高校時代からそのスピードはお墨付き。今年のトラックシーズンでも、U20日本選手権1500メートル3位入賞など着実に成績を残してきた栁本匡哉(スポ2=愛知・豊川)。しかし、自身としてはあまりうまくいかないシーズンになったと振り返る。駅伝では出雲・全日本ともにエントリーされながら、走ることはかなわなかった。今度こそ出走を果たし、1年の悔しさを晴らす初駅伝となるか。東京箱根間往復大学駅伝(箱根)に向けた率直な思いに触れた。
※この取材は12月12日に行われたものです。
不調乗り越えて
質問に答える栁本
――集中練習が始まりましたが、調子と消化具合はいかがですか
自分自身は夏合宿明けから思うように走れず、貧血状態にもなって病み上がりの状態で集中練習が始まってしまったので、ほとんど個別でやっていました。その一人でやっている中で練習自体はしっかりできていたので、見返してみると今年の中で1番調子は良いのかなと感じています。
――今日の練習も個別メニューでしたか
今日は全員各自ジョグだったので、そこはみんなで一緒にやりました。
――現在の練習ではどんなことを意識していますか
箱根は全区間で20キロ以上の距離を走るので、長い距離のジョグを心掛けています。
――箱根に関しては初めてのメンバー入りということで、発表された時の心境はいかがでしたか
正直入れるか入れないかの瀬戸際という感じだったので、まず入れたというところでホッとしています。
――ここからはこの1年間の振り返りをお願いします。まず、前回の箱根が終わってから、個人としてはどのような思いで1年をスタートさせましたか
去年は1年間、トラックでも駅伝でも思うような結果を残せずにいたので、今年こそしっかりトラックでも結果を残して、駅伝でも3大駅伝のどれか一つは走りたいという思いでした。
――明確な目標はありましたか
トラックでは関カレ(関東学生対校選手権)と全カレ(全国学生対校選手権)の入賞、駅伝ではどれか一つでも出走してチームに貢献できるような走りをしたいなと考えていました。
――元々1500メートルで活躍されてきた中で、今季それは通過点で5000、1万メートル、駅伝を見据えて取り組んでいるというお話が何度かありました。長い距離への意識に何か変化はあったのですか
高校時代から、大学に入ってからは1年目で1500メートルをやっていくとしても、2年目からは5000、1万で戦えるように作っていきたいなというのは考えていました。2年目になった今年はしっかり距離も踏んで、1500ではなくて長い距離を見据えた練習を自分の中でしてきました。
――今年3月には大腿骨の疲労骨折があったと思います。その時期はどういう状況でしたか
シーズンインする前ということで、自分の中では距離も踏みつつ春は1500メートルをやるという流れだったので、短距離に混じってのスピード練習などもしていたのですが、体の状況を把握せずに練習しすぎたことが疲労骨折につながったのだと思います。
――トラックシーズンには、U20日本選手権の1500メートル3位入賞がありました。シーズン全体を振り返って、大きい出来事でしたか
正直U20で3位に入ったことは自分の中では納得していなくて。1位を取ることを前提として置いていたので、あまり調子が上がらない中でも1位は絶対に取りたいと思っていました。周りに高校生などが多い中でのレースで、負けられないという思いだったので納得はいかなかったです。今年のトラックシーズンは疲労骨折してから調子が上がらなかったので、あまりうまくいきませんでした。
――その時期は5000メートルの調整をしていましたか
やってはいたのですが、そこまで5000メートルに執着した練習はしていなかったです。
――続いて夏合宿についてお聞きします。全体を通してどんなことを意識して練習していましたか
チーム全体としてジョグをベースとした合宿になったので、質の高い練習をすると同時に、疲労があっても長い時間ジョグしたりすることを意識していました。
――実際に夏以降、ここが変わったなというところはありましたか
やはり夏合宿以降走れなくてあまり状態が上がらず、その原因が貧血だったこともあったので夏合宿で走った分の手ごたえは感じなかったです。ですが、今になってそれが長い距離で走れることにつながってきていると思います。
――レースの回数は想定よりも減っていましたか
そうですね。記録会なども出る予定だったものを飛ばして、という感じでした。
――12月5日の競技会で自己ベストを出したばかりですが、短期間で一気に調子を上げて自己ベストを出せた要因は何だったのでしょうか
要因は分からないです。ただ、貧血明けだと戻った後が走りやすく感じるということもあると思います。あとは1週間前あたりから結構ジョグの量を増やして走りこんだので、5000メートルが短く感じました。それもあってベストは出ると思っていました。
――箱根へのアピールというところでいつもより緊張感はありましたか
