【連載】『集大成』 最終回 渡辺康幸駅伝監督

駅伝

 最終回は今回が最後の東京箱根間往復大学駅伝(箱根)となる渡辺康幸駅伝監督(平8人卒=千葉・市船橋)。これまで竹澤健介(平21スポ卒=現・住友電工)や大迫傑(平26スポ卒=現・日清食品グループ)など世界で戦える選手を育て上げ、さらに低迷期にあったチームを毎年、優勝が狙えるチームにまで復活させるなど数々の実績を残してきた。そんな名将が最後に見据えるのは、もちろん箱根の総合優勝。集大成となる今大会の意気込みとは――。

※この取材は11月26日に行われたものです。

1年を振り返って

取材に応じる渡辺監督

――現在のチームの状況はいかがですか

まだ集中練習が始まって4、5日目ということで山を登ったとするならば、1合目ぐらいのなので(笑)、これから頂上に向かってやっていくわけですが、どうしても練習量を積むものなので、故障や体調を崩す選手が出てきてしまいます。それをことしはなるべくベストメンバーでスタートラインに立てるようには心掛けています。何せ相手はいるものですから、きちんとした準備ができなくては、優勝はないものと考えています。

――現在の練習の強度はどれくらいでしょうか

20キロ以上の区間が10個あるわけですから、きちんとしたトレーニングで積まなくては、ラストでのたたき合いや勝負になったときにスタミナ切れを起こすと優勝には近づけないので、毎年失敗と成功を繰り返してはいますが、試行錯誤を重ねています。特に全日本大学駅伝対校選手権(全日本)での失敗は二度と繰り返さないと考えています。

――全日本の失敗というのは何が原因だったのでしょうか

いやもう出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)がなくなって、次の週の記録会(第2回早稲田大学長距離競技会)にピークがいってしまったことが原因です。そこのところの調整ミスですね。

――出雲の中止というのは影響が大きかったということでしょうか

ただそれは他大学もライバル大学も同じ条件でやっていますので、それは言い訳になってしまいます。2回連続失敗ではなくて、リベンジする機会があるわけですから、きちんとワセダらしい駅伝をして、1年間を締めくくりたいなと思います。

――全日本のオーダーの意図を教えてください

ここ数年1区が課題となっていて、大砲がいないものですから、金太郎飴のように一つ一つの区間をつないでいく駅伝をしなくては優勝戦線に顔を出すということは難しいと思っています。そこで1区の柳(利幸、教3=埼玉・早大本庄)でそこをしのぎたいなというのが昨年度からの課題でした。他に1区を担当できる選手もいなくはないのですが、高田(康暉、スポ3=鹿児島実)を1区に置いたりとかも色々考えたのですが、この並びが一番スムーズに行くのかなという結論に至りました。

――柳選手の今回の1区への評価はいかがですか

村山謙太(駒大)と村山紘太(城西大)の村山兄弟が1区にエントリーした時点で先頭集団が速いペースになったら(先頭に)着かず、第2集団で動かしていく指示は出していました。結果的には、先頭から1分差ですが、順位というところで言えばまあ60点ぐらいは付けれるかなと思います。

――ちなみに100点はどれくらいのものになってくるのでしょうか

彼の持っている力は素晴らしいものがあると思っているのですが、どうしても1区に対する悪いイメージが払しょくできていなかったので、僕はどこかでその自信を付けさせたいと思っています。全日本の1区は誰も担当したがらないんですよ。距離も長く、ハイペースになる中で、誰かが犠牲にならなければならない。大迫も抜けましたし、走れる選手も限られている。その中でたまたま昨年度から柳が犠牲になっているということです。彼がそこで(不安を)払しょくしてもらって、彼がその区間に入ってくれると我々も区間配置を立てやすいということですね。彼の使いどころがちょっと他の区間にはないのかなと思います。

――1人で走れないという以前のコメントとも関わってくるでしょうか

1人で走った実績があまりないものですから。昨年は7区で起用しましたが、そういう区間でもなんとなくは走れますが、我々の期待している走りは単独走ではできないのかな。集団走のほうが力を発揮できます。本来は井戸(浩貴、商2=兵庫・竜野)や中村信一郎(スポ3=香川・高松工芸)も1区にも行けるのですが、彼ら2人にもマイナス要素がありまして、誰を使うかということは僕の中でも確率できていない部分があります。頭を悩ませている状況ですね。

