【特集】箱根前特別企画『寮』第3回 同部屋・岡田望×西田稜

駅伝

 早大所沢キャンパスからほど近い場所に位置する早稲田大学競走部合宿所。現在約60人の選手が厳しい練習をこなしつつ、この合宿所で生活を送っている。彼らはなぜこの合宿所に住むことを選んだのか。相部屋で4年生の岡田望(商4=東京・國學院久我山)と西田稜(政経4=東京・早大学院)に寮で生活することの意義を伺った。

※この取材は11月14日に行われたものです。

「恵まれている部分が大きい」(西田)

二人の仲の良さが伺える取材でした

――なぜ寮に住むことを選んだのですか

岡田 僕はスポーツ推薦ではなくて指定校推薦で入学したのですが、一つは本気で目指すならこの寮での生活が一番でした。ここで過ごしている選手が関東インカレ(関東学生対校選手権)であったり、学生三大駅伝であったりに出る選手が多いということがメインです。運良く自分の競技生活と入る年の加入の条件に満たしていたので、喜んで入らせていただきました。

西田 僕自身も高校時代の実績では、他学年だったら足りなかったので入れなかったと思うんですけど、僕らの代の人数が少なかったということで、もし入れるのであればということで寮の方でスタートさせていただきました。ワセダで活躍してきた選手がたくさん暮らしているところでありますので、その環境に慣れるではないですけど、そういった理由から寮に住ませていただきたいと思いました。やはり食事の面であったり、家賃の面であったりと恵まれている部分がかなり大きいと思いますので、この辺りで生活を営んでいく上でも、寮に住むというのは、良い選択かなと思っています。

――では特に寮生活をしないことは考えていなかったのですね

岡田 そうですね。長距離は朝練習が出来る場所に暮らさなければいけないので、それを考えた時にここでの生活が競技をする上で寮は一番の選択だったと思います。

――初めて寮に入った時、最初に何か感じたことなど、覚えていることはありますか

岡田 僕と西田とでは1ヶ月くらい違って僕の方が早いんですけど、入寮はちょうど一番最初の合宿前でした。入寮の日にミーティングをしてそのまま入寮するというかたちだったんですけど、やはり僕にとって箱根駅伝だったり早稲田大学は憧れの舞台であったので、そこで見た選手が身近で同じ環境にいるというのはすごくワクワクしましたし、すごく期待に胸膨らむではないですけど、そんな感じがすごくありました。

西田 僕自身は私事の都合で寮に入るのがかなり遅れてしまって、入寮してからすぐに六大学(東京六大学対校大会)などの対校戦に出向いてという感じで、かなりあたふたしてしまった部分はありました。それでも基本的には1カ月変わったからといって望と感じたことはあまり変わらなくて、3つ上の主将だった高田さん(康暉、平28スポ卒=現・住友電工)とか、2個上で主将の平さん(和真、平29スポ卒=現・カネボウ)などと寮ですれ違って挨拶したりするので、そこでかなり新鮮な気持ちというか、そこは一番残っています。

――すれ違ったときは緊張はしましたか

岡田 本当の初めはそうだったんですけど、どんな自分の中では雲の上という人でも、いざ接してみると普通の人だなというところもあったり、場合によっては意外とだらしない人もいたり。誰とは言わないんですけど、意外とみんな人間なんだなとすごく感じました。緊張したのは最初だけでしたね。

西田 数日住んだらその面ではかなり慣れましたね。やはり生活の部分では気を遣うのがかなり大きいので、そういった部分での苦労はあったと思います。

――寮生活では1年生の時に当番活動があったと思いますが、大変でしたか

岡田 そうですね。僕もきつかったですけど学年で一番苦労したのが西田だと思います。いろんなエピソードもありますし。今でこそ仲良くやっているんですけど、当時は特に当番と言ったら利害が絡むというか、何も考えずに言うと、使えない人間は本当に嫌な目を見るということですね。競技力があるないに関わらず、当番の仕事が出来ない人は強く当てられたりするので、そういう意味で西田は苦労したかなと思います。

西田 他のメンバーは高校でも寮を経験してきていて、そういう人は慣れるのは早いと思うんですけど、僕は高校生の頃から家でもあまり家事をやることがあまりなかったので、まず生活リズムに慣れること、そして1年生としての仕事をしっかり出来るようになるまでにかなり苦労しましたね。そこが今までを振り返ってみても、一番きつかったところかなと思います。

