TEAM | 1P | 2P | 3P | 4P | 計 | |||||
早大 | 4 | 5 | 1 | 2 | 12 | |||||
慶大 | 5 | 3 | 5 | 1 | 14 | |||||
▽得点者 都田7、古谷3、土橋1、中村1 |
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伝統の一戦らしい熱気が帰ってきた。3年ぶりの有観客開催となった早慶対抗水上競技大会(早慶戦)。熱い応援を背に一層躍動する選手たちが繰り広げたのは、手に汗握るシーソーゲームだった。両者が押し合い、一進一退の展開で進められた前半。第2ピリオド(P)終了時点では若干早大に勢いが傾いたかと思われたが、後半に入るとなかなか得点を重ねることができず、慶大に主導権が渡る。そこから逆転がかなうことはなく、12―14で敗戦。選手の目には、涙が浮かんでいた。
個人7得点の都田。エースとして、チームへのさらなる貢献を誓った
「接戦になることは想定していた」(杉山哲也監督、平18人卒=埼玉・伊奈学園総合)。その予想通り、開始直後から目まぐるしい乱打戦となった。慶大に先制を許すと、すかさず曵地孝太郎(スポ2=埼玉・秀明英光)からパスを受けた都田楓我(スポ3=鹿児島南)が、ボールをゴール水面に突き刺した。3分に中村大智(スポ2=埼玉・秀明英光)のミドルシュート、4分半に都田がパスフェイントをかけて左サイドから得点。7分半には慶大選手2人の退水(※)をきっかけに緻密に連携した末、都田が近距離からゴールを揺らすなど、両校間髪をいれずにカウンターからの攻撃を成功させ続け、4-5で第2Pへ。開始30秒で古谷典也(スポ1=東京・明大中野)が左サイドから落ち着いてシュートを決めると、そこからの3連続得点で、拮抗(きっこう)状態から早大が一歩リード。ディフェンス面でも、GK谷健太朗主将(スポ4=東京・明大中野)が、隅を突かれたゴールをはじくなど懸命な守りを見せ、9-8と優勢を保ったまま前半を折り返した。
好セーブを決めガッツポーズをする谷。4年生はこれが最後の早慶戦となった
ところが、第3Pで試合は大きく動くこととなる。「ビッグピリオドを取られた」(古谷)。早大シュートがキーパーに阻まれることが増える中、慶大は変わらずカウンターから大きく攻め込み続け、このピリオドで5点を献上。結果的に早大は、ゴールポストに当たったこぼれ球を都田がワンタッチで入れ込んだ1点にとどまり、3点ビハインドで決死の最終Pに挑むこととなった。スタート直後に慶大にゴールを割られると、そこからは互いにディフェンス陣が粘り合い膠着(こうちゃく)状態に。第4P3分にポイントゲッターの古谷が永久退水を取られたこともあり、なかなか決定打が出なかったが、6分半に相手の退水を誘い数的優位に立つ。この重要な局面で杉山監督はすかさずタイムアウト。冷静にゲームを再開させたが、クロスボールをさえぎられてシュートに至ることができず、大きなチャンスを逃した。しかし、早大もこのままでは終わらない。7分、土橋奏太(教4=長崎西)が中井慶(政経4=沖縄・那覇西)から受けたボールを豪快にゴールへ叩きこむ。その直後も岡田遼(社4=石川・金沢市工)らのスピーディーなパスさばきから、残り10秒で都田が最後のシュート。最終1分間で意地を見せきったが、第3Pの停滞が響き、12-14で試合を終えた。
試合終了直後。天を仰ぐ者もいれば、顔を覆い下を向く者もいた。選手たちの悔しさがあらわになった瞬間だった
「(今季)初めてやりたい水球ができた」(谷)。不完全燃焼で終えた関東学生リーグ戦を経て、戦術を見直してきた今年のチーム。全体の展開を通して見ればその成果が表れていたことは確かで、杉山監督からも、早慶戦を迎える過程で生まれた多くの収穫が聞かれた。「4年生にメダルをプレゼントできるように」(都田)、インカレこそ結果を出す。大本命の次節では、誇らしい笑顔で試合を終えてくれるだろう。
※重大なファウルを犯した選手は、20秒間ディフェンスに参加できない。
(記事、写真 中村凜々子)
※掲載が遅くなり、申し訳ございません。
コメント
杉山哲也監督(平18人卒=埼玉・伊奈学園総合)
――早慶戦を迎えるにあたって、どのような戦略を持って臨まれましたか
5月に行われたリーグ戦を通じて得られた課題に取り組むとともに、慶應戦のための戦術を考え、約1カ月間という短い期間ではありましたが戦略の変更を実現することができました。具体的な戦略については割愛しますが、オフェンスは「選択と集中」、ディフェンスは「ゾーンにおける組織ディフェンスの精度向上」でした。
――試合全体を振り返っていかがですか
どちらのチームが勝つにしても接戦になることは想定していました。全体を通じて双方集中した好ゲームだったと思います。こちらが考える戦略に近い形でゲーム展開することが出来ましたが3ピリオドにおける2、3回のミスが敗因になったと思います。
――後半で反撃を食らう形でしたが、前半とはどう違っていたのでしょうか
集中力の点、選手交代の中で2、3回ミスが発生してしまったのが要因ですが、全体として何か大きな問題があったわけではないと思っています。
――今日の収穫と反省点を教えてください
早慶戦に向けて取り組んだ1カ月間は練習、ミーティングなどこれまでにはない集中力があり、メンバー間の戦術の確認や活発なコミュニケーションが生まれました。高い練習レベルを維持し続けることは簡単ではないですが、戦術の細部にこだわることや口に出してチームの意思統一を図る文化が醸成できたことは大きな収穫です。 反省点は、ディフェンス面における退水の数を減らすことと、控え選手の層を厚くすることだと思います。
――インカレに向けての意気込みをお願いします
7月30日にインカレの組み合わせ抽選が行われます。関東1部リーグのチームはどこも油断できない相手ですので、相手チームを想定した戦略の検討、対策を図っていきます。 最低でもシード権の維持(4位以内)、目指す順位は3位以上ですので早慶戦の悔しさをバネにインカレでは勝利を味わいたいと思います!
