【連載】インカレ直前対談「101%」 第6回 浅野健×金直輝×山本拓武

競泳

 今回は、自ら「バタフライ3兄弟」を名乗る3人に来ていただいた。「長男」でムードメーカーを務める浅野健(スポ4=東京・日出)、今季成長している金直輝(スポ2=群馬・高崎)、そして前回に続いて日本学生選手権(インカレ)に出場する山本拓武(スポ2=千葉・成田)が、今回にかける思いについて話した。

※この取材は8月23日に行われたものです。

辰巳に波乱を巻き起こしたい(浅野)

浅野は最初で最後のインカレで嵐を起こせるか

――まず他己紹介をお願いします。浅野選手の紹介からお願いします。

山本 浅野さんは2つ上の先輩で、なじむまでに結構時間がかかってしまったのですが、1年生の終わりくらいからすごく仲良くさせてもらっていて、いろいろあったりもしましたが(笑)。プライベートでもすごく良くしてもらっていて、非常におもしろい人なので一緒にいて楽しいです。あと水泳の面に関しては、僕たち後輩をタイムで引っ張ってくれる選手かなと思います。

 浅野さんは2個上の先輩で、すごく明るくて、チームとしてもムードメーカー的な役割で、いつも笑顔でいるところが印象的です。すごく頼りがいのある先輩だと思います。練習ではバタフライの3人、3兄弟の中の長男で、いつも練習を引っ張ってもらっています。

――後輩2人の紹介を受けて浅野選手はどう感じましたか

浅野 非常に素晴らしい後輩だなと改めて思いましたね(笑)。

――次に山本選手の紹介をお願いします。

浅野 拓武は、学年は2個離れているのですが、友達と言ったら変ですけど、結構仲良くしています。練習はめちゃくちゃ頑張っていて、努力家で、水泳に対する探求心も強いです。個人的には、趣味が僕と一緒で、音楽の趣味とかいろいろ一緒なので、割と気が合います。ちょっと生意気なのですが非常に気の合う後輩です(笑)。

 拓武は高校までの境遇が似ていて、いろんな考えが合うことが多いです。プライベートでも一緒にいることが多くて、一緒に遊んだりするのですが、練習になるとストイックに頑張る姿が印象的なので、すごく尊敬しています。

――山本選手は二人の紹介を受けてどうでしたか

山本 そういう風に思っていたんだなと思ったのですが、浅野さんから生意気だと思われているとは思っていなかったので、この場を借りて言わせてもらうと、すごく尊敬している先輩です(笑)。同期に尊敬されているとも思っていなかったので、嬉しいですね。

――最後に金選手の紹介をお願いします。

浅野 直輝も拓武と一緒で、努力家で、練習はすごく頑張っています。僕は可愛いなと思っていて、直輝のことが(笑)。なんか見ているだけで癒されます。もともと仲は良かったですが、最近より仲が深まったというのを僕的には感じていて、最近で言うと直輝に髪を切ってくれと言われまして(笑)。別に僕が強制したわけではなく、彼から髪の毛を切ってほしいといわれて、人生で初めて人の髪の毛を切りました。

山本 さっき直輝のほうからも言ってくれていたのですが、たしかに高校までの境遇が似ているというのがあって、気も合うし話もすごくわかってくれたりして、良き友であり、同期としては良きライバルなのかなと思っています。

――金選手は2人の紹介を受けてどう感じましたか

 ありがたいです。すごく良くはなしてくれて。浅野さんに髪を切ってもらって仲がすごく縮まったなと思います(笑)。

――バタフライ3兄弟と言われていますが、3人のエピソードはありますか

浅野 バタフライ3兄弟と言われるくらいなので、3人とも種目が一緒なんですね。なので練習が一緒なんですよね。例えば、練習メニューが送られてくる度に、3人で明日の練習はやばいな、とか今日この練習どうやる?みたいな謎の作戦会議のようなことをしています。あとは、練習でコースに並んだら、負けないぞというお互いの精神がぶつかり合っていて、兄弟だけどライバルみたいな感じです。