――お話しできる範囲で、当番にまつわるエピソードはありますか

岡田 僕が2週間くらい口を聞かなかったことがあります。当番は4人でやるんですけど、やり直しというものがあって、一人のミスで4人全員が次の日も4時起きしなければならないんです。僕が西田に朝食の片付けのことだったんですけど、口酸っぱくすごく言ったんですよ。

西田 思い出した(笑)。

岡田 絶対にちゃんと時間通りに起きてこいと言ったのに、起きれなくて。僕が一人で頑張ろうとしたんですけど、後になって来て。時間通りに出来ないとやり直しというルールがあったので、僕が注意したし、なんとかしようとしたのに、それを全て無にしてしまって。本当にその時は1、2週間口を聞かなかった覚えがあります。

西田 僕自身が悪かったので、それに関しては本当に申し訳なかったです。

――西田選手は当番に慣れるまでどれくらいの時間がかかりましたか

西田 そうですね…。生活に慣れたなと思ったのが2、3カ月くらいで、当番にも慣れたなと思ったのは大げさでもなく半年とかかなっていう(笑)。周りも体感的にはそれくらいかな。

岡田 慣れてきた頃に夏合宿が挟まったりして当番をやらない期間があったりするので、忘れた頃にまた当番がやってくるという感じでした。1年生で、僕は関東インカレ、全日本インカレ(日本学生対校選手権)に出たんですけど、エンジを着る試合の選手は1週間前から当番をやらなくてよくて、それも一つモチベーションで頑張っていました。

――この寮でワセダらしい特徴を感じるところはありますか

西田 一番はやはり短距離と長距離の選手が一緒に暮らしているのが大きいと思いますね。他の大学だったら、長距離は駅伝ブロックとして、短距離は短距離ブロックとして生活すると思うんですけど、早稲田は競走部としてやっているので、短長一緒に暮らして対校戦に向かって一緒にやっていくという流れが一番特徴かなと思います。

岡田 今の西田との同部屋もそうなんですけど、いろんなパターンがあって、その一つが、お互いに干渉しあって、よくすれば高め合えるような関係になれるのが同部屋の良いところかなと思います。例えば短距離と一緒だと、普段はあまり接することがないような人と一緒になったりするので、短距離から見た長距離の意見を聞けたりだとか、そういう面ですごく刺激的というか、ここの環境ならではです。また一般入試で来た力のまだ足りない選手が短距離のトップレベルの選手の話を聞けたりというのは本当にいいところかなというように思います。

――実際に短距離の選手から何かアドバイスをもらったことはありますか

岡田 そうですね、僕一番最初に加藤修也さん(平30スポ卒=現・HULET)と同じ部屋になりました。特に競技のことに関してはオリンピックに出た一流の選手なので、そういった人にすごく刺激をもらった面はあると思います。

――話を変えさせていただきます。ズバリ、好きな寮飯は何ですか

西田 僕は二つ挙げるとすると、一つはフレンチトーストです。小島さんが作るフレンチトーストは、昔洋食屋さんを経営していたこともあって、かなり本気を見れるメニューとなっています。もう一つはウナギがたまに出てくるので、僕自身最近安いやつなんですけど重箱を買ってうな重にしています。

岡田 みんなから笑われるんですけどやめないんですよね(笑)。うなぎの日をメニューで確認すると重箱を持ってきてそこにご飯を入れてうなぎを乗せて食べているんですよ。

西田 見た目から食事も楽しめられればといいなという感じです(笑)。

――岡田選手はいかがですか

岡田 色々ありますが、魚が美味しいなと思います。だいたい一日置きに魚と肉が並ぶ形になるんですけど、多分いいところから良い魚を使っていると思います。人によっては、魚の日には肉がよかったと言う人もいるんですけど、僕はすごく魚が好きなので、魚系ならなんでも好きですね。

――魚料理はバリエーションも豊かなのでしょうか

岡田 そうですね。きのうはタラだったんですけど、サケだったりブリやアジなどいろいろ出ます。今は秋なのでサンマが頻度が多いですね。季節に合わせて出てくるのがすごくいいと思います。

