【連載】箱根事前特集『起死回生』第10回 吉田匠

駅伝

 今季は3000メートル障害でアジアジュニア選手権(アジアジュニア)2位、U20世界選手権(世界ジュニア)で5位と、国際大会にて爪痕を残した吉田匠(スポ2=京都・洛南)。しかし学生三大駅伝は、出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)共に出走メンバーに選ばれず、悔しさを味わった。そんな吉田に今回は、トラックシーズンの総括や、駅伝シーズンでの苦戦、東京箱根間往復大学駅伝(箱根)への意気込みなどを語ってもらった。

※この取材は12月5日に行われたものです。

集中練習が始まって

質問に真剣に答える吉田

――きょうの練習内容は

 きょうは1万6000メートルプラス400メートルを3本走りました。

――集中練習が始まっていると思いますが、これまでの練習の消化具合は

 最初から問題なくできていたんですけど、先週の水曜日にシンスプリントが気になったので、(練習を)とばしました。でもそれ以外は、ちゃんと全部こなせていると感じています。

――集中練習が始まってからの調子は、1年生の時と比べてどうですか

 特に大差はないかなと。去年も(練習が)できていなかったわけではないので、去年と同じだと感じています。

――トラックシーズンから接地を変えたと伺っているのですが、距離を積んできての感触は

 最初の方はきつい部分もやっぱりありました。(接地を)変えた分、違う筋肉を使うことがきつかったんですけど、徐々に慣れてきたかなと思います。

――そもそも接地を変えた理由は

 効率的な走りのためと、スピードを出すためです。元々かかと接地はそんなにいいと言われているものではないので、変えました。

――チームのことについてもお伺いしたいと思います。清水歓太駅伝主将(スポ4=群馬・中央中教校)は、吉田選手から見てどんな主将ですか

 チームを盛り上げてくれるようないい主将であると共に、真面目でやることはきちんとやる主将だと思います。チームの雰囲気が緩くなっていたらしっかり締めてくれますし、そういった面では歓太さんの支えは大きいんじゃないかなと感じます。

――特に仲のいい部員はいますか

 仲いい人は多いんですけど、誰かなあ…。同学年だったら渕田(拓臣、スポ2=京都・桂)とか、マネージャーの武士(文哉、文2=群馬・高崎)とよくしゃべります。でも先輩でも仲がいい人は多いですし、この1人が一番というのはあまりいないですね。

結果を残したトラックシーズン

吉田は関カレでもしっかりと入賞した

――今年のトラックシーズンは、どのような目標を掲げてやってきましたか

 2年目ということでしっかり結果を残したかったですし、世界ジュニアが1つの大きな目標でもあったので、世界ジュニアに出場することを目標に頑張ってきました。

――アジアジュニアでは2位、世界ジュニアでは5位という結果を残しましたが、国際大会を経験して学んだことは

 世界の舞台では初めてのことばかりで。海外自体が初めてで、国際大会も初めてだったんですけど、その中でしっかり結果を残せたということは大きな経験になったと思います。どのような条件下でも自分の力を出し切れたというのは、この先の糧になるなと思いました。

――国際大会は初めてということで、緊張はしましたか

 思ったよりしなくて。あがらずにレースに集中できました。

――合宿についても伺いたいと思います。夏合宿を通して特に強化した点は

 やはり接地を変えたということがあったので、その中で距離を伸ばしていくということをメインに取り組みました。

――出雲市陸協記録会で「夏合宿での走り込みが足りなかった」と言っていましたが、夏合宿全体での練習の消化具合は

 消化できていたとは思うんですけど、ところどころ足の痛みが出てしまったり体調が良くなかったりしたことがあって、抜けてしまったときが何回かありました。そこが足りなかった部分としてあるのかなと今は感じていますね。

――夏合宿の間には日本学生対校選手権(全カレ)がありました。今年は関東学生対校選手権(関カレ)、全カレどちらも3000メートル障害で入賞しましたが、この成績に関してはどう考えていますか

 正直もっと上を目指せたかなとは感じています。でもその中でタイム、順位共に最低限の結果を残せたと思うので、安定性を見せることができたという部分では良かったと思います。ただ欲を言うならば、表彰台に上りたかったです。

――トラックシーズン全体を総括すると、どのように感じていますか

 充実したトラックシーズンになったかなとは思います。関カレ、全カレは満足し切れない部分もありましたが、アジアジュニアや世界ジュニアで結果を残せて。どの大会でも形として残る結果は出せているので、安定感のあった1年だったと思います。1年生の時の比較的駄目な1年間を考えると、しっかり走れるようになった1年間だったのではないかなと感じています。

出雲、全日本での雪辱を箱根で

上尾ハーフに出場した吉田

――出雲は本戦に出場できませんでした。当時はまだ自分でもその理由を消化できておらず、強いて言えば夏合宿でもっと走れればとおっしゃっていました。今時間を置いて改めて振り返っても、それが本戦に出られなかった理由と考えていますか

 そうですね、理由は変わりません。調子は良かったので出たかった試合ではあったんですけど、ただ夏合宿後半(練習の)消化具合があまり良くなかったので、そこが原因だったと今でも感じています。

――出雲に出場できないということで悔しさはあったと思いますが、その悔しさをどう生かしていこうと考えましたか

 そのときは全日本に絶対出たいと思いましたし、出雲に出られませんでしたがしっかり走れてはいたので、全日本こそはと言う思いで(練習に)取り組みました。

――そこから全日本は調子が上がらず不出場となりましたが、調子を落としてしまったのはいつ頃になりますか

 出雲が終わってすぐですかね。1、2週間後ぐらいから、練習があまりうまくいかなくなってしまって、2、3週間それが続きました。全日本の1週間前あたりからはましになったんですけど、調子が上がり切らずに全日本当日を迎えてしまいました。

