昨季は全日本大学駅伝対校選手権(全日本)で1年生ながら補欠メンバーとして登録されるも、その後はけがに苦しんだ。初ハーフとなった3月の日本学生ハーフマラソン選手権ではチーム内2番手でゴールし、復帰を印象づけると、夏合宿以降の記録会では1万メートルの自己ベストを二度も更新。しかし自身の走りには決して満足していない。中学時代から夢見る東京箱根間往復大学駅伝(箱根)の出走を目指しアピールを続ける、山口賢助(文2=鹿児島・鶴丸)の今に迫った。
※この取材は12月4日に行われたものです。
「スピード面を強化しています」
自身のシーズンを振り返った山口
――集中練習が始まりましたが、練習はしっかりとこなせていますか
いい感じで順調にきていると思います。
――昨年は故障によって集中練習をこなせなかったそうですが、初めての集中練習はいかがですか
この時期に去年走っていなかったことで、寒い時期に練習していなかったことによる朝練などの辛さはあります。ですが夏からずっと走り込んできたので、練習量は増えても量自体では(問題ないです)。気候の変化で少し苦しんでいる部分はありますが、量自体には苦しんではいないです。
――1万メートル記録挑戦会の試合後、「集中練習で外したらもう後がないと思う」というコメントがありましたが、これまでの試合(箱根予選会や記録会など)での反省を練習では生かせていますか
レースの内容よりも調整の部分で、色々と反省を生かしている部分があります。自分は調子が良すぎると逆にレースがうまくいかなかったり、逆に調子が悪かった時にいい感じで走れたことが多かったので、その部分を自分の中で振り返って、一回一回の集中練習でも意識して取り組むようにしています。
――集中練習の中で意識している部分はどこですか
今年は量が増えるだけでなく、スピードも意識した練習内容になっていると相楽駅伝監督(豊、平15人卒=福島・安積)も仰っています。具体的には練習の後に200メートルを8本入れる練習があるのですが、そのような練習を使い、自分にないスピード面を、力入れて練習するようにしています。
――集中練習をこなしていく中で伸びていると感じる部分はどこですか
最近の集中練習では走り始めの1000メートルや2000メートルを突っ込み、そこからペースを落とした後に最後にペースを上げていく練習が多いのですが、最初の突っ込んでいく中での余裕度として、速いペースでも苦しむことなく走れています。
――箱根予選会後はスピード、さらにスタミナの部分を鍛えていきたいと話してましたが
特にスタミナの部分に関しては予選会を迎える前よりもジョグの量を増やすことを意識しています。スタミナの部分は練習内容もそうなのですが、ハードルのドリルや縄跳びであったりと、技術的な部分でスピードを改善していけるように練習に取り組んでいます。
――『3位以内』とのチームの目標に対し、現在のチームの練習中の雰囲気はどのように感じてますか
箱根予選会が終わった後にミーティングがあって、そこでチームの雰囲気がガラッと変わった感じがありました。全日本では(6位と)チームを良い感じに立て直してきていて、箱根予選会の前の時期に比べると、いい感じの流れでチームは立て直せてきていると思います。
――その中で山口選手はチームの中でどのような存在ですか
あまり自分は生活面や競技面で中心的な立場とはなれていないのですが、練習の部分や普段の生活面で引っ張ることができていなかった部分を、自分も少しずつではあるのですがチームを盛り上げていけるようにと思うようになりました。
――練習を共にする中で、意識している選手はいますか
今の立場的に自分は最後の10番手を争っている立場であるので、そういった(10番手を争う)選手たちには勝ち切るという意識でいます。それだけでなく、上の力の選手に食らい付いていく意識でいるので、特に誰という意識はあまり持たないで練習しています。
――同期では3選手が全日本の6位入賞に貢献されましたが、彼らの活躍はどのように映りましたか
(全日本では)彼らの走りをサポートするかたちでした。力があるのは分かっていたのですが、それを見て自分がそこに加わることができていない悔しさが大きくて、自分もそこに加わりたい気持ちが一層強まりました。
――全日本では当日変更と、三大駅伝に未だ出走できていません。その部分はどのように捉えていますか
入学した時のビジョンとして、2年目までに箱根を走る。それをステップにして、3、4年で活躍するという目標があるので、来年と再来年がある意識ではなくて、今年に懸ける思いは強いです。ここまで三大駅伝には一回も出れていませんが、これまで以上にここから1カ月は気持ちを高めて、走る準備を進めていきたいと思います。
――昨年は全日本に補欠として登録されましたが、今年は直前まで8区にエントリーされていました。その部分はどのように捉えていますか
昨年は比較すると、昨年はただ入れてもらっただけではあったのですが、今年は出走できるかどうかの段階までくることができていて、その部分でしっかりと成長できていると感じることができました。その一方で、箱根予選会などでの平凡な走りだと一人抜け出すことができていないことが、今回出走できない要因ではあるので、成長できている部分は良しとしても、この現状に甘んじることなくやっていきたいと思います。
――全日本の選考という意味でも、箱根予選会でのチーム内順位はどのように感じるものでしたか
