ラストイヤーの今年は、関東学生対校選手権で表彰台、東京箱根間往復大学駅伝予選会(予選会)で日本人2位になるなど、試合毎に強さを示している井川龍人(スポ4=熊本・九州学院)。4年間、チームが出場した三大駅伝では皆勤賞の井川は、大学最後の駅伝にどのような思いで挑むのか。また、現在の調子やチームの状況はどうか。話を伺った。
※この取材は12月11日に行われたものです。
「やってきたという安心材料がある」
合同取材で撮影に応じる井川
――現在の調子はいかがですか
11月に入ってから右脚鼠蹊(そけい)部を痛めたのですが、もうそれも治って、しっかりポイント練習もできている状態です。ここから上げていく、というところです。
――最近の練習の消化率はいかがですか
6割程度かなと思います。
――それは例年と比べるとどうなのでしょうか
ポイント練習自体は例年と比べるとできていないかもしれないのですが、それ以外でジョグなどをしっかりできていたので、特に不安は感じていないです。
――最近はどのようなことを意識した練習が多いですか
ジョグで距離を踏みつつ、ジョグのペースを上げることを意識してやっています。
――チームの現在の雰囲気はどう感じていらっしゃいますか
今は4年生があまり走れていないのが良くない点かなと思うのですが、ここから僕、小指(卓也、スポ4=福島・学法石川)、創士(鈴木駅伝主将、スポ4=静岡・浜松日体)が順調に上がっていけば、さらに良くなっていくと思います。また、下級生がその分引っ張ってくれているので、チームで一つになってやれているかなと思います。
――今年花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)が就任し、箱根に向けての調整の仕方は変わりましたか
集中練習という位置付けがなくなり、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)が終わってからずっときついメニューをやりつつ、週に1回はロングがあります。そのあたりが変わったかなと思います。
――昨年は全日本後に練習を詰め込んでしまい、この時期に調子を落としてしまったというお話がありました。今年はそういったことはありませんか
そうですね。距離走はトラックシーズンのころから継続してやってきたので、練習を詰め込みすぎなくても、「やってきた」という安心材料があります。
「結果を出さないといけない」
――1年間を振り返っていただきます。今振り返ると、今年のトラックシーズンは、何点ですか
80点くらいです。昨年まで結果が出なかったところで、結果がやっと出始めたというところと、優勝を目指していろいろやっていた中で、2位が続いてしまったところ、あとは自己ベストを出すことができなかったところで、80点くらいかなと思います。
――大学でのトラックシーズン4年間を振り返って、一番良かったのは今年ですか
はい。
――トラックシーズンで、理想との差異はどの程度ありましたか
本来なら11月に1万メートルを27分台でもう一回走るというのが目標としてあったのですが、箱根に合わせようと思うとそこまでの余裕がなくて、叶わなかったというところは、もっと前もってトレーニングをしていく必要があったかなと感じました。
――トラックシーズンの練習で意識していたことはありますか
実戦に近いスピードトレーニングをやったことで、練習の質が上がり、一回一回の練習を今までより集中してやるようになりました。
――トラックシーズンの練習が秋以降につながったと感じる部分はありますか
何がつながったかといわれると難しいのですが、結果もそこそこ出てきたし、そういうところで、やってきたことは間違っていなかったなと感じています。
予選会で駐屯地内を走る井川
――予選会から全日本の間の調整は難しかったですか
そうですね。予選会は8割くらいの力で走ったつもりだったのですが、思っているよりも体への負担は大きくて、調整がうまくいかなかったな、という感じはしました。
――夏合宿後、日本学生対校選手権、予選会、全日本と大きな試合が続きましたが、疲労の具合はいかがでしたか
一番疲労を感じたのはトラックシーズンが終わった7月くらいで、気持ち的にも疲労がかなりあったので、そこを休んだことで、夏合宿後は気持ちも落ちずにやることができました。
――先ほど予選会から全日本の間の調整は難しかったというお話がありましたが、難しかった中での全日本の結果(2区区間6位、チーム総合6位)は捉え方としてはポジティブですか
