【連載】『逆襲』 第6回 山本修平

駅伝


折り返しの第6回は昨年、5区山上りで明大とデッドヒートを繰り広げ、お茶の間をわかせた山本修平(スポ2=愛知・時習館)。夏に5000メートル、1万メートル共に自己ベストを記録し、完全なるチームの主軸になった2年目のここまでを振り返ってもらうとともに、未獲得の区間賞に懸ける思いなどを語ってもらった。

※この取材は11月24日に行ったものです

「世界選手権の参加標準記録に迫る手応え」

区間賞へのこだわりを語る山本

――まず、この1年間のことを振り返っていきたいと思います。率直にことしはどういう1年間でしたか
本当にあっという間の1年でした。やっぱり箱根駅伝でどれだけ成長したかということが自分にとって一番大事なポイントなので、最後に成長ぶりを見せたいですね。

――前回の箱根を改めていま振り返るとどうでしょうか
100%の力が出せたかというと、ちょっと自分でもわからないんですけど、当時の自分からすれば精一杯の走りだったかなというのはあります。力的にもあれが限界だったかなと。でも、ことしはまたそれに力がかなりついたと思うので、きょねんの経験を生かしてもっと良い走りができるんじゃないかと自分では自信があります。

――箱根の後、丸亀(香川丸亀国際ハーフマラソン)では1時間2分台とまずまずの走りでした
丸亀は元々61分台を目指していたのですが、初めての箱根、集中練習の疲れから脚を若干痛めてしまって、その影響で62分台に目標を落として臨んだレースでした。やはりその頃脚を痛めてしまったのは自分にとってロスでしたね。まだ先のことですが、やはり箱根が終わってからも故障しないように気を付けなければならないなと思っています。

――その後は大会に出ずに合宿で鍛える、とのことでしたが合宿では順調に練習を積めましたか
疲れがある中での自分にとっては重い合宿ではあったんですけど、結果的にそこでやったことが夏の自己ベスト更新につながったと思っているので、かなり大きく成長できた合宿だったと思います。

――夏の自己記録更新ラッシュの要因はその合宿だったということですか
そうですね。(箱根前の)集中練習を経ての、合宿での追い込みがつながったかなと思います。

――その自己ベストを出したレースを振り返っていただけますか
ホクレン(ホクレンディスタンスチャレンジ)は99%くらい力は出せたと思うんですけど、窪田選手(忍、駒大)とか自分より上に学生がいたのでまだ満足するには遠いものでしたね。ただ来年度の目標である27分台、世界選手権の標準記録に迫る手応えというのは感じ取ることができました。

――5000メートル、1万メートル共に浪人時以来の記録更新でした
やっと記録が出せたなと。やっぱり自己ベストは違うなと感じて、自信につながる、試合の走りにつながるものがありました。

――夏はどう過ごされていましたか
夏に関しては社会人の合宿などには行かず、ずっとワセダのチームで練習していました。距離を踏んだり、スピード強化したりでした。

――その後の日本学生対校選手権(全カレ)5000メートルでは9位と入賞を逃しました
合宿が終わってからは何も結果を残せていないと自分自身思っています。全カレに関しては非常に悔いの残る試合でした。3位以内を目標にしていたので、最低でも入賞しないといけなかったと反省しています。

――レース直後、「0点」とおっしゃっていましたが、いまもそれは変わりませんか
変わらないですね。時間が経つにつれて悔しさが増していくくらいで、あれに関しては本当にもう一回やらせてくれという悔しさがあります。位置取りを失敗したことを言うのは言い訳になってしまいますが、自分の力を出せなかったレースでした。

「1秒でも勝って区間賞を取るだけで何か変われるんじゃないか」

出雲、全日本では悔しさが残った

――それからすぐ迎えた出雲全日本大学選抜駅伝(出雲)は6位と惨敗でした
6位というのはワセダとして情けない結果なので、反省というか次やるしかないという風に全員切り換えて全日本(全日本大学対校駅伝選手権)、箱根に向けてまた立て直そうとなりました。

