昨年は『3強』の一角として学生三大駅伝を大いに盛り上げた駒大。ことしの新チームの始動からトラックシーズン、5位に終わった出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)を振り返ってもらいつつ、これからの駅伝の戦い方について、主将である浅石祐史にお話を伺った。
※この取材は10月21日に行われたものです。
「自分含め4年生が情けなかった」
今季駒大の主将を務める浅石祐史主将。冷静に今季の結果を受け止めていた
――春のトラックシーズンについて、駒大の長距離ブロックの成績全体を振り返っていかがですか
新チームになって、エース格というかチームの上の方の選手たちは結構結果が残っていました。中堅あたりも上の方に比べるとインパクトに欠けるのですが、上級生、上の方は結果を残していてまずまずだったというか、悪くないという感じでした。自分自身としては、故障していたのでチームを見た時にはもう少し結果が欲しかったかなとは思います。
――では続いて夏合宿について。夏合宿では何を強化されましたか
長い距離を走るという面で、箱根(東京箱根間往復大学駅伝)に向けて長い距離のスタミナを鍛えていきました。
――ご自身が夏合宿で意識した点は
自分は4月から8月くらいまで故障をしていたので、長期プランの中で体作りというのを第一に考え、夏合宿は取り組むようにしていました。
――合宿で得られた成果は
9月にもう一つ菅平で合宿がありまして、そこで仕上げようというかたちを頭の中で描いていました。本当にイメージ通りうまくいったというか、そういうかたちで9月後半の試合や出雲では、結果には少し不満はありますが、(自分の調子は)悪くない流れには持っていけたかなと思います。チームとして合宿の前半は少しどうなるかなと思ったこともありましたが、後半になるにつれてみんなもしっかり練習ができてきて、チームの底上げというのも合宿後半には見えてきました。秋の試合シーズンや駅伝には結構良い感じになるのかなという雰囲気ではありました。
――出雲を振り返ってみていかがでしょうか
正直、自分を含め4年生がもう少し頑張れたら、目標である3位には届いていたのかなと思います。5位だったのですが、4年生がもう少し粘っていたりしていれば4位は確実にいけたかなと思います。自分含め4年生が情けなかったというのが感想です。
――出雲のエントリーについて、エースの中谷圭佑選手が出走を見送りましたが、その中での駒大の戦い方はどのように考えられていましたか
中谷がいないという中でのベストメンバーでのオーダーは組めたとは思います。中谷がいないというのは夏合宿中、9月中旬あたりには分かっていた事なので、みんなそれを踏まえて、オーダーが発表されたときには自分のやるべきことはしっかり自覚していました。その時点でのベストメンバーは組めたと思います。
――ご自身は5区を走られました。振り返っていかがでしたでしょうか
情けない結果にはなってしまったのですが、今回の出雲が(大学での)初駅伝でした。故障が長く続いていて間に合わないかなとも思ったのですが、どうにか間に合いました。故障という言い訳もしないでいいほど良い状態で臨めたのですが、結果が良くなかったです。主将としても、一選手としても良い結果ではなかったので、リベンジという言い方は好きではないのですが、リベンジしなくてはならない結果だったと思います。
――駒大は「学生三大駅伝はそれぞれ3位以内、そのうち1つは勝つ」というスタンスをいままで取られてきたと思います。その点ことしの出雲では思い通りにいかなかったことについてはいかがでしょうか
きょねんがずっと3位で、自分が4年間いた中でもほぼすべて3位以内に入っていました。自分がキャプテンになって、4年生の学年ミーティングの中でも「3位以内というのは最低限守ろう」と話していました。でもそううまくいかず5位という結果で終わってしまい、全体ミーティング、学年ミーティングもして、「残りの2カ月半、何か変えていかないと全日本(全日本大学駅伝対校選手権)や箱根もまた悪い結果に終わってしまう」と話して少しチームが引き締まったのではと思います。出雲の5位を踏まえて、結果は悪かったですが残りの二つに向けて、4年生が良い雰囲気に仕上げようという気持ちになりました。
上の代のチームを目標に
――浅石選手が主将に決まった経緯を教えてください
自分は(主将は)ないと思っていたんですけど、箱根のちょっと前ぐらいに監督室に呼ばれて「来年の主将にするから」というお話をいただいて、整理がつかなかったのですが、「はい」と答えました。
――主将と決まったとき、どのような心境でしたか
本当に(自分が主将になると)思っていなくて、でも主将をやるということは変えられないのでやるしかないなと。その時はあまりイメージが湧かなかったんですけど、その時は箱根前で新チームになるまで時間はあったので、ゆっくりチームをまとめるイメージを考えていこうかなと思っていました。
――浅石選手としては、誰が主将になると思っていましたか
中谷か西山(雄介)だと自分は思っていて。中谷は駅伝でも活躍していますし、西山もしっかりしていて真面目な人なので。その2人かなと思っていたんですけど、そのなかで自分が選ばれてちょっとびっくりしました。
――どういう点で主将に選ばれたと思いますか
たぶん上下関係関係なくコミュニケーションを取っている方だと思っているので、そういった点なのかなと思っています。
――下級生にも声を掛けられたりする方なのですか
普通にいつの間にかしゃべっているという感じですね。私生活でも誰とは話さないとかそういうのはないです。
――チームをまとめるために主将として意識されていることはありますか
ことしの箱根が終わってから3月から4月頃まではしっかりと走れていて、練習もできていて、走りの面でも良い感じに引っ張っていけたり、レベルの低い選手たちにも目を配れていました。けれど故障が長引いてしまって自分がどうすればいいのかなと悩む中で、やっぱり走れないということは言葉で生活面などで言うべきことを言ったり、しっかり見ていこうと監督にも言われていたので、走れない時は私生活だったりチームの雰囲気を見るようには心掛けていました。
