【連載】『栄冠への走路』 第3回 石田康幸

駅伝

 1年時から全日本大学駅伝対校選手権(全日本)にエントリーされるなど、実力を持つ石田康幸(商2=静岡・浜松日体)。しかし、実際にレースに出ることはかなわず悔しい思いをしてきた。今季はケガで出遅れるものの、復帰を果たして着実に成長を見せている。小さいころから憧れを持つ東京箱根間往復大学駅伝(箱根)で駅伝デビューを果たすことができるか。今シーズンを振り返るとともに、現在の様子、これからの意気込みについて語っていただいた。

※この取材は12月1日に行われたものです。

「きつくても楽しめる」

取材に応じる石田康

――上尾シティマラソン(上尾ハーフ)から2週間ほどたちましたが、改めてレースを振り返っていかがですか

 自分の中で63分30秒というのをポイントとして走りました。15キロで他のAチームのみんなの集団から離れてしまって、そこから完全にレースでなくなってしまい、悔しい思いといいますか、すごく情けない思いをしました。いま2週間が経ちましたが、しっかり立て直して、箱根に向けて気持ちは上り調子ではあります。

――上尾ハーフは満足できる結果ではなかったのですね

 そうですね。秋シーズンは上尾に懸けていて、そこが自分にとって重要なレースだと捉えていたので、全然納得のできない結果でしたね。

――そこから切り替えて、現在の調子はいかがですか

 10月にエントリーがあった全日本まではとても調子が良くて、練習でも余裕を持ってこなすことができていたのですが、いまはまだ本調子ではないなという気がしています。まだ1カ月あるので、ここから上げていくだけです。

――トラックシーズンはいかがでしたか

 4月の最初から7月までずっとケガで、今シーズンは10月の早大学長距離競技会以外1回もトラックレースを走れていません。レースを走っていないので、特に反省することはありませんが、トラックに出ていなくてタイムがないという状態なので、とにかくケガはもうこりごりだなというのを感じたトラックシーズンでした。

――4月からケガをされて、走れない期間はどのように過ごされていましたか

 3カ月(ケガで走れない)という長い期間を自分は経験したことがなかったので、最初の1カ月は気持ちのコントロールがとても大変で、焦る気持ちもありました。ですが、故障期間は途中から気持ちを切り替えて、筋力が弱かったので、脚力と上半身の筋肉はつけようと思い、特に重視して取り組みました。

――その後今季の練習で意識したことは

 夏合宿からチームに合流しましたが、そこで外部からトレーナーさんがいらしていて、重心移動といいますか、脚をなるべく使わずに走るというトレーニングがありました。いままでもそうでしたが、とにかく今シーズンは脚を使わないで走るということを自分の中では意識しています。

――ケガしたことで良かったと思うことはありましたか

 昨年までは練習自体にいっぱいいっぱいで、あまり筋力トレーニングなどを自主的にできていませんでした。ケガしたことで、お尻の筋肉が足りなかったりだとか、ケガした部分の筋肉が足りなかったというのがわかって、自分で考えながら筋力トレーニングを取り組むようになったというのが一番大きいと思います。

――土台の部分をしっかり鍛えられたのですね

 そうですね。故障して体が一回り大きくなったといいますか、ブレなくなったというのがありますね。

――先ほどお話にもあった夏合宿を改めて振り返っていかがですか

 夏合宿は故障明けだったので、最初はCチームから始めて、そこから8月はBチームで過ごして、最後の9月にAチームに上がりました。故障明けにしては昨年よりも走る量をこなせましたし、重要な練習もしっかりこなすことができたので、自分としては80点くらいの出来の夏合宿だったと思います。

――夏合宿で印象的だったことはありますか

 昨年はずっと上のチームで一緒に過ごさせていただきましたが、ことし最初は下のチームから始めました。いままで経験していなかった場で、主力じゃない選手たちがどういう練習に取り組んでいるのか、どのような雰囲気で合宿に取り組んでいるのかを見ることができました。昨年はAチームの合宿の姿を見られて、ことしは下のチームの人たちの練習に取り組む姿勢などを見られて、自分の中でいろいろなことを比較することができました。それが一番大きかったですね。

――やはり視野は広がりましたか

 そうですね。視野が広がって、すごく考えてやっているんだなというのを感じました。

――現在集中練習の方は順調に行われていますか

 昨年は集中練習の最初でケガをしてしまって、箱根のメンバーにはなれませんでした。とにかくケガがないことが一番良いことなので、いまはケガなく練習できているので、満足はできませんが順調にきているなと思います。

――どのようなメニューで練習を行われていますか

 30キロや20キロという長い距離を走った次の日とかに5000メートルや3000メートルという短い距離を走るという、いつもの倍以上の距離を走っているので、その分生活面でも早寝早起きを意識して、トレーニングをしています。練習と同時に生活も気が引き締まりますね。

――精神的にきつい面もありますか

 そうですね。精神的にきつくなることもありますが、目標があるので、それに向かってやっていれば、自分の中できつくても楽しめるというのがあります。いまのところは楽しみながらしっかりできているので大丈夫です。

