【連載】『栄冠への走路』 第4回 藤原滋記

駅伝

 高校時代に実績を残し、昨年度、注目のルーキーとしてワセダの門を叩いた藤原滋記(スポ2=兵庫・西脇工)。しかし、1年次は思うように結果が残せず悔しさが募った。ようやく光が見えてきたのはことしの夏合宿。練習で培った自信を胸に、全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では憧れのエンジのユニホームに袖を通した。区間6位にまとめたが、見つめる先は区間賞と東京箱根間往復大学駅伝(箱根)総合優勝の頂点のみ。1カ月後迫り来る箱根への思いを語っていただいた。

※この取材は12月1日に行われたものです。

『自信』を糧に

丁寧に質問へと答える藤原

――上尾シティマラソン(上尾ハーフ)から2週間ほど経ちますが、現在の調子はいかがですか

 集中練習が始まったんですけれど、順調に練習がこなせているので、この調子で集中練習を乗り越えていければ、箱根駅伝で戦えるかなと思います。

――ハーフマラソンで今季自己ベストが出ましたが、5000メートルで13分台、1万メートルで28分台の記録を出すために手応えはいかがですか

 昨シーズンは調子が合わなくて、記録が出なかったんですけれど、夏合宿から順調に練習が積めているので、来季のトラックシーズンでは主に1万メートルで28分台を出すことをまずは最低限の目標として、集中的に走っていきたいと思います。

――夏合宿から調子が良いとのことですが、合宿中に転機となるようなことはあったのでしょうか

 1番大きい転機となったことは、新しいトレーナーさんがワセダのトレーニングをして下さるようになって、そのトレーナーさんのもとで走りの経済性などをトレーニングしたことによって、練習がしっかり積めるようになったということが自分の自信にもつながっているのかなと思います。

――新しいトレーニングが成果にもつながったということでしょうか

 はい。そう実感しています。

――他に夏合宿で重点的に取り組んだことはありますか

 きょねんは練習の中で集団から離れてしまうということが多かったんですけれど、その1番の原因は自信の無さだというのが自分の中で大きくあったので、まずは練習の中で自信を積み重ねていくということを意識して取り組みました。

――逆に、秋以降の課題となったことはありますか

 そうですね、長い距離には自信があったんですけれども、他大の選手、特に青学大や東洋大の選手を見ると、長い距離でもしっかりとスピード勝負にも対応してきているので、これからの集中練習の課題としてスピード強化にも取り組んでいきたいです。

――夏合宿ではいつからAチームの練習に加わったのでしょうか

 2次合宿まではBチームで練習していたのですが、Bチームの中で余裕を持って練習をできていたので、2次合宿の途中からAチームでの練習に切り替えていきました。

――3次合宿ではAチームだったとのことですが、環境の変化が練習に与える影響はありましたか

 やはり、Aチームの選手は主力と呼ばれる選手ばかりなので、練習の質がすごく上がって、Bチームのときよりもきついと感じる場面も増えたんですけれども、主力の選手と一緒に走っているということが自分の中ですごく刺激にもなりましたし、一緒に走れること自体が自分にプラスになったかなと思います。

「あとは試合で体現するだけ」

――改めて、全日本を振り返っていかがですか

 学生三大駅伝初出場だったので、周りの方々からは、よく走ったと讃えられることが多かったんですけれど、自分の中では区間6位というのがすごく悔しかったです。やはり優勝を狙うチームである以上は区間賞争いをするというのが最低条件になるので、箱根ではその悔しさをしっかりと晴らしていきたいです。

――ワセダを背負うプレッシャーというのは感じましたか

 普段のユニホームとは違って、エンジのユニホームというのは特別なので、そのユニホームを着た姿を両親やファンの方々など多くの人に観てもらえるというのは恩返しにもなりますし、プレッシャーよりもむしろ力になる部分が大きいと思います。

