【連載】『頂』第6回 藤原滋記

駅伝

 全日本大学駅伝対校選手権(全日本)でタスキをトップで受け取ると、区間3位の好走を見せた藤原滋記(スポ3=兵庫・西脇工)。しかし今シーズンの道のりは決して順風満帆と言えるものではなかった。故障に苦しみ満足に走ることができなかった春のトラックシーズン。夏合宿ではBチームでの練習も経験した。このような苦しい時期を乗り越え、藤原はいかにして復活を遂げたのか。そしていよいよ大一番である東京箱根間往復大学駅伝(箱根)が近づく中で、いま何を思うのか。起伏に富んだ今シーズンを振り返っていただくとともに、間近に迫る箱根への意気込みを伺った。

※この取材は11月30日に行われたものです。

「先頭に出て後輩を引っ張るという意識を持っている」

丁寧に質問に答える藤原

――きょうはどのようなメニューを行いましたか

 きょうは5000メートルを3本だったんですけど、設定タイムもそんなに速くなくて、どれだけキロ3分ペースで楽に走れるかということを意識していました。

――集中練習ではどういったことを重点的に行っているのでしょうか

 まずはやはり20キロという距離をしっかり走り切るという練習や、前半を速いペースで入ってそのあとどれだけ我慢できるかというのを自分の中では重視してやっています。

――集中練習は順調に消化することができていますか

 そうですね。今のところはポイント練習もしっかり順調にこなせているので、残りもケガなくやっていきたいなと思っています。

――コンディションは徐々に上がってきているということでしょうか

 そうですね。

――ことしは上級生として集中練習に臨んでいますが、これまでと心境の違いなどはありますか

 今までは先輩の胸を借りながら走るという感じだったんですけど、やっぱり3年生になってそのままというわけにはいかないので、練習の中でも先頭に出て後輩を引っ張るという意識を持ってやっています。

「4年生を追い越すつもりでやっていきたい」

――ここからは今シーズンを振り返っていただきたいと思います。まず春からのトラックシーズンを総括していかがですか

 トラックシーズンは夏合宿まで故障でほとんど走れなくて駅伝シーズンに入ってようやく走れるようになったので、ここでしっかり取り返していきたいなと思っています。

――ケガで走れない時期が続いたということで焦りはありましたか

 自分が補強している間に他の選手はみんなグラウンドを走っていたりしていて、そういう姿を見るとやはり焦る気持ちはあったんですけど、補強しかできない時期というのも誰にもあるのでそこをしっかり我慢してやっていくというのは自分の競技の中でも生きてくると思います。

――そういった時期に何か意識して取り組んでいたことはありますか

 やっぱりケガの原因は何かを考えたりしましたし、故障の経験がある先輩たちからいろいろ話を聞いたりして、自分から何とかしようという気持ちはすごく持っていました。

――夏合宿では満足に走ることができたのでしょうか

 夏合宿では徐々に復帰してみんなと一緒にやれたのは三次合宿だけだったんですけど、そこでしっかりと練習を積めたので駅伝シーズンもメンバーに入ってこれたのかなと思います。

――夏合宿を通してご自身の中で成長を感じる部分はありましたか

 二次合宿まではBチームの方でやらせていただいたんですけれども、そこの選手と一緒に過ごす中で上のチームの選手にあって自分に足りない部分が見つかったり、下級生を見ることで上級生としての自覚というのはすごく芽生えました。

――秋以降は徐々にコンディションが上がってきていると思いますが何か要因はあるのでしょうか

 夏合宿でフォームの見直しというのを重点的にやってそれがすごく生きてきたというのと、練習の中でただただ与えられたメニューをやるだけじゃなくて自分の中で工夫するようになったというのが大きいですね。

――具体的にどのような工夫を行ったのでしょうか

 体調と対話するというか自分の体のコンディションを考えながら監督と練習の足し算や引き算を相談するようになったので、そういうところで駅伝シーズンもケガなくやれているなと思います。

