【連載】箱根事後特集『臙脂の足跡』第5回 太田智樹

駅伝

 今年の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。各校のエースが集う『花の2区』は例年に増してハイペースの戦いになった。そこに早大が起用したのは昨年の経験者である太田智樹(スポ3=静岡・浜松日体)。ケガで長期離脱を余儀なくされていたが、直前の状態と経験を買われ、当日変更で2区に出走した。しかし、約半年ぶりのレースで待っていたのは厳しい現実だった。混戦の中4位でタスキを受け取ると、周りのペースについていけず徐々に順位を落としてしまう。3区の選手が待つ戸塚中継所にタスキをつないだのは、全体の18番目だった。

※この取材は1月16日に行われたものです。

「甘い区間ではなかった」

質問に答える太田智。今後は駅伝主将としてチームをけん引する

――箱根が終わってからはどのように過ごされていますか

 さすがにちょっと(右膝のケガが)悪化したので走っていないです。今は休んで、治す方に専念しています。

――帰省などはされましたか

 はい、しました。

――ゆっくり休めましたか

 そうですね。

――今は箱根の疲労などはありますか

 そんなにないです。今は走っていないので(笑)。

――箱根で悪化してしまったのですね

 そうですね。あの後さすがにちょっと悪くなったので、今はとりあえず治そうという感じです。

――事前対談の際(12月5日)は、まだ集中練習に参加できていないということでしたが、いつ頃から合流できたのでしょうか

 あの後わりとすぐに、1週間以内には合流したと思います。

――そこからのメニューには参加できていたのでしょうか

 そうですね。減らしたりもしたんですけど、後半はしっかり全部みんなと一緒にやっていました。

――2区への出走はいつ決まったのでしょうか

 1週間前ぐらいですね。

――その時の心境というのは

 もう(2区にいけるのが)自分しかいなかったので、覚悟を決めて。いろいろ不安はあったんですけど、やるしかないなという感じでした。

――やはり練習を積めていない不安がありましたか

 そうですね。去年2区を走った時に比べたら全然練習もできていないし走り込めてもいなかったので、そういった部分で比較した時に少し不安はありました。

――足に対する不安はありませんでしたか

 はい。痛いわけではなかったので。

――レース中も膝の痛みはなかったのでしょうか

 そうですね。

――相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)などから、レース前に指示はありましたか

 中谷(雄飛、スポ1=長野・佐久長聖)が前半で来るということだったので、周りにいる選手をうまく使って後半が勝負という話はもらいました。あとは基本的に任せるという感じです。

――昨年の2区の経験を踏まえて、考えていたレースプランはありましたか

 後半差がつくところだったので、いかに前半楽に入って後半しっかり上げていくかというのがポイントだと思っていたんですけど、思うように走れなかったです。

――今年は万全な状態ではなかったと思いますが、その中でご自身の2区での役割はどのように考えていましたか

 去年はある程度攻めて順位を上げることができたんですけど、今年は状態的にそれが厳しかったので、自分の中で最低限でつなげられればと思っていました。でも、そういう甘い区間ではなかったなと思っています。

――設定タイムはありましたか

 69分前半では走りたいという目標はありました。

――実際にタスキを受け取った時は混戦でした。その中でどのような気持ちでスタートされましたか

 周りに青学大だったり、東海大の選手がいたので、しっかりここに付いていこうという気持ちで走り出しました。

――相楽監督が、「2区が思った以上にハイペースだったのが誤算だった」とおっしゃっていましたが、実際いかがでしたか

 突っ込む練習ができていなかったので、相楽さんとも話して「ある程度イーブンで走ってくればいいよ」という感じだったんですけど、ああいう状況が状況だったので、付いていかざるを得なくて、突っ込んでしまったという感じです。

――序盤から周りにいた選手から遅れる形になりましたが、その時は自分のペースを刻むことを選んだという感じだったのでしょうか

 そうですね。ちょっと(周りのペースが)速いと感じてしまったので自分のペースで刻もうと思ったんですけど、その自分のペースも思うように上がらなくて、ズルズルといってしまいました。

