自己新ラッシュで18連覇!

陸上競技

 きのうまでの気温が嘘のような暖かさの中、第88回早慶対抗戦が慶大日吉陸上競技場で行われた。10種目の総得点で勝敗を争う伝統の一戦では数多くの自己新記録が誕生。40—17とライバル慶大に23点差をつけ、ワセダが18連覇を成し遂げた。

 トラック種目ではワセダが圧倒的な強さを見せつけた。トラック競技最初の種目となった100メートルでは上位3位を独占し、一挙6点を稼ぐ。続く110メートル障害でも3位までをワセダが占めた。勢いに乗ったところで、400メートルには本大会2連覇中の浦野晃弘主将(スポ4=広島皆実)が登場。前半から積極的に入る浦野は序盤から首位に立つと、最後の直線でもスピードを緩めず先頭でフィニッシュし3連覇を成し遂げた。また、後半に強い牧野武(スポ4=愛知・時習館)はラスト100メートルで見事な追い上げを見せ、2位に入った。1500メートルでは全カレ3000メートル障害で9位と入賞を逃した工藤皓平(スポ3=熊本工)が自己記録を更新する好走で優勝。これまで課題とされていたスタミナ不足を夏合宿で克服しつつあるという工藤は、最初で最後のエンジをまとった伊藤和麻(早大院2=東京・早実)の猛追もかわして最初にゴールに飛び込んだ。トラック5種目の総得点は25−2。圧巻の強さで慶応を突き放した。

石井は大幅な自己記録更新にガッツポーズを見せた

 一方のフィールド種目、棒高跳で今大会が最後のエンジとなる4年生が魅せた。石井祐人(スポ4=埼玉・武蔵越生)の自己ベストは4メートル40。4メートル30の試技を成功させ調子をつかむと、その後は自己記録を上回る4メートル50、4メートル60の高さを1回目の跳躍でなんなくクリア。これまでの自己記録を30センチ上回る4メートル70のバーまで越えてみせる。4メートル80をクリアすることはできなかったが、この日何度も力強いガッツポーズと満足げな笑顔を見ることができた。石井の活躍に刺激をもらった安藤大地(政経4=香川・観音寺第一)、土井翔太(スポ4=香川・観音寺第一)も自己ベストタイである5メートル20に成功し、ワン・ツーを飾った。「(安藤と)跳び合えるのが久しぶりだったので幸せでした」と語った土井。心の底から競技を楽しんで最後の対抗戦を終えた。

 この日のハイライトは最終種目4×200メートルリレー。関東学生対校選手権(関カレ)、日本学生対校選手権(全カレ)と続けてリレー種目二冠を成し遂げたワセダの実力が改めて証明されるかたちとなった。第1走者の三原浩幸(スポ2=千葉東)が後半に伸びを見せ梶将徳(スポ4=福島・白河旭)につなぐと、梶も安定した走りでトップのままバトンリレー。第3走者浦野主将は前半から積極的に攻め、一気に慶大との差を広げる。アンカーはロンドン五輪代表に選出され今大会100メートル優勝者の九鬼巧(スポ2=和歌山北)。最後までスピードが落ちることなく1着でゴールした。1分22秒99というフィニッシュタイムは第84回に江里口匡史(平23スポ卒=現大阪ガス)擁するワセダが打ち立てた1分22秒67の日本記録に迫る好記録。1カ月後には日本選手権リレーが控えるが、ワセダは昨年優勝を逃している。ことしはその屈辱を胸に優勝を飾り、順位、タイムの両面で納得のいく結果を残してほしい。

梶から浦野主将(左)へバトンリレー

 トラックシーズンも終わりに近づいてきたが、日本選手権リレーや国体など活躍の舞台はまだ残っている。来月には長距離の花形である駅伝シーズンも到来。今季好調を維持しているトラック勢がつくった良い流れを力に変え、まずは出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)で優勝を狙いたい。

(記事 目良夕貴、写真 目良夕貴、野宮瑞希)

★ディーンが2冠達成!

地力の高さを見せつけたディーン

 ディーン元気(スポ3=兵庫・市尼崎)が五輪後初めて日本国内でやり投に出場した。五輪前から抱えている右脇腹痛のため、日本学生対校選手権(全カレ)ではやり投への出場を見送ったディーン。この日も本調子からは程遠かったものの、軽く放ったやりは70メートルラインを越える。助走をせず手投げのような状態でも他を圧倒し、世界レベルの実力を示した。3投目までに73メートル55を記録すると、4投目以降はパス。続いて出場した円盤投では自己新記録をマークし優勝。やり投、円盤投の2冠を達成した。

結果

【対抗種目】

▽100メートル

九鬼巧 10秒64(1位)

北村拓也 10秒65(2位)

梶将徳 10秒75(3位)

▽400メートル

浦野晃弘 46秒86(1位)

牧野武 47秒62(2位)

木村賢太 48秒20(5位)

▽1500メートル

工藤晧平 3分49秒13(1位) 自己新記録

伊藤和麻 3分49秒32(2位) 自己新記録

中村信一郎 4分01秒15(5位)

▽110メートル障害

早川恭平 14秒22(1位)

秋山大輔 14秒41(2位)

安藤圭太 14秒92(3位)