「練習でも試合でも負けたくない」

――1年生の時から出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)や全日本でエントリーされていますが、実際に出走できていないという点でやはり悔しい思いはありますか

 1年生でエントリーまでは毎回いっているのですが、走るという一歩先のカベをなかなか乗り越えられていません。2年生になっても、全日本で走るところまで力をつけたと思いましたが、また走ることができませんでした。まだそのカベを乗り越えられていないというのが、すごく悔しいですね。

――2年生になって成長を感じる部分はありますか

 昨年はエントリーに入っても、上との差があるなと感じていました。ことしは練習でも主力と言われる選手たちに食らい付くこともできています。練習の中でそういう選手たちに先着したりすることができてきているので、そのような面では近づいてきているというのは実感しています。あとはこの1カ月間が勝負だと思います。

――同期には藤原滋記選手(スポ2=兵庫・西脇工)、光延誠選手(スポ2=佐賀・鳥栖工)、安井雄一選手(スポ2=千葉・市船橋)などがいらっしゃいます。意識はされますか

 そうですね。同期が全日本を経験して結果を出してきているので、その3人に追い付きたいという気持ちが大きいです。同期の活躍が刺激になって、ケガから戻ってきてからもその気持ちがあったので、ここまで来られたのだと思います。

――2年生の雰囲気はいかがですか

 2年生はエントリーされている4人は練習も一緒にやるのですが、普段はとても仲が良くてよく一緒にいます。それだけでなく、ことしは練習でお互い駄目なところを指摘し合えるような仲になってきています。ただの仲良しではない雰囲気で、お互い2年生は取り組めているので、良い方向に行っているのだと思います。

――お互い刺激し合いながら、高め合っているのですね

 そうですね。みんなお互い練習でも試合でも負けたくないという気持ちが出てきていて、刺激し合えている仲だと思います。

――部内でのライバルはいらっしゃいますか

 同級生が一番負けたくない相手ですかね。あとは後輩の永山(博基、スポ1=鹿児島実)などが強いので、ライバルといいますか、後輩には負けられないという気持ちがあります。

――後輩が入ってきたということで、2年生になって心境の変化はありましたか

 最初は新入生が入ってきて、上級生のプライドというのもありました。なおかつ1年生にいろいろ教えながら、自分も練習しなければいけないというのを、あまりやったことがなかったので、最初の4月とかは1年生に教えながら練習するというのがきつかったという思い出があります。

――現在1年生との関係はいかがですか

 夏合宿終わってからきつい練習が多くて、1年生をご飯に連れていくことなどが放置気味になっているので、もう少し1年生の面倒を見なきゃいけないなというのは最近思っています(笑)。

――相楽豊駅伝監督(平15人卒=福島・安積)がコーチから監督へ就任されました

 相楽さんは個人個人を見てくださっていて、アドバイスもたくさんくれるので、そういった面はとてもありがたいと思っています。監督からのアドバイスがことしになって増えて、自分の走りを監督の目線という客観的な意見をもらえるので、ありがたいです。

――実際にどのようなアドバイスをいただきましたか

 僕は走っている時に腕が振れなかったりと硬い走りなんですけど、ことしそのことを練習後監督から、きょうはどうだったとか、アドバイスをもらっているので、いまはすごく改善されています。

――3、4年生の上級生の印象は石田選手にとってどのように映っていますか

 4年生は昨年3年生だった時に優しい先輩方だったなという印象でしたが、ことしに入ってもちろん優しいのは変わりませんが、厳しさも出してくれています。自分は少し練習中しゃべってしまうことが多いのですが、そういうところで気を引き締めてくれるのが4年生です。3年生は一個上ということでつながりも深いですし、関係が強いです。特にケガしている期間は、ケガが多かった平さん(和真、スポ3=愛知・豊川工)や凜太郎さん(武田、スポ3=東京・早実)、洋平さん(鈴木、スポ3=愛媛・新居浜西)などがアドバイスをくれて、ケガが治った後も走りの面でのアドバイスをしてくれました。プライベートでも一緒に出掛けてくださったりして、3年生は面倒見が良いとともに、3年生同士の仲が良くて、変えよう変えようという気持ちが伝わってきます。

――上下関係はいかがですか

 厳しい時は厳しいですが、普段はそれほど僕は厳しいなと感じたことはないです。接しやすい先輩だと思いました。そこがワセダの良いところだなと思っているので、自分も後輩たちが増えても接しやすい先輩になりたいなと思っています。

――高校の時と比べていかがですか

 自由な高校だったので、いまのワセダと似た雰囲気で高校の時もやっていました。なので、大学の環境で戸惑ったりというのはないですね。

――ワセダを選んだ理由は雰囲気も関係していますか

 陸上をやる、やらないにしてもワセダに入りたいという気持ちがありました。ワセダの自主性を重んじるというところが自分の高校と似ていて、そのことから自分も大学でもうまくやっていけるのではないかと感じました。

――康幸という名前は渡辺康幸前駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)が由来だとお聞きしました。小さいころからワセダへの憧れはあったのでしょうか