心の中ではチーム内の順位を意識して走った部分はあって、その中で7位に入ることができたのですが、これまで大きな舞台での経験がなかった分、もう少し上の順位で走ることができていれば全日本を出走できたのかなというのが率直な思いでした。
「満足ではなかったが、一歩一歩成長することができたシーズン」
箱根予選会で対校戦デビューを果たした
――昨年からAチームで練習されていますが、これまでのAチームでの練習を振り返ってください
Bチームでやっていた時は自分が引っ張っていくことが多かったのですが、(Aチームになってからは)練習で引っ張っていくことが少なくなりました。でも練習を引っ張っていかないと成長ができないと思います。箱根予選会が終わり、ミーティングが終わってから、自分もチームを引っ張っていこうという思いが自分の中で芽生えてきたので、これまでの(練習に)付いていくだけでなく、引っ張っていく意識を持ち、チームの中で(練習に)取り組んでいきたいと思いました。
――夏場から好調を維持しているのは、意識面での変化もあってですか
練習量だけで言えばチームでもトップクラスの量をすることはできたのですが、内容だとそうはいかない部分がありました。ただ一つきっかけとすれば、合宿の一週間後の大東大ナイターでいい走りができたので、そこから自信が芽生えたのはありました。
――大東大ナイター競技会では3分ペースでレースを進めていくなど、入学時に比べても成長が見えましたが
春先にけがした部分はあったのですが、継続してここまで練習できているのが一番大きいのと、自分の中でこれまでの練習にプラスして目標に積極的に取り組むようにしてきたので、その部分で成長をすることができていると思っています。
――昨年の箱根でチームは13年ぶりにシード落ちとなりましたが、その部分で感じるところはありましたか
これまで自分が大学に入る前は、早稲田は箱根では上位でゴールするチーム。いざ自分がチームの一員としてやっていく中で、こういう結果になったのは今までの人生の中で一番悔しかったですし、その中でも自分自身が走ることができず何も貢献できなかった上で、このような結果になったことが苦しかったです。
――どのような意識で昨年の箱根後は過ごされましたか
けがも箱根が終わってから順調に治ってきて走ることができるようになったので、箱根後はチームとして何も貢献することができなかった意識を常に持って、毎回練習に取り組んでいました。
――春先には地元で合宿が行われましたが
昨年までは同じ鹿児島の指宿で合宿をしていたのですが、自分の地元で合宿が行われるとは夢にも思ってなかったので、自分の高校時代の懐かしさを感じながら、陸上始めた時の原点を感じながら、練習に取り組むことができたと思います。
――今シーズンを振り返って
立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)でチーム内2番に入ることができ、まずまずのシーズンのスタートを切ることができたと思います。ですがその後にけがをしてしまい走ることができず、そこから停滞した部分があったので、夏合宿入る前から徐々に状態を上げてきて、そこから夏合宿で練習を積むことができました。冬には平凡なタイムで正直納得のいかない部分があるのですが、自己ベストを2回出すことができ、予選会では初めてチームを背負って走る試合に出場することができたので、まだまだ満足のいくシーズンではないですが、一歩一歩成長することができたシーズンだったと思います。
――全日本予選会では1年生が3人出走したことで感じる部分は
1年生が3人出走ということで頼もしく感じる一方で、自分たち上の学年がこのまま1年生に頼っているようではチームが上にいくことはできないと思うので、1年生に頼りっぱなしではなく、しっかり上の学年として逆に引っ張っていかないといけないなと感じました。
――その中でチームを背負って走った箱根予選会での結果は
正直狙っていた気持ちもあったのですが、まだ自分の力が足りてなかった部分もありました。そこは自分でも理解できてはいるのですが、そこをすんなりと受けてめているだけではと思う部分もあって、ここから成長していかないといけないと思いました。
――大東大ナイター競技会の結果で確固たる自信を得ている印象を受けますが、夏合宿の練習中などで力を付けていると感じる時はありましたか
自分はこれまで練習で苦しくなった時に一気にペースダウンしてしまう部分が本当に多かったのですが、(夏合宿では)全く粘れることができない部分がなくなってきて、仮に離れたとしても一気にズルズルといくのではなくて、間を少し空けながらでも粘ることができるようになったのが、練習中に成長を感じた部分です。
――納得のいく結果となってないと感じたのは
目標としていた全日本に出れなかったのが正直一番大きいですし、特に記録会も自分の納得できてない部分です。
――その中でも自己ベストをしっかりと出していますが
練習を外すことが少なくなってきた。けがもしないで、順調に練習を積むことができているのが、そうした部分に表れていると思います。
「自分は復路タイプ」
――エンジを着けて箱根を走りたいと予選会の時に言っていたが、自身にとって早大競走部とはどのような存在ですか
自分が陸上を始めた中学校の頃からの一番の目標であって、今までは入ることが目標としてやってきました。大学に入ってからは入れたという喜びがあったのですが、自分自身エンジのユニホームを着て走ることが今の目標です。大学は早稲田を自分が選んだので、その為にできることを全てやっていかないといけないので、生活面でも一番は(競技に)捧げる気持ちでいます。
