【連載】箱根事前特集『それが早稲田のプライドだ』 第9回 清水歓太

駅伝

 前回の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)ではアンカーを任され、初の箱根路は区間9位、総合3位に終わった。その後なかなか結果を残すことができず、ここまで歯がゆい駅伝シーズンを過ごしてきた清水。今季残された唯一の駅伝を前に、何を思うのかーー。

※この取材は11月29日に行われたものです。

「一番結果を出さなければいけないところで出せなかった」

真剣に質問に答えてくれた清水

――きょうはどのような練習をされましたか

きょうは5000メートル3本という練習で、上尾ハーフ(上尾シティマラソン)の後から体調を崩していてちょっと病み上がりだったんですけど、しっかりできたのでよかったかなと思います。

――体調を崩したというのは

内臓疲労でご飯も食べられなくて体重も落ちたりしていてかなりきつかったですけど、今週の初めくらいから戻ってきてきょうはしっかり練習できたので大丈夫です。

――集中練習が始まっていると思いますが、あまり参加できていなかったということでしょうか

初め一番最初に先週の日曜日に30キロ(の練習)があったんですけど、そこは飛ばして、きょうからポイント練習を始めたという感じですね、僕は。

――それではことしのレースを順番に振り返っていただきたいと思います。箱根後の対談で「ロードはまず3月の立川ハーフ(日本学生ハーフマラソン選手権)入賞、トラックは自己ベスト更新が目標」とおっしゃっていました。立川ハーフに関してはいかがでしたか

立川に関してはユニバーシアード代表も懸かっていたので、大学の中で一番記録を狙いたいレースだったんですけど、その前の段階の準備もあまりしっかりできていなくて、しっかり走れなきゃいけないところを外してしまった感がすごくあって、悔しさはありましたね。

――その後4月の日本体育大学長距離競技会(日体大記録会)では1万メートルで自己ベストを更新されました

そこから鴨川合宿があって4月の流れは良かったです。いつも僕春は調子悪くてずるずるという感じでトラックシーズンが終わっていたので、4月というか春を大切にしたいなと思っていました。春のレース3本くらいあったと思うんですけど、自分の中ではこのくらいの記録でいきたいなという記録に毎回収まって、日体大のときはかなり調子も上向いていたので「自己ベストも出せるだろうな、このくらいのタイムも出せるだろうな」と自分が考えていた中でそのくらいのタイムが出ました。自分が思っていたことと走りがうまくかみ合っていたので、そこまでは自分の中でも良いシーズンになりそうだなという手ごたえはありました。

――5月の関東学生対校選手権(関カレ)にはどのような意気込みで臨まれましたか

出るからには入賞を目標にしていて、さっきの話と被るんですけど日体大の頃までは順調にいっていたので、入賞もしっかり視野に入れられるかなと思っていたんですけど、自分の調整不足というかそこかあまり練習積めなくて、結局一番結果を出さなければいけないところで出せなかったという感じです。入賞を目標にしていたんですけど、チームの足を引っ張ってしまったという感じですね。

――ご自身の順位については

本当に立川と一緒で、やってしまったという感じです。

――安井雄一駅伝主将(スポ4=千葉・市船橋)と石田康幸選手(商4=静岡・浜松日体)は入賞を果たしました。どのようにご覧になりましたか

いやもう…そこが一番悔しかったというか、その二人と同じ練習をこなしていたのにここまで差が出てしまったというのがすごく悔しくて。二人の入賞は本当にすごいと思うし、チームとして嬉しかったんですけど、素直に喜べなかったというか悔しさが大きかったですね。まあみんな駄目ならまだあれですけど、自分だけ本当に駄目だったのがすごく悔しくて、ことしの試合は色々ありましたけど一番きつかったですね。

――部員日記を拝見しました。夏合宿を「自分の人生の中で一番走りこんだ2カ月」と振り返っていましたが、どのような練習をされましたか

ポイント練習は基本的に変わらないんですけど、自分の中でジョグの量を増やしてかなり走りこむことを重視したというか。自分に任されている間のジョグも多めにやったり、その質も自分で考えてただだらだらやるのではなくて、動きを確認するジョグだったり疲労を抜くジョグだったり、目的を持ってジョグができて結果的に量も質もことしはかなり良い合宿ができたかなという印象があります。質も量も人生で一番良かったんじゃないかなという実感はありました。