 最初は名前に関して意識はしていませんでしたが、小学生のころ箱根駅伝を見るようになって、親がいきさつを教えてくれました。そこから自分も駅伝をやってみたいなという気持ちがあって、多少は名前も影響したのかなというのはあります。

――陸上を始められたのはそれがきっかけですか

 もともと走るのが一番好きだったのですが、野球を小学校から中学校までやっていました。実際野球をやりながらも、高校では陸上をやって大学でも続けたいと思っていて、小学校の後半で駅伝を見たり、ワセダが三冠した時から、ワセダに入って駅伝やりたいという気持ちが多少ありました。一番やりたいと思ったのは、やはりワセダが三冠した時だと思います。

――来年は高校の後輩の太田智樹選手(浜松日体)が入部されますが

 太田は中学時代に全中(全日本中学体育大会)もジュニアオリンピック大会も優勝して、鳴り物入りで入部しました。練習とかでも最後二人で競り合って、僕が勝ったり、短い距離だと僕が負けることもありました。すごく生意気な後輩だなというのがあります(笑)。それでも先輩を立ててくれるという後輩で、二個下ですが一番仲の良い後輩でしたね。

――またチームメイトになるということで刺激を受けますか

 高校の時から一緒に練習をやっていますし、大学に入ってもすぐにAチームで一緒に練習をすることになると思うので、多分いままで以上に僕も太田も気合が入って練習できると思います。

――先輩としてどのように迎えてあげたいですか

 本当に強くなったなと思うのですが、それでも同じ高校の後輩なので、絶対に負けたくないですね。

――来年は3年生で上級生となります。部に対してこうしたいという思いはありますか

 まだ練習や試合でワセダは詰めの甘さやラストの競り合いで負けてしまうというのが、自分でもチームでも多いです。上級生になったらチーム全体で勝負強さというのを求めるチームにしていきたいなと思っています。

「優勝の場に自分もいたい」

10月には復帰早々に自己ベストをマークした

――箱根が近づいていますが、チームの目標を教えてください

 三大駅伝を一つも勝てていないので、箱根は優勝しかないと思っています。チーム全員が一丸となって、それに向けて取り組んでいきたいと思います。

――本番が近づくにつれてチームの雰囲気も変わってきましたか

 練習でも離れたりする人が出るとピリピリして、げきも飛んだりします。練習一回一回を緊張感を持って、自分も気が抜けない状態で取り組めています。

――石田選手自身の目標はありますか

 いまはメンバーの争いもあって、この1カ月しかありませんが、1カ月でも自分は変われると思っています。変わって絶対走って、優勝の場に自分もいたいという気持ちがあります。

――チームの中でのご自身の役割はどのように捉えていますか

 自分はBチームから上がってきた選手なので、全日本を走った8人やキャプテンの高田さん(康暉駅伝主将、スポ4=鹿児島実)などに、練習からどんどん食らい付いて勝てば、上の人も負けられないという気持ちで相乗効果が生まれると思います。その相乗効果を生むというのが自分の役割だと思います。

――つらい練習のモチベーションになるものはありますか

 12月21日に誕生日があって、12月20日に一番きつい練習が一段落つきます。集中練習が終われば、二十歳になっていろいろできそうなので、それがモチベーションです。

――ご自身の走りのアピールポイントはありますか

 スピードがあるとか、スタミナがあるといった、自分の走りのタイプを言い切ることは毎回できないのですが、特にどこが得意だというのがないところが自分の走りの特徴じゃないかなと思っています。走りがはまった時には力を出せる方だと思うので、調子があればいい走りができると思います。

――今後詰めていきたい課題はありますか

 上尾でラスト5キロが大失速してしまったので、その足りなかった5キロをこの1カ月で必ず克服して、箱根の20キロに完全に対応したいと思います。

――20キロという距離はやはりきついですか

 ハーフは4回ほど走っていますが、毎回残り5キロが課題です。20キロはきついですが、それこそいままで取り組んできた脚を使わないという走りができたらいいと思います。

――着実にタイムは上がっていますが

 そうですね。でも、大幅にもっと出したいのですが、地味にしか更新できていないです。また箱根後もハーフがあるので、そこで大幅に更新したいと思います。

――最後に箱根に向けて意気込みをお願いします

 ことしこそは絶対自分が走って、チームも優勝するということが
目標です。それに向けて全力で走ります!

――ありがとうございました!

(取材・編集 後藤あやめ)

箱根への意気込みを書いていただきました

◆石田康幸(いしだ・やすゆき)

1995年(平7)12月21日生まれのO型。175センチ、57キロ。静岡・浜松日体高出身。商学部2年。自己記録:5000メートル14分19秒87。1万メートル29分47秒92。ハーフマラソン1時間4分44秒。プライベートでも仲が良いという2年生。石田選手は最近、藤原滋記選手(スポ2=兵庫・西脇工)とショッピングに出掛けたそうです。話題が出てくると隣にいた藤原選手とアイコンタクトを取ったりと、取材中も仲の良さが垣間見えました。同期に刺激を受けながら、鍛え上げた走力を箱根でも期待しましょう!