【連載】箱根事後特集『不撓不屈』第7回 千明龍之佑

駅伝

 故障の影響もあり、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)が今年度唯一の駅伝への出場となった千明龍之佑(スポ3=群馬・東農大二)。自身初の復路での出走となった今大会では、厳しいシード権争いの中でのスタートとなったが、区間5位の力走を見せ、1つ順位を押し上げた。箱根を振り返り、駅伝主将として迎える来季への展望を伺った。

※この取材は1月20日にリモートで行われたものです。

「6、7、8区でいい流れをつくろう」

11月末にスピード強化練習に取り組む千明

――箱根が終わってからはどのように過ごされていましたか

 チームとしてオフになっていたので、地元で練習と休養をしていました。

――箱根について、ご家族やご友人からお話されることはありましたか

 昨年よりテレビに映っていたのもあって結構な人が見てくれていました。親戚の人や友達も「見たよ」と言ってくれて、昨年よりも反響が大きかったのを感じました。

――疲労は取れましたか

 脚も不安要素が少しあったので、箱根後にしっかり休むことができて、またリフレッシュした状態で(練習を)スタートできました。

――今年は帰省の期間が長かったのは大きかったですか

 休める時期がこの時期くらいしかないので、3月の立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)までにしっかり休んでフレッシュな状態でスタートするためにも、チームとして長く休みを取りました。

――8区への出走はいつ決まりましたか

 12月30日くらいにはほぼ決まっていたので、割と早かったと感じています。

――8区に決まったときはどんな気持ちでしたか

 タフなコースですし、自分自身箱根で大きな坂のあるコースを走るのは初めてのことだったので、2年連続で走った太田直希(スポ3=静岡・浜松日体)によく話を聞いて攻略する方法を考えました。

――8区以外にも出走する可能性のあった区間はありましたか

 7区か8区でした。

――事前対談では往路、その中でも昨年出走した4区希望というお話をされていました。8区になった理由をご自身ではどのように考えていますか

 昨年の箱根も7、8区でいい流れをつくって、9、10区でいい流れを引き継ぐことができたので、8区の重要性は大きいと思っていました。8区は去年直希が走っていますが、直希が抜けて経験者がいないという中で主力級の選手を置かなくてはいけない状況だったので、上りも苦にしない僕が適任だと思いました。(上りにも)あまり不安というか苦手意識はなかったですね。

――8区に決まったときに相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)からどのような言葉を掛けられましたか

 後半遊行寺からの上り坂でしっかり上げられるよう意識することと、しっかり区間賞争いをしていこうというのは話していました。

――前日の往路のレースを見て、どんな心境でしたか

 最後流れの悪い中ゴールしていたので、復路を走る選手が不安な気持ちを感じているということもありました。宍倉さん(健浩、スポ4=東京・早実)と同じ宿だったので、宍倉さんと6、7、8区でいい流れをつくろうという話をしました。6区の北村(光、スポ1=群馬・樹徳)にも1月1日に別れる間際に「後ろに任せて気楽に走ってこい」とは話したので、復路を走る選手は復路優勝を狙ってスタートしようという気持ちでいました。

――前後のチームとの差についてはどのようなことを意識していましたか

 10秒前に帝京大がいて当初の予定だとすぐに追い付いて、8区で結果を残されている選手だったのでその選手にしっかり食らいついていくというプランだったのですが、前半をうまく入ることができませんでした。後ろが詰めてきているというのも相楽さんが言ってくださっていたので、まずは後ろの選手を引き離すことを第一に考えていました。

――前半は腹痛もあってペースが上がらなかったとのことでしたが、精神面に影響はありましたか

 最初の6キロくらいまではあと15キロ弱走ることができるのかなという不安がありました。ですが10キロいくまでにしっかりと対応できたので、10キロの給水からは、また腹痛を出さないようにということをまずは考えて、あまりペースのことだったり、前後のことは考えていなかったですね。気づいたら前が詰まってきたという感じだったので、結果的に良かったと感じます。

――風や気温といったコンディション面はいかがでしたか

 やっぱり序盤が一番きつくて遊行寺から元気が出てきたのですが、一人で走る難しさや往路とは違う雰囲気が8区にはありました。そういった部分で最初は走りにくさを感じましたね。

――遊行寺では後ろの神奈川大と12秒差にまで詰まりましたが、そのときはどのような心境でしたか

 遊行寺を上る前に相楽さんから秒差も伝えられていて、僕も抜かれると思って遊行寺は上っていました。ですが遊行寺からリズムをつくることができて、遊行寺のあとの少しの上りも去年の直希よりもいいタイムで走っていたことも分かっていたので、今の走りを続けていたら大丈夫だろうなと感じていました。