――1万メートルでは自己ベストも更新しましたが記録についてはどのように受け止めていますか

 一週間前から状態がすごく良くて相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒)からも絶対に自己ベストは出るからと言われていました。自分としても全カレ(日本学生対校選手権)のA標準となる28分55秒というのを目指してやっていたので自己ベストが出たというのはうれしかったんですけど、あと一歩のところで届かなかったということでそこは悔しさが残る結果となりました。

――駅伝シーズンが近づくにつれて復調したということで自信を取り戻すことができたのではないでしょうか

 やっぱり1万メートルの記録会というのも一つ自信になりましたし、全日本も先頭でタスキをもらって走れたというのもすごく自分の中で自信になるものであったので、箱根でもしっかりと結果を残したいと思います。

――ことしの早大は4年生がしっかりと結果を残していますが、藤原選手から見て4年生というのはどのような存在でしょうか

 すごく個性が強いというか、キャプテンの平さん(和真駅伝主将、スポ4=愛知・豊川工)を中心にいろいろな方面からアプローチしてくれる先輩がいるので、そういった意味ではすごく頼れる4年生だとは思いますけど、やっぱり3年生として頼ってばかりではいられないので集中練習でも4年生を追い越すつもりでやっていきたいです。

――武田凛太郎選手(スポ4=東京・早実)と同部屋だとお聞きしましたが、武田選手から学ぶことというのはありますか

 オンとオフの切り替えがすごくうまいというか、やる時はやって抜くところは抜くというのができる人だなと思っていて、自分としてもそういったところは見習いたいなと思います。

――やはりお二人で競技のお話などもするのでしょうか

 そうですね。凛太郎さんからもよく歩み寄って下さるので僕も接しやすいですし、練習が終わってからその日の練習内容についても話をしたりします。

――先ほどもお話の中であがった平主将というのはどういった存在でしょうか

 高校時代から名の知れた選手というか自分の中でもすごく尊敬している選手で、大学に入って同じチームになったというのは一つうれしいことでした。3年間先輩を見てきて自分の考えをしっかりと持っているところなどは尊敬できるところです。

――藤原選手は以前から4年生に頼るばかりではなく3年生がしっかりと上がってこなければいけないとおっしゃっていました。藤原選手からみて集中練習での他の3年生の様子はいかがでしょう

 きょうの練習でも光延(誠、スポ3=佐賀・鳥栖工)が積極的に先頭を引っ張ろうとしていたり、安井(雄一、スポ3=千葉・市船橋)や石田(康幸、商3=静岡・浜松日体)とかと4人で話すときも、俺らもしっかりと練習を引っ張れるようになろうとかそういった会話は常にしていて、そういう共通意識は持てているのであとは実行に移すだけだなと思います。

――同期の選手とやはり競技の話や今後の方向性などをすることが多いということですね

 そうですね。週末たまに学年でご飯に行こうというような呼びかけをして、そういうときにはチームをこれからどうしていくかとかそういう話は最近するようになりました。

――下級生も活躍している選手が多いですが、特に注目している選手はいらっしゃいますか

 やっぱり下級生の中でも太田(智樹、スポ1=静岡・浜松日体)、新迫(志希、スポ1=広島・世羅)あたりはすごく勢いがあると思います。あとは2年生の永山(博基、スポ2=鹿児島実)もすごく力があって、彼らをもうワンランク上にあげるためには僕らが頑張らなければいけないので、そこはすごくしっかりとやっていかなければいけないなと思います。

――出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)では出走はかないませんでした。やはり悔しい思いはありましたか

 夏合宿で出遅れてしまった分やっぱり周りの選手と比べて調整も遅れていた部分があって、出雲が走れないというのは前もって自覚していたので、練習の中でもその先の全日本を見据えてやっていました。