――チームの6位という結果は予想していなかったのではないでしょうか
さすがに予想外でしたね。3位以内には入らないといけないと思っていたので。

――優勝が青学大だったということはいかがですか
青山学院さんは注意していたので優勝して予想外ではありませんでしたし、いわゆる三強だけではないと感じましたね。

――個人としては昨年に引き続き3区での出走でした
(前を追う)展開的に難しいレースではあったんですけど、そこでも自分の力が出し切れなくて、渡辺さん(康幸駅伝監督、平8人卒=千葉・市船橋)にも「お前は全く力が出せていなかった」とはっきり言われたので3区に関しては反省するところが大きかったです。

――区間3位では納得できる結果ではないということですね
もちろん自分自身納得していなかったのですが、監督さんにも「お前が区間3番じゃいけない」というふうに言われました。区間賞は狙いにいかなければならなかったです。

――2年生になり、渡辺監督からの評価も厳しくなりましたか
やはり求められているものが(昨季とは)違うなと感じます。より高いレベルで自分も応えられるようにやっていきたいです。

――レース条件としては強風でしたが、やはりそれが気になりましたか
風のあるレースを好きな選手はいないと思うんですけど、なかなか慣れない状況でしたが全員が同じ条件でのレースだったので言い訳できないですね。しっかり対応したかったです。

――また、同学年の田口大貴選手(スポ2=秋田)が大学駅伝デビューを果たしました
部内としても盛り上がっていますし、僕も同じ学年の選手が出てくるというのは一緒に頑張ろうという気持ちになります。

――その後の記録会でも28分台で走り、好調を維持できたようですね
調整も兼ねていましたが、(レースの)後半の練習だったので、うまくビルドアップできて手応えのあるレースではありました。

――2戦目の全日本、個人的なリベンジという気持ちもあったと思いますがいかがですか
納得はできなかったですね。もちろん、チームとしては優勝を逃して3位ということで反省がありますし、個人としても区間賞を取らないといけないところでまた区間2位と、悔いが残るレースでした。

――地元の大会でもありました
愛知県、また三重県も東海地区でほぼ地元なので4区を走らせていただいて、沿道から「山本」と名前も呼ばれましたし、応援されているのはすごく感じました。そういった点でもやっぱり優勝したかったですね。

――ことしは4区での出走でしたが
きょねんは1区ですごく出遅れるという結果になってしまいましたが、そういった意味では少し成長した姿を最低限見せられたかなというのはあります。ただ、もっと期待に応えたかったという気持ちもあります。

――区間賞は同世代である服部翔太選手(日体大)でしたがそれについてはいかがですか
服部くんに取られたのは悔しかったですね。自分自身、後ろをあまり意識していなかったので、前の東洋さんと駒澤さんとの差を気にしすぎて少し抑えてしまったかな、というミスがありました。振り返ってみると、もうちょっと突っ込んで入っても良かったかなと思います。

――渡辺監督からは何かお話がありましたか
「出雲、全日本と区間賞を逃しているが、お前の力だったら区間賞取れるはずだからそういう結果ばかり残していると停滞してしまう」と言われました。「次の箱根で区間賞を取って一皮むけてこい」と。

――首脳陣からの期待は感じますか
そうですね、そういう話をされると期待されているんだな、と思って頑張れる気持ちになります。

――また、早大はことしも1区は1年生の柳利幸選手(教1=埼玉・早大本庄)を起用しました
彼も本来はあんな力(区間12位)ではないと思うんですけど、やっぱり初めての大学駅伝ということで経験も少なかったですし、あれぐらいの差(先頭と58秒差)で来るかなとは頭に入ってはいました。ただ、彼はあれだけ離れたのは反省していると思うので次は頑張ってくれると思います。1区がああなってもまだ優勝は見えていたと思いますが、2~4区で首位に立つことができなかったのが僕ら主力の反省点です。

――結果、優勝は逃したものの出雲から巻き返して3位に入りました
出雲から立て直したかなというのは形としてはありますが、やはりワセダは優勝を目指しているので3位ではなく、改めて1番を狙っていきたいです。

――二つの駅伝を終えて、駒大、東洋大にはいずれも後着ということですがその二校については
強いですね。簡単に勝たせてくれるほど甘くないですし、全日本に関してはワセダは100%に近い力をそれぞれ出せたと監督もおっしゃっていたんですけど、うちは120%くらい出さないと優勝は見えてこないと感じます。

