「記憶に残る走りがしたい」。そう語って臨んだ2度目の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。清水歓太(スポ3=群馬・中央中教校)は、復路の悪い流れを断ち切るべく、9区に出走。積極的なレース展開で見事区間賞を獲得し、次期駅伝主将として確実に結果を残した。下馬評を覆しここからさらに強くなろうとするチームで、キャプテンは何を思い描くのか――。
※この取材は1月10日に行われたものです。
「自分たちも絶対やらなきゃいけない」
落ち着いた様子で語る清水
――箱根を終えて何をされていましたか
解散期間があったので、家に帰ってゆっくりしていました。
――ご家族や周りの方から箱根に関して反響はありましたか
結構親戚の方とか見てくれていたみたいで声を掛けてくれて、色んな方から声を掛けてもらいましたね。
――OBの方からの反応はありましたか
終わった日に慰労会があって交流させてもいましたが、結構驚いているような感じでした(笑)。まあでもよかったねと(声を掛けてもらいました)。
――それでは箱根当日について伺います。復路当日エントリー変更で9区が決まりました。確定したのはいつ頃でしたか
僕は12月31日には9区と言われていて、そこから準備はしていました。
――決まった時の心境は
10区だと思って準備していた部分があったのですが、9区と言われても不思議と驚きはなくて、9区で楽しそうというかうまく走れたらいいし自分もしっかり走れそうな区間だったので、そう決まったら準備していこうと切り替えてできたのでよかったかなと思います。
――相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)からはどのような役割を任されていましたか
復路の6、7、8区は、まあ永山(博基、スポ3=鹿児島実)は別ですけど駅伝デビューする1、2年生だったので、僕と谷口さん(耕一郎、スポ4=福岡大大濠)でしっかりレースを作ってくれと言われていたので、そこは意識してやりました。
――前回大会の9区経験者の光延誠選手(スポ4=佐賀・鳥栖工)からアドバイスは受けましたか
光延さんからは特にレースのアドバイスというのはなかったんですけど、走る前までの泊まる所に何があるとか朝練はここがやりやすいとかそういう細かいところは教えてもらいました。走る直前に2年前に9区走った井戸さん(浩貴OB、平29商卒=兵庫・竜野)に会って、アドバイスをもらいました。最初は下りなんですけど、ビビったらタイム出ないから最初からいったほうがいいという話をもらったので最初からいきましたね。
――区間賞を取られた後のインタビューの際に安井雄一駅伝主将(スポ4=千葉・市船橋)から連絡をもらったとおっしゃっていましたがどんな内容でしたか
去年、1年間は苦しいことばかりだったと思うけど、練習をやっているから自信持って、楽しんで走ってくれという感じ(のメッセージ)をもらいました。
――往路について、4年生の活躍が大きかったと思いますがご覧になっていかがでしたか
もう本当に4年生の力で3番で往路を終わって、気持ちをすごく感じたというか、こんな良い流れを作ってもらったんだから自分たちも絶対やらなきゃいけないなという気持ちになりました。
――復路について、8区までは区間2桁の走りが続き苦しい展開でしたが
そうですね、でもタスキをもらった場所は5番でしたけど前が見える位置でもらったので逆に後ろから追われるような展開よりは前が見えるようなかたちでもらえたので、チームとしては下がり気味でしたけど自分としてはすごく走りやすいところでもらえたかなと思います。
――8区で大木皓太選手(スポ2=千葉・成田)が後続に抜かれた際に電話をされていたと聞いたのですが、どんな内容でしたか
ちょうどそのときに全部(アップが)終わって相楽さんに最終の指示をもらう電話をしていて、「大木が抜かれてくるかもしれないから、(抜かれても)前に見えるだろうからそういう準備をしておけ」というような(内容でした)。前もいるし後ろも結構来ていたので、日体大とか城西大とかが来ていたので、「下手するとそこも来るかもしれないから臨機応変に対応してくれ」と言われましたね。
――9区のレース展開について伺います。大木選手からタスキを受け取る際に何か言葉は交わされましたか
声を掛けるとかそういうのはなく、お互い顔は見られなかったですけど気持ちは受け取りました。