――全日本2区を走った高田選手への評価はいかがですか

2区は前半突っ込んで、後半失速するということは、彼のこの2、3か月の練習を見ていると、たぶんそうなるだろうなという予測はできていました。東洋大の服部(勇馬)や青学大の久保田(和真)に比べると、スピードはそんなになく確実にラップを刻んでいかなくてはならないのに、前半突っ込み過ぎたので、結果的に7キロまで(しか着いていけなかった)というのは練習の流れを見ていると仕方ないのかなと思います。

――高田選手が前年の箱根で区間賞を獲得できた要因というのは

それは100%準備が上手くできたことに尽きます。そのままの結果がでましたね。彼は決して天才肌ではないので、やることをやってスタートラインに立たないと結果が付いてこない選手です。その部分では、全日本のブレーキで反省して、その後の上尾シティマラソン(上尾ハーフ)につながったと思います。これが次の箱根でもきょねん走ったから大丈夫ではなく、しっかりと準備をしなければ快走はないでしょうね。

――上尾ハーフにつなげた部分というのを監督はどのように評価していますか

全日本でダメだったから、2週間である程度準備をしっかりできたという点では評価はします。でもあくまでも(上尾ハーフは)記録会なので、記録会番長で終らないように、これからの1か月の調整でいかに100%の状態に持っていくかが我々スタッフの見せ所です。

――上尾ハーフで快走を見せた選手と言いますと中村選手などがいますが、中村選手が駅伝で上手く力を発揮できていない理由をどのように考えられていますか

経験が足りないんじゃないですかね。エンジを着て走ることによって、生きてくる選手なので、白のユニフォームで走るときだけ結果が良くて、エンジを着たらダメだってなってしまうと、特に箱根は一番大きい試合なので…。今回記録会で走れたということはよいのですが、エンジを着てしっかりと100%力を出し切れるような選手になってほしいという気持ちはあります。

――中村選手のことし成長した点を教えてください

彼は経験さえ積めば、練習自体はしっかりとできますので、そこのマイナス要素はありません。本当にメンタルだけですね。

――井戸選手への評価はどういったものでしょうか

井戸は安定しているのですが、関東学生対校選手権(関カレ)のハーフマラソンでちょっと良くなかったです。彼をどこで使うかでしょうね。全日本の1区は僕の中でかなり大きくありました。中村、井戸、柳の3択の中で、結果的に再び柳を起用したのですが、井戸の1区というのも無難は無難です。彼はきょねんたまたま8区だったので、彼の強みは発揮できませんでしたが、あそこしか使う場面がありませんでした。ことしは1区や3区、9区の可能性もありますね。強みはとにかく安定しています。大当たりもありませんが、大外れもありません。

――ことしは全体的に天候に左右される一年となりましたが

ことしはアジア競技大会の年で、その選考となる日本選手権にすら一人も出場させられなかったということがショックでした。しっかりとトラックシーズンで結果を残して、駅伝シーズンに臨むという流れが自分の中であったのですが、そこの春のトラックシーズンの結果がついてこなかったのは反省材料です。日本学生ハーフマラソン選手権の結果が良すぎて、チーム全体的に満足してしまったかなという気持ちもあります。それが関カレでうまくいかなかったことにもつながったかもしれませんね。

――関カレから夏合宿までチームを立て直した部分などはありましたか

自分の練習メソッド自体は確立していると思っているので、そこにオプションを塗っていくという僕の指導方針は変わっていませんので、特に方針が変わったりなどということはありませんでした。

――ホクレンロングディスタンスで自己記録更新が続出しましたが

平(和真、スポ2=愛知・豊川工)などはよく走りました。まず記録がないとその後の大舞台に出ることができないんですよ。日本選手権や春季サーキットなど、大きい試合に出場して経験を積むということは伝統的にやっていることなので、記録がないことにはそこにたどり着けないということでしょうね。

――ことしの夏合宿は率直にいかがでしたか

内容のある良い練習はできましたよ。平や武田は夏の練習ができなかったところがマイナス材料ですね。それ以外はほぼ順調に練習を積むことができました。

――夏合宿で新たな新戦力を発掘することはできましたか

ウチの場合は一般受験や指定校受験や付属高上がりが出てくる年は非常に面白いということを言われていますが、いまの段階でメンバー入りしそうなのは、佐久長聖の臼田(稔宏、基理4=長野・佐久長聖)あと1年生が4人ぐらいですかね。