山本 練習中に関しては、浅野さんが言ってくれたように、ライバルで、みんな負けないぞという感じは出ているのですが、日常生活だったり、練習前後の作戦会議も含めて、周りからは兄弟みたいに見えるのかなと思います。

 バタフライは他の種目と比べてきついなと言いながら3人で頑張ってやる練習がすごく好きです。3兄弟として一緒に頑張ろうという気持ちで取り組んでいます。

――お互いにアドバイスを送りあうことはありますか

浅野 レースのタイプは結構3人とも違うのかなとう感じなのですが、アドバイスというよりは互いのレースの結果や内容から刺激を受け取ったり、刺激しあったりしています。早慶戦とかも一緒に泳いで、そのときはすごく良かったです。

山本 みんなタイプが一緒ではないので、アドバイスというよりは、雰囲気からお互いを高めあっているという感じはあります。

 やっぱりお互いのレース結果を見ると、刺激をもらったりします。

――浅野選手はインカレ初出場ですか

浅野 はい、実は最初で最後のインカレなんですよ(笑)。

――率直な感想は

浅野 1、2、3年と出られなかったのですが、僕的には、4年分の思いだったり、パワーを溜めていると思っているので、最初で最後のインカレで、全部大爆発して辰巳に波乱を巻き起こしたいと思っています。

――同級生や監督からは何か声をかけられましたか

浅野 同級生はすごく応援してくれて、最後一緒にインカレに出たいということを言ってくれていたので、それはすごく力になりました。まだ望む結果は出せていないですが、同期たちの言葉を胸にやりたいですし、奥野コーチ(景介氏、昭63教卒=広島・瀬戸内)からは「最後だからやりきれ」みたいな、半分励まし、半分プレッシャーみたいな愛の言葉を頂いていますね(笑)。

――これまでと取り組みを変えた部分は

浅野 基本的に高校までは努力家というか、コツコツちゃんとやっていたのですが、大学に入ってから、自分の頑張るリズムが1回崩れてしまったので、それで伸びなかったのもあったのですが、最近はインカレという目標がありまして、あとは僕的には2人の存在が大きいです。僕が3年生のときに2人が1年生で入ってきて、2人が来たことによって今まできつかった練習が乗り越えられ、きつい中を3人で一緒にやる楽しさみたいなものが練習で感じられて、自分で何か変えたというよりは、周りから、特に2人から2年間刺激を受けているという感じです。

――夏休みはどのような取り組みをしていますか

浅野 夏は追い込みの時期なので、2人も同じ気持ちだと思うのですが、結構ハードで、バタフライは結構泳がされて、泳がされてというといい方が悪いですけど(笑)。夏休みと言いつつも、休む間は1日もなかったなという感じですね。

――自身の泳ぎの強みは

浅野 僕は割と怖がらずに前半からいって、ベストなレースの時は、後半も耐える、維持するというのが自分のレースなのかなと思っているので、インカレでベストな状態で迎えられたらいいなと思います。

――四年生との思い出は

浅野 特に寮生の男子7人はずっと一緒にいて、これっていう思い出をあげるよりは、毎日仲良く過ごしているので、この4年間、1日欠かさず全てが、僕にとっては宝石のような輝いた思い出です(笑)。

今までやっていたことをこつこつ続けてきた(金)

金もインカレ初出場だ

――金選手は早慶戦で自己新記録を2種目更新するなど好調に見えますが、実際どうですか

 今シーズン入ってから、ベストの更新はちょくちょくしてきて、自分でも調子が上がってきているなというのはあります。

――昨年から取り組みを変えた部分は

 去年は怪我に苦しんで、泳げない時期もあり、去年はインカレに出られなかったけど今年は出られるということで、変えた取り組みはあまりないのですが、今までやっていたことをこつこつ続けてきたという感じです。

――金選手も初めてのインカレですか

 はい。

――緊張はありますか

 最近緊張してきました。

――インカレ出場経験のある方からのアドバイスなどはありましたか

 「初のインカレだけど、気負わずに落ち着いていけよ」ということをよく言われます。

――インカレに向けてどのような練習をしていますか

 とりあえず泳ぎこみで、バタフライを相当バタフライを泳ぎこんでいます。200メートルという距離を耐え抜く体力に自信をつけて、200メートルで自己ベスト出せるような練習をしてきました。