▽4×200メートルリレー

早大(三原浩幸—梶—浦野—九鬼) 1分22秒99(1位)

▽走高跳

早川恭平 1メートル90(3位) 自己新記録

土井翔太 記録なし

林風汰 記録なし

▽棒高跳

安藤大地 5メートル20(1位)

土井翔太 5メートル20(2位)

石井祐人 4メートル70(4位) 自己新記録

▽走幅跳

林風汰 7メートル55(1位)

渡辺翔大 7メートル04(4位)

石井祐人 6メートル76(5位) 自己新記録

▽円盤投

ディーン元気 47メートル92(1位) 自己新記録

石井祐人 32メートル11(5位)

土井翔太 記録なし

▽やり投

ディーン元気 73メートル55(1位)

土井翔太 61メートル98(4位)

【オープン種目】

▽男子100メートル

・1組

三原浩幸 10秒70(1着)自己新記録

欠畑岳 10秒72(2着)

竹井尚也 10秒77(3着)

永沼賢治 10秒77(3着)

妻木裕太郎 11秒23(5着)

・2組

渡辺翔大 11秒03(1着)

白鳥優斗 11秒24(3着)

▽男子400メートル

・1組

永野佑一 48秒09(1着)自己新記録

佐藤拓也 48秒34(2着)

・2組

伊澤賢人 48秒98(1着)自己新記録

中嶋一成 50秒14(2着)

田中 言 50秒38(3着)自己新記録

土田洋輔 50秒86(4着)

亀田卓志 51秒41(5着)

・3組

出口 翔 50秒81(1着)

池山謙太 51秒22(3着)

▽男子1500メートル

池山謙太 3分58秒55(1着)

亀田卓志 4分01秒80(2着)自己新記録

▽男子やり投

釼持優太 58メートル22 自己新記録

▽女子100メートル

蔭山 愛 11秒97(1着)

紫村仁美 12秒13(2着)

羽角彩恵 13秒15(4着)

【対抗得点】

▽トラック得点

早大25—2慶大

▽フィールド得点

早大15—15慶大

▽総合得点

早大40—17慶大

コメント

土井翔太(スポ4=香川・観音寺第一)

——きょうの試合を振り返っていかがですか

1年生のときから早慶戦には出てきたのですが、きょねんまではこの大会を大きいと感じたことはありませんでした。しかしことしは、エンジを着ることが最後だと思うと大した大会じゃないとは感じられませんでした。競走部に対して、僕らの存在した証明といいますか、4年生としてしっかり競技する姿を後輩に見せようと思って全カレぐらいのモチベーションで挑むことができました。最後は楽しくまとめることができて良かったです。

——調整もされたのでしょうか

練習は全カレほど合わせたわけではないのですが、自分のベストパフォーマンスができる最低限のことはやってきました。精神面では全カレ同様、それ以上にモチベーションを上げていました。

——その結果としては満足のいく内容だったのでしょうか

ベストタイの記録だったのですが、記録的なことで言うとやはりもう一段階ほしかったですね。それでも、ここで最後に(5メートル20を)跳べたというのは、自分の中で成長なのかなと思います。

——安藤大地選手(政経4=香川・観音寺第一)と競り合えたことに関してはいかがでしたか

僕はあいつ(安藤選手)がいないと伸びないと思ったので、同じ大学を選ぼうと決めました。結果的にめぐりあわせなどがいろいろありまして、ワセダということになりました。あいつが跳躍ブロック長になって下級生に対して見せようとするところといいますか、リーダーとしてやることが、すごく競技にプラスになっていなかったなということを自分はずっと感じ取っていたので、跳び合えるのが久しぶりだったので幸せでしたね。

——やり投の結果はいかがでしたか

ディーン(元気、スポ3=兵庫・尼崎)とは僕が高校3年生のときから時々一緒に試合をしていたのですが、あいつが強くなってからはなかなか投げ合うことがなかったので、久々に一緒に試合ができてうれしかったです。やり投はやり投ですごく楽しんで投げられましたし、2年ぶりに60メートルを超えたという点も良かったなと思います。

工藤晧平(スポ3=熊本工)

——きょうのレースを振り返っていかがですか

夏合宿でしっかり練習はできていてあとは結果を残すだけだったので、今回結果が出たことは自信になりました。次は駅伝があるのでそっちにつなげていきたいです。

——後半もペースが落ちませんでしたが、夏合宿の成果なのでしょうか

夏合宿では距離を走りこんだということもあって、最近スピード練習を始めたら良い移行ができているなと感じました。夏合宿の成果かなとは思います。

——ラスト1周で伊藤選手(和麻、院2=東京・早実)の猛追を受けました

本当に恐ろしかったです(笑)。OBさんには負けられないと思って走りました。

——夏合宿ではどのようなことを課題に練習されたのでしょうか

自分の課題としてはやはりスタミナ不足があったので、それは少しずつ改善できていると自分の中では感じています。あとは少しずつ距離を伸ばしていって駅伝に出られたらいいなと思っています。

——次の目標は駅伝のメンバー入りでしょうか

そうですね。出雲駅伝のメンバーはもう決まっているので、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)と箱根(東京箱根間往復大学駅伝)に向けてしっかり移行していけたらと思っています。