青学大箱根連覇の裏側に迫る

駅伝

 今季の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で圧倒的な強さを発揮し、1区から一度も首位を譲らない完全優勝を果たした青山学院大学。その栄光をたたえ、箱根駅伝優勝記念セレモニーが青山学院大学・青山キャンパスで開催された。会場に駆けつけた人数は一般の参加者も含めて実に1500人以上。華やかな雰囲気の中でセレモニーは進んだが、原晋監督や選手たちが発した言葉には、競技に対する深い考えが垣間見えた。チーム青学大を作り上げたその精神とは、一体どのようなものだったのだろうか。

左から、セレモニーで笑顔を見せる安藤新主将、原監督、神野元主将

 青学大の選手の目標は多岐にわたる。箱根を目指す、トラックでの実績を作る、マラソンへの挑戦など、レベルも種目も様々だ。しかし、だからといってチームがバラバラになっているわけではない。『個の色を合わせて緑になれ』というスローガンを掲げる青学大では、『個』が強く重視されており、そのうえでチーム一丸となって競技に取り組んでいるという。みんなを笑顔に、ハッピーに――。チームとしてハッピーを目指しつつも、ハッピーへの道は無限にある。その道を模索するために、多くの新たなことに挑むことが選手には求められており、その『個』を合わせてできあがったのがフレッシュグリーンの似合う今のチームだ。「箱根を走りつつも東京マラソンを目指す」(一色恭志)。こういった大きな目標を持てるのも、このチームカラーのおかげなのかもしれない。

 それに呼応するように、練習方法も一本化するのではなく多様化している。個々の選手の特徴がそれぞれ違うように、10人いれば10通りの練習がある。原監督はこのことを熟知していた。直近の東京マラソンにもそれが色濃く表れている。従来マラソンは、実業団に入部し一選手として成熟した上で、多くの距離を走りこむような練習方法が取られてきた。しかし、青学大は違う。学生が主戦場とする駅伝やハーフマラソンの練習にプラスアルファの距離走を組み込むというかたちを取った。今までの常識からいえば明らかに性質が異なるアプローチ。しかし、それが功を奏し、下田裕太や一色などはそれぞれ2、3位に入っている。「私はファーストペンギンなんです」(原晋監督)。その言葉通り、この結果は学生のマラソン挑戦に新たな可能性を示した。「(新しいことをやると)反対する人は必ず出てくる。しかし大事なのは何のために、そして誰のためにそれをやるのかということ。それがしっかりしていれば異なった考えの人にもいつか理解をしてもらえる」。今回の式典で教育システムの改革などにも意欲をのぞかせた原監督。次はどんな『ファーストペンギン』となるのだろうか。

左から、インタビューを受ける渡邉利、一色、下田

 「箱根は普及活動の一つ。強化の柱は日本選手権やマラソン」。近年騒がれる『箱根不要論』にも反論した原監督。苦しいイメージの強い長距離走にとって、箱根は華やかさとコンテンツ性を持たせてくれる絶好の舞台であり、これがなくなれば競技人口が減ってしまう。その意味で「箱根は日本陸上界の宝です」(原晋監督)という。青学大が次に目指すはそんな箱根の三連覇。それに向けて、ことしはどのような戦いを見せていくのか。他大の動向からも目が離せない。

(記事 平野紘揮、写真 鎌田理沙、朝賀祐菜)

コメント

原晋監督(青学大) ※囲み取材より抜粋

――きょうの東京箱根間往復大学駅伝(箱根)の優勝報告セレモニーではファンの方々との交流もありましたが、感想をお願いします

一つ一つ、この駅伝や陸上の世界が華やかになっていくことを本当に嬉しく思いますね。サッカーや野球だけではないのだと、また若者に陸上は苦しいだけではないのだと、楽しいものなのだということを一つずつ広報活動できていて嬉しく思います。

――監督の意向もあってだと思いますが、駅伝だけではなく個人の種目にも
力を入れている点についてはいかがですか

ことしで12年が終わりました。チームとしての組織作りがうまくできてきて、ようやく個人を強くさせるための考えが私の中に生まれました。やはり箱根で戦うというのが大前提にありますので、まずそのミッションを達成して次のステージで何をするかというところで、さらに個を大切にしていくという意味合いで、ことしの青学大のテーマの『個の色を合わせて緑になれ』があります。絵の具は混ぜると黒色になりますが、個性を大切にしながら最終的にはチーム青山として頑張っていきたいという方針でやっています。