個人としてはもう少し走りたかったのですが、今までだったら、あの状況で走るともっとずるずる落ちていたところを、うまく耐えることができていたので、そこは一つ成長かなと思います。(チームとしては)予選会も全日本もそうなのですが、人数が少なく、代えがないので、誰か一人でも調整を失敗してしまうと順位がかなり変わるというのが反省点として出てきました。
――予選会と全日本を終えて、今の大学駅伝に対する印象はいかがですか
最初は、「本当に戦えるのかな」という不安があったのですが、全日本や予選会を通して、(箱根の)シード校とも戦えるなと思いました。また、1年間を通して、今までにないくらいきつい練習をやってきたので、みんなが失敗せずに練習通りの走りができたら上位で戦えるのではないかなと思っています。
――今年は5000メートルでセカンドベスト、1万メートルで28分台前半が複数回、ハーフマラソンで1時間2分台、とどの距離でも結果を残されている印象ですが、ご自身の感覚としては、どの距離が自分の良さを発揮できるのでしょうか
多分、今は1万メートルです。まだハーフをそれほど走ったことがないというのもあるのですが、1万メートルを28分台前半で複数回走ることができたということと、深川記念(ホクレン・ディスタンスチャレンジ20周年記念大会)の時に、途中1人で先頭に出て押すこともできたというのは、自信にもなりましたし、今後1万メートルをしっかり磨いていきたいなとも感じました。
強い早稲田の土台に
関東学生対校選手権の表彰台でWポーズをする井川
――1年間を通して、上級生になったことでの意識の変化はありましたか
4年生で、副キャプテンという位置にも就いたので、とにかく結果でチームを引っ張って行かなくてはいけないな、と常に思っていました。
――外部の方が「今年の井川は違う」と言っているのをよく耳にします。ご自身で変えた部分や変わったと思う部分はありますか
そんなに自分の中で変えたというところはないのですが、やはり結果を出さないといけない、と自分で自分にプレッシャーをかけるというか、自分に課している部分もあるので、それで今年は頑張れているのかなと思います。
――夏にお聞きした際には、今のチームが過去4年間のチームの中で一番好きだとおっしゃっていました。今も変わらず好きですか
そうですね、好きです。
――ここまでのアプローチなどを踏まえ、箱根への自信はありますか
本当であれば11月にもう少し練習を積みたかったのですが、ケガして積めなくて。ですが、やはり1年を通してしっかりやってきたので、自信はあります。
――走りたい区間は2、3区などの前半区間ですか
そうですね、前半を走りたいです。
――過去3回の箱根を踏まえ、今、箱根は井川選手にとってどんな大会ですか
ずっと憧れていた舞台ではあって、(過去3回走って)出るのは簡単ですが、結果を残すというのが難しい大会だと感じています。
――今回の箱根で自分に求められていると思う役割を教えてください
今年は安定力が出ているので、安定した走りをして、どんな順位で来てもいい流れに持っていく、ということが求められているのかなと思います。
――箱根での目標としてはどのようなことを掲げていますか
もちろん個人としては区間賞です。チームとしては、失敗しない駅伝をすることができたら目標以上の、5位以内も3位近くも目指せるのではないかなと思っています。
――最後に改めて箱根駅伝への意気込みをお願いします
個人では区間賞を取って、チームの目標を達成したいです。また、花田さんが就任してから、僕はこれからの早稲田が強くなるのではないかなとすごく思っていて。今年は、優勝は叶わないかもしれないですけど、何年後かに優勝する可能性もあると思うので、その土台になるようなチームになれたらいいなと思っています。
――箱根は楽しみですか
はい、楽しみです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 及川知世)
◆井川龍人(いがわ・りゅうと)
2000(平12)年9月4日生まれ。178センチ。熊本・九州学院高出身。スポーツ科学部4年。自己記録:5000メートル13分45秒30、1万メートル27分59秒74、ハーフマラソン1時間2分39秒。箱根第98回1区16位、第97回1区5位、第96回3区14位。最近髪を刈り上げた井川選手。好きなマンチェスター・ユナイテッドの選手と同じ髪型でオーダーしたそうです!