いよいよ明日に迫った東京箱根間往復大学駅伝(箱根)。早大は不調のトラックシーズンの流れを断ち切ることができず、出雲全日本大学選抜駅伝は9位、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)はシード権を逃す7位と苦汁をなめる結果に終わった。しかし負けたままではいられない。「総合優勝という目標は絶対に変えない」(安井雄一駅伝主将、スポ4=千葉・市船橋)。「早稲田大学というのはどんなに層が薄くても、弱くても優勝を目指すのは当たり前。その責任が選手を強くする。それがうちの伝統」とは渡辺康幸前駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)の言葉だが、ことしもその早稲田のプライドにかけて、『総合優勝』を虎視眈々(こしたんたん)と狙っていく。『スピード駅伝』と呼ばれる出雲では、実力者を多数擁した東海大が巧みな区間配置でⅤ。全日本は神奈川大のアンカー鈴木健吾が逆転し、20年ぶりに優勝を果たした。箱根は群雄割拠の混戦が予想されるが、早大を中心に今一度来るレースのポイントを押さえていきたい。
1区はレースの流れをつくる重要区間で、エース級の選手を投入する傾向がみられる。早大からは藤原滋記(スポ4=兵庫・西脇工)がエントリー。入学以降学生三大駅伝では堅実な走りでチームを支えてきており、1区はレース全体の勢いを左右する、失敗できない区間であるだけに藤原の冷静な走りは武器となるだろう。そして、通称『花の2区』には太田智樹(スポ2=静岡・浜松日体)が名乗りを上げた。太田は夏から充実した練習が積めており、日本学生対校選手権1万メートルは7位入賞、続く駅伝シーズンも全日本は1区で先頭と4秒差の区間3位とコンスタントに結果を残してきた。今季チーム一好調な男がライバル校のエースとどう渡り合うのは必見だ。一方他大学を見て気になるのはやはり東海大と神奈川大。東海大はエース關颯人を1区に配置した。また神奈川大は1区に定評のある山籐敦司、2区には絶対的エース鈴木健吾をエントリーさせ、ここで確実にリードを奪いにくるだろう。混戦必死の序盤、早大もミスなく付いていきたいところだ。続く3区には、光延誠(スポ4=佐賀・鳥栖工)が出走する。全日本前に発症した腰痛も完治し、堂々のエントリーを果たした。駅伝で結果を残すためにも、エンジのユニフォームで走る最後の箱根に懸ける思いは強いだろう。序盤で勝負に乗り遅れるのは致命傷となるため、他大学を見ると青学大の田村和希、東海大の鬼塚翔太など3区にも実力者を配置しているところが多い。
光延は最後の箱根路で結果を残すことができるか
4区は去年から距離が延伸され、後半に旧5区の上りが付け足された難コース。区間変更前は距離が20キロ未満ということもありルーキーの初舞台になることも多かったが、現在は失敗できない往路の一区間ということで、経験豊富な選手を配置しているところが多い。早大も例にもれず、4区は石田康幸(商4=静岡・浜松日体)が選ばれた。関東学生対校選手権ハーフマラソン5位入賞を果たしてからは自己ベスト更新、全日本の8区で快走するなど安定性が光る石田康。ロード、距離への適性も申し分なく、4年生タスキリレー、そしてすべてを懸けたラストランに期待したい。小田原中継所を越え、ついに迎える『天下の険』に挑むのは、駅伝主将の安井雄一(スポ4=千葉・市船橋)だ。2年生時は同区間区間5位、昨年は区間4位と確実に区間上位の走りはしているが、区間賞獲得までは至らなかった。ことしの安井は故障もなく、部内一の練習量でチームを率いてきた。箱根後東京マラソンに出場することを見通し距離を積んだことで精神的余裕もあると、相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)からの信頼も厚い。先頭から2分以内で安井につなぐことができれば、往路優勝も視野に入るだろう。一方他大に関しては神奈川大の萩野太成、順大の山田攻、中央学院大の細谷恭平などタフな選手が集まった。『山の神』が不在と言われているだけに、5区で付いた差は、勝敗に大きくかかわってくる。
5区に安井がいる安心感は大きい。主将としてチームを栄光に導いてみせる
ことしは各校の実力が拮抗(きっこう)している『戦国時代』で、ミスをした大学は優勝争いから脱落していく厳しい戦いが予想される。そのため「エース区間の2区」、「山登りの5区」などと銘打っている区間もあるが、往路はどの区間も重要だ。早大も4年生を中心に主力を投入し、往路で一つの勝負に出た。総合優勝のための往路優勝を目指し、まずは1月2日、芦ノ湖を目指し大手町で号砲が鳴る。
(記事 鎌田理沙、写真 平松史帆)
直前インタビュー
区間エントリー発表!/第94回東京箱根間往復大学駅伝(12/29)
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