粘りの走りで5位入賞 一時首位を独走し見せ場作る

駅伝

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)が中止になったことを受け、今シーズン最初の大学駅伝となった全日本大学駅伝対校選手権(全日本)。早大は、1、2区を先頭が見える位置でつなぐと、3区で中谷雄飛(スポ3=長野・佐久長聖)が区間賞の走りを披露し、首位を奪う。その後6区の終盤まで首位を快走し、長距離区間の7、8区でも粘りの走りを見せて、昨年を上回る5位でゴール。2年連続となるシード権を獲得した。

 早大は、3、4区に中谷、太田直希(スポ3=静岡・浜松日体)の両エースをつぎ込み、前半重視のオーダーで先行逃げ切りを狙った。1区に起用されたのは、辻文哉(政経1=東京・早実)。序盤は「無駄に力を使っても仕方ない」と集団の最後方につけ、落ち着いてレースを展開する。8キロすぎに集団がばらけてからも、先頭から大きく離されることなく、1位の順大と11秒差の6位で井川龍人(スポ2=熊本・九州学院)にタスキをつないだ。井川は日体大、駒大などと集団を形成して前を追う。猛烈な追い上げを見せた皇學館大の川瀬翔矢(4年)に10キロ手前で追い付かれたが、「後ろから来た選手達に抜かれるのは嫌だった」と、意地のスパートで3位に順位を上げた。続く3区に起用された中谷は積極的な走りで、先を走る城西大、明大に迫る。1.7キロすぎで早くも追いつくと、並ぶことなく一気に抜き去り、首位に躍り出た。その後も5キロ13分台のハイペースを維持し、後続を引き離す。中継地点では2位に20秒差をつけ、4区の太田にタスキリレー。三大駅伝で自身初となる区間賞を獲得した。太田は5キロを14分5秒で通過する快調な走りで、明大との差を広げる。区間賞こそ逃したものの、従来の区間記録を上回る好タイムで走り抜き、2位の明大に52秒差をつけた。

4区で先頭を独走し、後続との差を広げた太田

 後半区間は他大学からの猛追を受けることとなった。5区に登場したのは、菖蒲敦司(スポ1=山口・西京)。前半は「予定通り行けた」といい、リードを守ったが、中間点を過ぎると苦しい走りになってしまう。後ろから佐藤一世(青学大)がみるみるその差を詰めてきたが、なんとか首位の座を守り抜いた。続く6区にもルーキーの諸冨湧(文1=京都・洛南)が出走。終始落ち着いた走りで、首位をキープする。終盤に明大、東海大に捉えられたが、そこから粘りを見せ、先頭から3秒差の3位で7区の鈴木創士(スポ2=静岡・浜松日体)へタスキを渡した。鈴木は後ろから追ってきた駒大、東洋大、青学大と共に集団を形成する。中盤から表情がけわしくなり、この集団から遅れをとってしまったものの、最後は東洋大をかわして、5位でタスキを届けた。アンカーを務めた、三大駅伝初出場の山口賢助(文3=鹿児島・鶴丸)は、6位でスタートした宮下隼人(東洋大3年)に13キロ付近で追い付かれる。しかし、「東洋大の選手が来たおかげでペースを上げることができた」と、そこから息を吹き返すと、終盤は4位の青学大を視界にとらえた。青学大をかわすことはかなわなかったが、昨年を上回る5位でゴールした。

東洋大を突き放し、5位でゴールした山口

 早大は3区から6区にかけて首位を走り、『三強』と称される駒大、東海大、青学大を脅かしてみせた。全選手が区間順位を一桁にまとめ、大きなミスなくレースを展開したことは収穫だ。しかし、『三大駅伝総合3位以内』の目標には及ばず、選手たちは悔しさを口にした。東京箱根間往復大学駅伝(箱根)でこの目標を達成するには、『三強』に割って入らなければならない。「部員数が少ないので層の薄さが出てしまう」(太田)という早大が、全日本より2区間多い箱根で輝きを放つためには、選手全員のさらなる走力向上が不可欠だ。レースを面白くする伏兵の座に甘んじることなく、もう一段階高いレベルで戦うために、残り二か月間でどれだけ成長できるか。臙脂の真価が試される。

(記事 高橋優輔、写真 Ekiden News提供、朝日新聞社提供)

熱田神宮前から駆け出した25大学の選手たち。中央後方、臙脂色のタスキを掛けるのが辻

第52回全日本大学駅伝対校選手権
区間 距離 名前 記録 区間順位
1区 9.5キロ 辻文哉 27分18秒 6位・区間新
2区 11.1キロ 井川龍人 31分51秒 5位
3区 11.9キロ 中谷雄飛 33分42秒 区間賞
4区 11.8キロ 太田直希 33分23秒 2位・区間新
5区 12.4キロ 菖蒲敦司 36分54秒 9位
6区 12.8キロ 諸冨湧 38分08秒 8位
7区 17.6キロ 鈴木創士 52分38秒 9位
8区 19.7キロ 山口賢助 59分10秒 6位
早大 5時間13分04秒 第5位

関連記事

★全日本大学駅伝対校選手権 選手コメント集(11/02)