――高校時代から駅伝の経験は豊富だと思いますが、初めて大学三大駅伝で出走して高校時代と違うと感じることはありましたか

 やはり、応援して下さる方の多さというのは大きな違いで、沿道でかけていただく声が多いということと、周りの選手のレベルがすごく高いということを感じました。

――上位で戦える位置でタスキを受け取ったと思うのですが、受け取った瞬間はどんな思いでしたか

 1区、2区の選手がすごく良い位置でタスキをつないできてくれたので、その流れに乗ってしっかりとそのままの流れで次の選手にタスキをつなぎたいという使命感を感じました。

――逆にタスキを渡す時にはどのような思いでしたか

 ブレーキをせずに走れたという達成感と、青学大の選手に離されてしまったという悔しさがありました。

――駒大の西山雄介選手と競り合う場面がありましたが、積極性に自信はあるのでしょうか

 日頃の練習でも、思い切って前に出るというような積極的な走りというのを意識していて、相楽さん(豊駅伝監督、平15人卒=福島・安積)からも「お前は自信を持って走ればしっかり走れるから」ということを常に言われているので、自信を持って走るということを意識しています。

――ロードではどのような走りが求められるのでしょうか

 トラックでは一人で走ることはないのですが、ロードでは一人で走ることが多くなるので、その中で力を発揮できる選手が強い選手だと思います。いかに自分に向き合って力を出し切ることができるかというのがポイントだと思っています。

――1年時は同期の光延誠選手(スポ2=佐賀・鳥栖工)や安井雄一選手(スポ2=千葉・市船橋)が先に学生三大駅伝デビューを果たしましたが、当時はどのような心境だったのでしょうか

 昨シーズンは同期の安井が箱根だったり、光延が全日本だったりで走っていたのですが、自分の中でやはりすごく悔しい気持ちが大きかったです。高校時代一緒に競ってきた選手たちなので、自分に何が足りないのかを考えるきっかけにもなりましたし、普段の練習で2人に差を付けるとか、2人よりも距離を多く走ろうという努力をしました。

――光延選手や安井選手と仲は良いのでしょうか

 そうですね。表上は仲良くしつつ、内心静かに闘志を燃やしているという感じですね(笑)。

――他にチーム内で仲良くされている選手や意識している選手はいらっしゃいますか

 1つ上の平さん(和真、スポ3=愛知・豊川工)であったり、凜太郎さん(武田、スポ3=東京・早実)であったり、そういう強い先輩方が練習の上でもチームを引っ張ってくれますし、私生活でもチームを盛り上げて下さるので、そういった選手の背中を常に見ながら追いかけていきたいなという風に思います。

――他大で意識している選手はいらっしゃいますか

 駒澤の工藤選手(有生)であったり、東海大の川端選手(千都)であったりはチームのエース格として結果を残しているので、いずれはそういった選手と戦えるような力をつけていきたいと思います。

――春には1年生が入部しましたが、後輩ができたことで何かご自身に変化はありましたか

 1年生も力のある選手が多いので、負けたくないなという気持ちはありますし、自分は1年生の時に失敗しているので、苦しんでいる選手には何か自分の経験からアドバイスできたらと思って、声掛けをしたりとかをしています。そういうことが自分自身の成長にもつながっているかなと思います。

――ことし1年を振り返って、1年時よりも具体的にどのような点で自分の成長を感じますか

 1年目は力が発揮できなくてすごく悩んだ時期もあったんですけれど、2年目になって徐々に走れるようになり、自分に自信が持てるようになってきて、あとは試合で体現するだけだと思うので、ここからは箱根も含め、結果を出してチームに貢献したいです。

――まもなく3年生になりますが、個人としての目標を教えて下さい

 3年目っていうのは、チームの核として戦わなければならない学年になると思います。4年生にただ頼っていくだけではなくて、自分がエースになるという気持ちを持って、トラックシーズンからしっかりと結果を残していかなければならないなと思っています。

『緊張』よりも『ワクワク感』

8位入賞を果たした上尾ハーフに続き、箱根でも飛躍を誓う

――全日本では脚力が今後の課題とおっしゃっていましたが、現在の集中練習で具体的に脚力強化のために取り組んでいることはありますか

 朝練習などで集団走が終わった後にプラスで自分で距離を踏んだり、練習後に今までやっていなかったような脚の補強を入れて練習しています。

――相楽駅伝監督や駒野亮太長距離コーチ(平20教卒=東京・早実)から直接指導されることもあるのでしょうか

 直接的な指導はないですが、普段から細かくコミュニケーションは取って下さるので、自分自身も意見や悩みを話しやすい関係を築いて下さっていますし、そこはすごくありがたいと思っています。