――今回の東京マラソンのように新たな試みを行っているように思いますが
、その意識についてはいかがですか

現状維持、同じことをやるのは退化だという考えがあります。常に進化を求めていかなければ、世の中は変わりませんし、新しいものは出てきません。その考えが私の気持ちの根底にあります。そして、最初に色々なことを仕掛けていくと反対する人が必ず出てきます。それは仕方ありません。ただ、誰のために、何のためにやるのかというところをしっかりと持っておけば、異なった考えの人にもいつかはご理解をいただけるのではないかと思います。誰のために、何のためにやるかと言うと、陸上界をもっと明るくして、身体能力の高い選手たちを陸上界にチャレンジさせるような環境作りをしていくためだと思いますね。

――明るく楽しくということで、初優勝を果たした昨年は『ワクワク大作戦』、ことしは『ハッピー大作戦』というテーマがありましたが、次の箱根に向けてのことで決まっていることはありますか

テーマは駅伝シーズンになってふと湧いてくるものなので、12月の記者発表をぜひご期待ください!

――原監督ご自身が色々なメディアに出て発信していっていますが、陸上の発展にはそういうことも含まれていますか

私は日本の教育システムの改革にも着手したいと、せんえつながら思っております。今までの教育システムは上意下達で、戦後の復興で日本を立ち直らそうという時に軍隊方式で皆が一つになって前進するような手法だったわけです。そういう時期も当然大切だと思います。ただ、それでは本当のスペシャリスト、いわゆる天才と呼べるものはこの日本から生まれてこないと思います。スポーツの部分でも総じて中の中、中の上ぐらいの選手は育ちますが、世界を相手にしていくようなアスリートは出てこないし、仮に出てきたとしても海外にみんな逃げてしまうのです。陸上でもそうです。大迫くん(傑、平26スポ卒=現ナイキ・オレゴン・プロジェクト)のように日本では飽き飽きしてしまうのです。世界に向けてチャレンジしていく若者は、やはり個性を大切にしていかなければなりません。そこでは上意下達の指揮命令系統の教育というのは限界がくると思っています。ゆとり教育というのは本来、手法としては良かったはずなのです。ただ、やり方を間違えたのかなと思っています。ゆとり教育をする先生への教育に最初に着手しなかったことがこのゆとり教育の失敗と言われていますが、考え方そのものは決して間違いではなかったと思います。本末転倒で遊びの部分を作るというのはゆとり教育ではありません。これはスポーツに置き換えて考えても、皆さんもお気づきの点があるのではないかと思います。

――今回、新たにアドバイザーというかたちでチームを発足されましたが、それは社会人を育てていくという意識によるものですか

あくまでも学生が自ら選ぶ時代だと思います。これからは選手が監督を選ぶ時代がくると私は思っています。実業団に所属して、意見が合わずになかなか移籍ができないというのが、今の実業団の実態だと思います。移籍をする時に素直にハンコを押してもらえないというのが問題点の一つとしてありまして、いわゆる飼い殺しになっている選手がいるのですね。色々なかたちの指導が出てきて、選手自身も指導者を選べるような時代になってくるのかなと私は思いますね。

――多くの4年生が実業団に入りますが、どのような活躍をしてほしいですか

やはり、社会の構成員の中の陸上競技部員なのですね。陸上があって社会があるわけではなくて、世の中の皆さんから理解を得られるような選手にならないといけません。自己満足で走るのではなくて、多くの国民の皆さんを元気にするような走りをしてもらいたいです。これからも楽しく元気に、自分の気持ちで走ってもらいたいです。やらされるトレーニングというのは嫌になってくると思いますが、その厳しいトレーニングを自らやることで楽しく競技に打ち込めるようなランナーになってほしいです。

