【連載】箱根事後特集『臙脂の足跡』第1回 太田直希

駅伝

 1年生ながら、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)を含む学生三大駅伝すべてに出走した太田直希(スポ1=静岡・浜松日体)。シード権を狙う大集団でタスキを受けるという難しいレースの中、なかなか集団を抜け出すことができなかった。区間10位という結果を、どのように受け止めているのか。そして、足りなかったものは何だったのか。

※この取材は1月16日に行われたものです。

「自信を持って走ろう」

質問に答える太田直

――箱根後はどのように過ごしましたか

 1回体調を崩してしまってあまり遊ぶってことはしてないんですけど、まあいいリフレッシュにはなったかなと思ってます。

――箱根を走ったことで周りからの反響はありましたか

 すごいねって感じはあったんですけど、自分の中では全然箱根で終わりじゃないので、流すようにしてました。

――箱根の前の話に移ります。集中練習はどれくらいこなせていたしたか。

 集中練習は9割くらいの消化率でした。

――走っている感覚もよかったですか

 そうですね。でも調子がものすごくいいという状態ではなかったのでどうなるか自分ではあまりわからなかったですけど、集中練習うまくできた分、自信もってやろうと思いました。

――当日の話に移ります。往路はどのように見ていましたか。

 寮のテレビで宍倉(健浩、スポ2=東京・早実)さんと見てました。

――シード権から離れた位置となりましたが、往路の結果をどのように思いましたか。

 もう往路は終わってしまったことなので、後は前を追うしかない、やるしかないという思いでいました。

――当日のご自身の調子はいかがでしたか

 いつも通りという感じでした。

――付き添いの選手は誰でしたか

 茂木(凛平、スポ1=東京・早実)です。

――何か言葉は掛けてもらいましたか

 いや、あまりなかったんですけど、自分がピリピリしていたので、そこはわかってくれたんだと思います。

――8区を任されると決まったのはいつ頃ですか

 当日の1週間くらい前です。

――周りの選手よりも決まったのは早かったですか

 そうですね。結構ギリギリまで決まっていない選手もいたので。その分、自分は気持ちを作ることができたかなと思います。

――8区を任された理由、決定が早かった理由をどのように考えていますか

 集中練習もこなすことができて、1年を通してケガなくできたので、タフな選手ではないですけど、そういうコースを任された以上は、1年間ケガなく来れたのでそれは自信にしようと思いました。

――1年間ケガなく来れた理由は何か考えていますか

 練習でオンとオフを切り替えることができていました。最初の方は流されるというか自分で考えないような練習ばかりだったんですけど、夏合宿を経て、ポイント練習は結構質の高いものだったので、オンにスイッチを入れるところが多かったんですけど、それ以外のジョグでうまく疲労を抜くというか、あまり気を張らないでリラックスしてできたというのが一番よかったかなと思います。

――事前に当日のレースプランは監督などから指示がありましたか

 たぶんバラバラでくるから、ある程度のペースで10キロまで入って、15キロから勝負ってことだったんですけど、かなりの集団できたので、そこはうまく集団を利用してというプランに変更になりました。

「タイムにも順位にも満足していない」

大集団の中でレースを進めた太田直

――シード権から1分43秒差でタスキを受けましたが、序盤は集団の中でレースを進めようという感じだったんですか

 そうですね。でも集団のペースが速くなくて。でもそこで20キロっていう距離で、自分が行けるかどうか心配になってしまったのは、自分が力がなかったですし、そういう気持ちの面でも攻めるって気持ちがまだ足らなかったかなというふうに思います。

――集団のどのあたりで走っていましたか

 集団の中でずっと走って、力をためようという感じでした。

――どのあたりで抜け出そうと思いましたか

 たぶん他の選手も遊行寺の坂から行くと思っていて、その予想通り遊行寺から結構みんなペースアップして。自分はペースアップした中でも余裕を持てたので、結構周りを見ながら走ることはできたかなというふうに思います。

――後から振り返ってみて、もっと早くに抜け出せたと思いますか

 そうですね。もう最初から自分のペースで行けてれば、あんな大集団にはならなかったですし、シード権とも差を詰めることができたかなと思うので、そこは安全に自分の攻める気持ちというのが足りなかったなと思います。

