【連載】箱根事前特集『臙脂の誇りを取り戻す』第3回 武士文哉主務×久保広季マネジャー

駅伝

 第3回に登場するのは、武士文哉主務(文3=群馬・高崎)と、久保広季マネジャー(人3=早稲田佐賀)。主に長距離ブロックのサポートにあたってきたマネジャーのお二人に、この1年の歩みと、今のチーム状況についてお話を伺った。

※この取材は12月13日に行われたものです。

同じマネジャーでも…

競走部にかける熱い思いを語った武士

――お互いがどんなマネジャーか紹介していただけますか

武士 みんなから見ると少し頼りなくみえてしまう部分もあるのかなと思うのですが、僕としてはすごく信頼しています。一つには、色々頼んだ時のレスポンスが素早くて、そのスピード感に僕も結構驚かされているし安心している部分があります。また、表立って目立つことはあまりないのですが、裏で選手と密にコミュニケーションを取っているなというのが僕の目から見てもありますね。自分のことをあまり言わない分選手の話を聞くのがうまくて、選手が気兼ねなく話しかけられる存在になっているので、うまく組織を調和させるのに一役買っているのかなと思います。

久保 武士さんは今年長距離だけでなく全体の主務を務めていて、競走部全体をまとめる姿を横で見させてもらってただただ感服するばかりです。来年自分がこうやるのかと思うと、仕事を知れば知るほど武士さんには及ばないと思わされます。特に最近は駅伝シーズンを本格的に迎えて、4年生が少ない中でチームを一番盛り上げてくれている存在であることは間違いないと思いますし、ポイント練習など苦しい場面でよく声掛けをされていて、選手にとってもそれは大きなエネルギーになると思います。一緒にやれる時間は残り短いですけど、武士さんがこれまで作り上げてくださった明るい雰囲気を、来年以降も引き継いでいけるような存在になれたらなと思っています。

――お二人は同じマネジャーでも全く違った性質なんですね

久保 僕はあまりガツガツいけるタイプではないのですが、武士さんは表立って引っ張っていける人なので、その能力はほしいなといつも思っています。

――理想のマネジャー像はありますか。武士さんには昨年も伺っていますが変化はありましたか

武士 マネジャーに転向した時は、箱根を走るという自分の夢が断たれた瞬間だったので、そこで相楽さん(豊駅伝監督・平15人卒=福島・安積)が「日本一のチームには日本一のマネジャーがいる」ということを言ってくれたのは、僕が2年半マネジャー活動をやってこられた理由になっています。残り3週間くらいですけど、そこは最後まで追求したいなと思っています。あとは、マネジャーらしくはないかもしれないですが、僕はサポートするという意識はあまり持っていないです。というのも、学生が主体でやっている競走部という組織において、監督やコーチに比較的近いところにいるマネジャーという存在は非常に大きな意義を持つと思っているからです。組織を引っ張っていけるのも正しい方向に導くのもマネジャーにこそできることだと思うので、裏方でサポートするというよりは自分が率先して主体的に行動を起こしていって組織を導くのがマネジャーの使命なのかなと思って、支えるというよりは一緒に戦うというイメージでやっています。

久保 僕たちはチームの人数が少ない分一人一人の影響力がとても大きいからこそ、強い選手であれ力のない選手であれ密にコミュニケーションを取って、時には強い選手にも厳しいことを求める存在になりたいです。僕自身も選手でしたけど、選手間では競技の結果や、今けがをしているから自分はあまり言えない立場にいるなとかを気にしてしまいがちなので、そういうことは言いにくい部分があると思います。そこで委縮してしまうとチーム全体の雰囲気がバランスを取れなくなってしまうので、来年以降もそういう意味でコミュニケーションを大事にしてやっていきたいと思っています。

「ほっとしてしまった自分に腹が立った」(武士)