――オリンピックや世界陸上などの大会で、教え子にはどんな活躍をしてほしいですか

皆さんも19歳の若者がオリンピックに出たら、ワクワクしますよね。4年間、町田寮で朝起きてから夜寝るまで身近で、父親の代わりとして育ててきた若者が世界で戦うシーンをぜひ見たいものです。ただ、我がチームの問題で捉えたくないので、うちの選手がどうのこうのではありません。そこの報道が先行することは私の本来の思いではありませんので、若者が今回の東京マラソンにチャレンジしたことを、大学生がマラソンにチャレンジできるという感覚につなげることが私の役割の一つです。これはファーストペンギンの役割をしているのかなと思いますね。

――半歩先の目標、そして向こう10年の計画ということで、来年の箱根や東京マラソンに向けてどのような指導をしていきたいですか

東京マラソンで、コンディションが良ければ2時間10分を切れる能力が若者にあることを確認できたので、次は半歩先の目標として2時間8分台を、また日本記録を目指していこうじゃないかと思います。東京オリンピックまで数年ありますから、階段を上るかたちで強化育成をしていきたいと思います。それと箱根の優勝チームだからこそ、楽しい陸上界にジュニアの世代を入れ込むとともに、パラリンピックの盲人ランナーを支えるガイドランナーについての広報活動を私自身していきたいと思っています。今多くの方にメッセージを届ける機会を設けていただいています。ガイドランナーの絶対数は足りません。ガイドランナーはエリートランナーだけではありません。盲人ランナーの方も小さなお子さんからご年配の方まで幅広い層の方がいらっしゃいます。青学大のトップランナーだけでなく、一般の市民の方もガイドランナーとしてサポートできるのです。そういった絶対数が必要なのだということをPRしていきたいと思います。

――学生三大駅伝に向けてチームとしてはいかがですか

昨年、学生三大駅伝で勝つということを目標にしてやっていて、それに対する課題や反省は見えました。ことしの選手の力も十分にありますので、『三冠』、三連覇と3にこだわって指導していきたいと思います。

――今回の東京マラソンでレースを作ったのは青学大をはじめとした学生の選手で、上位でゴールしたのも学生でしたが、『箱根無意味論』や『有害論』に対して監督はどうお考えですか

箱根は日本陸上界の宝です。そして、他に陸上界に魅力的なコンテンツはありません。箱根駅伝を無くしたら、厳しい長距離の舞台にチャレンジしようという競技人口そのものが減少してくると思います。競技人口が減少するということは、競技レベルが上がらないということです。箱根を強化の柱にするから不要論が生まれるのであって、普及活動の一つが駅伝で強化の柱は選手権やマラソンです。競技人口を増やすツールとして駅伝というものがあり、魅力的なコンテンツにするためにはどうしたら良いかということを考えていかなければなりません。東京マラソンのスタートやゴールのシーン、ものすごく華やかじゃないですか。演出の一つだと思いますが、ああいうこともしていかなければならないと私は思います。

――東京マラソンの総括をお願いします

若さが全面に出た素晴らしい大会だったと思います。未来ある学生たちが国民の皆さんをワクワクさせたのではないかと思いますし、この人材を東京オリンピックに活用していくことが皆さんをハッピーにするものだと思います。

――これから『三冠』や箱根三連覇のプレッシャーがかかってくると思いますが、その対策はいかがですか

そもそも勝者がいれば敗者もいるということで、20チーム参加すれば1番から20番まで順番がつきます。そして、皆が頑張っているのですから、未来永劫(えいごう)優勝というのはほぼありません。一生懸命やるのが良いことで、その結果、順番がつくのだということを学生たちには伝えていますので、余計なプレッシャーはかからないと思います。プレッシャーのかかるような仕掛けは私が受け止めて、あとは学生たちがハッピーな気持ちになれるように努力していきたいと思います。

一色恭志(青学大3)※囲み取材から一部抜粋

――きょうこういう会が開かれまして、ファンの方と交流されたと思うのですが、箱根を振り返って感想をお願いします

箱根については、自分のこの1年間の最大の目標は東京マラソンなので、その通過点としてというわけでもないのですが、箱根を走りつつも東京マラソンを走れる体作りを目指すということで、マラソンに向けて自分の中で良い経験になりました。もちろんチームが優勝したことも、昨年と違いことしは本当に狙っていって、周りからのプレッシャーもあった中で勝てたので、喜びも大きいです。ただ自分としては、個人的に言いますと区間3番で。66分台で2区青学大記録を塗り替えると言っていたのですが、それが全く達成できませんでした。自分としては嬉しさより悔しさが大きかったなと今振り返って感じています。