――季節感を大事にしたお料理が多いのですか

西田 基本的にベースとなるところがあるんですけど、たまに季節に応じた料理が出ます。例えば5月だったら柏餅とか。

岡田 夏だったらカレーに夏野菜が出てきたりもします。

西田 たまに季節のイベントや記念日に準じた一品が出てきたりするので、そこは季節感を感じるところだと思います。

――そのような食事面のサポートがあることでよかったと感じることはありますか

岡田 練習で疲れて帰ってきて、すぐに自分のタイミングで温かいご飯が食べられることはすごくありがたいことです。高校までは親がやってくれたことですし、まだ自分で一人暮らしをしたことがないので想像でしかないんですけど、来年以降社会人になって一人暮らしをした時に、よりそのありがたみを実感すると思います。

西田 僕自身も高校と大学で何が一番変わったかと考える時には食生活かなと思うくらいです。日々出してくださる分、栄養バランスはかなりいいですし、僕自身もそういうところを気にして昨年あたりから食事を記録することを始めているので、その面で練習以外のところでの食事や休養といった大事な部分を担っていると思います。

――食生活が変わったことで故障が減ったということはありますか

西田 高校と大学を比べると練習量が全然違うので一概には言えないところはあるんですけど、力をつけるために食事は必要な要素であるのは間違いないと思っています。

岡田 あと体重の管理がしやすくなったかなと思います。

――先ほどからお話に出ていた寮監の小島さんはお二人にとってどんな存在ですか

西田 どれだけつらい時にも温かいご飯を出してくださって、かつ寮のことも管理してくださっているので、今親元を離れている分保護者のような存在というか、心の支えになってくれていると思います。

岡田 同じような感じになってしまうんですけど、気軽に話してくださるとか、ただ料理を出してくれるだけではなくて、いろいろな面で気を遣ってくださって、時には叱ることもしてくださりますし、そういった面で保護者の存在に近いものはあると思います。

――次に寮の設備についての質問です。酸素カプセルなどがあると思いますが何かよく使っているものはありますか

岡田 やはり酸素カプセルは試合前によく使いますね。外でやると何千円とするものがほとんどお金もかからずにできるので、ある環境は使っていきたいという面がありますし、特に大事な大会の前でそれを使用して結果が良かったこともあるので、一つのルーティンとして使っている面もあります。

西田 使っている設備とはずれてしまうかもしれないんですけど、寮の改善しなければいけない部分は臨機応変にというか、先日も向こうの通り道が暗いからという理由で街灯をつけてもらいました。設備に対する意見や改善をしてくださる部分があると思います。

――寮生活で癒しとなっているものはありますか

岡田 同期とか仲のいい人と常に暮らしているというところで、ドアを叩けば仲のいい同期がいるという環境がすごく良いです。一緒にゲームをしたりテレビを見たり、そういう何気ないところが練習の厳しさの癒しになっていると思います。

――ちなみに一緒にゲームをする選手というのは

岡田 僕は小澤(直人、スポ4=滋賀・草津東)とウイイレ(ウイニングイレブン)をします。

西田 僕もたまにやります。

岡田 僕から声を掛けることもあれば、あいつからやろうぜということもあります。引退して一人暮らしをした先輩がよく言うのが、寂しいということで。やはり食事も適当な時間に行っても誰かしらいて、テレビがついててみんなでそのテレビの感想を言い合ったりするんですけど、一人で見るのだったらそれは寂しいなと思うので、そういう人と人とのふれあいのようなところが癒しになっていると思います。

西田 朝ごはんを食べながらめざましジャンケンして(笑)。そういう団らんというか、仲良く明るく食事できるというのは一番癒しというかありがたいことだと思います。

――寮の中での人気者な方はいますか

岡田 多聞(三上、商3=東京・早実)はね(笑)。常にいたら声かけられるよね。

西田 1個上2個上がハッチャケている先輩が多かったんですけど、今年の4年生は落ち着いている人が多いですね。

岡田 4年生に応じて雰囲気は作られていくので、そこまで食堂で目立つ人間はいないかなと思うんですけど、入ってきただけでいじられるのはやっぱり多聞かな(笑)。

――学年カラーの話が出ましたが、昨年や一昨年はどんな感じでしたか

岡田 特に一昨年は平さんや凛太郎さん(武田、平29スポ卒=現・ヤクルト)や洋平さん(鈴木、平29スポ卒=現・愛三工業)が中心にすごくノリのいいというか、ウェイじゃないですけど、それに比べれば年々落ち着いてきているという感じはありますね。1個上だと光延さん(誠、平30スポ卒=現・九電工)とかがすごく元気でした。