――前回の箱根の結果をどういう気持ちで受け止めて、どのようにこの1年をスタートさせたのでしょうか

武士 予選会を9位というギリギリの状態で通過していて、本番も6区を終えて12番という位置だったので、宍倉(健浩・スポ4=東京・早実)が最後駒大に競り勝って7番でゴールしてくれた時は正直ほっとした部分がありました。でもやはり僕は、早稲田大学は勝たなくてはいけないチームだと認識しているので、ほっとしてしまった自分に腹が立ちましたし、チームとして目指していた3位以内に届かなかったことに対して後から悔しさが来ました。1月の後半にミーティングをして次の目標を話し合ったのですが、そこでは大学駅伝三冠を取りたいという学生もいましたし、僕自身もそういう思いがありましたが、チームとして考えた時にまずは3位以内をとることが大事なのではないかということで、『3大駅伝総合3位以内』という目標を決めて活動してきました。

久保 僕が1年生の時にシードを落としていましたし、優勝争いをしないといけないという気持ちの反面、またもしかしたらシードを落としてしまうのではないかという思いも心のどこかにあって不安だったので、7位という結果には武士さんと同じくほっとした部分がありました。主力選手に大きなけがはなく、ベストメンバーを組んでのあの結果だったので、これが今の自分たちの実力だったのかなというふうに受け止めていました。ただ僕がテレビで見ていたころの早稲田は優勝争いをしていたので、このレベルで止まりたくないなということは、強く感じました。

――総合3位以内という目標を決めたのは1月末ということですが、今は「優勝したい」と口にする選手も多くいます

武士 チーム目標は3位以内のままですが、出場するからには優勝を目指していることには変わりないので、僕自身も優勝したいという熱い思いを持っている一員だと思っています。選手の中には優勝したいと思っている人も、3位以内に入りたいと思っている人もいると思います。

――優勝を目指したいという声は大きくなっているのですか

武士 7月頃全員が寮に帰って記録会をやった時から自己ベストが続出して、チームとして波に乗っている状態で、その結果が全日本でも表れて久しぶりに先頭をあれだけ長い時間走れたということが自信に繋がっていると思います。そして12月には中谷(雄飛・スポ3=長野・佐久長聖)と直希(太田・スポ3=静岡・浜松日体)が日本選手権で27分台を出して、本当にチームとして波に乗っているなと思っています。年間を通じて勢いが大切だという話を4年生の中でしていて、1月に出る試合から「早稲田ここにあり」ということを示していきたいという思いがあったので、1~3月の地方での大会に出場するメンバーには言ってきていました。2月の唐津10マイルロードレースで直希が2番に入った時から勢いが来ているなと僕は思っていて、今年のチームは何かやれそうな雰囲気があるなというのはみんなが思っているのではないかと思います。なので箱根でも台風の目になるというか、何か起こせるのではないかという思いが選手の中にはあると思います。

解散期間中の取り組み

――3月末に解散が決まった時の思いは

武士 混乱していましたね。安易に選手を実家に帰してしまったというところで主務として判断が及ばなかったなという思いがありました。本当に実家のある地域が安全なのか、練習場所を確保できるのかといった状況を選手一人一人がきちんと考えて帰ったのかなという疑問が僕の中ではありました。解散という言葉が独り歩きして、よく考えないまま帰ってしまった選手も見受けられたので、そこで選手に今後の方針や思いを明確に伝えることができたらよかったなという反省があります。

久保 何が何だかわからないまま、いざトラックシーズンというときに解散になってしまって、僕自身も混乱していましたし、選手も何を目標にしていいかわからない不安な時期だったと思います。誰からしても難しい時期だったと思いますが、そこで気持ちを切らさず実家に帰ってからもきちんと練習を積んで調子を上げてきたメンバーもたくさんいて、早大が自主性を大事にしている中で、そのいい面が出た部分もあったのかなと感じました。