――日本学生対校選手権の好結果に関してはいかがですか

他大の主力選手が多く欠場していたこともあり、あまりあの大会の結果については参考していません。あそこで入賞して、勘違いしてダメになっているパターンもありました。

ことしのチーム

――箱根で勝つためにハーフマラソンの距離を重視するというチームスタイルは変わっていませんか

そうですね。大迫のような選手が出てくればまた進め方は変わってくるのですが、基本的なアプローチの仕方であるリディアード法の距離の長いところから落としていくというベースは変わっていません。そういう意味ではハーフマラソンは得意にしています。

――スピード駅伝への対応は

スピード駅伝というのは前半の速い入りを我慢して入れるかという動きの問題なので、それが現時点でできるのは高田や平ぐらいです。それは急に変わるものではないので、そこは上手く彼らを区間に配置できるかです。だから区間配置は非常に難しくて、失敗すればすぐに下位に落ち込んでしまいます。駒大が強いと言われていますが、明大にしろ、東洋大、青学大、どこにも同じことが言えて、どこもすごく大きな大砲を持っているわけではないので、区間配置は僕がこれから一番考える事ですね。

――区間配置が成功したのが『三冠』のときということでしょうか

三冠のときもそうなんですが、昨年度も自分の中では上手くはまったかなという感じのオーダーです。毎年毎年自分の中でははまっていると感じているオーダーなのですが、結果的に優勝できていないので、それが実力であって、ここをこうすれば良かったと僕の区間配置が間違っていたと終わってから感じる部分はないですね。結局実力がないから3番だった、4番だったとなっています。

――2年連続でアンカーがラストスパートに敗れる結果となってしまっていますが

その通りですね。うちはよく競り負けるとか悪条件に弱いなどと言われていまして、それを克服するために練習時間を変えたり、わざとコンディションが悪い中で練習を行ったり、北海道合宿をやめて山に籠らせたりして、チームとして組織を鍛えてきました。でも結果的に田口(大貴、スポ4=秋田)や中村で負けているんですよね。中心になってほしい選手を9、10区に置いているのですが。ただ前回もラスト勝負になると思ってるからこそ、その前に田口で負けた分、スピードがある中村を置きました。ことしもそういった細かい争いも出てくると思うので、区間配置は非常に悩みどころです。決してスピードがない選手ばかりではないので。

――以前雑誌で「『三冠』のときと同じぐらい練習ができている」と拝見しましたが、具体的にどういった部分が同じなのでしょうか

『三冠』のときの練習をここ3、4年行っているのですが、どうしても主力クラスの故障者が続出して、ベストメンバーが組めていない実情がありましたので、ことしから変えました。ちょうど駒野(亮太長距離コーチ、平20教卒=東京・早実)が往路優勝した7年前の練習に戻しました。うちは1人2人欠けて戦えるほど余裕はありません。いままでは第1、第2クールで一気に頂上に上がっていたのですが、それをすると故障のリスクが高まるので、ことしから余裕を持って入って第1クールと第2クールの間に休息を入れています。詰め込み過ぎて体が悲鳴を上げて、脱落した選手が多かったものですから、そこの見直しというのをことしは入れました。

――ダメ押しの30キロについて、きょねん大迫選手と議論されたと伺いましたが

結局ダメ押しというのは指導者の自己満足であって、選手もそれをこなして自信を付ける選手もいれば、当てはまらない選手もいるので、それまでにしっかりと準備をするのが大切です。心配だから追加練習をやらせるという我々の自己満足になってしまっているので。できれば必要ないほうが良いですね。早く疲れを抜いて、スタートラインに立たせることができたほうが良いですね。難しいのが20キロ以上なので、あまり早く調子を上げ過ぎてフワフワした状態でスタートラインに立たせると、大体15キロぐらいで浮き出して、失速するパターンがあります。いままでもそれで八木(勇樹、平24スポ卒=現旭化成)が失敗したり、失敗した例がいくつかあって、細かい部分の調整の仕方はそれぞれ人によって様々なものですから、10日前からは一人一人の状態の良し悪しを見ていかないと難しいですね。