――中盤からは中島大就選手(明大)との並走が続きました

 向こうもペースが上がっていなかったので、泥仕合みたいな感じになってしまったんですけど、1人で走るよりはここでしっかり付いていこうと思って付いていきました。

――改めて個人の結果を振り返っていかがですか

 チームの結果が悪かったのは自分の区間が悪かったのが大きく影響しているので、そこはしっかり反省しないといけないですし、チームに迷惑をかけてしまったのはすごく残念なんですけど、いつまでも下向いていてもしょうがないので、今はしっかり切り替えています。

――復路はどのようにご覧になっていましたか

 ずっと集団だったので、楽に走って後半しっかり上げてくれればと思っていたんですけど、僕はもう応援することしかできなかったので応援していました。

――小澤直人選手(スポ4=滋賀・草津東)のゴールを大手町で迎えた時のお気持ちはいかがでしたか

 すごく残念な気持ちと、申し訳ないという気持ちが強まりました。

「予選会は自己ベストを狙うチャンス」

覚悟を決めて臨んだ二度目の2区は苦しい走りとなった

――太田智選手は駅伝主将になられましたが、主将はどのように決まったのでしょうか

 同学年の長距離ブロックで話し合って決めました。

――どんなチームづくりをしていきたいと考えていますか

 今は落ちるところまで落ちたと思っているので、去年の駒大じゃないですけど、チャレンジャーとして一つでも上のチームを食えたらなと思っています。

――チームの具体的な目標は決まっていますか

 これから話し合って決めていきます。

――現時点でチームの課題だと考えている部分はありますか

 人数が少ないのもあるんですけど、やっぱり層が薄いというところと、あとは学生のトップだったり日本選手権に出るような選手がまだいないので、そういった選手を出すというのが今のところの課題なのかなと思います。

――主将としてどのようにチームを引っ張っていきたいですか

 あんまり言うタイプではないので、今はこういう状況ですけどしっかり治して、まずは結果で表して背中で引っ張っていけたらなと思っています。

――今年は全日本(全日本大学駅伝対校選手権)、箱根と予選会からのスタートになりますが、どのように捉えていらっしゃいますか

 もうこれはしょうがなくてやるしかないので、今はそんなにネガティブなイメージではなくて、どちらも1万とハーフのベストを狙うチャンスだと考えています。しっかりベストを出した上でチームとしても突破して、本戦につなげられたらなと。どちらかといえば前向きな捉え方をしています。

――新チームでキーマンとなる選手や期待している選手はいらっしゃいますか

 今の1年生が2年生に上がって力をつけてくれるのも楽しみなんですけど、やっぱり最後に必要になってくるのは4年生の力だと思うので、新迫(志希、スポ3=広島・世羅)、大木(皓太、スポ3=千葉・成田)だけじゃなくて、一般の真柄(光佑、スポ3=埼玉・西武学園文理)、遠藤(宏夢、商3=東京・国学院久我山)、伊澤(優人、社3=千葉・東海大浦安)、多聞(三上、商3=東京・早実)とかにも期待したいと思っています。

――太田智選手個人の競技面での目標はありますか

 本当は立川(日本学生ハーフマラソン選手権)に出てユニバ(ユニバーシアード)にハーフで出たかったんですけど、まだ(立川ハーフには)出るかわからないですし、出ても戦えるかわからない状況なので、まずはしっかり足を治して、インカレでは表彰台を目指せればなと思っています。

――駅伝での目標はありますか

 二つしか出れないんですけど、その二つとも今年度チームに迷惑をかけた分しっかり還元してチームを引っ張っていけたらなと思っています。

――今後レースに出場される予定はまだないのでしょうか

 一応2月の唐津(唐津10マイルロードレース)と3月の立川にはエントリーするんですけど、出るかはまだわからないです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 宅森咲子)

◆太田智樹(おおた・ともき)

1997(平9)年10月17日生まれ。175センチ、59キロ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分00秒23、1万メートル28分56秒32。ハーフマラソン1時間2分48秒。2017年箱根駅伝8区1時間8分32秒(区間14位)。2018年箱根駅伝2区1時間8分04秒(区間6位)。2019年箱根駅伝2区1時間11分08秒(区間21位)。