――青学大というチームは駅伝の強さももちろんなのですが、ただいまおっしゃっていたように東京マラソンなどのマラソンにも挑戦したりなど、大学の中では新しい取り組みにチャレンジしてるのではないかと思うのですが、先日マラソンを走って感想や、周りの変化などはありましたか

本格的にマラソンを走ってみたいと意識し始めたのは、昨年服部勇馬さん(東洋大)が宣言をされていたことが自分の中で一番大きい転機になっていました。やはり駅伝をやりつつもこのマラソンのスタートラインに立たせてもらえるという環境は、他のチームではなかなか難しいことだと思うので、この環境でやれることに自分は喜びを感じています。走りでいえば30キロ以降なかなかどうなるか全く分からない、初マラソンだったので少し守りに入ってしまったとこともあったのですが、その中でも35キロ以降から苦しんで苦しんで、38キロ以降で少し体が動いたときがあったので、マラソンを将来やる上でも、これいけそうだな、ちゃんと練習すればできそうだなという手応えをちゃんとつかめました。ちゃんとゴールできたというのが一番大きいと思うのですが、でも前回もユニバーシアードで海外と戦うと言っておきながら負けたのが同じチームの小椋(裕介)さんで、やはり今回も(勝負の相手は)勇馬さんと言っていたのですが、後輩の下田(裕太)に(負けてしまい)、僕意外とそういうところあるので、次からはまず大学内で誰にも負けないようにしたいと思います。

――一色選手は4年生になられ、今までだとエースとはいえ先輩たちがいたところを、これからはエースとしてチームを全部引っ張っていかなくてはいけないという立場を踏まえてこれからの目標を、駅伝でも個人単位でも構わないので教えてください

4年目になってもやることは今までと変わりなく、意識としてはもちろん4年生らしいところは出していかなければいけないのかなと思います。基本今まで3年間やってきたことはとりあえず自分が強くなるためにやってきたことなので、ことしもそれを崩さずに自分がいかに走れるかということを考えていこうと思います。もちろんチームには迷惑かけないようにして、そのためにはチームの足を引っ張るわけにはいかないのですが、役職なども外してもらったので、そのメンバーと走れる駅伝を大切にしながらことし1年やっていきたいと思います。もちろんマラソンも出場することを視野に入れているのですが、それ以前にトラックの5000メートル、1万メートルの記録、具体的に言いますと5000メートルは13分30秒台、1万メートルであれば27分台というのを、一極だけ練習してマラソンに特化した選手になるのではなくて、マラソン練習をやりつつ、昔の人で言う瀬古さん(利彦OB、昭55教卒=現DeNA陸上部監督)のような、とりあえず(1万メートル)27分台を出されている選手というのもたくさんいらっしゃるので、僕はマルチに走れる、マラソンだけではなくてスピード練習も生かしながら、マラソンにつなげていければと考えています。

――三連覇に向けてプレッシャー対策がことしもありましたら教えてください

三連覇というより(学生駅伝)『三冠』に向けての話になってしまうのですが、ことしあれだけ戦力がそろっていて、「三冠三冠」と周りからも言われ、自分たちからも宣言をした結果、全日本(全日本大学駅伝対校選手権)で優勝を逃しチームの雰囲気も少し浮ついたものになっていたところもあったので、ことしの最大の目標としては『箱根三連覇』と定めています。なぜ『三冠』にしないのかというと、昨年あれだけ自分たちで宣言しておいて、『三連覇』より『三冠』というプレッシャーがかなり大きくて、それに正直押しつぶされていたなというところはあったと思います。なので一つ一つ勝ちに行くということをことしのチームのサブテーマにも定めました。『三連覇』というのは本当一つ一つを全力で勝ちに行くということなので、『三連覇』に向けて特にアプローチするというのもないのですが、『三冠』ということに関しては、とりあえずただ、『三冠』という結果ありきではなく一つ一つ全力で勝ちに行き、その結果順番は上位に越したことはないですが、勝てればいいなと。そして最大のチームの目標は『箱根三連覇』と定めました。