――合宿で特に成長したと言える点は

成長した点って色んなインタビューやアンケートでも聞かれるんですけど、あんまり…成長できているのかなという感じで。合宿とかで色んなサポートをしてくれるトレーナーさんとかに色んな話を聞く機会があって、そこで結構僕言われるのが、「陸上のスキルというか能力よりもメンタル的気持ち的な部分がまだ未熟で、そこがもっと上がってくれば試合でもっと良いパフォーマンスができるのにね」って。そういうところを気づけたというか、メンタルの面でそういう難があるというのは元から気づいてはいたんですけど、改めて他の人から言われたり改善する方法とか伺ったりして、それを続けたりとかしてそれがプラスにはなっているかなというのはあります。

――メンタル的に弱い、ということでしょうか

そうですね、弱い…というか、弱いのもあるんですけど、試合への持っていき方とか練習に対する考え方とか、そういうものがまだまだ未熟であるというのは結構指摘されたので、走る練習とかの補強とかではなくて、考え方とかメンタルの持ちようとか試合の持っていき方とかを見直す機会になったかなと思います。

――夏合宿で逆に消化不良に終わった点があれば

夏合宿は3回あって、富士見が1回目で2回目が菅平妙高で3回目が岩手なんですけど、1回目の富士見の後半のポイントとかは結構疲労困憊(こんぱい)で全然できなかったのもありますし、2回目の菅平も高地に順応できなくてかなり練習はできていなくてそこはかなり(消化不良)でしたね。ポイント練習も全然つけなくて離れてばっかりだったし、かなり苦しかったですけど、トレーナーさんとかに何が原因なのかなと見てもらって、原因がわかって改善したら良くなって2次の後半とか3次はまあまあそれなりにできました。3次は途中でケガしちゃって一時期、5日くらい走れない時期があったんですけど、だからまあトータルで全部うまくいった合宿とは言えないですけど、悪かったところも含めて良い経験だったと思います。

――先日の上尾ハーフのインタビューの際に「夏合宿以降試合に出られていない」とおっしゃっていましたが、あまり調子が上がらなかったということでしょうか

僕の立場が出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)に出るかもしれないということで補欠ということで、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)も出るかもしれないといって補欠になったので、例えばBチームとかだったら出雲を考えずに他の試合とかバンバン出られるんですけど、僕は出るかもしれないけど補欠になってというのが続いてしまったので、結局気が付いたら出てないねという感じでした。ケガとかではないです。全日本は僕は結構出るつもりだったんですけど、その前に不調で全然練習ができなかったというのが僕にとっては痛いかなと思います。

――秋の駅伝シーズンが始まり、出雲、全日本ともに補欠にエントリーされながらも出走には至りませんでした。その心境は

出雲は正直3次にケガをしていたので使われないかなという気持ちもありました。その裏でこっちで1万(メートル)の記録会(早稲田大学長距離競技会)があったと思うんですけど、その8000までペースメーカーをやらせてもらっていて、それも全部全日本を見据えてやったというのもあって、早い段階から全日本に向けて準備できるなと思って全日本で頑張ろうと思っていました。だから出雲と全日本は僕の中では全く違っていて、気持ちと裏腹に全くついていけなかったポイント練習とかは、きつい…というかこんなはずじゃないのにという気持ちが強くて。でも全日本に関しては早稲田自体があんまり良くなかったですけど、出た選手を責めることは僕にはもちろんできないなと僕自身思いました。僕がしっかり調子を上げて試合に出ていれば、もうちょっと他の人に負担がなかっただろうし、出なきゃいけなかった存在だったと思っているので、出た選手がどんな走りをしようとスタートラインに立てなかった僕はそれ以下だと思ったので。悔しいことばっかりなんですけど、やりたいことと現実がかなりかけ離れていて、出雲から全日本の1カ月は結構しんどかったです。