――浅石選手が故障していた期間は同期の選手が練習を引っ張っていたのでしょうか
そうですね。やはり西山、中谷、大塚(祥平)あたりが三大駅伝も経験しているのでそこは任せていたというか。自分がいない分やっていてくれていたのかなと思います。
――浅石選手自身は駅伝経験の少ないなかでの主将ということですが、何か大変なことはありますか
走ったことがないので駅伝シーズンでのチームの主力メンバーの雰囲気だったりがあまりイメージつかなかったんですけど、最上級生になるにつれて4年生のチームということなので、今の駅伝シーズンには支障はないですね。特にそんなに駅伝を走ってないからこれがきつかったなとかそんなにないですね。
――主将をしていてやりがいを感じる瞬間はありますか
正直大変な部分はありますけど、本当に走れていないときはきついというか、走れてないのにチーム引き締まらないんじゃないかなと思った部分はあります。でもやっぱりみんなの前に立って話すこともありますし、いろいろ主将をやってきて、こういうのが社会人になって役立つのかなという部分が多々あったので、そういった面ではこれからの人生につながっていく経験なのかなと思います。
――浅石選手が目指すチーム像はどのようなものですか
一人一人が高い意識を持って、レベルの差はあると思うんですけどそれぞれのレベルの中でしっかり上下関係なく練習はできて、上が下を指摘をできるようなチームにしたいを自分の中では思っていて。かつ私生活ではある程度上下関係を保ちつつも楽しく話せるようなチームですね。学年ミーティングでも4年生にそう伝えています。自分たちのミーティングでは、自分たちの2個上の代のチームのようになれればいいねと話しています。
――大八木弘明監督の印象は
入学前は怖いなと思っていたんですけど、入ってみたら細かい所まで見ていますし、言うべきことは言ってくれます。なかなか褒めるという機会はないんですけどちょっと「今の良かったな」と言われるとうれしい部分がありますね。本当に長年やってきていて、選手のことを本当によく見ているなと感じます。
「(駅伝では)1つでもミスはできないなと思います」
学生三大駅伝初戦・出雲では5区を任された
――昨年度の箱根を振り返っていかがでしたか
自分はメンバー外だったんですけど、1区の其田さん(其田健也前主将)が思っていたよりも出遅れた中で最低限の3位という順位になれたのは、やっぱり強さがあったのかなと思いましたね。
――今年度の箱根は誰がキーマンになると思いますか
4年生がキーになってくると思います。中谷や西山、大塚や去年の箱根を経験している中村(佳樹)だったりがどこまで仕上げられるか。そのなかで中堅どころでいう2、3年生がどこまで耐えられるかという所だと思います。エース格のメンバーはしっかり走ってくれると思うので、中堅どころがどこまで力をつけて他大学と勝負できるかというところがキーになるのではないかなと思います。
――ことしの全日本にはどのような目標で挑まれますか
どの三大駅伝もチーム最低限の3位を目標にはしています。出雲の5位から立て直す良い機会だと思うので、走る選手に誰が選ばれても3位という目標を達成できるように頑張っていこうと思います。
――ライバル校はありますか
今は青学大がちょっと抜けていますけど、混戦だと思うのである程度のチームは全部注目しています。やはりミスはできないなと思います。1つでもミスしたら出遅れてしまいますし、本当にどこの大学もライバルですね。
――浅石主将から見て、早大へどのようなイメージを持っていますか
伝統があって、早大っていうブランドがあるじゃないですか。やっぱりかっこいいと思います。単純に早大ってかっこいいなと思います(笑)。
――早大で仲のいい選手はいらっしゃいますか
来年は実業団でヤクルトに入社するのですが、武田凜太郎(スポ4=東京・早実)とは入社式や面接で会っていたので、普通に話すくらいはしますね。来年一緒になるので、これからもっと仲良くなっていくんだろうなと思います。
――他校の選手で仲がいい選手はいますか
自分は栃木県出身なので栃木県の選手だとか、会ったら話すくらいで。あまり陸上の人と遊んだりはしませんね。高校の友達とかと遊びますね。
――早大の野球部の石井一成主将(スポ4=栃木・作新学院)とは同じ高校出身ですよね
ドラフト2位ですよね。すごいですよね。同じ学年ですし、ちょっとしゃべったことあります。
――浅石選手はどのような点が早大の強みだと思いますか
毎年良い選手が1人2人は取れてると思うので、そういった選手が4年生になって力をつけてきますし、インカレ(日本学生対校選手権)でも平君(平和真駅伝主将、スポ4=愛知・豊川工)が良い成績を残していましたし、インパクトのある選手がいるのかなと思います。
――浅石選手が考える駒大の強みはどのような所にあると思いますか
早大と同じようにエース格というのは毎年出てきているので、中谷と工藤(有生)がうちのエースと言われていますが、そういった選手がいるというのがやはり大きいです。あと中堅が伸びてくれば層が厚くなって戦えると思います。エース格がいると言っても頼ってはいけないんですけど、毎年どの学年にしてもいるのは強みですね。
――では、箱根での目標をお願いします
新チームになってから優勝という目標は掲げています。実際に自分たちの学年としては最後の年ですし、正直今の段階ではどうなるか分かりませんが、学年で優勝という目標を掲げた以上優勝を目標にやっていこうと思っています。
――最後に、浅石選手自身の目標を教えてください
主将抜きの一選手としてもチームに何か良いかたちでチームに貢献できればいいのかなと思います。
――ありがとうございました!
(取材・編集 鎌田理沙、杉野利恵)