【連載】箱根事前特集『RE:』 第11回 佐藤航希

駅伝

 自ら手放してしまったシード権の切符。昨季、駅伝シーズンに苦い思い出を残してきた佐藤航希(スポ3=宮崎日大)は、今季見違えるほどの強さを見せ、チームに勢いをもたらしている。試行錯誤してきたこれまでの日々を振り返りながら、自身2度目となる東京箱根間往復大学駅伝(箱根)に向けて意気込みを語ってもらった。

※この取材は12月11日に行われたものです。

「自分のやるべきことに集中していた」

前回大会で9区を走る佐藤(©︎関東学連/月間陸上競技)

――悔しい思いをした昨シーズンから今年どのような目標を持って練習に挑みましたか

 昨シーズンはケガが多かったので、今年は練習を継続するということを意識して練習に取り組みました。

――前回の箱根後に、3カ月程度走ることができない期間があったとおっしゃっていました。何があったのでしょうか

 前回の箱根の前から少し膝が気になっていました。箱根が終わってからマラソンをする予定だったのですが、コロナの影響でマラソンがなくなってしまったので2、3カ月はその膝の治療に専念していました。

――前回の箱根後の対談で関東学生対校選手権(関カレ)のハーフマラソンを目標にしていると話されていましたが、出場とはなりませんでした。心境はいかがでしたか

 関カレで受けた刺激はもちろんありましたが、まずは自分のやるべきことに集中していました。

――5月の早大競技会以降、トラックシーズンで公に走らなかったのは計画練習だったのでしょうか

 そうですね。自分のやるべきことに集中し、段階を踏んで練習をしっかり積むというところで状態を戻すことを第一に考えていました。

――どの大会に向けて練習していたのですか

 一番合わせたいと思っていたのは予選会(東京箱根間往復大学駅伝予選会)でした。そのためにも夏合宿をしっかりこなさないといけないので、7月までにはしっかり走れる状態にしておきたいと思っていました。

――膝の治療も兼ねていたということですが、トラックシーズンはどのような練習をしていたのでしょうか。また、花田勝彦駅伝監督(平6人卒=滋賀・彦根東)に代わってから、練習に変化はありましたか

 トラックシーズンはケガの復帰途中だったので、みんなとガツガツ練習はしなかったのですが、自分に出されたメニューをしっかりこなしていました。花田さんになってから練習の質やポイントの質が上がったので、普段のジョグがおろそかになりがちだったのですが、そこは意識的に上げていました。

――昨年はフォーム改善を中心に練習に取り組んでいたと伺いました。フォームは順調に改善されていますか

 納得のいくフォームにはまだなっていませんが、調子が良いと自分にはまったフォームに自然となってくるので、最近はあまり意識していないです。

――では、今年新たに工夫して取り組んでいる練習や、意識されていることはありますか

 今年に入って五味さん(五味宏生トレーナー、平19スポ卒)や上久保さん(上久保利直アスレティックトレーナー)が指導してくださるフィジカルトレーニングを多く行っています。一回一回雑になりがちな部分を集中してやることが後に大きな変化につながると思っていたので、そこを意識して取り組んでいました。

――夏合宿を振り返って達成感はどれくらいですか

 夏合宿はほぼ100パーセントこなすことができました。自信を持って試合に臨める状態だったので、達成感はあります。

――夏合宿で意識していたことを教えてください

 夏合宿では練習メニューの量、質が両方上がるので、一回一回の練習を集中して行うことと、先ほども言ったようにフィジカルの部分で集中力を切らさずに行うことを意識していました。長い合宿でしたが、小さいことを意識して練習に取り組んでいました。

――合宿明けの早大競技会で1万メートルの自己ベストを更新しました。出したタイムについてどのように捉えていましたか

 設定タイムよりも少し遅かったのですが、合宿明けというのもあってこれぐらいだろうという想定の範囲内でした。

「おつりが出るような結果ではなかった」

予選会を走る佐藤

――次に予選会についてお伺いします。本番に向けてどのように直前練習をしていましたか

 万全ではない選手が多い中、順調にこなせていた自分や井川さん(井川龍人、スポ4=熊本・九州学院)、山口(山口智規、スポ1=福島・学法石川)あたりが引っ張ってチームの上位通過をしなければいけなかったので、練習を順調にこなすことを心掛けていました。体力をつける意味でもプラスαで長い距離を走ることは意識して練習していました。

――本番は全体2位でのフィニッシュでした。チームの反応はいかがでしたか

 練習の消化具合とかをみんな知っていたので「だろうな」という反応でした。

――予選会のレースを受けて全日本大学駅伝対校選手権(全日本)につなげた収穫点はありましたか

 夏合宿の時点で全日本は長い区間を走ってもらうと伝えられていたので、予選会でしっかり20キロ走れたことと、後半アップダウンのある中で(スピードを)上げることができたのは全日本につなげられる収穫点でした。

――全日本ではアンカーを任されていましたが、プレッシャーはなかったのですか

 関わった駅伝全てここぞという重要区間を任されているので、またかとは思いました(笑)。今年に関しては夏合宿もしっかりできていましたし、自信もあったので特に不安はなく、この状況を楽しもうと思っていました。

