【連載】箱根事後特集『不撓不屈』第1回 北村光

駅伝

 今年、総合3位以内を目標に掲げて臨んだ早大は、往路を11位で終えるという厳しい展開となった。逆転を誓った復路で、先陣を切ったのは1年生にして箱根デビューを果たした北村光(スポ1=群馬・樹徳)。早稲田記録にも迫る好走でチームを勢いづけた走りとともに、ルーキーとしての1年間についてお話を伺った。

※この取材は1月20日にリモートで行われたものです。

「リラックスして走れました」

12月の公開取材で笑顔を見せる北村(左端)

――解散期間はどのように過ごされていましたか

 2週間くらい解散の期間があったので、地元に帰って3日間は完全に休んで、8日あたりから走り始めました。ジョギング程度ですが。

――地元ではご家族や地元のお友達からの反響はありましたか

 今年はコロナがあったので、「外出しないでテレビで見てたよ」みたいな感じで(声をかけられて)、地元を走っているときも「よかったね」みたいなことは結構言われて、やっぱり箱根って影響力あるんだなと思いましたね。

――現在のコンディションはどうですか

 3日間しっかり休んだので、今はもう次の目標に向かって練習を再開しています。

――では、箱根のお話に移っていきます。本番で6区を走ることはいつくらいに決まったのでしょうか

 候補としては挙がっていましたが、完全に決まったのは12月30日でした。

――最終的な決め手については監督から言われたことはありますか

 理由とかは特になかったです。今年はお前で行くから、しっかり今から気持ちをつくれよ、みたいな感じでしたね。

――出走が決まったときはどのようなお気持ちでしたか

 結構直前だったので、走るにしろ走らないにしろ早く言ってほしいというようなもどかしさはあって。今年はお前で行くと言われたときは、「ああ、走るんだ」みたいな。あまり実感が湧かなかったというか、そんな感じでした。

――以前から希望は6区だとおっしゃっていましたが、実際に6区に選ばれるかということに対して自信はありましたか

 練習では結構手応えはあったので、走れるかなとは思っていましたが、決定ではなかったのでドキドキしながらも準備は進めていました。

――実際に決まってから変わった点はありましたか

 もう調整の時期に入っていたので、あまり特別なことはせず、気持ちをつくって落ち着いて行動していました。

――直前までの練習の調整具合はいかがでしたか

 結構いい感じというか、いい感覚で調整はできていました。

――本番について伺っていきます。まず往路はどちらでご覧になっていましたか

 1区は寮で見ていて、2区の途中くらいから前日の軽い練習に行って帰ってきて、3区をちょっと見て準備して移動してという感じでしたね。

――往路の様子はその間もご覧になっていましたか

 携帯で生中継を見ていました。

――往路の早大の結果についてはどのように感じましたか

 やはり選手それぞれに疲労があったり本来の力を発揮できなかったりした区間があったとは思っていて、もうちょっと行けたんじゃないかなと思うところはありました。

――初めての箱根でしたが、前日は緊張などはありましたか

 いや、特に緊張とかはなかったです。スタート前も結構先頭からは離れていたのである意味リラックスして走れたというか、沿道にもあまり人がいなかったので過度な緊張というよりかは適度な緊張具合で、結構リラックスして走れました。

――普段から他の試合でもあまり緊張されないですか

 中学生の時とかは大きい大会になると緊張していましたが、最近は慣れてきちゃったところはあります(笑)。

――同じ区間で意識されていた選手はいましたか

 (6区は)今回初めて出走する選手が多くて、その中でも國學院大の(島﨑慎愛)選手が同じ群馬県出身で去年も走られていて、前と20秒差スタートだったので勝ちたいと思っていたのですが、負けてしまったので来年は勝ちたいと思います。

――上級生の選手も多かったと思いますが、そこに関して意識はされましたか

 初めて走る選手が多くて未知数だったので、あまり意識はせず前だけを見て走っていました。

――先頭から開いていたというお話もありましたが、11位でスタートしたことはご自身の精神面や走りに影響はありましたか

 特にはなかったです。でも青学大さんが途中の5キロ地点くらいで来たときはちょっとびっくりしました。

――スタートの時にはあまり後ろの順位の選手は意識していなかったですか

 30秒差があったのでそんなには来ないだろうなと思っていました。でも自分の最初の5キロ(のペース)が遅すぎてあっち(青学大)が突っ込んで入ってきていたので、正直あの時は結構やばいなとは思いました。でも下りに入ってからは結構開いていたので、そこからは落ち着いて走れたかなと思います。