――ムードメーカーもいないんですか

岡田 俺らの代でいうと歓太(清水駅伝主将、スポ4=群馬・中央中教校)が良くも悪くも声が大きいので、歓太ですかね。

――寮ならではの楽しみというものはありますか

西田 ちょっと前の話になるんですけど、誕生日を祝ってもらえたのがすごく嬉しかったですね。やはり常に一緒に暮らしていないと、いちいち連絡しないと集まれないので。

岡田 僕がその時中心になってやりました。また僕もやってもらって、お互いの誕生日を祝ったりとかというのはちょっとしたイベントとしてやりますね。

――ちなみに誕生日プレゼントは何をもらいましたか

西田 電動歯ブラシとかもらいました。この人は実用性よりかは記念になるとか楽しいものをあげる人もいるし、実用性重視の人もいます。それは人を見て、何をあげようかなと思ったりしてプレゼントをしています。

(寮生活は)社会に出たときの縮図の一つだと思う(岡田)

寮での生活について話す岡田(左)と西田

――寮に住む意義は実際に暮らしてみてどのように感じでいらっしゃいますか

岡田 よく寮監の小島さんも言われるんですけど、ここは学生寮じゃなくて競走部の合宿所ということは常に意識しなければならなくて、やはりそれなりの規律も守らなければならないですし、それを乱したものにはそれ相応のペナルティもあるくらい規律は守っていかないといけない。強くなるための集団でそこが学生寮とは違うところなので、それを求めて暮らしていくことを24時間生活の中でしっかり持つということが一人暮らしとは違う、合宿所で生活する意義だと思うし、それで成長する人、特に競技面だけではなく、人間的に成長する人は多いのかなと。1年、2年成長していくごとに規律を学ぶ立場だったのが、それを下に伝える、それを管理する立場ってどんどん上がっていくのでそういった段階の踏み方がここで生活する意義かなと思います。

――ご自身も成長を感じていらっしゃるということでしょうか

岡田 そうですね。最初は仕事を覚えたり、ルールを覚えるので精いっぱいだったところから2年生になるとそれを下に教えなければならない立場になって、3年4年になっていくと指導している立場の人間を管理するというか、寮全体を見て問題がないかとか、規律そのものを見直したりとかそういう立場にどんどん上がっていくので社会に出たときの縮図の一つだと思うので、まだ社会に出てはいないですけど、出たときにためになるのかなと思います。

――後輩の指導ということも話に上がりましたが成長したなと感じる後輩もいらっしゃるということでしょうか

岡田 そうですね。後輩でも最初は暮らすので精一杯だったのが一人前に後輩を指導してると成長したなと感じます。

――西田選手いかかでしょうか

西田 そうですね。寮に住む意義というか、寮が重要な場所になると思うんですけど、各学年の役割というところは非常に重視されていて、1年生には先ほどもありましたけど当番の仕事があって、2年生はそれを直接指導する立場で、3年生はそれを見て指導の状況を見る立場で、4年生は全体を見て部を動かしていく立場ということで。寮の外に出てもそうなんですけど寮に住むことは常に競走部の中に身を置いているという状況に等しいと思うので、それを常に意識して時に問題があったら寮にいればすぐに集まれますし、役割を認識していくうえで重要な意味を持っているのが寮での生活かなと思います。

――先ほど学年が違う方とも相部屋になるというお話がありましたけれども部屋割りはどのように決められているんですか

岡田 寮長に一任されている感じですね。

――他の方は基本的には関わらないという感じでしょうか

岡田 部屋割りが発表されてそれを知るという感じですね。

――話し合って決めたりとかではないんですね

岡田 そうですね。仲いいとかで決めるといろいろ問題があるので、そこはランダムというか。

西田 割と一人部屋二人部屋とかは上級生から決まっていく部分があるので、割と機械的に決められている部分はあると思います。逆に変に気を使っても恣意的になってしまうと思うので、割と恣意的な目線は抜きでフラットになってると思います。

――部屋での上下関係のやり取りはどのような感じになっていますか

岡田 主にそこの上級生に一任されていて、例えば一年生は立場によっては当番もあるので起きるのが早くて、アラームが迷惑になったりするんですけどそれも部屋の上級生が許せばいいですし、上級生が部屋でのルールを作るというか。