――1年生についてはいかがでしょうか

光延(誠、スポ1=佐賀・鳥栖工)についてはもともと距離適性に心配な部分がありまして、それを私たちスタッフは早い段階から分かっていました。なんとか全日本で10キロならもつだろうということで調子はあまり良くない中で使いました。本来は安井(雄一、スポ1=千葉・市船橋)も使える状態ではあったのですが、安井は記録会で走らなかったということでフェアな状態で記録会で走れた8人を選びました。上尾ハーフでは安井は結果を出した、光延は上手く走れなかった、それは箱根の選手を選ぶ上で参考にはしますが、ただ光延は割と試合にはピタッと合わせることができる選手です。今回は状態が悪い中で無理に出走させた部分もありました。現在の練習でも上手く疲れを抜きながら、前半の流れだけをカットさせて、良い状態に戻してから集中練習に入らせたので、光延か安井どちらかは使うでしょうね。1年生を2人起用することは僕はたぶんないと思うので。

――1年生を2人使わないというのは

20キロでは上級生のほうが確実ですね。それだけの選手が十分いますので。よっぽど状態が良ければ、1年生を2人使うこともあるでしょうが、基本的には1人かなと思います。

――以前1年生が複数起用された年は選手層が厚くなかったということでしょうか

まあ1年生が多くエントリーしている年は、来年、再来年を見据えている年ですね。基本的には3、4年生が多くエントリーしているときのほうが良いに決まっていますし、駅伝はスタミナや経験値がものを言いますから。

――ことしの4年生はどういった代ですか

田口と山本(修平駅伝主将、スポ4=愛知・時習館)は2人とも一浪で苦労していますし、いままでの積み重ねてきたスタミナや色々な苦労がありますので、きっとやってくれるでしょうし、そのために昨年度は復路を全て3年生以下で臨みました。田中鴻佑(平26法卒)や志方文典(平26スポ卒=現旭化成)は涙を飲んだわけですから、昨年度使ってもらったということを考えて走ってもらいたいということはありますよね。

――一浪してまでワセダに入学した山本、田口両選手にはどういったものを期待していますか

もちろん早大を落ちてしまった中で、他の大学からの誘いもあったと思いますが、また次の年に入学してくれたという部分もあります。僕以上に母校愛というものがあると思いますから、この最後の箱根で証明してくれるんじゃないかと期待しています。

――田口選手は箱根では9区、全日本では8区とエース区間を任せていますが、期待に応えられていない部分もあると思います

勝負弱いと思っています。ただ僕は彼しかいないと思っていますし、必ずやってくれるだろうという気持ちを込めてそういう区間にしています。箱根は非常に前半で主導権を握ったチームがそのまま逃げる傾向にあるので、状態が良い選手をどんどん前半から使っていくということではないでしょうか。9、10区ありきで区間配置を立てるというのはいまの駅伝では古いのかなと思います。だから7区とか速い段階で投入していくことも考えています。

――山本主将の5区への適性はどう考えられていますか

彼が万全の態勢でスタートラインに立ってくれれば、僕は往路優勝を狙えると思っているのですが、きょねんもここからけがをしているので、本人が細心の注意を払って練習に取り組んでいますので、必ずやってくれると思っています。上りの適性については駒野のときぐらいのタイムで登ると思っています。ターゲットは駒野の1時間18分前半ですね。

――適性を見出したのはいつごろだったのでしょうか

浪人中に練習に参加していたときから彼は上れると思っていました。練習で上り自体が非常に得意で、かなり良い走りをしていたものですから、入学したら1年目から上らせようということで使っています。

――4年間山本主将が一番成長した点はどこでしょうか

自分で自分のことをコントロールできるようになった点ですね。ちょっと時間がかかりましたが。どうしても大迫と同級生なので、意識する部分が多くありました。大迫の方が上のレベルにいってしまったので、そこで山本も一生懸命背伸びして、大迫に着いていこうとした部分が逆にマイナスになってしまっていました。地に足を付けながら自分のやりたいことをやってそのまま試合で出してほしいのに、背伸びしてやったことが空回りしてきたという感じです。それがキャプテンになって変わりました。自分自身を素直に受け止めて、見つめなおすことができたと思います。

――ことしのチームは仲が良い印象がありますが

仲が良いだけじゃ勝てませんよ。学年ごとにぶつかっても構いませんし、やはり優しい4年生では勝てません。そこをことしのチームはようやくガヤガヤやるようになったので、僕は静観して見ていますが、毎回のミーティングが仲良しミーティングで終るようであれば、そんなミーティングは必要ありません。

