2月にはびわ湖毎日マラソンに出場するなど、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)を見据えて長い距離に対する強みを伸ばしてきた河合陽平(スポ4=愛知・時習館)。今季までの大学駅伝出走経験はないが、「やっとメンバーに入ってチャンスをもらった」と、今回の箱根にかける思いは人一倍強い。競技生活の最後となる大舞台にどのような思いで臨むのか。話を伺った。
※この取材は12月12日に行われたものです。
「長い距離なら誰にも負けない」
質問に答える河合
――16人のメンバーが発表されましたが、発表されるまでと発表時の率直な思いを聞かせてください
発表されるまでは、今年は16人に入れるだろうという気持ちで練習していました。入ってからは特に変わるということもなく、箱根に向けてチーム、監督が求めるような走りを続けてやるだけかなと思ってやっています。
――今年は4年生の一般組が多くメンバー入りしていますが、その台頭に思うことはありますか
山口(賢助、文4=鹿児島・鶴丸)だったり室伏(祐吾、商4=東京・早実)は去年から箱根で走ったりメンバーに入っていたりしていた中、自分はなかなか入れませんでした。(今年は)最後なので、一般入試だからというわけではないのですが、みんなで力をつけてメンバー争いに加われたのは良いことなのかなと思います。
――ここまでの競走部での4年間を振り返ってください
きついことの方が多かった4年間の中で、なかなか上がれないこともあったのですが、コツコツBチームでケガせず走り込めるという自分の強みを生かしながら、少しずつ確実にステップアップできたのかなと思います。
――2月にはびわ湖毎日マラソンに出場しました。2月の段階でマラソンに挑んだことにはどのような意図があったのでしょうか
立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)の標準を切れてなかったので、その代わりではないですが、マラソンに挑戦しようと監督から言われました。その時期にしっかり走り込むというのは重要なことなので、その一環としてマラソンを経験するのは良いことかなと思い、やってみないかと問われた時その場でやりたいですと言いました。
――マラソンを走ってみて、その後の練習に生かせたことはありますか
マラソン練習の時から長い距離を走り込むことができていたので、そこでスタミナには自信がつきました。また、びわ湖毎日マラソンという実業団の選手や強い選手が出る大会に出られたことは、大学に入ってから記録会しか走ってこなかったので、自信につながったかなと思います。
――昨年の漢祭りで『漢』となってから今シーズンを迎えましたが、シーズンの目標はどのように定めていたのですか
去年12月10日にメンバーを外れて漢祭りまで悔しい思いをして、その時点で「来年の箱根に向けて」と思っていたので、みんなと比べて20日(多く)次の箱根に向けて準備できると考えました。最後の箱根で走ってチームに貢献するということだけを考えてこの1年間やってきました。
――やはり4年生として最後の1年間、箱根にかける思いは強いということですか
自分の持ち味として、マラソンを走ったということもあるのですが、『長い距離なら誰にも負けない』と、こだわりを持ってやってきました。なので距離が短い出雲と全日本というよりは箱根を目指してやっていました。
――トラックシーズンを振り返っていかがでしたか
4月に5000メートルで自己ベストを出しました。あの時は練習をできていたのでよかったのですが、関カレ(関東学生対校選手権)のハーフで調子を落としました。教育実習もあり、多くの記録会に出て調子を上げるといったような機会もなかったので、夏までは苦しい思いをしました。
――その関カレでは初めてエンジのユニフォームを着て走りましたが、その時の想いは
初めてエンジを着るということで緊張もしましたし、プレッシャーも感じました。ですがせっかくもらったチャンスですし、ハーフでしかチャンスがないような感じだったので、このチャンスをモノにできたらと思いながらやっていました。結果を残すことは箱根に対するアピールにもなりますし、そこは意識をしてやっていましたが、調子は合わず悔しい思いをしました。
――関カレだけでなく、札幌マラソンでもハーフを走るなど、長い距離のレースに出場しましたが、それはやはり箱根を見据えてということなのでしょうか
そうですね。
――夏合宿ではどこに重きを置いて練習しましたか
例年しっかり走り込むということは当然のことだったのですが、それだけではなかなか上がれないので、良い動きで走ること、スピードを出すということだったり。特に自分のストライドを広げられるようにバネの強化も意識してやっていました。