――解散期間中はマネジャーとしてどういう取り組みをしましたか

武士 僕は郵便物とか対処しないといけないものがあるので寮に残っていたのですが、長距離は黒田賢(スポ4=東京・早実)だけ、短距離やマネジャー合わせても10人くらいしか寮にはいませんでした。そのメンバーの練習を見たり、コロナという状況下での新しい行動指針を作成したり、予算の再編成をしたりという仕事をしていました。あとは、先ほど言ったように主務として安易に家に帰してしまったという責任を感じていたので、全体の主将の伊東(利来也・スポ4=千葉・成田)と相談をして、その日にした活動、今何を考えているか、競走部全体へのメッセージの3点を毎日各学年一人ずつ発表していって補おうという取り組みをしていました。

久保 同期とはよくZооmで話をしていましたし、長距離全体でも学年関係なくグループをいくつか作ってミーティングをしていたので、割とコミュニケーションは取れていて、お互いの練習状況や状態を把握できていた点は良かったと思います。でも事務的な面で言うと武士さんなどに任せっきりで自分は何もできなかったので、もっと自分から動くべきだったなと感じています。

――7月の記録会で自己ベストが続出したのを見た時はどのような思いでしたか

武士 解散期間中に状況を聞いていた段階でもいい練習をできている選手が多くて、地元に帰って原点に立ち返ったことがいい方向に働いているなというふうに思っていたので、走る前からもしかしたら好記録が出るのではないかと思っていた部分がありました。2,3か月空いてしまったことで不安もあったので、本当に安心しましたし、自分たちで考えて練習に取り組んで強くなって戻ってきてくれてことが誇らしかったです。

山口、中谷、鈴木…夏合宿で印象的だった選手たち

イレギュラーだったこの1年について振り返る久保

――避暑地での夏合宿をほとんど行うことができなかったそうですが不安はありましたか

武士 不安はあったのですが、相楽監督からも暑熱順化の説明もありましたし、その前に好記録が続出していたことで、自分たちで工夫してやれば逆境も跳ね返せるかなと思っていました。

――所沢での夏合宿中のチームの雰囲気についてどのように感じていましたか

久保 当然暑いので苦しい練習が続いたのですが、例年は三部練習なのが二部練習になったことで、一回一回の練習で集中して距離を踏んだり質を上げたりして取り組むことができていました。集中してやっていた分けがも減りましたし、三部練習で距離を踏むことも大事ですがむしろ僕はこういう形も悪くないなと思いました。少し涼しくなってから菅平や妙高に行った際には、夏に踏ん張った成果が出てきた選手もたくさんいたので、もちろん夏の所沢での練習は大変でしたが、夏に例年通りに合宿を行えなかったことがマイナスだったとは僕は感じていないです。

――夏合宿中特に印象的だった選手はいましたか

久保 山口(賢助・文3=鹿児島・鶴丸)ですね。山口は本来今年主力でやっていかないといけない選手だったのですが、夏合宿前にけがをしてあまり状態が上がらず、Bチームがいる妙高に来ていました。そこで他の選手とはワンランク違う練習をやっていて、ジョグも精力的にこなしていたので、今年絶対やっているというような決意がよく見えていました。合宿が終わってすぐの5000メートルで結果を出し、全日本でもアンカーを務めて頼りがいのある走りをしてくれて、夏合宿通して悔しさと気迫が見えていたので、それを結果で証明してくれたことはうれしかったですし、箱根もやってもらいたいと思っています。