――調子を落としてしまった理由は分かっていますか

 出雲までは距離が短めだったのでなんとかなっていた部分があったんですけど、全日本に向けて練習の距離が長くなって、接地を変えたことの影響が出ました。走りについてのいろんな悩みが出てしまって、自分の走りを失ってしまったのではないかなと考えています。

――出場できなかった全日本から数週間後、上尾シティマラソンでは自己ベストをたたき出しました。現在にかけて、調子は戻ってきているということでよろしいでしょうか

 そうですね、調子は戻ってきています。長い距離にも対応できてきていると思うので、箱根はしっかり走れるように頑張っていきたいなと思っています。

――出雲、全日本には、早大から1年生が多く出場しました。2年生としてこれをどう考えていますか

 練習を見ていても1年生は強いと改めて感じるので、妥当というか出て当たり前ではあると思います。でもそれを当たり前にして、1年生ばかりに頼ってしまっては駄目だとも思います。現にそれで出雲、全日本は失敗してしまっていますし。やっぱり1年生はどれだけ強くても1年生なので。経験もまだ足りないですし。2年生である僕の方が1年分経験を長く積んでいるので、1年生ばかり頼らずに先輩としての姿を見せていかなければ、箱根で戦えないと思います。まだ2年生ですが、自分も先輩なんだという気持ちを持って、箱根まで取り組んでいきたいと思います。

――箱根で出走を希望する区間はありますか

 5区です。

――5区を希望する理由はなんですか

 去年から5区というのは意識していました。でも去年は安井さん(雄一、平30スポ卒=現トヨタ自動車)という大きな存在がいたので、5区を走ることはありませんでした。今年その安井さんが抜けた穴は大きいと思いますし、この穴を埋めるような存在になれたらと思っています。元々高校から上り坂は割と得意だったので、上りというのは1年目から意識していました。

――大学入学以前から、5区への憧れはあったのでしょうか

 それはありませんでした。大学に入って本格的に箱根を目指すことになってから、5区を意識し始めました。

――現時点で5区への対策はどのようにしていますか

 坂道を使ってのトレーニングをしたりしています。あと上りに必要な腰やハムの筋肉の強化も図っています。しっかり上りに対しての準備はできていると思っています。

――5区候補は他に誰がいますか

 大木さん(皓太、スポ3=千葉・成田)と一応千明(龍之佑、スポ1=群馬・東農大二)も入っています。

――その2人と比べて、自分の強みは

 我慢できるところだと思います。あと下りも割と走れたので、上りが終わってからの下りの切り替えを強みにしていければ、5区を走る力を見せられるのではないかなと思っています。

――箱根に向けて意識している他大の選手はいますか

 高校時代一緒だった順大の清水颯大です。区間が一緒になることはないかもしれないんですけど、昔からその選手を意識しているので。あとは同学年が気になります。西山(和弥、東洋大)とか吉田圭太、神林(勇太、青学大)とか。同世代トップの選手とも戦えるようにしていければと思っています。

――5区で意識している他大の選手はいますか

 青木さん(涼真、法大)が前回区間賞を取っているので、今年もくるだろうと一応意識しています。でも僕自身出場できたら初めての5区ですし、完全に挑戦者側なので、全体的に誰にも負けないようにという気持ちを持っています。山を走る他の選手全員に負けないように頑張りたいです。

――山上りに関して、憧れや目標としている選手はいますか

 やっぱり身近であった安井さんを今は目標にしています。

――出雲、全日本を終えてチームで出た課題は

 結果を残せていない原因は、チームとして実力を出し切れなかったことです。流れをつくったり、流れが悪くなったときに変えたりする選手というのが、まだまだチームにはいません。チームの底力は上がってきていると思うんですけど、エース格の選手が少ないので、エース格の選手をどれだけつくっていけるかというのが課題だと思います。

――箱根でチーム3位という目標を達成するためには、どのようなことが必要になってくると思いますか

 箱根は10人の力が必要で、1人1人が長い区間を任されます。誰かが好走したとしても、誰かが良くない走りをしてしまったら、順位も大きく変わってきてしまいます。1人1人がしっかりと自覚を持って、全員が自分の100パーセントの力を出し切ることが求められると思います。誰かに任せるのではなくて、1人1人がしっかり他大の選手に勝つことを意識したいです。全員が区間3位以内になれれば総合3位になれると思うので、区間賞は取れなくても区間3〜5位を目指していかないと駄目だなと思っています。

――チーム全体として意識している大学はありますか

 やっぱり青学大、東洋大、東海大が周りからも強いと言われていますし、今までの駅伝を見ても強いなと感じています。他にも強い大学はありますが、3位以内を目指すのであれば少なくともそこの一角をどこか崩さないといけないので、特にその3大学は意識していると思います。

――個人としての箱根での具体的な目標は

 5区で区間3位以内、できれば区間賞という気持ちで走りたいと思います。

――最後に改めて箱根への意気込みをお願いします

 チーム3位以内を目標にしているので、しっかり自分の力を出し切って貢献したいです。目標とする5区は、他の区間と比べてもタイム差が大きくなると思うので、そこで前との差を縮める、後ろとの差を広げる走りができるように頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 藤岡小雪)

希望する5区で『山の神』となれるか期待が高まります!

◆吉田匠(よしだ・たくみ)

1999(平11)年3月25日生まれ。172センチ。57キロ。京都・洛南高出身。スポーツ科学部2年。趣味は漫画を読むことだという吉田選手。特に好きな漫画は『ハイキュー!!』や『七つの大罪』と答えてくれました!