――夏を終えて収穫や新たに見つかった課題はありましたか
春シーズンの、調子が良かった時までは調子が戻ったのかなとは感じました。良い感覚を秋になって取り戻せたのかなというのが、夏を越えた時の感想でしたね。
「絶対走って勝ちたい」
21・1キロタイムトライアルで力走する河合
――河合選手から見て、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)と全日本大学駅伝対校選手権(全日本)の結果はどのように見えましたか
全員が万全な状態でスタートラインに立てて、力を出し切れれば優勝を狙えると思っていたので、それができなかったというのは悔しく、もったいないなと見ていて思いました。
――駅伝シーズンのチームの雰囲気はどう感じていらっしゃいますか
エンジンがかかるのが遅かったのかなと。「やろう」という雰囲気が、直前になって主に走る選手を中心に出ていたのですが、僕を含めた周りがついてこず、全員が勝ちたいと思ってやっていたのかなと思うと疑問があります。
――出雲、全日本を終えて『3冠』という目標はハードルが高かったですか
ハードルが高かったというよりは、全力を出し切れれば達成できると思っていたので、それができなくて悔しかったです。また全日本のメンバーに入っていたのですが、直後のレースで外してしまってメンバー争いに絡めなかったというのがあって、自分が力になれていないというのはありましたね。
――出雲や全日本の後に、監督からチーム全体で言われたことはありましたか
「このままでいいのか」というのは生活面、練習面で問われることはありました。特に、「4年生が勝ちたいと思っているのか」というのを監督から問われました。
――それらを経て、河合選手にも変化はありましたか
最後に自分が走りでチームに貢献できるのは箱根しかないと思っていたので、チームが駅伝で結果を残せなかったのを、自分が走っていないからと他人事ではなく自分のこととして捉えて、練習と生活を徹底していこうかなと思いました。
――11月には21・1キロタイムトライアルに挑まれました。63分58秒という結果についてはどうお考えですか
63分台というのは一つの目標としていたので、タイムとして出たのは良かったのですが、内容で言うと最後の1キロ2キロが失速してしまいました。石塚(陽士、教1=東京・早実)だったり佐藤航希(スポ2=宮崎日大)に抜かされたこともあり、まだまだやるべきことが多くあると感じました。ただ、記録としてある程度の結果が出たのは良かったと思います。
――ここまでを振り返ると、河合選手の強みはスタミナのように思われますが
スタミナと、ケガせずに練習を積めることかなと。今年の駅伝シーズンを見ていて、主力のケガがあったので、そこで彼らがケガしている間もコツコツ練習を続けられるのは強みかなと思います。
――ケガをしないために意識していることはありますか
毎日のケアや、足が痛くなくても治療に行ったり温泉に行ったりと、できるだけ良い状態で次の練習に臨めるようにしています。
ともに頑張ってきた4年生
――箱根は、河合選手にとってどんな舞台ですか
小さい頃からテレビで見ていた舞台ですし、実際に現地で見たこともあります。憧れの舞台ではありますが、今では現実的に勝ちたいと思いの方が強いです。
――メンバー発表を経て箱根への想いに変化はありましたか。
今年1年間を通して絶対走って勝ちたいというのがありました。
――4年生全体としても最後の箱根ということもあり気合が入っていると思います
集中練習を一緒にやっている山口と室伏とは今日も長めのジョグをやっていたのですが、集中練習の期間は体がきついところもあるのですが、声を掛け合いながら3人で量も質も多い練習をしているのかなと思います。
――『3冠』という目標は当初からあったのですか
何となく4年の時に『3冠』したいなというのは下級生の時から言っていました。
――千明龍之佑駅伝主将(スポ4=群馬・東農大二)はどのような方なのでしょうか
千明はおっとりしていて喋り方もゆっくりなのですが、陸上になったら徹底していて、チームに厳しいことも言うし、自分自身にも厳しくやっているなというのが印象ですね。
――この1年間は最上級生として同期とともに部をまとめる立場だったと思います。どのようなチームづくりをしていきましたか
発言とかする方ではないのでそういうのは千明や半澤(黎斗、スポ4=福島・学法石川)に任せて、(自分は)練習の時にどういう取り組みをするのかや、Bチームにいることが多かったのでどういう姿勢で練習に取り組むのかとか。地味な練習も多かったりするのですが、そのような練習とどう向き合うのかを見せられたらいいなと考えていました。
――走り以外の面での役割はどのようなものですか