――昨年の全日本は苦しいレースとなりましたが、その時のトラウマなどはありませんでしたか

 特になかったです。練習の時点でトラウマは払拭できていたので自信しかなかったです。

――全日本では上り坂で中大の選手を抜いたと思うのですが、その時は結構余裕があったのでしょうか

 そうですね。割と前半は自重して入ったというのもあったので追い付いた時にはまだ余裕はありました。

――昨年のリベンジを誓って今年の駅伝に挑んだと思いますが、リベンジは果たせたと思いますか

 リベンジしたいとずっと言い続けてきて、周囲からはリベンジできたねとか、リベンジできたのでしょうか、とよく聞かれるのですが、聞かれるとどうなのかなと正直分からないところです。おつりが出るような結果ではなかったかなと思います。

――全日本を終えて疲労具合はかがですか

 特に疲労もなく練習を再開できて、昨季からフィジカル面の成長を感じられました。

「強いと言われるような選手に」新体制で迎えた今季を振り返って

仲良く菖蒲敦司(スポ3=山口・西京)選手と色紙を書く佐藤選手

――新体制が発足してから半年が過ぎました。佐藤選手はチーム内でどのような役割を担ってきたのでしょうか

 新体制に変わった時から下級生に任せっきりな雰囲気がチーム内にありました。上級生になって4年生を刺激しないといけないですし、1、2年生の突き上げの雰囲気にも負けてられないです。自分が引っ張っていかないといけないなというのは思っていました。

――花田監督とうまくコミュニケーションは取れていたのでしょうか

 始めはあまり上手くいかなくて、花田さんの意見や指導があまり自分に響かないことや、ふに落ちないことがありました。でも、コミュニケーションを取るようになってからは、指導の意図や真意が伝わってきたので今はしっかりかみ合ってきたかなと思います。

――今年、苦しかった時期やつらかった時期はありますか

 特にないですね。強いて言うなら、夏合宿中に普通の大学生活の夏休みを過ごしてみたかったなという思いはありました。

――鈴木創士駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)や井川選手から刺激をもらうことやアドバイスをもらうことはありますか

 普段の練習とかでアドバイスを直接もらうことはないのですが、2人の特徴としては創士さんが言葉で引っ張って、井川さんが走りで引っ張るという感じなので、お互いそれぞれ尊敬すべきところはありますし、刺激になる部分はあります。

――仲の良い菖蒲選手と予選会、全日本で共に出走を果たしたと思うのですが、励まし合ったり、アドバイスし合ったりしていたのでしょうか

 そうですね。普段の練習からもお互いに声を掛け合っています。トラックシーズンは菖蒲が「任せろ」って言ってくれて活躍していたので、秋以降、彼がうまくいっていない時は逆に自分が任せろという気持ちで接していますし、お互いに安心感を与えられるような存在なんじゃないかなと思います。

――トラックシーズンは佐藤選手が菖蒲選手のサポート役に回っている姿が印象的でした。逆に菖蒲選手からサポートを受けることはあるのですか

 んー。サポートっていうのかな(笑)? かまってほしいのか分からないですが(笑)。たぶんかまってほしい気持ちで接してくることが多いです。

――最近部内で意識している選手はいますか

 山口と大志(伊藤大志、スポ2=長野・佐久長聖)と石塚(石塚陽士、教2=東京・早実)ですね。やっぱり、強いの一言です。練習も外さないですし。そういう意味では間瀬田(間瀬田純平、スポ1=佐賀・鳥栖工)も入ってくると思うのですが、あの3人に関しては余裕度が違います。間瀬田はきついなりにも粘りますし、やっぱり尊敬するというか、ライバル視はしています。

――今年の佐藤選手のモットーを教えてください

 強い選手というのがモットーとしてあるので、さっき挙げた4人のような強さを持ちたいですし、負けたくない気持ちがあります。練習から「あいつは強い」と言われるような選手になりたいです。そういう気持ちを持って取り組んでいます。

「攻める走りを」リベンジに燃える2度目の大舞台へ

全日本8区を走る佐藤

――今年のチームの雰囲気はいかがですか

 徐々に箱根に向けて足並みもそろってきていると思うので、いい状態で箱根を迎えられるのではないかなと思います。

――ご自身2度目となる箱根になりますが、個人の目標は

 昨年のリベンジというのはもちろんですが、今年はチームに貢献する意味で攻める走りをしたいです。流れを変えて作るという自分の納得できる走りができたらなと思います。

――アップダウンを得意とされていますが希望区間はありますか

 正直どこの区間を走っても楽しそうだとは思うのですが、8、9、10区あたりかな。帰り道で一番楽と考えたら10区かな(笑)。

――チームとしての目標を教えてください

 チームとしての目標順位は5位なので、往路で攻めて復路で守り切るというのが今年の目標だと思っています。

――最後に、大学陸上競技生活3年目となる箱根に懸ける意気込みをお願いします

 もう1年あると思わずに3年目でしっかり結果を出して、チームに貢献したいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 川上璃々)

◆佐藤航希(さとう・こうき)

2001(平13)年8月2日生まれ。168センチ。宮崎日大高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分59秒96、1万メートル29分35秒12、ハーフマラソン1時間3分05秒。第98回箱根9区区間14位。応援ハッシュタグ「やっど佐藤」は第二の故郷である宮崎県新富町のキャッチフレーズにちなんでつけたそう。昨年の対談でも色紙に「宮崎魂」と書くなど地元愛が強い佐藤選手。「宮崎県で箱根の放送があるかどうかは分からないですが、もし見かけたら応援してくださるとうれしいです!」とメッセージを下さいました!