――出雲、全日本のレースはご覧になりましたか

はい。全日本は向こうに行って付き添いをしていました。

――結果を含め、どのように思われましたか

出雲の時はそんなに調子悪くなかったというか、むしろ良かったぐらいだったので、「一緒に練習していたみんなだったのでもっとできるんじゃないか」というか「練習を見ていればもっとみんなできるのにな」、と思いながら見ていました。全日本に関してはさっき話した通りチームというよりも自分のことで精一杯というか、チームも自分も良くなかったなという感じですね。

――清水選手は次期駅伝主将に決まりましたが、なぜ立候補されたのですか

一番は、さっきも話した通りメンタルに難があるというか、僕自身あんまり前に出て引っ張るタイプではないと思っているんですけど、そういう役職を借りてじゃないですけど自分に責任を無理やりでも植え付ければ、メンタルの面でも変わっていけるんじゃないかなと期待もあって。あと単純にこのチームをもっと良い方向に変えたいなという気持ちがあって立候補しました。

――同期の話し合いでどのような所信表明をされましたか

そのときは自分の思いというか、結構みんな永山(博基、スポ3=鹿児島実)がやると思っていたと思うので、そこはあいつがやればよかったのになと思われないようにじゃないですけど、同期にそう思っているやつがいる中で僕はやりたくなかったので、そこだけはみんなに確認してから、という感じです。さっきも言った通り性格的に引っ張るタイプではないので、主将になるという覚悟、性格を変えるくらいの覚悟をみんなに話しました。

――同期からの反応は

みんな快く受け入れてくれて、色々話したら「そんなに思っていると思わなかった」とか言ってくれたりして、「私たち僕たちも支えるから一緒に頑張ろう」みたいなことを言ってくれたので、僕自身で抱え込まずに同期と、みんなでやっていけたらなと強く思いました。

――理想の主将像はありますか

一番は強くて背中で見せるような主将になりたいですけど、今のところそういう力は出せていないので、そこが一番僕の理想ではあります。やっぱり力をつけて説得力を持たせるのが大切だと思うので、それが僕の中で理想なんですけど、それだけがすべてじゃないと思っていて。みんなが不満を持って練習に臨んでもらいたくなくて、無駄なのに適当にやっている練習とか、そういうのがあっていらないなら消したいし、納得していないのに合宿をこういう日程でやっているとかだったらどんどん相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)と話し合って日程を変えたりとかもしたいし、そういうのを柔軟に対応して、全員がというのは無理かもしれないですけど、少しでも多くの人間が自分の地位を高めるための環境を整えられたら一番いいかなと思います。そこを目標というか、環境整備じゃないですけど、僕に不満があればそいつと言い合えるような主将というか、裏で言われて結局(意見が)通らないみたいなのではなくて、それがおかしいと思うならぶつかってきてほしいというか、みんなが納得して練習できるようなチームにしたいなというのはあります。

――まだ今は3年生ではありますが、次期駅伝主将が決まってから意識の中で変わったことはありますか

まだ箱根があるので、あんまりそういうのはないんですけど、自分だったらどうするかなって考えるときはあります。

――清水選手から見て安井駅伝主将はどんな主将ですか

安井さんはもうさっき言った強いキャプテンだと思いますし、普段本当に安井さんは優しくて言わないタイプなんですけど、たまに主将ということで周りに声かけていったりとか、練習のときも結構強い口調でみんなを鼓舞しているので、こういう主将になりたいなと思います。

――理想に近いということでしょうか

そうですね、はい。

「色んな人の記憶に残る走りがしたい」

――ここからは箱根についてお伺いしたいと思います。まず今のチームの状態をどのようにご覧になっていますか

チームとしては全日本のときはチーム状況がかなり良くない感じだったんですけど、その後の記録会とか上尾ハーフとか見て全日本の時よりはチームとしては箱根に向かって上向きではあるかなという感じですかね。

――ことしのチームの強みは何だとお考えですか

やっぱり4年生ですかね。4年生がここに来て全員すごい勢いで引っ張ってくれていてみんな強くて安定感があるので、その4年生を軸にそれ以下がどうサポートできるか、一緒に上がっていけるかがことしのチームが箱根で戦うためには必要かなと思っています。

――前回大会は実際に10区を走られました。今回出走できるとすれば走りたい区間はありますか

希望としては往路を走りたいんですけど、現実的な状況を考えてまだわからないですけど往路を走る確率は少ないかなと個人的には思っています。そうなると復路で核となる7、9、10区あたりを頭の中でシミュレーションしてはいます。