武士 みんな頑張っていたのですが特に印象深いのは中谷と創士(鈴木・スポ2=静岡・浜松日体)です。中谷は日本学生対校選手権(全カレ)で大惨敗という悔しい結果に終わった直後に菅平に来ていたのですが、合宿にかける意気込みが練習中だけでなく生活の節々から伝わってきていました。普段は走り込みをするというよりは感覚を研ぎ澄ましてやるタイプの選手なのですが、その合宿では人一倍走り込んでいて、いつもと違うなと思いながら見ていましたね。創士は、自粛明けにけがで出遅れていた分、みんなに追いつこうと頑張っていて、調子が上がってきたところでまた脚を痛めてしまって…というところで、今シーズンは辛かったと思います。ただ夏合宿中の取り組みというのはすさまじいものがあって、3時くらいに午後練習が始まって6時過ぎに帰ってくるというように、3時間以上のジョグをしたりしていました。今季これまでに出たレースすべて本人が満足できるものではなくて悔しい思いをしていると思うのですが、先週も1週間で270キロくらい走っていて、やってやろうという気概が一番伝わってくる、箱根では区間賞を取ってやるという思いが一番練習に表れているのが創士だと思うので、箱根ではこれまでの大変な練習が実を結んでくれるといいなと個人的に思っています。

――全カレでは1年生の活躍が目立った一方、上級生は振るいませんでしたがどのように受け止めていましたか

武士 北村(光・スポ1=群馬・樹徳)と諸冨(文1=京都・洛南)がダブル表彰台をかなえたことは本当にうれしかったです。一方で、上級生がというよりは、吉田(匠駅伝主将・スポ4=京都・洛南)が入賞を逃してしまったのは、本人はもちろん僕もかなり悔しかったです。吉田は前回の箱根が終わってからずっとけがで苦しんでいて、全カレも間に合うかどうかというところだったのですが、試合に出ればやってくれるというイメージが僕の中であったので、あと一歩のところで入賞を逃してしまったのは、上級生として情けないとかいうよりも同期としてすごく悔しかったです。

トラックゲームズにYouTube、数々の新たな取り組み

――10月のトラックゲームズinTOKOROZAWA(トラックゲームズ)では総合優勝という結果でしたが振り返って

武士 結果だけ見れば総合優勝というかたちでしたが、内容を見ると1万メートルを走った中谷と直希の存在がすごく大きくて、5000メートル終了時点では最下位でしたし、選手には申し訳ないですが一人一人の走りを見ても決して誇れる内容ではなかったと思います。チームの総合力や層の厚さという意味では、あの時点では明治さん、創価さん、東洋さんに負けていたと思いました。あとは4年生がエントリーすらできなかったというところで、このことについては本当に4年として情けないなと思いました。ただ4年の選手もみんな悔しくて、ずっと谷間の世代と言われながらやってきたので、最後の箱根くらいはレースでもそこにいたる過程でも4年生の存在感を見せたいなと思います。

――今年の4年生はどんなカラーの学年ですか

武士 ぶつかり合うことも多い学年ですね。でもお互いに思っていることを言えるので、陰湿な空気はなくて言いたいことを言い合える、指摘しあえる学年かなと思います。

――トラックゲームズの運営はマネジャーの仕事だったと思いますが、大変だったことはありますか

武士 トラックゲームズは結構難しいところがありました。YouTubeでライブ配信をしたのですが、学生の中で知識がある者はいなかったので夏の段階から手探りで準備を進めていました。また、出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)の代替大会ということをうたっていたので陸上界隈では注目度が上がるかなと予想していて、実際にメディアの方もかなりいらっしゃっていたので、競技の運営の見られ方にも気を配らないといけないと思って、細かなルールの調整に結構手を焼きました。

――YouTubeのチャンネルを立ち上げたのも今年ですよね

武士 コロナ禍で新入部員の数が少なくなって、早大は推薦で入ってくる人数が少ないので一般でどれだけ入ってくれるかが重要だというところで、中高生に競走部の魅力を伝えようと考えたのがYouTubeのアカウントを開設しようと思ったきっかけです。ちょうどトラックゲームズをやるということになったので、せっかくやるなら配信したら面白いのではないかということで大々的にやったという経緯です。

――新入生が少ないのは大変ですか

久保 マネジャーもトレーナーも一人も入ってきていないので、多いに越したことはないなと思います。入ってきてほしいですね。

今年のチームはなぜ強いのか?