――自身の泳ぎの強みは

 後半だと思っていて、前半から後半にかけてラップを落とさないような泳ぎが自分の強みだと思っています。

――山本選手は、ルーキーとして出場した昨年のインカレを振り返ってみてどうですか

山本 昨年は100メートルだけだったのですが、一緒に出場した、今4年生の峯野さん(スポ4=友輔、大阪・関西大北陽)がいたからこそ、心強くて、レースに臨むにあたっての安心感があって、先輩に引っ張られたというのがあったので、今年は初出場の人たちを引っ張れるようなレースがしたいなと思います。

――具体的にどんな練習をしていますか

山本 夏休みに入る直前から、入ってすぐくらいまでは、泳ぎこみで体力と自信をつけるというような練習をしていて、8月に入ったくらいからは、個人個人が修正したい泳ぎだったり、レース展開だったり、修正したい場所を重点的に、意識してやっています。

――ルーキーの頃との意識の変化は

山本 去年は一年生で、右も左もわからない状態で出場したのですが、去年のインカレで先輩の活躍だったり、他大の選手の活躍だったりを見て、それがすごく刺激になったので、今年こそは輝けるように頑張りたいと思っています。

――この中で山本選手のみ、100メートルと200メートルに出場されますが、調整は大変ですか

山本 他の種目もそうかもしれませんが、バタフライは特に100メートルと200メートルで選手の顔ぶれとかも変わってきたりするので、一般的に見ても、100メートルと200メートル両方というのは難しいのではないかと思います。

――その調整の大変さを減らすためにやっていることは

山本 日々の練習で、それぞれ目的があると思うのですが、200メートルをメインに意識して練習する日と、スピード重視で、100メートルを意識して練習する日と分けて、どちらも自信をつけられるように練習しています。

――最近のマイブームは

浅野 僕は絵が好きだったり、音楽を聴くのが好きだったりするのですが、最近は「マネスキン」というイタリアのロックバンドにはまっています。僕と同い年くらいの人たちで、4人組なのですが、めちゃくちゃロックで、イタリア語の歌もあって、他にはない感じがかっこよくて、イタリアの人だからか、歌詞も日常について書くような普通のロックの歌詞よりは、宗教感が強い感じです。

 練習後にお腹が空いて、食べ物を食べたくなるのですが、甘いものを食べたくなるので、甘いものを食べるのがマイブームですね。

山本 これというのはないのですが、強いて言うなら、アニメの「スラムダンク」をたまに見ています。

感謝をレースや結果で伝えたい(山本)

山本は100mにも出場する

――現在の調子は

浅野 最近スピードが出ていて、調子は良いです。タイムの計測をしても、週ごとに速くなっているので調子は良いのかなと思います。

 ここ1か月くらいは調子が良くなかったのですが、週を重ねるごとに良くなってきていて、今週入ってタイムが上がっているというわけではないですが、自分の泳ぎと感覚がマッチするようになってきて、いい泳ぎができていると思うので、調子は上がってきています。

山本 浅野さんと同じように最近スピードが上がってきていて、100メートルと200メートルがあるので、そのスピードが100メートルの方に良い影響があれば良いですし、200メートルもスピードがあることによって、前半が楽に泳げるので、調子は良い方だと思います。あとは気持ちをインカレまで高ぶらせていけば、いいレースができると思います。

――インカレで期待する選手は

浅野 全員紹介したいくらいみんな調子が良いので、みんな僕の一押しなのですが、やっぱり僕ですかね。辰巳に足を運ぶ人たちが、良い意味で全員僕の顔を脳に刻み込んで帰るような、そんなパフォーマンスを僕はするのではないかと思うので、ぜひ浅野健をよろしくお願いします(笑)。

 みんな頑張っているので、みんな注目してほしいのですが、やっぱり僕ですねと言いたいところですが、練習を見ていると浅野さんに注目してほしいです。最近もすごく調子が上がってきていて、すごく進む泳ぎをしているなと思います。