下田裕太(青学大2)※囲み取材より抜粋

――きょうこのような会が開かれてファンの方々と交流されたと思うのですが、箱根を振り返って感想をお願いします

これが終われば全てのことが一段落つくと思うのですが、それで自分のことやチームのことを考えてみると、とても恵まれたチームにいると感じていて、こうやって努力できる環境とか注目される立場にいる強さという良さというのも全て分かっていて、こういうかたちで多くの人に応援されるというのはとても良いチームにいるし、良い環境で練習できていると強く感じます。箱根だけに限定すると直前に8区に変わって区間新記録も狙っていたのですけど、少し暑さもありダメで。でもとても良い走りができたと思いますし自分の100パーセントの力を出せたと思うので、それも東京マラソンにつながっていたと今考えると思います。これからは強い4年生が抜けて他のチームと勝負できるような選手にならないといけないと思うので、そのようなことを意識して1年間努力していきたいと思います

――青学大というチームは駅伝の強さももちろんなのですけれども、マラソンにチャレンジしたいという大学の中では新しい取り組みにチャレンジしていると思うのですが、先日東京マラソンを走っての感想や周りの変化などあればお願いします

僕は東京マラソンで良い結果は残ったのですけど、実際その結果というのはついてきたもので今回はマラソンにベストな状態で立つというところを目標にやっていました。青学大がマラソンをやるということについてなのですけど、やっぱり個人で挑戦するよりはチームでやった方がモチベーションにつながりますし、監督がおっしゃっているように陸上で学生がマラソンに挑戦するというのを作っていきたいだとか、ファーストペンギンという言葉をよく使いますけど、そういう風になっていきたいというだけでモチベーションになると思いますし、それも一つの恵まれた環境というか、自分がマラソンに挑戦したいと思った時にそういう環境がしっかり整っていることは良いと思うので、結果がどうであり今回はそのような高いモチベーションの中でチームとしてマラソンに挑戦できたというのが自分たちのプラスになりますし、これからの陸上界の一歩になったのではないかと思います

――今回マラソンで注目されて変化もあったと思いますが、それを踏まえての今後の目標を教えてください

来年のこの時期にマラソンを走るかというのはまだここでは明言できなくて、ユニバーシアードもありますし、そのあたりも考えて1年間考えていくことになると思うのですけど、やっぱり僕は青学大に入ってきた時に箱根というものを目標にしてきたので2年で箱根を二連覇して強い4年生が抜けて、ここで来年勝ち切れるかというところが4年目にもつながっていくとも思います。そこで何が必要かといったら、自分はまだとても強い選手ではないので他大のエースとも競り合って勝てるような強い選手になることを求めていかないといけないという気持ちがあります。なので、マラソンの影響でどのくらいタイムが狙えるかまだ分からないのですけど、他大を意識して前半のトラックシーズンからというイメージを持って箱根につなげていきたいと思います

――リオ五輪の可能性がまだゼロではないと思うのですが、どう捉えていますか

明日のびわ湖毎日マラソンが終わってみないと何とも言えないのですけれど、もし走るチャンスがあるなら出たいという強い気持ちはありますし、それが次の東京オリンピックにつながっていくと思いますし、今回の1回のマラソンだけでは自分の力なのかは分からないと思います。もしチャンスがあるならばしっかりと戦える準備をしていきたいと思います

――今回マラソンを走られて、トレーニングの中で一番きつかったものと、そしてフルマラソンとハーフマラソンや箱根の時とでシューズに違いがあるのかを教えてください

シューズは一緒です。練習については基本的にはハーフ(マラソン)使用で、ハーフの状態でマラソンを走った時にどれぐらい走れるかであって、とりあえずベストな状態でスタートラインに立つことが今回の目標で、みんな同じ動きをして距離走を2本というだけであとはマラソン組だから多く走るということはありませんでした