――ご自身の走りの強みはどこだとお考えですか

結構大学に来てからそういう走りはできていないんですけど、粘りであったり何も考えずに前をどんどん追うような野心的な走りというか、前をひたすら追うような走りが僕の売りというか、周りの人もそう思ってくれていると思うので、守りに入らず攻めていくようなレースが(強みです)。大学に入ってから守りに入りがちでなかなかできていないので、この箱根はそういう走りをしたいなという気持ちがかなり強いので、できたらいいなと思います。

――駅伝におけるご自身の役割は何だとお考えですか

僕はエースでもないので、僕みたいな選手がどのくらいの走りをするのかというのがチームにとってはベースを上げるじゃないですけど大切だと思います。結構夏とかはかなり練習できたときもあったので、そういうところも含めると監督とかからはもっと走ってほしい人だと思います。周りのみんながどう思っているかわからないですけど、監督が期待してくれているくらいの結果をしっかり残せれば、良い意味での誤差になると思うので、そういう感じですね。

――意識している大学や選手はいらっしゃいますか

同じ群馬出身の塩尻(和也、順大)は大学入ってからずっと意識しているんですけど、どんどんと間を開けられて今やもうかなりすごい選手になってしまったのでライバルとも言い難いんですけど、それ(ライバル)を変えたら自分の中で負けを認めるような気がして、そこは恥ずかしくても変えずにやるようにはしています。

――大学としては

それに応じて順大ですかね。負けたくないですね。きょねんも4位で早稲田は3位だったので、終わった後も塩尻に「あと16秒だったのにな」みたいなことを言われたりして。

――かなり詰められていましたよね

そうです、結構危なくて。「もうちょっとだったのに」みたいなこと言われて(笑)。絶対抜かれたくないと思いました。あとはその他にも群馬で僕と同じ地元の選手がちらほらいる大学には勝ちたいですね。

――残り1カ月で修正していきたい点はありますか

何度も言っているんですけど、やっぱりメンタルですね。そこかなと思っていて、練習きつくなってきて気持ち的にも下がりがちになって、そういうところがやっぱりかなり問われてくるというか大事になってくるし、試合でも下を向いて弱いメンタルで臨んだら絶対良い結果は出ないので、あとどれだけそういう自分の考え方を変えられるかだなと。もうきついきついって思ったら体もきつくなってくるのを、良い意味でサボろうというか、固くならずにサボるくらいでやろうくらいの気持ちを持てば体も変わってくるかなと。きょうもそういうのを意識してやってそこそこ練習はできたので、そういうのを意識してやろうかなと思います。

――構えすぎないという感じでしょうか

そうですね。そういう癖があるというか、固くなっちゃうというか、大切なレースとか練習になると失敗したらどうしようという気持ちがすごい先行してしまうので、そういう気持ちではなく、まあいいや、と良い意味で思えればいいかなと思います。

――チームとしての目標と、個人としての目標をそれぞれ教えてください

チームの目標は『箱根駅伝総合優勝』というのは変わらないです。個人的な目標としてもそこに見合うような結果、区間賞、区間3番以内というのが優勝するためには必要になってくると思うので、そこは取らなきゃいけないなと思っています。でもそれとは別にタイムとかそういうのではなくて、色んな人の記憶に残る走りがしたいなと思っていて、良い意味で印象に残るような走りができたらいいなと思います。

――最後に箱根に向けて改めて意気込みをお願いします

ことしは関カレも失敗して、三大駅伝2つとも走れていなくて、このチームの力にまだ1回もなれていません。最後の機会が箱根だと思うので、そこでは本当に最後に最高の恩返しをしたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 石塚ひなの)

箱根への意気込みを色紙に書いていただきました!

◆清水歓太(しみず・かんた)

1996(平8)年5月3日生まれのO型。168センチ、53キロ。群馬・中央中教校出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分08秒97。1万メートル29分24秒39。ハーフマラソン1時間3分08秒。食べることが好きで、グルメ巡りが趣味という清水選手。学生三大駅伝唯一の出場機会、どんな「記憶に残る走り」を見せてくれるのか注目です!