――最初の5キロの時は、前の拓殖大の選手を目指して走っていたのでしょうか

 そうですね、拓殖大を見ていたら自分も遅くなってしまいました。

――レース後のインタビューでも59分を切ろうと監督とお話されていたとおっしゃっていましたが、レース展開についてはなにか事前に話されていましたか

 ここを何秒でいけというような話はなかったのですが、10キロ通過だけを意識して走れとは言われました。あと、後半の平地に入ってからは気持ちだ、とにかく粘れというようなことは言われていました。

――粘り強さという点は事前対談の時にも課題として挙げられていましたが、最後の粘りという点に関してご自身で振り返ってみていかがですか

 自分がある程度想像していたタイムでは走れましたが、平地では練習していけばまだまだ稼げるなという感覚はつかめたので、来年もう一回走れるとしたらそこを課題に走りたいと思います。

――来年以降あと3回チャンスはあると思いますが、来年以降も6区に挑戦してみたいですか

 そうですね、6区に行きたいですね。

――今回の6区の走りを振り返ってみて、来年以降に生かしたい点はありますか

 やはり上りと平地が結構タイムロスしていて、下りだけだったらそこそこ速かったので、そこを生かしつつ、上りと平地で稼いでもっとタイムを縮められるようにしたいです。

――ご自身が思い描いていたレースプランと比べてみて、実際の達成度としてはどれくらいですか

 目標タイムは切れましたし、最初の上りが駄目だったぶんが後半生きたというか。ある程度想像していたタイムで走れたので今年はこれくらいでいいんじゃないかなと思っています。

――今回の好走につながったのはどのような点だと思われますか

 多少下りの適性とかはあったと思いますが、箱根の6区に向けて朝練習とかでプラスアルファで下りや上りを走っていたので、そこが良かったのではないかなと思います。

 

「昨年は自分にとってはいい年になった」

――今回は沿道の応援が自粛されるなど、例年と異なる空気感だったと思いますが、初めて箱根の大舞台を走った感想はいかがですか

 走っているときは、これが箱根かみたいな実感はあまりなかったのですが、(自分の周りで)見ている人も多かったので、走り終わってからは周りへの影響力というものも感じましたし、来年以降頑張ってと言われてもっと頑張りたいという気持ちになりました。

――今回の早大の順位や結果を振り返ってみていかがですか

 目標が3位以内で今回は6位でしたが、今年走った選手が来年も9人残ります。たぶん来年の目標は優勝だと思うのですが、強い新入生も入ってくるということで、個人個人の選手が頑張れば達成できると思うので、自分も頑張りたいと思います。

――昨年入部されてからイレギュラーなことが続いた1年だったと思うのですが振り返ってみていかがですか

 自分は結構自粛期間も練習が積めていて、5000メートル,1万メートル、3000メートル障害でも自己ベストを更新できたので昨年は結構自分にとってはいい年になったと思います。

――1年生で箱根に出場したということですが、2年生になってからチームの中でどのような役割を担っていきたいですか

 やはり後輩もできるので、尊敬される先輩というか、背中で見せられる、後輩がついてくるような選手になりたいです。

――これからのレースの予定は決まっていますか

 確定ではありませんが、3月の半ばのハーフマラソンに出場すると思います。

――最後にこれから1年間の個人としての目標を教えてください

 まず目先のハーフマラソンでしっかりいいタイムを出してトラックシーズンにつなげていくということと、個人としては3000メートル障害で日本選手権に出場したいという目標があるので、そこの標準を切って、日本選手権でしっかり戦うということが今年の目標です。

――ありがとうございました!

(取材・編集 伊藤可菜)

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◆北村光(きたむら・ひかる)

2002(平14)年1月18日生まれ。168センチ。群馬・樹徳高出身。スポーツ科学部1年。5000メートル13分58秒64、1万メートル29分00秒51。3000メートル障害8分49秒92。2021年箱根駅伝6区58分55秒(区間8位)。本番はあまり緊張しなかったというタフな精神力をお持ちの北村選手。これからの活躍にも期待です!