――陸上競技は基本的に個人競技ですが、駅伝はチーム競技です。チームを作りあげていく上で気を遣っていることはありますか

もちろん学年の横のつながりと縦のつながりは大事にしてほしいですが、言いたいことは下剋上ではありませんが、いまの時代は1年生でも2年生でも上級生に言いたいことははっきりと言って、風通しは良くしたほうがよいと思っています。一昔前の1年生と4年生は口がきけないだとか、上級生を立てろなどいう風習はいまの時代は関係ないかなと。実力主義でどんどん言っていくということでしょうね。

――それが表れてる瞬間はありますか

特に2、3年生はうるさい連中が多く(笑)、自分たちはああしたい、こうしたいと上に言っていくと言うことは必要ですから。『三冠』のときはしょっちゅうそういったことはありました。仲が悪いからぶつかるのではなく、意見を言い合うということは必要でしょうね。田口と山本は優しいので、いまさら性格を変えるのは難しいでしょうし、上手く2、3年生がつつきながら活性化して、良いチームになれればいいなと思います。

平常心で臨む

最後の箱根に挑む渡辺監督。4年生を中心に頂点を狙う

――ことしのキーマンはどなたですか

山本と言いたいですが、1区に入った選手ですね。1区に入った選手が上手く流れれば、うちは初日は取れると思います。

――ことしの1区はどのように予想されますか

ハイペースになると思ってそういうオーダーを組む予定です。状態が一番良い選手が1、2区に入るということでしょうね。

――きょねんは目標は3位とされていました。ことしの目標ははっきりと優勝とおっしゃっていますが

優勝に手が届く戦力だからそう言っています。まず箱根に関して優勝という言葉が出ているというのは山の経験者が上り下りともに残っているというのが大きいですね。あとは相手が駒大ですか。僕が監督に就任してから駒大は永遠のライバルと言いますか、大八木さん(弘明)の駒大を倒さないと優勝はないと思ってずっとやってきているので、ここを倒さないと頂点はありません。東洋大も必ず来るでしょうが、大本命は駒大でしょうね。上尾ハーフの結果も見ての通りですし、ここ数年、ずっと箱根では勝てていないので、箱根に対する執念は大八木さんがものすごく持ってくるでしょう。是が非でも箱根を取りに来るでしょうから、そこをなんとか阻止したいです。

――先ほど山の経験者のお話が出ましたが、三浦選手(雅裕、スポ3=兵庫・西脇工)についてはいかがでしょうか

三浦は下りますよ。しっかりと準備はしているので、あまり心配はしていません。彼自体は年間通じて箱根で走れればよいという流れでやらせています。特に試合に出ていないのは、下りの準備をさせている部分などもありまして、あとは12月の練習をうまくこなせるということでしょう。

――優勝争いに必要なものは何でしょうか

我々スタッフと選手の勝ちたいという気持ちが合致したときですね。あわよくば(優勝)という気持ちが少しでもあるとダメですね。絶対勝つために我々は完璧な準備をします。だから全日本でシード落としたから、(箱根で)3番を取れればいいやという気持ちで臨むとまた7、8番になるので、やはり優勝を狙いにいくということですね。

――出遅れている武田、平両選手に期待されていることを教えてください

武田と平は昨年度往路を経験していますので、僕としてはできればそのまま3、4区に入れたいです。そうすればあとは1区の大迫の部分だけですよね。5区は山本を入ることができれば、経験者が9人になりますので。

――それが思い描いている区間配置ということでしょうか

いま言っている区間配置って絶対その通りにはならないので(笑)。必ず誰かが故障したり、調子が上がらなかったりして、そうなっちゃうんですよ。理想はそのオーダーです。復路は柳を7区とかに置いて、8区の遊行寺の坂を上れるのは安井や臼田など限られてきてしまうので。9、10区を決めるのは最後です。1,2,3、4、7とどんどん調子の良い選手を並べて、平と武田に心配要素があれば、復路に回し、復路から状態の良い選手を持って来ます。

――ことしは競走部100周年ですが、いかがですか

もちろん節目の年なので、やらなければいけないという気持ちはあります。でもあまり100周年だからと言って、変わったことをやるわけではないので、平常心でいつも通りのことをやるということですね。

――最後に箱根への意気込みをお願いします

優勝すると中大の箱根の最多優勝に並べるので、あえてそれを100周年の節目の年に達成したいですね。

――ありがとございました!

(取材・編集 井上義之)