そうですね。(調子が上がってから)最初のレースで、箱根のエントリーメンバー発表前というところでレース前は結構緊張していて、スタートラインに立つ前に相楽さん(相楽豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)にも緊張しすぎじゃないかと言われるくらい、顔にも出ていたみたいです。
――トラックシーズンで培ってきたどのようなところを駅伝に生かしたいですか
今はエントリーギリギリで入ったという感じなので、なんとかまた残り期間でしっかり力つけて調整して、出走できるように、悔しさを晴らせるように、箱根は出走したいなと思います。
――他大学でも構いませんが、同学年でライバルとして見ている選手はいますか
ライバルというのはあまり決めていません。こちらからライバルとして定めていても相手からしたらそうではない、ということもあるので、特に誰かをライバル視したりはしないですね。
――後輩との関係は
後輩だと中山遥稀(スポ1=千葉・専大松戸)と一緒にいることが一番多いです。
「ラスト勝負という場面では誰よりも速い」
U20日本選手権で先頭争いを繰り広げる栁本
――続いては、駅伝シーズンについて伺いたいと思います。ここまでの出雲・全日本はどのような気持ちでご覧になっていましたか
やはりメンバーに入った分、走れなかったというのが自分の中でとても悔しくて。正直自分の力が無いということなのですが、見ていて悔しいというのが一番でした。
――チームの結果に対してはどう捉えていますか
正直出雲も全日本もフルでメンバーを使えているわけではなかったので、優勝はできたら良かったのですが、自分の中では3位あたりの争いになるのではないかと思っていました。6位というのは想定外だったので、悔しかったです。
――改めて、『3冠』の目標についてはどのように感じましたか
チーム全体では『3冠』を目指している雰囲気だったのですが、出雲の時から全員が全員ベストコンディションというわけではなかったので、不完全燃焼で終わったという思いです。
――出走すれば初駅伝ですが、去年の自分と比べてここが変わったな、成長したなと思う部分はどこですか
やはり今年1年ジョグなどの距離も増やしていたので、去年に比べたら20キロとかは苦に感じないのかなと思っていて。ペースが上がったらどうなのか分からないですが、感覚的にはそこまで20キロというのが苦に感じなくなってはきています。
――長距離への対応は仕上がってきている感じなのですね
そうですね、はい。
――特にどこを強化していますか
自分は後半の失速が多かったのですが、そこは前回の5000に出た時もラストをしっかり上げることができたので、そういった面で後半への失速がなくなってきているのかなと自分の中では思っています。
――長く走るという意味で意識していることはありますか
いや、特に意識はしていないです。最初は1日30キロ走るというのもつらかったのですが、慣れてくれば結構楽になってきていたので、自然と最近は距離を踏めている感じがあります。
――箱根のレースでの具体的なビジョンや自身の役割についてはどのように考えていますか
外さないというのが第一前提ですね。やはり優勝するうえでは、全員が全員区間5位だったり3位以内で走るというのが条件になってくると思うので、そういった力をつけて走れるような状態に持って行くのが一番だと思います。
――出走する上での自分の武器はどこだとお考えですか
やはりスピードが持ち味だと思っているので、ラスト勝負という場面では誰よりも速い自信はあります。
――夏合宿中、希望は6区とおっしゃっていましたが
そうですね。狙うなら6区が多分一番可能性が高いかなと。6区に絞って今年は狙っていこうかなと思っています。
――練習でも下りを意識されていますか
そうですね。朝集団走で走る時とかは、下りを意識的に上げたりとかして。ちょっと下りを意識した感じではやっています。
――区間順位など個人的な目標はありますか
やはり走るなら5位以内で走りたいなと思っています。
――チームに対しては、今どのような思いを持っていますか
もう少しこれから全体でベクトルを合わせてやっていきたいなというふうには思います。
――最後に、箱根に向けて意気込みをお願いします
今年最後の駅伝になるので、しっかり優勝できるように、出走してチームに貢献できるように、残り期間準備していきたいなと思っています
――ありがとうございました!
(取材・編集 中村凜々子)
◆栁本匡哉(やなぎもと・まさや)
2002(平14)年1月11日生まれ。167センチ。愛知・豊川高出身。スポーツ科学部2年。5000メートル14分04秒01。1万メートル29分17秒37。事前アンケートで趣味はマジックと答えて下さった栁本選手。一時期は仲の良い選手達によく披露されていたそうですが、インタビュー当日にはすでにブームが過ぎていました。その時々で色々な物に没頭しやすく、今はまだ新しい趣味が見つかっていないそう。次は何が登場するのか、気になるところです!