風の中スタートから飛び出すとスピードを上げ、ホームストレートに入る時点で先頭に。そのまま1着でゴールした。24秒01の好タイムにも「23秒台まであと少しだったので悔しい」と本人。しかし、福島千里(北海道ハイテクAC)ら200メートルを専門とするトップ選手も出場する中での7位は自信につながっただろう。次戦の関カレでは専門の100メートル障害に加え、100メートルと200メートルにもエントリー。他大学に比べ女子部員が少ないながらも、総合得点で3位以上が目標という。迎える最後の関カレ、チームのために紫村はフル回転する。

(記事、写真 浜雄介)

★自己新記録も目標届かず

自己記録更新も49秒台突入へ悔しさが残った野澤

 400メートル障害タイムレース決勝の3組には野澤啓佑が登場。コンディションが良かった野澤は序盤から積極的な走りを見せる。200メートルを通過したあたりからスピードに乗ると、最後の直線でも失速することなく組1着でゴールした。記録は50秒00。惜しくも50秒切りはならず、目標としていた五輪参加A標準記録にも及ばなかった。それでもこれまでの自己ベスト50秒32を大幅に更新する自己新記録の好走であったことに違いはない。全体4位という結果からも好調ぶりがうかがえる。五輪参加A標準記録まであと0秒50。次なるレース・関東学生対校選手権で突破なるか。野澤の記録に注目だ。

(記事 菅原理紗子、写真 大道瞳)

★浦野主将が46秒台を記録

チームで唯一46秒台で走った浦野主将

 男子400メートルタイムレース決勝には浦野晃弘主将(スポ4=広島皆実)、牧野武(スポ4=愛知・時習館)、竹下裕希(スポ2=福岡大付大濠)の3選手が出場。日本歴代4位のタイムを持つ金丸祐三(大塚製薬)ら実力者が揃う中で、浦野主将が全体8位となる手応え十分の走りを披露。牧野はアメリカ遠征で初の国際試合を経験し一段と成長した姿を見せたいところだったが、「前半に力を使いすぎてしまい、後半はしっかり走れなかった」と課題を残した。1組8レーンとの1番アウトレーンを走った竹下も、好スタートは切ったもののレース展開を読むことに苦戦を強いられた。これから関カレ、日本選手権と大会が続く上で、3人が互いに切磋琢磨しさらなる飛躍を目指す。

(記事 滝沢航平、写真 浜雄介)

★後半に課題

3本のレースに出場した蔭山

 蔭山愛(教4=神奈川・相洋)が200メートル、400メートル、マイルリレーの3種目に出場した。レース間隔が短い中で、「現状でどれだけ自分が動けるか、走れるかを確認する」という目標を掲げて臨んだ今大会。最初に行われた400メートルでは「300メートルまでは良い流れをつくれた」というように序盤から好位置につけ、勢いそのままにラスト100メートルに持ち込むが、ホームストレートで粘り切れず5位。記録は自己ベストに迫る54秒20だっただけに、悔しい結果となった。また、日本チームと日本Bチームの一騎打ちとなった女子マイルリレー。蔭山はBチームの3走として400メートル障害の日本記録保持者と競う展開に。離されずについていき、「300メートルまでは日本のトップ選手と競える力がついてきた」と実感を得る一方、ラストで差がついたことに対し、「最後に競り勝つという場面で力が足りない」と素直に受け止めた。各レースで「後半の粘りが足りない」と課題をあげた蔭山。今大会で見つけた課題を修正し最後の関カレに挑む。

(記事、写真 大道瞳)

★ルーキー、続々エンジデビュー

木村(左)から佐藤拓へバトンリレー

 スーパールーキーがまた二人、エンジに袖を通した。400メートルに出場した佐藤拓也(スポ1=埼玉・越谷西)と木村賢太(スポ1=大分・杵築)だ。この二人、昨季の国体で同種目少年Aの部で1位が佐藤拓、2位が木村と既に実力は折り紙つき。先陣を切った木村は自己ベストにあと少しに迫る47秒18でゴールし、同組であった先輩の竹下に先着したが、続いて2組に出場した佐藤拓は伸びを欠き47秒77と力を発揮できなかった。その後行われたマイルリレーには日本ジュニアとして、2走を木村、3走を佐藤拓が務め、エンジより一足先にジャパンのユニフォームでのバトンリレーを披露。共に在学中の世界選手権、五輪の参加A標準記録突破を目標に掲げる志が高い二人にとって、ジュニアとはいえ日本を代表して走ったことは今後に向けて良い刺激になったようだ。関カレでは昭和60年、日本学生対校選手権(全カレ)では昭和58年以来ワセダが遠ざかっているマイルリレーのタイトル奪取へ、彼らの加入は心強い。