――レースプランはありましたか
前半の下りを利用してある程度速めに入って、後半はかなり平坦で単調なコースだったのでそこから15キロ以降しっかり粘るような意識でやろうかなと思っていました。
――4位集団を形成し、その後周りの選手を突き放すという展開でしたがレースプラン通りと言えますか
僕が走る前指示を受けるまでは単独で走ることをイメージしていたんですが、単独で走るより後ろから来た日体大が引っ張ってくれたので、そこは単独で走るよりも力を使わないで前半行けたので、プラン通りって言ったらプラン通りですけど、うまく集団の中で冷静に対応できたかなと思います。
――プランよりも走りやすかったですか
そうですね、まあ前も見えていて、後ろは離れていると思っていたら日体大が来たので、一緒に前を追えたので(走りやすかったです)。
――アンカー谷口選手へのタスキ渡しはどういうお気持ちでしたか
前にもう東海大が見えていたので、東海大を抜いて3番以内に入りたいと思いました。僕は最後でちょっと遅くなってしまって抜いて渡せなかったんですけど、抜いて3番で入ってほしいという気持ちで渡しました。
――声を掛けたりはされましたか
3番狙いますみたいな感じで、聞こえたかわからないですけどそこだけは声を掛けました。
――途中で区間賞を取れるかもしれないという意識はありましたか
ラスト1キロくらいで後ろから相楽さんに区間賞候補だと言われていたんですけど、そんなのどうでもよくて、とりあえず前(東海大)を追いたいのと、早く終わってほしかったというのが正直な感想です。
――相楽監督から言われたことで印象的な言葉はありますか
そうですね、その「今、区間賞候補だから、前の東海大を抜いたら絶対区間賞取れる、絶対抜いてこい」みたいな感じでラストにかなり言われて、「絶対抜ける、抜かなきゃだめだ」と言われたんですけど結果、抜けなかったので、そこがもうちょっと頑張れたかなと思います。そこが印象に残っています。
――区間賞を実際に取られていかがですか
正直取れると思っていなかったので、素直に嬉しかったですけど、ほかの区間とかと比べても決してタイムがいいわけでもなくて、周りが落ちていったというか周りがちょっとミスをしてしまって結果的に僕が区間賞とったという感じです。本当にうれしいし自信にもなったんですけどそれだけではなくて冷静になったらやらなくてはいけないことがあるというか、東海大も抜けなかったし、喜びだけ120パーセントの区間賞ではなかったかなと思います。でももちろんうれしいです。
――箱根事前取材の際に課題とおっしゃっていたメンタルの克服はできましたか
そうですね、走る前は本当に良い状態でレースに臨めたと思うので、その点に関しては心の不安とかなく臨めたので克服は多少できたのかなと思います。
――目標として「記憶に残る走りをしたい」とおっしゃっていましたが
いや、どうですかね…。僕じゃなくて谷口さんにされたなって感じですね(笑)。もう谷口さんが全て記憶に残る走りをされたので、全部取られた感じです(笑)。
――「大学に入ってから野心的な走りができていない」ともおっしゃっていましたがそこはいかがでしたか
今回に関しては前を追って、苦しくても前を追うという姿勢を見せられたので、少しは昔のような走りというか自分らしい走りができたかなと思います。
――昨年と同じ総合順位3位に関してはどう思われますか
チームとして総合優勝を狙っていての3位だったので一概に喜べない部分もあるんですけど、周りからの評価からもことしのワセダはちょっと厳しいんじゃないかみたいなことを言われていた中での3位だったので、素直にうれしかったし去年の3位とはまた違うようなうれしさがある3位でした。まあ1位の青学大と2位の東洋大とはかなり離れていたので、客観的に考えて冷静に分析したら喜びだけでは終われないなという(感じです)。来年のことも考えたらやっぱり今回の3位はラッキーな3位だったので喜ぶだけではないなという感じですね。
――箱根を終えて相楽監督からチームに向けてお話などはありましたか
本当にさっき話した通りで、この3位は本当にみんなが頑張った結果で、素晴らしい3位だけど、上を見たら危機感を感じなければいけないという話があって、その通りだなと思います。
――4年生が引退されたと思いますが、今まで特にお世話になった方はいらっしゃいますか