コツコツと、ケガをせずに練習を積めば、3、4年生になった時にメンバーに入れるような実力をつけられるという姿を見せることだと思います。特に一般で入ってきた下級生に対して、そのような姿を見せたいとこの1年は思っていました。
――特に思い出がある同期はいますか
山口と室伏ももちろんそうなのですが、向井(悠介、スポ4=香川・小豆島中央)とは関カレのハーフを一緒に走りました。夏合宿も向井はケガをしていたのですが、ケガをしているなか筋トレなど彼なりにできることを頑張っているのを見ていました。秋シーズンケガが治って一緒に練習する機会も多かったので、向井とは思い入れがあるというかよく一緒に走ったなという気持ちはありますね。
――プライベートの面で思い出のある同期はいらっしゃいますか
中谷(雄飛、スポ4=長野・佐久長聖)とかはよくご飯に行ったりしました。あれだけ強い選手であるからこそ、一緒にらいれる時間は大事にしようと思いながら過ごしていました。
――強い選手から吸収した部分はありますか
生活の中では、普段からのんびりしているのであまりないのですが(笑)、練習の姿勢などは近くで見ていて、突き詰めてやれていると思ったので、そこは自分に対しても考えるようになりました。
――チームに対しての思いはありますか
このチームは力のある選手が多くて、完全にまとまっているというわけではないですが、個性豊かな選手が多くて。力を発揮できればすごい力をもつ強いチームだと感じています。なので、自分を含めて悔いなく全員が最後の箱根を終われればいいかなと思います。
「後悔なく終われるような準備を」
――集中練習の消化具合はいかがですか
ほぼ全部のメニューをこなせているのですが、ハーフが終わった直後から集中練習が始まったので、所々疲労でキツくて離れることもあります。しかしそこは割り切って、そこまで悲観的にならずにきついところも我慢して我慢してとやってこられています。
――現在の調子はいかがですか
今が疲労のピークぐらいで、結構体はきついのですが、ここから疲労をとって状態を上げていくだけかなと思います。
――河合選手から見た現在のチームの雰囲気はいかがですか
1月2日、3日に合わせるという思いはそれぞれ持って、一人一人今やるべきことを考えながらやっているのかなと思います。
――走りにおいて、ご自身の役割はどのように考えていますか
ラストスパートで決めるというよりは、スタミナを生かして一定のペースで押していくところが自分の持ち味だと思うので、そういう走りができたらと思います。
――希望区間はありますか
復路の平地だったらどこでも良いかなと思います。
――そこだったら自分の強みが生かせるということですか
単独走の場面が多くなると思うので、自分でペースを作って走っていけたらなと考えています。ゲームチェンジャー的な役割よりは着実にという方が向いているかと思います。
――河合選手のような、いわゆる『叩き上げ』の選手は10区を希望される方が多い印象ですが、思いはありますか
そうですね。谷口(耕一郎、平30スポ卒)さんが4年前に10区を走ったことなどはとても印象に残っているので、そういったイメージを持っています。
――意識しているチームやライバルとしている選手はいますか
どこのチームも強く戦力も拮抗(きっこう)していると思うので、どこを意識しているかというよりは『自分たちが力を出し切る』ところの方に今は集中しているかなと思います。
――箱根までの課題はありますか
自分の状態にもよるのですが、3分を切ったペースで走るときつくなってしまうことが集中練習でもあるので、最後までより速いペースで押していけるような動きを獲得できたらと思います。
――箱根までの期間をどのように過ごしたいですか
あとは調子を上げて合わせていくだけだと考えているので、やるべきことはあまり多くないと思うのですが、最後箱根に向けてどれだけ集中し徹底して向き合えるかという部分で、自分にも厳しく、周りにも見せていければと思います。
――個人の目標を教えて下さい
優勝のためには区間3番以内で走らないといけないと考えているので、復路の平地、特に8、10区で3番以内で走ることです。
――最後に箱根への意気込みをお願いします
やっとメンバーに入ってチャンスをもらうことができました。陸上競技としての陸上は箱根で終わりなので、最後まで後悔なく終われるような準備と走りができたらと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 芦沢拓海、横澤輝)
◆河合陽平(かわい・ようへい)
1999(平11)年4月19日生まれ。161センチ。愛知・時習館高出身。スポーツ科学部4年。5000メートル14分17秒07。1万メートル29分33秒10。サッカー観戦が趣味だという河合選手。Jリーグの試合をリアルタイム観戦しながら、ケアを行うこともあるそうです!