――生活面では勉学と競技をしっかりと両立できていますか
趣味はあまりないですし、勉強することは好きなので、その部分に関しては楽しくやりながらできていると思います。
――早稲田に入って良かったと感じる部分はどこですか
地元に帰った時に早稲田に入って良かったと実感することが多くて、結果を残せてはいないのですが、「頑張ってね」、「箱根走ってね」と言われることが増えましたし、仲間にも恵まれているので良かったと思います。
――『仲間』という言葉がありましたが、その中で先輩や同期はどのような存在ですか
頼りになる先輩が多く、優しくフレンドリーに接してくれる先輩が多いです。同期も僕の性格を理解して接してくれる部分があるので、優しくも自分に厳しいことを言ってくれる理想の同期だと思います。
――特に優しいと感じる先輩はいますか
名前を出すと、4年生は三上さん(多聞、商4=東京・早実)で3年生は本郷さん(諒、商3=岡山城東)。同部屋だったり、自分の指導係とあって、よくご飯に誘ってくださったりと話し掛けてくれます。
――部員日記でも三上選手に奢ってもらったと書かれてましたが
三上さんには本当に焼肉に連れて行ってもらったりとしていて、入学してから10回くらい連れて行ってもらってます。
――大食いとお聞きしますが、食べ過ぎたことはありますか
まあ、それはもう。普段の寮のご飯を食べている時も、周りが僕にくれたりすることもあるので…。食べ過ぎた分は、しっかりと走って消費していけばとは思っているので、ちょうどいい感じでうまく流れていると思います。
――三上選手は、10人目を争っていく選手の一人ではありますが
正直多聞さんに走ってほしいという気持ちは持っていますが、それ以上に箱根本番は一番状態が良い選手が出るべきレースだと思うので、そこはしっかりと割り切って。先輩だからとかはなく、多聞さんは目標の先輩の一人ではありますが、超えていきたいと思っています。
――太田智樹駅伝主将(スポ4=静岡・浜松日体)はどのような主将ですか
ここまで選手に対して何でも言ってくださる人は見たことがないですし、これまで様々の団体に所属してましたが、僕としてはチームを引っ張っていく主将としての立場が一番適している、理想であると思います。力でも言葉でも引っ張っていける、頼もしくもある格好いい主将です。
――新入生対談の時は山以外を箱根では走りたいと言っておりましたが、現在希望区間はありますか
山以外と言っていたのですが、夏合宿とかで下りを走ることがあったのですが、自分の中で下りはいけるかなという部分があって、僕は正直上りがかなり苦手なので(走ることは)ないのですが、それ以外の区間。ただ自分のタイプとしては復路が合っていると思うので、6区から10区のどこでもいいので走りたいです。
――復路タイプとありましたが、自身の走りのタイプはどのようなものですか
自分はあまりスピードがある方ではないのですが、スタミナの部分に関しては自信を持っているので、周りの人がいなくても自分のペースで押していって。単独走になってもしっかりと走りきる。高校時代も一人で走ることも多かったので、そういう部分で慣れているのもあるので、自分としては復路がタイプと思います。
――箱根ではどのような働きをしたいですか
チームが『3位以内』という目標を掲げている中で、当然箱根を走っている選手としては最大限貢献できるように区間5位以内で走らないといけないと思っています。任された区間で走るのは一人なので、他大に負けないという気持ちで走りたいです。
――メンバー入りを目指していくライバル選手の中で勢いを感じる選手は
三上選手です。勢いというよりも、外さずにコツコツと地道に練習されてきた部分があって、そうした安定感で結果を積み重ねている部分があります。(多聞さんは)上の大きな舞台では走られていないのですが、その部分(成果)が今現れてきていると思います。
――ラストのアピール争いで勝つために、箱根に向けて残りの期間で詰めていきたい部分はどこですか
集中練習の一回一回のポイント練習を外さずに、前の方でこなしていくことが一番大事になってくると思います。監督がジョグの部分などもしっかりと見てくれていると思うので、そうした部分も気を抜かずに。僕としてはジョグの部分も力を入れたいと思います。
――ラストのアピール争いをしていく中での自身の強みは
箱根は20キロ以上の距離となることで、自分がこれまで練習の量の部分ではチームでも上の方で、スタミナも付けることができたので、しっかりとアピールしていきたいと思います。
――最後に箱根に向けて意気込みをお願いします
大学四年間の中で1回でも多く箱根を走りたいという思いがあるので、自分の一番の目標でもあるので、絶対に走る。走るだけではなく、チームの目標である『3位以内』に最大限貢献できるようにしたいと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 大島悠希)
底力を初の箱根路で見せつけます!
◆山口賢助(やまぐち・けんすけ)
1999(平11)年5月3日生まれ。175センチ、60キロ。鹿児島・鶴丸高出身。文学部2年。自己記録:5000メートル14分24秒23。1万メートル29分52秒11。ハーフマラソン1時間5分02秒。大食いで知られる山口選手は、寿司80貫を平らげたこともあるそうです。「食べ過ぎた分は、しっかりと走って消費する」。箱根でも食べた分をエネルギーに変え、快走を見せてくれます!