――出雲で早大は厳しい結果となってしまいましたが、藤原選手はチームをどのように見ていましたか

 チームの中でも出雲はいけるんじゃないか、戦えるんじゃないかという雰囲気は出ていたので、その分ショックというのは部員全員が持っていました。ただその中でも切り替えがうまくできたのが全日本での快走につながったというか、平さんも1区で出遅れてしまったんですけど落ち込んだ姿を見せなかったので、そういうところが全日本への切り替えにつながったんじゃないかなと思います。

――出雲直後でもチームの雰囲気は暗くはなかったということですね

 そうですね。やっぱり走った選手というのは悔しそうだったんですけどそれ以外の選手はもう次の全日本を見据えながら練習していたので、走った選手もそういう姿をみて切り替えができたのではないかと思います。

――藤原選手も全日本に向けてうまく切り替えることができたのでしょうか

 そうですね。僕はもう出雲で走れないことが2週間くらい前から分かっていたので、淡々と全日本に向けて練習していました。

――全日本に向けては良い準備ができていましたか

 練習もすごく順調に消化できていたので、普通に走れば戦えるだろうと思っていました。

――最初のエントリー発表では出走メンバーには入っていませんでしたが、自分が走るという自信はあったのでしょうか

 相楽さんからもエントリーは入っていないけどおまえは使うぞという言葉は言われていたので、自分の中でもコースを見たりだとかそういう準備はできていました。

――全日本の走りを改めて振り返っていかがでしょうか

 自分の中で設定タイムがあってそこに近いタイムで走ることはできたんですけど、やはり区間3位ということでそれを上回るような走りを他大の選手がやってきてそこは一つ悔しい部分であるので、箱根ではしっかりと区間賞を取りたいです。

――出走前、緊張などはありましたか

 先頭を走る経験というのは大学に入ってから今までなかったので、その点ではやはり自分の中で気負ってしまって部分はあったのかなと思います。

――太田選手や新迫選手といった1年生も好走を見せましたがそれについてはいかがですか

 自分の前後が一年生でやはり上級生である自分がしっかり走らないと後ろにも不安を与えてしまうので、新迫が作ってくれた流れを太田にしっかりとつないでいこうと思っていました。

――全日本で早大は久々に駅伝で好成績を残しましたが、チームにも自信が芽生えたのではないでしょうか

 一つ自信にはなったとは思うんですけどやっぱり優勝に届きそうで届かなかったというところで悔しさが残って、走った選手もそうでない選手もみんな悔しそうな顔をしていたので、やはりそこは2位で満足するようなチームではないんだなと感じました。

――上尾シティマラソン(上尾ハーフ)では疲れが残っていたとおっしゃっていました

 やはり全日本が終わってから疲労が一気に出てきてしまいました。今の状態もまだ7割くらいなんですけど、それは箱根に向けての調整ということを考えると今は多少我慢する時期ではあると思うのでそんなに焦りというのはないですね。

――上尾ハーフではチームメイトのみなさんが好タイムを出していましたが、それはどのように感じていましたか

 やっぱり準備ができていなかった中で好走した選手もいて、そこはチームとして力が付いているということであるので、自分も集中練習を超えて箱根ではしっかりと結果を出したいなと思っています。

「全員が90パーセント以上で走るというのが優勝するためには必要」

藤原はこれまで駅伝では安定した戦績を残している

――いよいよ箱根が近づいていますが今の心境はいかがですか

 4年生を勝って終わらせたいというのがやはり大きな目標というか思いであるので、それを達成するためにまずは集中練習をしっかりとこなしたいです。

――いろいろなメディアからも早大の注目度というのは上がっていると思いますが、それは実感しているのでしょうか

 そうですね。全日本が終わってからことしの取材の量もすごく増えていると聞いているので、全日本の快走というのはやはり周りの人に感じさせるものがあったんじゃないかなと思います。

