【連載】箱根事前特集『それが早稲田のプライドだ』 第4回 吉田匠

駅伝

 トラックシーズンは3000メートル障害に出場し、日本学生対校選手権(全カレ)では見事入賞を果たした吉田匠(スポ1=京都・洛南)。しかし駅伝シーズンでは全日本大学駅伝対校選手権(全日本)に出走するも思うような走りができず、悔しさをかみしめた。間近に迫った東京箱根間往復大学駅伝(箱根)を念頭に、自身の現状と箱根への思いを語っていただいた。

※この取材は11月29日に行われたものです。

「春シーズンは良くない結果で終わってしまった」

ことし一年について振り返る吉田

――集中練習が始まりましたが、吉田選手自身の調子はいかがでしょうか

 集中練習が始まってまだそんなに練習を積んでるわけではないですが、日曜から始まって、きょうも練習が結構きつかったんですけど、どちらも今のところは結構こなせているので、いい感じでこれているとは思います。

――きょうはどのような練習をされましたか

今日は5000メートルを3本です。

――息抜きに何かされたりはしていますか

寮ではゆっくりしていて。ケアをしたりとかもですけど、ゲームしたりして息を抜いています。

――それは誰かとされますか、それとも1人で、ですか

人とやることもありますね。

――誰とされることが多いですか

最近だったら2つ上の3年生の小澤さん(直人、スポ3=滋賀・草津東)とかとよくしています。

――小澤さんは仲のいい先輩なのでしょうか

そうですね。

――同期で仲のいい方はいらっしゃいますか

同期だと、渕田(拓臣、スポ1=京都・桂)とか宍倉(健浩、スポ1=東京・早実)とかは上のチームで結構話すことも多いので、仲がいいと思います。

――試合前のルーティンやこだわりはありますか

個人的にはあまりなくて、特にこういうことをするとかは作ってないです。

――あまり気にせずということでしょうか

そうですね、作ってしまってできなかったときに心配になってしまうかなと思うので作ってないです。

――ことしのトラックシーズンから振り返っていきたいと思います。東京六大学対校大会で自己ベストを更新されて、そこからまた早稲田大学記録会でベストを更新されましたが、春は調子が良かったのでしょうか

入ったときは調子が良くて、ベストも出ていたんですけど、だんだん尻下がりというか、関東学生対校選手権(関カレ)も結果が出なくてというのが続いてしまったので、個人的に僕の中では春シーズンは良くない結果で終わってしまったなという感じです。

――先ほど出ましたが、関カレを振り返って、その時のお気持ちをもう一度聞かせてください

関カレまではベストという形で来ていたので、しっかり結果を残せると思って臨んだレースだったんですけど、結果伴わずという形で自分の思ったようなレースができずにチームの得点にもなれずに本当に悔しい思いをしました。

――今、関東カレを振り返ってここができていなかったなというものがあれば教えてください

正直振り返っても調子も悪くなくて、準備もしっかりできていたので悪いところは見つからないんですけど、そういうところから逆に考えたら、見えないプレッシャーというか、東京六大学対校大会で対抗戦というのは経験していましたが、大きい規模での初めての大会ということで少し気負ってた部分もあったんじゃないのかと思います。

――関カレ以降夏合宿まではどのように過ごされましたか

記録会とホクレン(ホクレン・ディスタンスチャレンジ)とかのタイムを狙うレースもありましたし、夏合宿がきついということも分かっていたので、練習をしっかり積む期間というふうにしていました。

――次に夏合宿について聞かせていただきます。大学初めての合宿ということで、慣れないことはありましたか

1年生として仕事もありましたし、練習量も高校とは違って距離も伸びて、質も高くなって、3次合宿は特にきつかったですが、きついなりにもしっかりできたかなというふうには思います。

――1次、2次合宿では走り込みはしっかりできましたか

1次、2次は走り込みというより僕の中では故障をしないということを念頭に置いていました。高校から距離が伸びて、いきなり走りすぎて故障してしまったら夏に練習を積めなくなってしまうので、故障しない範囲で練習するというのを1番意識していました。

――それはご自身の中では達成されたのでしょうか

そうですね。故障はなかったので。練習量では少し減ってしまったかもしれないですが、1次2次ではけがをせずにできたので良かったと思います。

――スピード練習を取り込んだメニューも消化できたのでしょうか

離れてしまったメニューもあったのですが、大体こなせたのでいい練習ができたと思います。

――全カレでは『長距離全種目入賞』をチームの目標に掲げていました。見事入賞を果たされましたが、その時のレースを振り返っていかがでしたか

3000メートル障害が長距離最後のレースだったので、他の人たちが入賞してきて最後僕が入賞したら全種目達成ということでプレッシャーもありました。走りを見てもタイムを見てもそんなにいい走りというわけではなかったんですけど、そつなく自分の力を出して安定した走りができたという意味ではよかったかなと思います。

――いい走りではなかったというのは具体的にはどのあたりが納得いかなかったのでしょうか

前についていけなかったり、ラストスパートがしきれなかったり、タイムを見てもベストからは程遠かったので、まだいけたかなとは思います。

――関カレと比べて全カレは気持ちの変化はありましたか

気持ちの面ではやっぱり関カレは初ということもあって、完全に調整してきていたので、結果を出さないという感じだったのですが、全カレは合宿の流れで臨んだので、関カレよりは気負わずに走れたんじゃないかと思います。

――緊張はされていましたか

緊張というよりはしっかりやらないといけないと思っていました。

「学生三大駅伝を走ってタスキをつないでということに体が固まってしまった」

――駅伝シーズンに話を移させていただきます。出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)ではエントリーから外れてしまいましたが、その時のことを振り返っていかがですか

