『総合優勝』。東京箱根間往復駅伝(箱根)に向けて、早大はこの目標を1年間掲げてきた。往路は経験豊富な4年生と好調な2年生が力走し、3位と健闘。逆転優勝を目指した復路は序盤の6区で前を走る東洋大、青学大に離される苦しい展開に。7区で後続に迫られると8区で順位を2つ落としてしまう。しかし9区、10区でひとつずつ順位を上げ、昨年と同じ総合3位で激闘の2日間を終えた。
総合優勝を目指すためにもこれ以上遅れが許されない6区は、ルーキーの渕田拓臣(スポ1=京都・桂)が出走。しかし区間新記録ペースで走る小野田勇次(青学大)になかなか追いつくことができない。先頭の青学大には3分46秒差をつけられ、この時点で総合優勝は遠のいてしまった。続く7区のエース永山博基(スポ3=鹿児島実)もペースが思うように上がらず、4位を行く法大に47秒と差を縮められる。8区は当日のエントリー変更で抜てきされた大木皓太(スポ2=千葉・成田)。初の箱根路となったが、終始苦悶の表情を浮かべながらの走りとなり、東海大、法大にかわされ5位に後退してしまう。あわやシード権争いに飲み込まれる状況の中、清水歓太(スポ3=群馬・中央中教校)にタスキがつながった。
勝負どころの7区に出走した永山は、苦しい走りに
それでも優勝を諦めない気持ちがチームに追い風をもたらした。清水は4キロ過ぎで前の法大、追い上げてきた日体大と4位集団を形成すると途中から自らが引っ張り積極的にレースを進める。16キロ過ぎで日体大を振り切ると、法大も突き放す。そしてタスキをもらった時点で1分5秒の差があった東海大にも追いつかんばかりの激走。清水は区間賞を獲得し、次期駅伝主将の気概を見せた。鶴見中継所で清水からタスキを受け取った谷口耕一郎(スポ4=福岡大大濠)は最初で最後の箱根路を、自分のペースで駆け抜けていく。一時は日体大に2秒差に迫られたが、粘りの走りで順位をキープ。そしてその脚は最後まで衰えない。なんと最大で1分近く離れていた東海大に21.6キロで逆転し、青学大、東洋大に次いでゴール。2年連続3位で全長217.1キロに渡るレースを終えた。
厳しい展開でもひるまず、見事9区区間賞を獲得した清水
目標の『総合優勝』には届かなかった。悔しい結果になったかもしれない。しかし選手の表情には達成感がにじみ出ていた。昨年と同じだったが、この3位はいまのチームで勝ち取ったもの。今季は出雲全日本大学選抜駅伝、全日本大学駅伝対校選手権で苦しい結果に終わり、「ことしはダメかもしれない」と言われてきた。そんな下馬評を、早大らしい泥臭い走りで覆し、『三強』の牙城を崩してみせたのだ。大手町でアンカー谷口を迎えた安井雄一駅伝主将(スポ4=千葉・市船橋)は目に涙を浮かべていた。上手くいくことばかりではなかったこの一年。だからこそ、このチームで見る大手町の景色は涙と、そして笑顔なしでは語れないだろう。4年生の気迫のこもった走りから下級生が得たものは大きいはずだ。その思いを胸に、チームは新たなスタートを切る。
(記事 岡部稜、写真 越智万里子、朝賀祐菜)
第94回東京箱根間往復大学駅伝競走 | |||||
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区間 | 距離 | 名前 | 記録 | 区間順位 | |
早大 往路 5時間30分25秒 第3位 | |||||
1区 | 21.3キロ | 藤原滋記 | 1時間02分52秒 | 11位 | |
2区 | 23.1キロ | 太田智樹 | 1時間08分04秒 | 6位 | |
3区 | 21.4キロ | 光延誠 | 1時間03分33秒 | 4位 | |
4区 | 20.9キロ | 石田康幸 | 1時間03分52秒 | 11位 | |
5区 | 20.8キロ | 安井雄一 | 1時間12分04秒 | 2位 | |
早大 復路 5時間38分44秒 第7位 | |||||
6区 | 20.8キロ | 渕田拓臣 | 1時間00分29秒 | 11位 | |
7区 | 21.3キロ | 永山博基 | 1時間06分20秒 | 12位 | |
8区 | 21.4キロ | 大木皓太 | 1時間08分41秒 | 14位 | |
9区 | 23.1キロ | 清水歓太 | 1時間10分39秒 | 1位 | |
10区 | 23.0キロ | 谷口耕一郎 | 1時間12分35秒 | 8位 | |
早大 総合 11時間09分09秒 第3位 |