――三連覇に向けてプレッシャー対策があれば、おうかがいしたいです

半年後や10カ月後に自分たちや他大がどのような戦力になっているのかというのは誰も分からないいのですが、ただ1つ言えるのは、二連覇して自分たちの中では日本の中で1番良い練習がここにあるということが分かっていることだと思うので、それをしっかりやっていくことしか今はないと思っています。今からプレッシャー対策ということはなくて、一日一日つなげていって戦力が揃った時に自信になってプレッシャーとかを跳ねのけるくらいの実力になっていれば、ことしや昨年みたいに走れると思います。今できることはトレーニングに自信を持って練習していくことだと思います

田村和希(青学大2)※囲み取材より抜粋

――きょうは箱根二連覇という結果の報告会でしたが、ファンとの交流や箱根を今振り返ってみての感想をお願いします

僕の場合は昨年も走らされていただいて、このような会にも参加させていただきました。そこで、このくらいの大人数の人たちが僕たちを応援してくれているんだと実感しましたし、また今回は2回目ということでファンの方々とハイタッチや握手していく中で一人一人の思いというものを感じ取ることができました。1回目の昨年度は全体的な盛り上がりを感じていたんですけど、今回は応援してくださる一人一人の思いを感じることができ、またそれを考えてこれからの1年頑張っていって箱根の舞台で活躍できるようにしていきたいです。

――ことし二連覇を成し遂げて、来年はさらに周囲からの注目度が増して、三連覇達成のプレッシャーが重くのしかかってくるとおもいます

僕は1、2年時に走らせてもらって、特にプレッシャーはなかったです。やっぱりプレッシャーというのは4年生というかそのチームを引っ張る最上級生が感じるものだと思っていて、それで僕たち下級生が変にプレッシャーを抱えてしまってチームの雰囲気を悪くするよりは4年生にプレッシャーがかかっている分、僕たち下級生から楽しい雰囲気を出していって上級生を支えられるようにしていけば自然と上級生のプレッシャーも和らいで、楽しくレースに臨めると思います。僕たちは4年生たちについていくというかたちになるので変にプレッシャーを感じず、逆に上級生たちを気持ちの部分でサポートできたらなと思います。

――入学されてから2年連続で優勝を経験されています。優勝しか知らないということが逆に何か支障を来してくると思うのですが

優勝しているからこそ、昨年の全日本の時は2番でかなり悔しかった部分もあるので、もし次負けてしまったとしても、それがその先へステップアップするための材料となると思います。だから、優勝しか知らないからどうとかは特にないと思います。僕の中では(長距離選手を)全体的に見たらまだまだ僕は弱い選手だと思っているので、チャレンジしていく精神というのをこれからも持ち続けていこうと思っています。

――これから迎えるトラックシーズン、学生三大駅伝に向けての意気込みをお願いします

これまでの2年間の結果だけを見てみると僕の残してきた結果というのは駅伝ばかりでトラックレースだったり、日本学生対校選手権でそういう個人での結果というものを残せてきていないので、ことし1年間は個人での戦いというのを意識して3年目をやり、そして結果的に強くなり、エースと呼ばれる存在にまで成長し、学生三大駅伝へチーム一丸となって臨んでいければと思っています。

――ことしから新たな取り組みとして青学大はパラリンピックの支援、特に盲目ランナーに付き添うガイドランナーのお手伝いに力を入れていくそうですが

パラリンピック選手のみなさんも僕たちと同じような思いを持って競技をしていると思います。このサポートを通じて、その思いに貢献できるのであれば僕たちは進んで支援をしていき、日本中を沸かせるようにできたらなと。

――先日の東京マラソンで下田裕太選手、一色恭志選手が結果を残されました。それを受けて、マラソン挑戦というところで何か考えは変わりましたか

同級生の下田が日本人2位という結果を出して、そのタイムや結果を出すだけだったら、すごいな、僕も負けないなと思うのですが、それとは別に今回はリオデジャネイロオリンピック代表の選考にもかかりそうという状況にあって、チームの身近にそういった日の丸を背負えるような選手がいるんだなというのを感じて、僕たちもやってきたことを出せばそこまでいける、世界を見つめてやって行かないと行けないなというのを感じました。またそれを受けて、箱根というものが自分の中で少し小さくなっていきました。世界を見ていく中で箱根は通過点としてしっかり活躍するという、考え方や思考が少し変わりましたね。