【連載】箱根事前特集『RE:』 第5回 山口智規

駅伝

 当時5000メートル高校歴代3位の成績を引っ提げて、早大に入学した山口智規(スポ1=福島・学法石川)。入学当初よりトラックにつながる駅伝にしたいと語ってきた山口は、初の大学駅伝である全日本大学駅伝対校選手権(全日本)で4区3位という殊勲の走りを見せた。本インタビューでは、山口の箱根や早大競走部に対する思い、チームの状況について語ってもらった。

※この取材は12月11日に行われたものです。

「トラックにつながる駅伝にしたい」

日本選手権で5000メートルのレースを走る山口

――入学時点での三大駅伝への思いを教えてください

 トラックをメインにやっていきたかったので、トラックにつながる駅伝にしたいと思っていました。

――トラックへの思いは学法石川のOB遠藤日向選手(住友電工)などから影響されたのですか

 自分はトラックが得意なので、トラックを突き詰めたいというのと日向さんからの影響もあります。

――入学当時、箱根のシード権を逃していた早大に対してどのような思いを持っていましたか

 内部の状況を詳しくは分かっていませんでしたが、やることは自分が頑張ることだと思っていたので、変わらず頑張ろうと思っていました。

――入学当時、早大と他大の間でどのような違いを感じていましたか

 大学自体が世界に目を向けた活動をしており、世界で活躍している選手が多く、自分の競技やその後の人生にもつながることを学べるので早稲田はいいなと思っていました。

――トラックシーズンを終えて、ロードにつなげられたことはありますか

 今、トラックは走ってはいませんが、練習量が増えて、量をこなすには体づくりとフォームの変更・改善が自分の課題になりました。そこ(課題の改善)は今うまくいっているので、来年以降のトラックシーズンでうまくいけるのかなと思います。

――トラックの練習で意識していたことはありますか

 5000メートルをやるにも箱根を走るにも30キロ走が大事です。長い距離を走れなければトラックは走れないので、今駅伝の練習をしている中でもトラックにつながるのではないかと思います。

――今季は5000メートルでの自己記録更新は意識されましたか

 U20の日本記録を更新したいと思っていましたが、故障と貧血でトラックシーズン、前半シーズンは厳しかったです。やっとうまく練習できるようになってきたので、来年で更新できればいいかなと思います。

「チームを引っ張っていくという気持ち」

東京箱根間往復大学駅伝予選会で駐屯地内を走る山口

――長い距離に対応したいとおっしゃっていましたが、夏合宿を終えていかがですか

 今すごく距離を踏めていて、距離を踏む中でも質の高い練習ができているので、自信を持って箱根に臨めると思います。

――夏合宿の総括と消化具合について教えてください

 実際、練習は消化できていたのですが、ハーフを自信を持って走る練習ができていたかと聞かれるとそうではないと思います。それが予選会に出てしまいましたし、今それを改善して箱根に向かっているので、改善できているならいいかなと思っています。

――士別ハーフマラソンや日本学生対校選手権(全カレ)に出場されましたが、その中で成長を感じたことはありましたか

 まだ改善するべき点は多いのですが、練習を余裕を持ってこなせるようになったことは良かったかなと思います。

――全カレ出場の意図を教えてください

 トラックで勝負したかったので、自分から出させてくださいという話をして出させてもらいました。

――予選会では上位集団を走っていましたが、それは夏合宿の成果が監督から評価されたということでしょうか

 練習もできていましたし、練習以上の実力を発揮できてしまうというのがあったので、スタートしたら何とかなるだろうという感覚がありました。ですが、うまくいきませんでした。

――1年生ながら上位集団を走る中で、プレッシャーなどは感じられましたか

 そんなことはなく、チームを引っ張っていくという気持ちでやってきたので、(プレッシャーは)なかったです。

――終盤で失速されましたが、そこでの原因を教えてください

 レース後に考えて、食事が悪かったのかなと。栄養士さんにすぐに相談させてもらいましたし、レース中の技術的な面もまだまだだったので、改善できるように走り込んでいます。

――技術的な問題について詳しく教えてください

 ペースに対する余裕度が他の人と比べてなく、トラック上がりで力任せな部分があるので、ランニングエコノミーで足りない部分があるのかなと思います。

――全日本では4区3位と活躍されましたが、初めての大学駅伝の感触はいかがでしたか

 一つ順位を上げられたことは満足していますが、駒沢と差を詰めるということを考えるとまだまだだったのかなと思います。

――どのような意図で4区に起用されたのですか

 予選会前は2区か3区のどちらかという、もう少しレベルの高いところに行かせるという話だったのですが、余裕を持った中での4区で。石塚さん(石塚陽士、教2=東京・早実)や井川さん(井川龍人、スポ4=熊本・九州学院)が前にいて、上位で来ることは想定できたので、想定しやすいレースにしたかったのかなと思います。

――初めての大学駅伝で驚いたことや感じたことはありますか

 想像通りというか、レベルの高いレースにはなるので、自分のペースが大事だなと思いました。

――上級生から何かアドバイスなどはいただきましたか

 石塚さんからは何も気にせず、自分のペースでやろうと言われました。大志さん(伊藤大志、スポ2=長野・佐久長聖)と一緒に行動させてもらうことも多いので、その中でいろいろと感じさせてもらえることがあります。