僕は石田康幸さん(商4=静岡・浜松日体)と藤原滋記さん(スポ4=兵庫・西脇工)の2人にはご飯とか一緒に連れて行ってもらったり練習のことでも教えてもらったりとかということは多かったので、一方的かもしれないですけど僕はすごく思い入れのある先輩です。
「一人一人が考えて練習できる環境を」
区間賞でチームの悪い流れを断ち切った
――駅伝主将になられたと思いますがこれからどんなチーム作りをしていきたいですか
ことしというか前のチームの反省を生かして、駅伝に関して言えば出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)はミスしてしまっています。ことしは全て3位以内というのを目標にしているので最初からしっかり安定して力をつけられるようにしたいなと思います。
――具体的な目標に関しては「学生三大駅伝全てで3位以内」ということですか
はい、そうですね。
――ことしのご自身のロードとトラックの目標を教えてください
駅伝、ロードに関してはとりあえず出雲、全日本、箱根の3つ全部を走ったことが1回もないので、とりあえず全部走ることを目標で、ことしはしっかり主要区間を走ってチームに貢献したいなという気持ちがあります。トラックに関してもまだ納得できるタイムが出せていないので、自己ベストはもちろんなんですけど、去年も同じことたぶん言ってるんですけど1万メートルでなんとか記録が狙えたらなと思います。
――春前のチームの調整についてお伺いしたいのですが、唐津10マイルロードレース(唐津)にAチーム、青梅マラソン(青梅)にBチームがまとめてエントリーされていますが、意図はありますか
Aチームに関しては唐津にまとめてエントリーしていますけどほとんど個々というか個別です。都道府県駅伝(全国都道府県対抗男子駅伝)に出る人もいますし、唐津のあとも違う大会出る人もいるので、唐津を使うかどうかもわからないので(特に意図はないです)。Bチームの青梅に関しては、そこもどういう立ち位置でやるのかわからないんですけど、練習の一環というかある程度速いペースで30キロ走り切るというようなかたちで3月にある立川(日本学生ハーフマラソン選手権)につなげる意図があるかなと思います。
――チームの目標を達成するために強化していきたいポイントはどこですか
ことしは僕個人としては、個々の力というのを伸ばして、全体の力というかたちをとりたいというか、一人一人がしっかり考えて自分の力を上げることによってチーム力が上がればいいかなと思っているので、一人一人が考えて練習できる環境を僕らの代で整えていけたらいいかなと。例えば一緒にやる練習でも、こういう練習したくないなとかこれは意味ないなと思ってやったら意味ないと思うし、だったらやらないほうがいいと思うので、そうだったら自分で考えてやるような練習をして、納得した練習をどんどん積み重ねて個々が強くなっていけたらもっとチーム力が上がるかなというような感じで思っています。
――後ろのホワイトボードに書かれた『自律した個々から強い早稲田』というフレーズと関係はありますか
あ、確かにその通りですね。あれはことし僕らの代の全てのブロックの競走部のテーマというか、ことしのテーマみたいな感じですけど、本当にあれと一緒で、あれを出す前から僕はずっとそう思っていて、一人一人が納得できた練習を積み重ねれば一人一人の力にもなるしチームの力にもなるなと思っていたので、あの通りですね。
――最後に読者の方に向けてメッセージをお願いします
箱根だけじゃないですけど、今回箱根でいろんな方におめでとうとか声を掛けてもらったりとか、友達とかも応援来てくれたりとかして、こういうときにすごく自分は支えられているというか感謝しなきゃいけないなと感じました。そういう人に恩返しするにやっぱり結果で返すというか見えるところで活躍するというのが一番だと思うので、これからも感謝しつつ結果で返せるように頑張りたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 石塚ひなの)
◆清水歓太(しみず・かんた)
1996(平8)年5月3日生まれ。168センチ、52キロ。群馬・中央中教校出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分08秒96。1万メートル29分24秒33。ハーフマラソン1時間3分08秒。2017年箱根駅伝10区1時間12分30秒(区間9位)。2018年箱根駅伝9区1時間10分39秒(区間1位)