――全日本の結果についてどう評価しますか

久保 8人中3人1年生がいたので若いチームでしたが、中谷や井川ら実績のある選手もたくさんいたので自信を持って臨めた大会でした。6区まで先頭に立ってやりたいレースができたと思いますが、8人全員が持っている力を出してやりたいレースをやったうえでの結果だっただけに、余計に力の差を感じました。なので、若い力も大事ですけど、僕の同期の千明(龍之佑・スポ3=群馬・東農大二)や4年生の吉田さん、宍倉さんの力が、優勝するためには欠かせないなということを強く感じた大会でもありました。

武士 僕は監督車に乗って後ろからレースを見ていたのですが、先頭を走っている時は本当にうれしくて泣きそうになっちゃって、やっと強い早稲田が戻ってきたという気持ちで見ていました。久保が言ったように、選手8人全員が持てる力を出してくれて、出し切れていない人はいなかったと思います。それでも5番だったというところで、箱根では一人体調不良とか力を出し切れないとかいうことがあれば、すぐに順位が下がってしまうという厳しさを痛感したレースでした。中心となる選手全員が出走して、全員が実力通り、あるいはそれ以上の結果で走らないと、目標達成には届かないなと痛感しました。

――その後トラックで好記録が続出しましたが、現在は3位との差についてどのように感じていますか

武士 箱根では特殊区間があるのでこれまでのレースの計算では計り知れない部分があると思います。山を制することができないと結果が付いてこないので、低学年の頃から山の候補として練習を積んできた吉田が、今シーズンうまくいかなかった分最後に結果を残すことができれば、主将としてもチームに勢いをもたらすことができると思います。

久保 3位以内は本当に狙える順位だし、優勝争いにも絶対に絡むことができると思います。去年以上にたくさんの選手が力を付けていますし、16人選ぶのも10人を選ぶのも本当に大変な作業で、集中練習を見ていても手ごたえがあります。ただ、一人でもブレーキがあればあっという間にシード権争いに巻き込まれるので、全員が力を過信することなく、優勝するぞという気持ちでやっていくことが必要だなと思います。

――秋以降チーム全体としてトラックで自己記録が続出しているのは、どういった要因だと思いますか

武士 僕が在籍していた4年間の中で一番内部競争が激しいと思っています。チームメイトがいい結果を出したことに奮い立つという流れが、2月の唐津で直希が2位に入って、3月には中谷が28分27秒の自己記録で走ったところから始まっていると思っています。自粛期間明けにも上位の選手に限らずBチームでも自己記録を出す選手が多くて、そういうのが起爆剤として内部競争に火をつけて、「自分もやってやる」という思いが波及しているのかなと思います。中谷も直希から刺激を受けて、2人でどんどん強くなっているという印象がありますし、さらに2人の姿を見てそれに続く選手が記録を出して、という流れがこの4年間の中で一番あるのかなと思います。

久保 今年は山口や室伏(祐吾・商3=東京・早実)ら推薦以外で入ってきた選手が、Aチームで食らいついてやっていますし、1年生にも強い選手がたくさんいるということで、うかうかしていたら外されてしまうという意識が主力選手に芽生えたのかなと思います。それが相乗効果を生んで、チームに浸透して好記録続出に繋がったのではないかと思います。

「今年の箱根は本当に勝ちたい」(久保)

――10日にはエントリー発表がありましたが、メンバーを知った時のお気持ちは

武士 久保が言ったように16人を選ぶのは難しかったと思うのですが、直近のレースで存在感を示すことができていた選手が着実に入ってきたなという印象で、順当だったのかなと思います。住吉(宙樹・政経4=東京・早大学院)が外れてしまったことは僕の中では結構大きかったです。入学した時は僕よりも遅いタイムだったのが、今年1年ずっとAチームで食らいついてきて、ここまでチームに影響力のある選手に成長したというのはすごいなと思うので、最後願わくは箱根を走ってほしかったなという思いがあります。入ってほしかったなという思いはありますが、漢祭りに出ると思うのでそこでしっかり『漢』を取ってほしいなと思います。