西田 部屋の雰囲気は部屋長によるのかなというのもそうですし、そこはマイナスに見られうる部分かもしれませんが、逆に部屋が一緒ということでご飯に連れて行っていったり、連れて行ってもらったりという部分もあるのでそこは一長一短なのかなと思います。

――部屋ごとにカラーが違うという感じででしょうか

岡田 そうですね。爆音で音楽を聞いてるとか(笑)。

西田 常にカーテン開きっぱなしとかの部屋もありますし、四人部屋だったらちゃんと四隅になってみたいにプライベートな空間があるところももあるし。

岡田 部屋によっては扉の所にホワイトボードがあってそこに各自の試合の目標を書かせるような人もいましたね。それはすごくいい試みだなと。

――それはどなたでしょうか

岡田 今やってるのは四人部屋だと伊澤(優人、社3=千葉・東海大浦安)の部屋がやってるっけ。伊澤と真柄(光佑、スポ3=埼玉・西武文理)が上級生でたぶん伊澤がやってるかなと。今は駅伝シーズンなので長距離だけの部屋なんですけど、そこで各自の試合の目標を書いて共有していて、部屋意識というのは大事にしてるのかなと思います。

――シーズンごとに部屋割りが変わるということですか

西田 年2回ですかね。長距離の4年生が退寮する1月と短距離が寮を出る9月、10月ごろに1回ずつという形なので年に2回だと思います。

――寮生活が競技にどのようにつながってるとお考えですか

西田 さっきまでに話が全てかなという感じはありますが、食事、睡眠、休養がトレーニングをするうえで大事な三要素だと思うんですけど、食事、休養で主な役割を担っているのが寮だと思うので、練習はグランドですけどそのうちの二つを占めているっていうのは環境として重要視されて当然だと思いますね。

岡田僕は意識的な面を言うと強い人と生活できる。僕が競走部に入ったことの一番の理由は強い人、高校時代に全国トップレベルだった人の当たり前を生活レベルから触れることでそれを自分の当たり前にするっていうのが一つ大きな目的で寮はそれをするための最良の環境にあって、実際に強い人から普段どうやってるのかという話を聞いたこともありますし、そういったところがすごく競技に生きていると思います

――話を聞いた選手というのは

岡田 聞きやすいのは同期ですね。いろんな箱根に出た人や短距離の意見もそうですし幅広く聞いた覚えがあります。

――競技を離れた生活面で見本、参考にされた選手はいらっしゃいますか

西田そうやって考えたことはなかったですけど、割と自分でやっていること、自分で決めた習慣を僕自身が直接誰かの真似をしてというのはあんまり覚えてないですけど、朝練習前の温浴とか、ゼミ室でストレッチしてる人もいましたし、そういった面でお互いの行動を見れるというのは利点かなと思います。

岡田 永山(博基、スポ4=鹿児島実)とかは寝るのが早かったりするので、それが強さに直結してるとじゃあ僕もそうしようかなとか、西田にしても食事の管理を始めてからはすごく体も絞れたりとか結果につながってるように感じる部分があるので、そういった食事、睡眠のあたりは参考にというかそれを見て僕も少し改善していかなきゃなという刺激を与えられた部分はあります。

――先程当番の話がありましたけれども、当番以外で寮に住むときに大変だったことはありますか

岡田 ここのルールの一つに挨拶を徹底している部分があって、一年生の時は大げさじゃなく何百回も挨拶はしましたね。今も後輩がしたら返しますし、すごく挨拶の回数は多いです(笑)。

西田どの人に聞いても寮に住んでる人に聞いたら、ああって思うと思うんですけど、一年生が階段から上がって廊下に来たときに人影があるけど何年生かわからないと(笑)。同期かもしれないけど誰なんだろうって思いながら、顔がわかり次第こう、こんにちはって挨拶して。

岡田1年生のときはとりあえず挨拶でそれが同期でもしょうがないと。古谷(拓夢主将、スポ4=神奈川・相洋)とか何回もしたもん。先輩にしか見えなくて(笑)。

西田 短距離は結構同期は大柄な選手が多かったのでその辺は(笑)。

岡田 挨拶は大変っていういい方はおかしいですけどできてないと指導の対象になりますし、指導される側だったときも今指導する側になったときも挨拶はすごく見ていて、それは社会人になった時も通用することなのですごく大事にしてはいます。