――箱根で走ってみたい区間はありますか

 特に特定の区間で走りたいところはなくて、任された区間であれば「どこでも走るぞ」という気持ちです。ただ、やはり前半の往路であれば3区であったり、復路であれば8区、9区であったり、主要区間で走れる力をつけていきたいです。

――アップダウンの印象はいかがですか

 夏合宿では、比較的アップダウンの多いコースで練習することもあったんですけれども、そこまで苦になることはなかったので、苦手意識は持っていませんし、しっかりと走れるかなと思っています。

――箱根まで残り約1カ月となっていますが、現在の緊張状態はいかがですか

 緊張と言うよりはワクワク感というのがすごく大きくて、順調に練習は積めてきているので、本当にあとは本番で力を出すだけだと思っています。しっかりと体調を万全にして挑んでいきたいと思います。

――箱根での個人目標を教えて下さい

 やはり個人でも区間賞争いをしなければ総合優勝は不可能だと思っているので、全日本では区間6位という結果に終わってしまいましたし、箱根では例えどの区間を任されたとしても区間賞をしっかりと狙っていきたいです。

――総合優勝というのはチーム全体が掲げている目標なのでしょうか

 はい。総合優勝するというのは全員が目指して取り組んでいます。

――総合優勝をする上で、ライバルとなる大学はどこですか

 やはり青学大さんであったり、東洋大さんであったり、駒大さんであったり、3強と呼ばれているチームとしっかりと戦っていかなければならないなと思っています。

――他大と比べてワセダが勝っているポイントはどのような点ですか

 ことしは特に選手層では負けていないと思っています。他大のエース格と戦える強い選手が複数いますし、10人目以降の選手は力にほぼ差がない状態なので、誰が走っても戦えるチームになっていると思います。

――逆に、他大に勝つためにワセダに不足している点はありますか

 エース格と呼ばれている選手がすごく強いので、そういった選手に追いていかれないように、チーム全体がどう対抗していくかというのが一人一人の課題になっているのかなと思います。

――下克上の姿勢が求められているということでしょうか

 そうですね(笑)。はい。エース格の選手だけが強いようでは総合力で負けてしまうので、一人一人が更に底上げしていかなければならないなと感じています。

――箱根で見てほしいところやアピールポイントはありますか

 箱根はきょねん走ることができませんでしたし、自分が走っている姿を応援してくれている人や、待ち望んでくれている人がいるので、まずはそういった方々にエンジのユニホームで走っている姿を見せたいという気持ちは大きいです。

――箱根の印象はいかがですか

 僕が中学生の頃にワセダが学生三大駅伝で3冠を取ったというのはワセダを志したきっかけでもあるので、やはり箱根でワセダが1番でゴールテープを切った瞬間はいまでも覚えていて、今度は自分がワセダとして箱根で結果を残したいという気持ちがすごくあります。

――ワセダに入学することは昔から目指されていたということですか

 そうですね。ずっと志していたからこそ、ワセダのユニホームでしっかりと箱根を走りたいという気持ちです。

――最後に、箱根に向けた意気込みと目標をお願いします

 出雲(出雲全日本大学選抜駅伝)、全日本では負けているんですけれども、ワセダの強みとしては20キロ以上の距離でもしっかりと走れることだと思っています。箱根では優勝争いをできる位置にいると思っているので、ことし一年の集大成として、自分の最大限の力を出してチームの総合優勝に貢献したいと思っています。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井上莉沙)

箱根への意気込みを書いていただきました

◆藤原滋記(ふじわら・しげき)

1995(平7)年10月16日のO型。176センチ、56キロ。兵庫・西脇工高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル14分08秒36。1万メートル29分24秒07。ハーフマラソン1時間3分23秒。レース前のゲン担ぎとして女性アーティスト・miwaの曲を聴いているという藤原選手。箱根でも大好きな音楽をエネルギーに変えて、快走を見せてくれることでしょう!