出雲はエントリーに入るのは厳しいかなと思いながらも練習は積めていて、チャンスはあるのではというどちらも想定していたので、外れてしまったときにそんなに落胆したわけではなかったです。でも現地に行けなかったので生で体験できなかったのは悔しかったです。

――厳しいかなというのは自分に足りないものを感じていらっしゃったということでしょうか

出雲は比較的短い区間なので、スピード系の人の方が選ばれやすいということと、6区間という少ない区間なので選ばれるには難しいなと正直思っていました。

――チーム全体として9位という結果になりましたが、これについてどのようにとらえていますか

結果からしたらチームとしてもよくなかったと思うのですが、自分より強い選手が走って9位ということなので、僕が走っていたらもっと良くなかった可能性も考えられるのでまだ力が足りないんだなというふうに思いました。

――出雲が終わって全日本に向けてはどういった練習をされていましたか

全日本に向けては練習量を落とさず、ポイント練習などで全日本こそ走ろうという気持ちで練習を積んでいました。

――全日本の出走が決まったのはどのタイミングでしたか

走るんじゃないかなという感覚はあったんですけど、完全に分かったのは3日前とかでした。一応区間エントリーはされていましたが、当日変更もできるというルールで最後まで分からないということで、心配しながらも走れるかなという感じで過ごしていました。

――その時の調子というのはいかがでしたか

練習はしっかりできていたので、悪くはなかったです。ただ今考えればですが、練習しすぎていたというか、疲労が残っていたというのがあるのでそれが走りに影響してしまったかなというふうにも思います。

――シード圏外でタスキを渡されるというプレッシャーのかかる展開でしたが、その状況はどのように捉えられていましたか

全国の舞台の駅伝というのは高校の時に一応経験していたので気負いというのはなかったというふうに思っていましたが、それも今考えたら関カレの時みたいに学生三大駅伝を走ってタスキをつないでということに体が固まってしまったというか、気持ちの面では気負わずいこうというふうに思っていたんですけど思いとは逆に体に出てしまったという気はしています。

――全日本後はどのように気持ちを切り替えられましたか

終わってから正直数日間は引きずってしまって、気持ちの面できつかったんですけど、いつまでもそう思っててもつながらないですし、上尾シティマラソン(上尾ハーフ)もあったので、切り替えて頑張ろうということで自分で切り替えました。

――上尾ハーフまではどのような練習をされていましたか

上尾ハーフまでもそんなに練習量を落とさず、練習の流れで出ようということで調整しきらずという感じですね。

――上尾ハーフでは疲労は残っていたのでしょうか

残っていたと思います。そういうこともあって自分の中でも納得のいく走りができませんでした。前半はまだ良かったんですけど、後半は足が動かなくなってきたりとか上半身がきつくなったりしてしまいました。

――20キロに対応する練習が始まっていると思いますが、距離に対してはどのように感じていらっしゃいますか

距離は練習の中で走っていくしか克服できないと思います。練習はあんまり走ってないのに本番走れたというのはないですし、特に箱根は60分以上走るので、距離だけでなくて時間もしっかり練習でしっかり慣らしていかないといけないと思います。

――今は距離に対して不安はありますか

正直上尾で失敗したのもあって不安な部分もありますが、そういう気持ちで出てもいい走りもできないと思いますし、前向きにしっかり対応できれば走れなくはないと思っています。自分の中では長い距離も走れる選手にならないと意味がないと思うので前向きに捉えてはいます。

――高校時代はロードでの強さが光っていましたが、自分のどのような部分を箱根では生かしたいと考えていらっしゃいますか

僕の持ち味というか、高校時代から長所だと思っているのは自分のペースで走れるということで、あまりペースを乱されずに人がいなくても追いかけて結果を残してきました。特に箱根の復路とかだと1人で走ることも多くなると思うので、そういったときに自分のペースをしっかり刻むということで持ち味を出せればなというふうに思います。

――単独走が得意ということでしょうか

そうですね。早めのペースで入ってしまったら後半立て直せるタイプではないので、変に一緒に走ってペースを乱されてしまうより、最初から自分のペースで走る方が走りやすいという感覚はあります。

―箱根では希望する区間はありますか

去年太田さん(智樹、スポ2=静岡・浜松日体)が走っていたのもあって8区が自分の中で気になるというか、走れたらなという区間ですね。

――それは復路で単独走というのが念頭にあるのでしょうか

そうですね。往路を走れる力をつけれたらいいですけど、 正直今からだときついというのもありますし、さっき出た単独走もできるという自信があるので、往路より復路のほうが力を出せるのではないかというふうに思います。

――チームの目標と個人の目標を教えてください

チームとしては箱根駅伝総合優勝です。個人としては走るということは大前提で、それを目標にしてしまったらそれで終わってしまうと思うので、どの区間かはまだ全くわからないですけど、走って区間5位以内というのを目標にしています。4年生と走る最後のレースになるので、全日本でチームに迷惑かけた分、チームに貢献したいなと思います。

――最後に箱根への意気込みを聞かせてください

箱根では今からしっかり練習を積んで 、1年生だからと弱気になるのではなく、強気な走りをして、チームに貢献できればなというふうに思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤詩織)

箱根への意気込みを書いていただきました

◆吉田匠(よしだ・たくみ)

1999(平11)年3月25日生まれのO型。172センチ、57キロ。洛南高校出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分17秒53。1万メートル30分00秒68。ハーフマラソン1時間6分05。色紙に書く箱根への意気込みをとても悩まれていた吉田選手。最終的に選ばれたのはご自身の持ち味である「乱されない」という言葉でした。全日本の悔しさを胸に箱根では安定した走りに注目です