西田大変だなって思うところでは、例えばごみ箱が満杯になっていたら片付けるとかそういった当たり前のことをいかに率先してやれるかというのを自分の中では大切にしていて、大変というと大げさではあるんですけどそういった細かい取り組み、やるべきことをちゃんとやるという姿勢は競技の面で大事になると思うのでそこは自分もそういう意識は持っていますけどほかのメンバーにも大切にしてほしいかなというところではあります。

――お二人は相部屋だと部員日記で拝見しましたが、何かエピソードはありますか

岡田西田は本当に寝言が面白くて、ほとんどは意味のない言葉なんですけど、たまに練習メニューのことを言ってたり、ポイントの引っ張りを寝てるときにお願いされたり(笑)。一番面白かったのは後輩の相談にのっていて(笑)。今となってはそれも楽しめているというか、たまに返事もしてあげて(笑)。

西田僕にとってはストレスにしないでポジティブ変換というか、楽しんでくれているのは本当にありがたいことで、迷惑がる人ももちろんいると思うのでそこは申し訳ないなと。

岡田 他にも二人部屋があって会話の少ない部屋もあるんですけど、ここは会話が多いかなと。上半期は就活という大きなイベントがあってお互いに一緒に話したりとか面接の対策をしたりとか、そういうことをする機会が多くて、よく壁越しに会話したりとか、部屋に行って会話したりとかは多かった。そういう行き来が多いほうだと思います。今でも何でもないことで話したりするので。

西田プライベートなことだったり、ごはん行こうって言ったら一緒に行くっていうこともあったりするので、それは相部屋ならではかなというところはすごく感じます。

――たたき上げの選手の成長と寮生活が関係してると感じることはありますか

岡田強くなりたいと思ってもなり方がわからないとか、僕もそうだったし、西田も多分そうだったと思うんですけど、同じ代のスポーツ推薦の選手とか先輩で箱根で活躍されている選手とか世界に羽ばたいている選手に自分がどうやったら強くなるかっていう、自分だけで解決できないところをアイデアというか持ち物をたくさん持ってる人がいるのでそこが一番かなと。

西田あとは心の乱れは部屋の乱れとか言ったりしますけど、きっちりいろんなことがかみ合ってできるようになってる人は生活態度も洗練されていうっていうのは全員が全員じゃないですけど、そういう傾向にあるのかなと思います。

岡田 生活で言えば、そこでくくるのは難しいんですけど、一般で入った人の方がちゃんとしてることはあると思います。

西田 そこは矛盾したりしなかったりのところもあるんですけど、変化という面ではしっかりしてきたなって思うことがあったら生活の方もしっかりしてきたということはあると思います。

――今そういう選手はいらっしゃいますか

岡田特に多聞なんかは最初ものすごく部屋が汚かったんですけど、今はそこまできれいとは言えないんですけど、比較的落ち着いてきて、それと比例して競技成績も上がってきているのかなと思うので、やっぱり生活に出るんだろうなと思います。荒れた部屋で生活するのと整理整頓された部屋で生活するのではそれだけで違ってくるだろうし。

――お互いに競技のことについて話されることはありますか

西田 近況だったり。

岡田 どっちかがケガをしたときには容態を聞いたりか、きょう相楽(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)さんに呼ばれてたけど何言われたのとか。そこまで深いことまではないかな。

西田それは部屋でっていうより学年で集まってミーティングで話したりとか、一緒に食事に行った時に話したり。話さない時もありますけど。そういうときもあるってという感じですね。

――岡田さんが関東インカレで入賞されたり、西田さんも7月ごろ自己記録を更新されて調子がうなぎ登りだった時季だと思いますが、影響とか受けたりしましたか

西田それは部屋の中でというよりは一緒に暮らす中でそういう隣で暮らしてる仲間が頑張ってたら自分も頑張らなきゃなっていう想いもありますし、それは特に望にはそう思いますけど、望に関わらず寮で一緒に暮らしてる人の成績とか頑張ってる姿っていうのは励みになる部分は大きいと思います。

岡田同部屋が活躍するとうれしいというのは学年が下の頃からありますし、つながりが深い分一緒に喜べるというのはこの寮のいいところだと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 岡部稜、佐藤詩織)

◆岡田望(おかだ・のぞむ)

1996(平8)年8月6日生まれ。176センチ。東京・国学院久我山高出身。商学部4年。

◆西田稜(にしだ・りょう)

1997(平9)年2月15日生まれ。167センチ。東京・早大学院出身。政治経済学部4年。