久保 僕も主力が順当に入ったことにはほっとしました。また、同期が7人メンバーに入って、入学した時から力のある世代と言われてきましたが、いよいよ上級生としてきちんとやっていかないといけない中でこれだけの人数が入れたことは良かったと思います。でもここがスタートラインだと思いますし、まだまだお互いに競争して7人全員が走れるくらいに力を付けていくことが、チームに勢いを与えるためにも必要だと思うので同期には頑張ってほしいです。外れてしまった4年生の先輩は練習でも私生活でもチームを引っ張ってくださっていて、僕もたくさん面倒を見ていただいたので、残り3週間まだまだ先輩方の持つ影響力は大きいですし一緒に頑張っていきたいなと強く思いました。

――集中練習の消化状況はいかがですか

武士 日本選手権に出たメンバーは全体の流れに合流していなくて追いかけながらやっている状況なのですが、そのメンバーについては日本選手権でもいい結果を残しましたし良い状態でここまでやってこられていると思います。最初から集中練習に参加しているメンバーは、夏に距離を踏んでいないということもあって疲労が溜まっている状態です。目立った故障者はいませんがそれにつながりうるので、選手自身も僕らマネジャーも、うまくケアしながら進めていきたいと思います。

――今年のチームの強みは

武士 中谷と太田の2人が27分台を出して、駅伝の流れを変える力を持っているというのは、非常に大きな強みだと思います。それに加えて山口や諸冨など一般入学組が力を付けているなと思っていて、それは早稲田が一番力を出せるチーム状況だと思っています。

久保 中谷と直希の2人もそうですし、この間の記録会でも井川(龍人・スポ2=熊本・九州学院)や宍倉さん、山口が日本選手権の参加標準記録に絡むくらいの記録を出しています。いくら中谷と直希が良くてもその2人におんぶにだっこだと戦えないと思うので、それに続く選手が続々と出てきているという点で、往路はもちろん復路でも戦えるという手ごたえがあります。なので十分に駒がそろってきているというのが、今年の強みだと思います。

――お二人が個人的に注目している選手はいますか

武士 僕は4年生と言っておきます。箱根は4年生の力なくしては上にいけないと思っているので、山を担う予定の吉田も、宍倉もきちんと出走していい結果を出すことで、チームの勢いに繋げてほしいと思います。

久保 中谷と直希ももちろんなんですけど、千明ですかね。解散明けはいい記録を出していて大迫さん(傑・平25スポ卒・現ナイキ)の合宿に参加してすごく力を付けていたのですが、全カレ、全日本と欠場して本人も悔しい思いをしたし、チームとしても彼のいない穴は大きかったと感じています。箱根ではこの1年の悔しさを挽回してほしいし、来年駅伝主将としてトップに立つ以上、ここで結果を残すことが大事だと思うので、僕は千明に期待しています。

――最後にマネジャーとして箱根に向けて意気込みをお願いします

武士 レース当日になったら僕たちがやれることは限られているので、そこまでの準備の段階で選手がしっかり力を出せるようなサポートや環境づくりをしていこうという思いが一番です。当日はこれまでやってきたことが結果に集約されると思うので、これからの3週間を大事にしてやっていきたいと思います。

久保 今年の箱根は本当に勝ちたいし、武士さんたち4年生を勝って送り出したいので、チーム全員で戦っていくために、みんなで勝ちに行こうと声を上げられるような存在になりたいと思います。僕たちがやれることをやって、10区でゴールするときにみんなが一番望む結果になればなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 町田華子)

◆武士文哉(たけし・ふみや)(※写真右)

1998(平10)年5月16日生まれ。群馬・高崎高出身。文学部4年。

◆久保広季(くぼ・ひろき)(※写真左)

2000(平12)年1月12日生まれ。早稲田佐賀高出身。人間科学部3年。