――遊行寺の坂は4区終盤の小刻みなアップダウンと違うものだと思いますが、実際に走ってみていかがでしたか

 一番感じたのは長いというのと、脚が限界まできて体力がなくなるような感じがしました。今までで一番急な坂でなおかつ長い坂だったのでとにかくきつかったです(笑)。

――上り坂でのよい走りだったということで、来年は5区も視野に入ってきますか

 個人的にはチーム全体で5区を走る人を考えないといけないので、チームの中で上り坂に強いということが証明できれば僕も走ることはあると思います。

――5区を走ってみたい気持ちはありますか

 最後くらいはきつい思いもいいかなと思います。

――坂を上り切って小指卓也選手(スポ2=福島・学法石川)にタスキを渡す時はどのような気持ちでしたか

 帝京大を抜いて、前にも国学院大が詰まっていたので1秒でも国学院大と詰めて渡したいと思って全力で走りました。

――自分の走りを振り返った際に、評価できる点と課題に感じた点を教えてください

 遊行寺からの7キロをいいタイムで走ることができたので、8区は遊行寺からの上りでここまで変わるのだなということを感じ、8区という難しいコースをちょっとは攻略できたのが評価できる点だと感じています。課題としては、前半の10キロで自分の走りができずに力を出し切れなかったことです。次に走るとしたら前半の10キロは余裕を持ちつつもいい記録で通過して、さらに遊行寺で後続を引き離すレースができればタイムを狙えるのではないかと思います。

――目標の総合3位以内に足りなかったと感じる要素はありますか

 チーム全体的にタイムが上がってきていて、平均タイムも上位の方に来ていました。そういうことで油断や、僕たちもいけるのではないかという変な自信もあった中でのレースで、チーム力として劣っていたと思います。今年は隙を出さないチーム力の高いチームをつくり上げていきたいと思います。

 

「3冠を目指していきたい」

――新体制に移行してチームはどのような雰囲気ですか

 みんなリフレッシュできて、また新たな気持ちで練習に取り組めています。まずはハーフマラソンに向けてまた土台をつくっていき、チームとして最初の大会である立川ハーフをいい記録で走れるように頑張っていきたいと思っています。

――新体制でのチーム目標を教えてください

 全体でのミーティングをしてから目標を決めるのでまだ正式には決まっていないですが、4年生の意見としても3冠をしたいという声が多く上がっています。3冠をしたいという気持ちだけではできないというのは理解していますが、チームの力を発揮できれば狙えると思うので、4年生の学年としては3冠を目指していきたいと思います。

――駅伝主将としてどのようにチームを率いていきたいと考えていますか

 結果でチームを引っ張っていくこともそうですし、行動面でも、いい意味でも悪い意味でも後輩たちや同期の目が向けられると思うので、そういった部分でしっかりとした姿を見せるということが大事だと思います。また、人数が少ないチームなので一人一人のつながりを大事にして、主将として多くコミュニケーションを取っていきたいと思っています。

――主将として飛躍を期待している同期や後輩はいますか

 活躍してもらいたいのは同期で向井(悠介、スポ3=香川・小豆島中央)だったり佐藤皓星(人3=千葉・幕張総合)だったり、まだエンジを着られていない選手が新4年生の中にもいるので、今年は一皮むけた姿を期待したいと思います。

――個人としての目標はありますか

 今年はユニバーシアードがあるので狙っていきたいと思っていて、まずはハーフマラソンの選手選考があるのでしっかり勝負していきたいと思います。トラックでも標準記録を切って選考に絡むようなタイムを出したいと考えています。ユニバーシアードに出場することと、5000メートル1万メートルの自己ベストを大幅に更新することがトラックシーズンの目標です。駅伝シーズンは3冠したいのと、区間賞を取りたいと常々思っているので、最終学年で区間賞は狙っていきたいと思っています。

――今後出場する予定の大会を教えてください

 まずは3月に立川ハーフを走ります。

――大学ラストイヤーへの意気込みをお願いします

 ラストシーズンになるので、集大成として一番活躍したいと思っています。また主将としてチームをまとめ、チームの成績にもこだわっていきたいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 高橋優輔)

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◆千明龍之佑(ちぎら・りゅうのすけ)

2000(平12)年3月3日生まれ。169センチ。群馬・東農大二高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル13分54秒18。1万メートル29分00秒57。ハーフマラソン1時間3分40秒。2021年箱根駅伝8区1時間4分55秒(区間5位)。