(記事、写真 浜雄介)

結果

【男子】

▽400メートルタイムレース決勝

木村賢太 47秒18(1組2着、全体9位)

竹下裕希 47秒30(1組3着、全体11位)

牧野武 47秒40(2組5着、全体15位)

佐藤拓也 47秒77(2組7着、全体21位)

浦野晃弘主将 46秒95(3組5着、全体8位)

▽400メートル障害タイムレース決勝

野澤啓佑 50秒00(3組1着、全体4位) 自己新記録

▽4×400メートルリレー

日本ジュニア(2走:木村、3走:佐藤拓) 3分09秒92

【女子】

▽200メートルタイムレース決勝

紫村仁美 24秒01(1組1着、全体7位) 自己新記録

蔭山愛 24秒73(2組3着、全体15位)

▽400メートルタイムレース決勝

蔭山愛 54秒20(3組5着、全体6位)

▽4×400メートルリレー

日本B(3走:蔭山) 3分33秒80

コメント

牧野武(スポ4=愛知・時習館)

――きょうのレースを振り返って

今シーズンは立ち上がりからスピードが出ていなかったので、アメリカ遠征が終わってから1週間でスピード練習をしました。レースでは序盤からいこうと思っていたのですが、力を使った割にあまりスピードが上がらなかったです。

――ラストのスパートに関してはいかがですか

前半に力を使いすぎてしまったので、いつもよりも後半はしっかり走れなかったです。

――アメリカ遠征はいかがでしたか

いろいろな経験ができました。初めての海外の試合だったのですが、国際試合では1人で調整をしなくてはいけないので、そういう部分を鍛えていかなくてはと思いました。

――今大会の位置づけは

シーズンが始まって3回目ですが、できれば日本選手権の参加標準記録を最初から出したかったです。タイムの段階的には上がってきているので、次の関カレで日本選手権の参加標準を狙っていきたいです。

――東京六大学対校大会に比べて

アメリカに行ってから暖かかったので、動きやすかったです。また、この運動場は高校の時にも走ったことがある走りやすい運動場なので、やはりタイムを出したいという気持ちは強かったです。

――関カレに向けて

選手として出ることが決まっているので、しっかり順位を上げて点を取れるように、そして自分の記録をきちんと出せるように頑張ります。

蔭山愛(教4=神奈川・相洋)

――200メートルのレースを振り返って

200メートルは400メートルのレースの35分後ということで強硬スケジュールだったのですが、その中で自分がどれだけ動けるかというのと、関カレでは3種目に出るので、どれだけ走れるかという現状を試す気持ちでした。

――この大会の位置づけは

関カレのための調整が大きいです。

――400メートルのレースを振り返って

300メートルまではうまく走れたのですが、ホームストレートの最後の最後50メートルでかなり失速してしまったので、まだ詰めが甘いなというのが正直な感想です。ですが、その中でも300メートルまでは良い流れを作れたので、関カレではラストを修正して臨んでいけたらいいなと思います。

――マイルリレーについてはいかがですか

おそらく先頭でバトンを受けると思っていたので、焦らずもらおうと考えていました。一緒に走った選手が久保倉さん(里美、新潟アルビレックスRC)という日本記録保持者だったので、到底フラットのレースをしても久保倉さんの方が上だとわかっていました。そこで、どれだけついていけるかと、最後競れたら競り勝ちたいなと。ですが、後半の粘り強さがまだまだ足りなかったので、そこが自分の課題だと思います。

――その中で久保倉選手についていきました

300メートルまでは日本のトップ選手と走れる力や競える力がついてきたのかもしれないのですが、最後にここで競り勝つという場面になると、まだ力不足なのかなと思います。