――藤原選手自身、プレッシャーというのは強まっていますか

 自分はそんなに周りのメディアとかを気にするタイプではないので、淡々とやることをやるだけだなと思っています。

――全日本や上尾ハーフで多くの選手が好走を見せたことでメンバー争いも激しくなっていくと思いますが、それについてはどのように感じていますか

 集中練習の中でもどうしてもメンバー争いとか勝負とかそういう部分はあるんですけど、僕は箱根でベストパフォーマンスをするために集中練習で力を使い過ぎないというのが一つあるので、メンバー争いも大事なんですけどまずは箱根を見据えながらやっていきたいなと思います。

――部内でライバルとして意識している選手はいらっしゃいますか

 やっぱり4年生の平さん、鈴木洋平さん(スポ4=愛媛・新居浜西)、武田凛太郎さんというのは力もあって集中練習でもすごく引っ張って下さっているので、そういう選手に肩を並べられるようにしていきたいなと思います。

――他大学では意識している選手、チームなどはありますか

 やはり青学大が最大の敵になると思っていますし、個人的には田村和希選手とか下田裕太選手は同学年でチームを引っ張っている選手なので、そういった選手と戦えるようにしたいと思います。

――そういった選手に勝つために必要なことというのは何でしょうか

 そういう選手はケガをせずに練習を継続できているというのが最大の特徴であるので、やっぱり自分も故障せずに集中練習を乗り切っていきたいです。

――箱根ではどのような走りを見せたいと考えていますか

 箱根はどんな展開になるか分からないですけど、まずは自分の走りをするというのを一つ掲げて、前半から攻める姿勢というのは常に持っていたいなと思います。

――ご自身のストロングポイントは何でしょうか

 試合では外さないというのが一つ自分の強みであると思うので、箱根でも絶対に失敗しない走りというのをしたいです。

――箱根で希望する区間はありますか

 希望区間というか往路を走るつもりで練習するというのを自分の中で心掛けていて、往路は主力級の選手が集まるのでそこの準備をしておけばどの区間でも勝負できるのではないかなと思います。

――どの区間にも対応する自信はあるということですか

 そうですね。

――きょねんは10区を走っていますが、ことしもしまた10区を走るとしたら心掛けなければいけないことは何でしょうか

 23キロという長い区間なんですけどその距離を考え過ぎるとどうしてもペースが落ち着いてしまって上がり切らないので、ビビらずに攻めていくというのが一つ必要かなと思います。

――箱根ではどの区間も全日本と比べて距離が長くなりますが、距離への不安というのはありますか

 自分の走りは長い距離の方が力を発揮できると思っているので、むしろ全日本より箱根の方が勝負できるのではないかなと思います。

――箱根でのチームの目標を教えてくさい

 総合優勝です。

――総合優勝のためにチームに必要なことは何でしょうか

 誰か一人が120パーセントを出すんじゃなくて、全員が90パーセント以上で走るというのが優勝するためには必要なんじゃないかなと思います。

――チームの中でのご自身の役割はどのようなものであると考えていますか

 4年生が力があって良い順位でタスキをつないでくれると思うので、その流れをつなぐというのが自分の役割の一つだと思っています。

――個人としての目標はやはり区間賞でしょうか

 そうですね。どの区間で出ても区間賞を狙いたいと思います。

――最後に箱根に向けて意気込みをお願いします

 去年は区間順位が6位だったんですけど不完全燃焼というか力を出しきれずに終わってしまったので、ことしはしっかりと力を出し切って総合優勝してみんなで大手町で笑いたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大庭開)

箱根への意気込みを書いて頂きました!

◆藤原滋記(ふじわら・しげき)

1995年(平7)10月16日生まれ。身長176センチ、体重57キロ。兵庫県・西脇工高出身。スポーツ科学部3年。自己記録:5000メートル14分08秒36。1万メートル29分03秒96。ハーフマラソン1時間3分23秒。11月に行われた学生スタッフ交代式にて2017年度の寮長に就任した藤原選手。もともと立候補はしていなかったものの、ほかの部員さんたちから頼まれたことで引き受けることを決めたそうです。みんなが競技に集中しやすい環境づくりを心掛けたいと、意気込みを語ってくださいました!