――全日本後に後半で勝負ができなかったとおっしゃっていましたが、現状はいかがですか

 後半勝負というのはチームとして人数が足りないという部分です。もう少し数がいれば大志さんが前半区間に来て、もっと前で勝負できたかなと思うので、底上げという部分でまだまだ足りないですし、上位層も他大と比べるとまだまだなので、チーム全体のレベルアップをもっとしていかないといけないと思っています。

――アップダウンへの適性はいかがですか

 自分の区間は全日本の中では一番アップダウンがある区間で、うまくリズムをつかんで走れました。箱根でもある程度のアップダウンはいけるのかなと思います。

――他校も含め、1年生の中でのご自身の位置付けをどのように捉えていますか

 トラックでの勝負がまだないので分からないのですが、駅伝ではまだまだ勝負できていないのかなと思います。駅伝に合わせてしまうと、やはり走り方が違うのでトラックは難しいです。うまく両立できるようにしていきたいですし、負けるのは悔しいので、勝てるように頑張りたいです。

――他校でのライバルはいますか

 中大の吉居(駿恭)はいつも仲良くしているのですが、なかなか勝つことができていません。(吉居は)ずっと活躍している選手なので、勝ちたいとは思っています。

「全てが箱根につながっている」

質問に答える山口

――全日本を終えて、チームの雰囲気はいかがですか

 エントリーを見て分かる通り下級生が元気なので、勢いがあるのはもちろんですし、やはり4年生も経験などの強みがあるので、チームとしては順当なエントリーができたのかなと思います。

――1年生がエントリーする中で、同級生として感じることはありますか

 エントリーされたことはもちろん自分たちの学年で評価されるべきことなのですが、他を見ると全然僕たちでもメンバーに入れないような大学があります。16人に入ったことに満足せずに出走して、区間上位を目指さないと他校とは勝負できないのかなと思います。

――現在までの練習の消化具合や、重点的に行っている練習を教えてください

 全日本が終わってから強化期間が始まって、もちろん箱根は距離が長いので、対応できるような練習はしています。毎週末にはすごく重たい練習が入ってくるのですが、そこは全て消化できていると思います。

――現時点での希望区間を教えてください

 特にないのですが、2区のエース区間で勝負したいなと思っています。2区を走る準備をしておけばどこでも走れるので、その気持ちでやっています。

――5区などの山の区間はいかがですか

 大志さんたちと練習する中でも、なかなか勝負ができませんでした。今行ったら分からないですが、強化期間前は勝負できなかったので、できれば走りたくはないです(笑)。任された時にはしっかり走りたいと思います。

――達成したい目標はありますか

 チームとしては花田さん(花田勝彦駅伝監督、平6人卒=滋賀・彦根東)が述べている通りの目標にはなるのですが、自分としては具体的な目標は定まっていません。駅伝なので競った相手には絶対負けず、そして学法石川の時の先生が話してくださった「克己心」という言葉を忘れずに、競り負けることなくチームに貢献できるように走りたいです。

――ずばり、箱根で勝てる選手とはどのような選手でしょうか

 タイムを持っていなくても、練習をしっかりできていて、気持ちと箱根に懸けている思いが強ければしっかり走れるのではないかと思います。

――ご自身のどのような強みが箱根で生きると思いますか

 突出した強みがないので、逆にそれを強みにして安定感をこれからつけて、まずは上位で走れるように。それと上級生になったら区間賞争いできるように頑張っていきたいです。

――箱根に向けて準備していることはありますか

 もう全て箱根につながっていると思って生活していますし、24時間陸上のことについて考えています。

――大会前にしているルーティンはありますか

 ルーティンを作ってしまうとアクシデントに対応できなくなってしまうので、ルーティンは作っていません。石塚さんのようにマイペースに、周りを気にせずにやっていきたいなと思います。

――初の箱根に向けて感じていることはありますか

 自分がテレビで見ていた夢舞台が刻一刻と迫る中で、見られる立場になって、しっかり結果を残したいと思っています。また自分たちが4年間どこかで優勝したいと思っているので、そこにつながる箱根駅伝にしたいです。

――上級生にはどのような思いを持っていますか

 花田さんが監督になって、これからのチームだとは言われているのですが、今年のチームは今年のチームなので、自分は今年のチームに貢献できるように走りたいと思っています。

――最後に箱根への意気込みをお願いします

 僕が早稲田大学に入学して、他からの評価とかもありますが、今年の早稲田は今までと違うぞというのを見せられるように、そして自分が貢献できるように挑みたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 湯口賢人)

◆山口智規(やまぐち・とものり)

2003(平15)年4月13日生まれ。172センチ。福島・学法石川高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル13分35秒16、1万メートル29分35秒47、ハーフマラソン1時間3分09秒。大学1年生ながら、淡々としつつ思慮深く質問に答えてくださった山口選手。これからの早大を背負って立つ山口選手にぜひご注目ください!