――関カレに向けて

ことしは最後の関カレですし、3種目出してもらえるということで、柴村(仁美、スポ4=福岡・筑紫女学園)も3種目出るのですが、女子はほぼ全員出るので、男子に負けないように優勝を目指して、さらに1本1本楽しんで走っていきたいと思います。

紫村仁美(スポ4=福岡・筑紫女学園)

――24秒01の好タイムです

自己ベストが出せたのですごくうれしく思うのですが、23秒台まであと少しだったのでちょっと悔しいです。

――向かい風0.1メートルと好条件ではない中での好走ですが

でもあまり風は意識しなかったので、そんなに風には左右されていないです。

――コンディションはいかがでしたか

織田幹雄記念国際大会のレース後に少し休んで、そこから流れも良かったので、悪くはなかったです。

――今回のレースは関東学生対校選手権(関カレ)へ向けての調整という位置付けでしょうか

そうですね。その練習というか、今シーズン2本目だったのでどんなレース展開になるかというのをつかむために出場しました。

――関カレには3種目でエントリーされていますが抱負は

得点をしっかり取りたいのが大きくて、女子も(選手の)数は少ないですが総合得点で入賞、3位以上を目指しているので頑張ります。

――それぞれの種目で目標はありますか

100メートル障害は大会記録が13秒46で、それを更新して優勝したいです。100メートルは11秒台をまだ出したことがないので、それを出して決勝に行けるように。200メートルは記録を狙いつつ、蔭山(愛、教4=神奈川・相洋)とワンツーフィニッシュをしたいです。

竹下裕希(スポ2=福岡大付大濠)

――きょうのレースを振り返って

1番アウトレーンだったため、レース展開を読むのが難しかったです。果敢に前半からスピードを出して攻めていこうと意気込んだのですが、上手くレースをつくれず47秒30というタイムでした。

――今回のタイムに関しては満足していませんか

日本選手権の参加標準記録になっている46秒90を切りたかったので、満足していないです。

――体のコンディションはいかがでしたか

先週の試合の疲れは多少残っていましたが、いつも通りで特に問題なかったです。

――今後のレース予定を教えてください

次は関カレで100メートルと200メートルに出場する予定です。

――抱負をお願いします

関カレではチームに貢献できるように自分のできることを頑張っていきたいと思います。

木村賢太(スポ1=大分・杵築)、佐藤拓也(スポ1=埼玉・越谷西)

――初めてエンジを着てのレースはいかがでしたか

木村 なかなか着ることはできないので、誇りを感じながら走りました。

佐藤 陸上を始めた頃からエンジを着て走ることが夢だったので、ワセダの伝統に恥じないようにしっかり走ることを意識しました。

――レース結果についてはいかがですか

木村 初戦はあまりタイムが良くなくて、そこから走りのタイミングも悪かった中ベスト(47秒10)に近いタイムで走ることができたので、自信になりました。

佐藤 自己ベスト(47秒00)には程遠い記録だったんですが、きょうの失敗を次の試合に生かせるようにしたいです。関カレまであと少しなのでしっかり練習して、ベストを更新できるように頑張りたいです。

――お二人ともリレーにも出場されましたがいかがですか

木村 陸上を始めたときからジャパンのユニフォームを着るのは目標だったので、それが出来たことはうれしいのですが、その中で、人に合わせてしまって自分の走りができなかったことは反省です。

――木村選手が2走、佐藤選手が3走でバトンをつなぎましたが

佐藤 他は違う大学でしたがワセダがジュニアのリレーで貢献できればと思って走りました。

――大学4年間での目標を教えて頂けますか

木村 世界選手権と五輪の参加A標準記録を出すことと、ワセダを日本一のチームにできるように頑張りたいです。

佐藤 同じく世界選手権と五輪の出場です。競走部には『ワセダから世界へ』というのがあって、ディーンさん(元気、スポ3=兵庫・市尼崎)のように世界で戦う選手もいるので、それを目標に頑張ります。

――関カレへ向けて抱負は

木村 自分の種目(200メートル)とマイルリレーで、1点でも多くワセダに貢献したいです。

佐藤 しっかり自己ベストを更新することと、牧野さん(武、スポ4=愛知・時習館)、浦野さん(晃弘主将、スポ4=広島皆実)と400メートルには強い選手がいらっしゃるので自分もそのなかに入れるように頑張ります。