谷健太朗主将(スポ4=東京・明大中野)
――主将としてチーム全体をどのように振り返られますか
結果としては負けてしまったんですけれども、実際に僕たちがやりたい水球というのはできたかなと思っています。今までの学生リーグ戦では自分たちの水球というのはあまりできなかったのですが、この早慶戦で初めて自分たちのやりたいことをやれて、やってはいけないミスもなるべく減らすことができたので、過程としてはすごく良かったのかなと思います。
――やりたいこととは具体的にはどういったところだったのでしょうか
まず守りを固めるというところで、学生リーグ戦の時は少人数でのカウンターをすごく食らっていて、そこでの失点やパスミスをしていたり、攻めている人間と抑える人間の意識の疎通ができていなくて、そこからカウンターを抜かれて失点をしてしまうケースも多かったのですが、今回の試合では打つ人をしっかり固定することができたと思います。
――試合前や試合後に何か他の選手たちに声はかけられましたか
僕たちの代以外はみんな有観客を経験したことがなかったということもあって、気持ちが高ぶりすぎている選手もいたので、落ち着いていこうという話は試合前にしました。
――最後の早慶戦でしたが、今はどんな思いですか
やはり悔しいという気持ちがあります。結果としては負けなので、勝ちたかったなという思いです。
――インカレに向けて意気込みをお願いします
メダル獲得をチーム目標にしているので、それまでに今回得た修正点を改善して、万全な状態で挑みたいと思います。
都田楓我(スポ3=鹿児島南)
――前半は一進一退のように見えましたが、そこから押された展開についてはどう振り返りますか
今回の課題にシュートの決定力不足というところがあって、第3ピリオドで崩れてしまったのはそこが目立ったのかなと思っています。1、2ピリオド目はシュートが打てば入るという状況だったのですが、どんどん外してしまって向こうには決められてしまって、という展開が続いてしまいました。
――個人としては7得点でした。そこについてはいかがですか
よかったところではありますが、7得点取ったからには勝ちたかったなと思います。
――インカレに向けて意気込みをお願いします
チームのエースとしてやらせてもらっているからには、もっと貢献しなければならない部分があると自分自身思っています。最後にみんなで4年生にメダルをプレゼントできるように、また頑張っていきます。
古谷典也(スポ1=東京・明大中野)
――初めての早慶戦でしたが、どんな思いで臨まれましたか
久々の有観客だったこともあって、楽しみなところもありつつ緊張の方が大きかったのですが、早慶戦の雰囲気を見ていると楽しみだなという気持ちに変わった状態で臨むことができました。
――個人のプレーについてはいかがでしたか
前半の方は、自分の得意とするミドルシュートが決まって、チームの流れもよくできていたと思うのですが、それに対して自分が苦手とするディフェンスの面で退水が続いてしまい、結局4ピリオド目の最後で永久退水してしまったので、途中で出場できなくなってしまいました。なのでいい面もあったとはいえ、チームに与えたマイナスな影響が大きすぎたかなと反省している感じです。
――具体的にはどこを修正していきたいですか
相手との距離が近すぎるというのがあるので、ディフェンス能力の向上、いい距離感を保てるようにしていきたいです。あとは、シュートを決めることはできているのですが、都田さんみたいに1人で決めるというよりは、チームのみんなに支えてもらってというのが現状なので、個人で打開する能力をつけていきたいと思っています。
――今日の試合のキーポイントは
3ピリオド目を5ー1で取られてしまったところが大きいです。そこは個人的には自分の退水からの失点で流れが悪くなってしまったなと思っていて、自分が退水していなければそうなっていなかったかなと思ったりもします。そのビッグピリオドを取られたのが痛かったです。
――最後にインカレに向けて意気込みをお願いします
今シーズンのチームはコロナの影響などもあって学生リーグ7位で終わってしまって、今回も惜しい試合ではあったのですが勝利することができずに、結果として残せていません。4年生にメダルをかけられるように1つでも多く勝って、最後に4年生と笑って終われたらなと思います。