――具体的に二校の強さは
どんなレース展開になっても立て直してくることです。全日本で駒澤さんは1区で出遅れたにもかかわらず、窪田くんが最後はきっちり巻き返して優勝してきました。それは他の選手の頑張りから来ていると思いますし、底力の強さを感じます。

――山本選手自身としてはここまで区間賞を獲得できていないことで気になるところはありますか
区間2位で終わるのではなく、本当に1秒でも勝って区間賞を取るだけで何か変われるんじゃないかと自分自身感じるので、大事なところかなと思います。

――ホクレン以降、大迫傑選手(スポ3=長野・佐久長聖)と『二枚看板』と言われることも増えましたがいかがですか
まだそういってもらえるような力を試合で出せていませんが、本当にそういうふうになれるように自分自身も意識してやっているので期待に応えられるように頑張りたいです。

――また、既に1年生では柳選手と高田康暉選手(スポ1=鹿児島実)が駅伝に出走しました
非常に力のある選手たちですが、まだ本来の力を出せていないので彼らにとってもこの箱根は大きなものになると思います。練習からかなり意識も高いですし、力も持っているのでワセダのエースになれる力はあるんじゃないかと感じます。

「自分が一番のカギ。目標は77分台」

――残すは箱根のみ。チームの雰囲気はいかがですか
二つ負けているので、本当にリベンジしようという気持ちがすごく高まっています。4年生に引っ張っていただいているので、ムードは高まっているんじゃないかなと感じます。

――優勝へのライバルはどこでしょうか
やっぱり(駒大、東洋大の)二大学がずば抜けているなと思いますね。

――ワセダが優勝するために必要なことは
1区と復路のつなぎ区間の選手が今回カギを握るんじゃないかなと思います。初めて駅伝を走る選手がどれくらい力を出せるかというのもそうだと思います。

――キーマンを挙げるとすれば
高田選手、柳選手の1年生二人と田口とか、あとはいま勢いに乗っている田中選手(鴻佑、法3=京都・洛南)の4人がキーになると思います。上の先輩方は自分でうまく走るだろうと何の心配もしていないのですが、その4人が120%の力を出せれば、本当に力を持っている選手たちなので、ワセダとしては8番手あたりの選手は他大のつなぎ区間に置かれる選手より強いですし、かなり大きいと思います。

――山本選手自身は今回も5区での出走でしょうか
ほぼ間違いなくそうですね。自分としても5区で勝負しようという気持ちがあるので。まあ最後までどの区間になるかはわからないんですけど、昨年のリベンジということならやっぱり5区かなというのと、いまのチーム状況からして僕が5区でちゃんと走れば大きく優勝に近づくと思うので、そういった意味でも5区に臨もうという気持ちが強いです。

――昨年の走りを受けて注目もされていると思いますが
甘い試合に臨む感覚ではないので、きょねん走って注目されていると思いますし自分にとって大きな試合になります。プレッシャーはあまりないです。

――東洋大の柏原竜二選手(富士通)が卒業し、絶対的な選手がいないレースとなると思いますが、その点については
いなくなったからチャンスという気持ちは全くなくて、他の大学でも恐れるような選手が出てくると思います。他大の選手を気にするのではなく、自分のきょねんのタイムより1分でも2分でも縮めて走りたいなと思います。

――目標としているタイムは
77分台です。

――最後に意気込みをお願いします
監督さんに言われたように区間賞を取ってきたいです。取れば自分にとっても一皮むけるというのもありますし、チームが優勝に大きく近づくと思うので。今回、カギになる選手を挙げましたが、自分が一番カギになるんじゃないかなと感じます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 浜雄介) 

◆山本修平(やまもと・しゅうへい)
1991年(平3)5月24日生まれのA型。168センチ、47キロ。愛知・時習館高出身。スポーツ科学部2年。自己記録:5000メートル13分42秒17。1万メートル28分14秒49。ハーフマラソン1時間2分28秒。2011年箱根駅伝5区1時間19分52秒(区間3位)