――そんな中で区間10位という結果やタイムに対しては

 設定タイムが一応あったんですけど、それよりかは遅かったんで、タイム的にも順位的にも満足はしてないです。

――設定タイムというのはいくつくらいだったのですか

 66分20秒くらいだったと思います。

――給水が中谷雄飛選手(スポ1=長野・佐久長聖)でしたが、はじめから決まっていたのですか

 いや、最初は古谷さん(拓夢主将、スポ4=神奈川・相洋)だったんですけど、中谷がそこらへんで応援していたらしくて急きょ変わったというふうに聞きました。

――何か言葉はかけてもらいましたか

 ここから上り坂になるから、ピッチで押してけっていう感じで言われました。

――気持ち的に楽になったりしましたか

 そうですね、やってやるという思いがそこで芽生えたのは確かですね。

――往路での中谷選手と千明龍之佑選手(スポ1=群馬・東農大二)の走りはどのように思いましたか

 やっぱり、往路を走るのは1年生には難しいと思うんですけど、結果まとめてきたんで、やっぱりすごいなと思いました。

――攻める気持ちが足りなかったということですが、練習でこうしておけばというのはありますか

 3つの駅伝すべて出たんですけど、全部経験不足というか、その距離に対して自信をもって走れなかったので、もっと長い距離をレースに近いペースでひとりで走って、自信を付けられればよかったかなと思います。

――練習でよかった点はありますか

 集中練習を多くこなすことができて、質の高いポイントも自分の中で余裕をもってこなすことができたので、そこは力がついたのかなと自信になる部分でした。

――箱根の後に、チームの結果について1年生同士で話す機会はありましたか

 やっぱり、この1年間、上に引っ張ってもらう感じだったんですけど、来年はそうじゃなくて、自分たちがチームを引っ張っていくようなそんな勢いを持ってやっていかなきゃいけないなというような話をしました。

――今大会、チーム内で印象に残っている選手はいますか

 やっぱり中谷は今年1年すごかったなと思います。春、あまり調子よくなかったですけど、そこからの戻し方とか、上級生に対しても気負わない走りとか、そういうところは自分にはまだ高いところなので、中谷は少し違うなというふうに思います。

――学べる部分も多いですか

 そうですね。このチームで中谷だけ安定して結果を出しつつも、本人は区間賞取れてないから悔しいって言葉をずっと言ってて。それは自分たちよりもっと高いとこを目指している証拠だと思うので、自分ももっと高いところを狙っていかないとと思いました。

――中谷選手が強いとはいえ、ご自身もこの1年でトラックでは自己記録を更新し、学生三大駅伝すべて出走しました。

 出るからには結果出さないといけないと思うので。今年はレギュラー争いに勝ったというか、そこでいい順位をとれてしまったことで少し満足した部分があったかなと思っていて、駅伝とか大会は出るからには結果出さないといけないと思うので、来年は出ることは当たり前で、そこでいかに結果を出すかというのを次は考えていきたいなと思います。

――今回の初めての箱根はいかがでしたか

 結果的にはあまり満足はしてないんですけど、20キロという距離を走ることができて、さらに1年目から箱根っていう大きな大会を経験できたというのは、いい経験になったと思います。それを生かしてまた来年というふうに行けると思うので、やっぱり走れたというのは大きかったかなと思います。

――来年以降、挑戦してみたい区間はありますか

 あまり希望区間というのはないんですけど、自分がもうちょっと主要区間を走れるようになれば、チームももっと楽になれるかなと思うので、往路を狙っていきたいです。

――箱根が終わり新体制になったと思いますが、雰囲気はいかがですか

 やっぱり、やらないといけないっていう。結果もよくなかったから。三年生たちがチームに声かけたりしていたので、結構コミュニケーションが増えたなと思っています。

――引退してしまった4年生で親しかった方はいましたか

 僕はいなかったですね。2つ上の方と仲良くさせてもらっています。

――練習の相談などされるのですか

 相談とかはあまりしないんですけど、よくジョグとか一緒にしてもらったりしているので、その中での話を聞いて自分もこうしてみようとか経験にできているかなと思います。

――春には1年生が入ってきます

 練習では厳しく、ほかでは優しく、コミュニケーションをとっていきたいです。予選会からのスタートになるので、もっとチームのレベルを上げていかないといけないので、そういう面で、自分が場面によっては厳しくできたらなと思います。

――今後のレースの予定を教えてください

 2月の唐津10マイル(唐津10マイルロードレース)に出て、3月の立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)、そこが1番大きな大会というか狙う大会になりますね。

――いま練習で心掛けていることは

 少しでも貯めを作ろうと思っていて、スピード練習よりかは少し長い距離をやってます。あとは、自分で練習の目的を考えようと思っていて。いま結構自由にできる時間なので、自分が必要な練習だったり、その練習の意図をしっかり考えて練習するようにしています。

――今年1年間の目標を教えてください

 去年は駅伝だけだったんですけど、今年はトラックも入賞という結果を残した状態で、その勢いを駅伝につなげていきたいと思うので、トラックで入賞することと、駅伝二つとも3位以内を目標にしています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 齋藤夏生)

◆太田直希(おおた・なおき)

1999(平11)年10月13日生まれ。168センチ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分09秒43、1万メートル29分26秒60。ハーフマラソン1時間5分36秒。2019年箱根駅伝8区1時間6分42秒(区間10位)。