浅野 馬鹿にしてる?(笑)

山本 他の2人も言っていたように、全員頑張っていて、やっぱり4年生は、最後という言い方はあまりしたくないですが、集大成という感じで頑張っていて、主将の平河さん(楓、スポ4=福岡・筑陽学園)だったり、長距離の武井さん(凛太郎、スポ4=東京・早実)だったり、練習のタイムも上がっていると思うのですが、やっぱり一緒に練習してきた4年生の浅野選手ですね。 辰巳に足を運ぶ人がみんな目に焼き付けるようなレースをするのではないかと思います。

――個人の目標は

浅野 僕は自己ベスト更新を目標にしています。200メートルのバタフライはだいぶベストが出せていないので、最後はベストを出して、今のベストが2分1秒30なので、どうせなら2分0秒台を出して、良いレースをするというのを目標にしています。もしバチバチに調子が良くて、ゾーンに入っていたら、もっと上のタイムも出したいなと思うのですが、まずは現実的な目標を達成したいので、自己ベストを更新したいと思います。

 僕も自己ベスト更新が目標です。早稲田の人たちは、決勝に残るような選手ばかりで、自分がそこまで得点をとれるような選手ではないと思うのですが、自己ベストを出して、早稲田のみんなに良い流れを作りたいと思います。

山本 100メートルに関しては、去年のインカレのタイムが今の自己ベストで、200メートルは、高校三年生の時のタイムがずっと自己ベストなので、自己ベストの更新はしたいのですが、去年出場して、18位という結果で、6位から得点が入るので、得点が入らない悔しさを味わったので、大きな目標としては、A決勝に残って、大量得点したいなというふうには思っています。あと、インカレ出場2年目で、ここにいる2人は1年目なので引っ張っていけたらと思います。

――もし今色紙があったらどんな言葉を書きますか

浅野 じゃあ、「魚」にします。やっぱり、水泳選手なので、魚のように、抵抗なく泳ぐのがベストだと思うので、「魚」で。

山本 この3人で泳げる最後のレースだと思うので、楽しんでいきたいというのを言葉にしたいのですが、楽しむのはもちろんのこと、何より勝ちたいので、「勝」で!

 僕は「驚」で。僕のレースを見てみんなが驚くようなタイムを出したいと思います。

――最後にインカレに向けての意気込みをお願いします

浅野 さっき一文字のやつはすべったなという感じなのですが、ここは真面目に答えます(笑)。4年分の秘めている思いだったり、3人で出られる最後の試合ですし、今まで支えてくれた親だったりとか、同期、監督、コーチ陣に、結果として感謝を届けて、さらに点数に関与できるかわからないですが、決して下馬評の高くない僕が良い結果を出せば、チームに勢いがつくと思うので、チームのエネルギーに火をつけるようなレースをして、個人的にも最後は良い幕切れを収めたいなと思っています。

 自分が絶対にベストを出すぞ、というのもありますが、4年生最後のレースというのもあって、自分の結果や自分の泳ぎで早稲田のみんなを勢いづけるのも大事なのですが、みんなの勇姿を見て、僕にとっていい刺激を受けられたらいいなと思います。

山本 4年生にはというか、全員に感謝しているので、そしてこのチームで戦えるのも最後になってしまうので、このチームに悔いを残さないというのと、恩返しという形になるのかわからないですが、4年生に言葉じゃ伝えきれない感謝をレースや結果で伝えたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 権藤)

 

◆浅野健(あさの・けん)

2000(平12)年7月22日生まれ。175センチ。東京・日出出身。スポーツ学部4年。専門はバタフライ。寮の部屋をかなりアレンジしている浅野選手。明るいキャラクターで対談を盛り上げていただきました!

◆金直輝(こん・なおき)

2002(平14)年7月26日生まれ。172センチ。群馬・高崎出身。スポーツ科学部2年。専門はバタフライ。名前には「まっすぐ輝いてほしい」という想いが込められている金選手。苗字は「きん」とよく読み間違えられるそうです!

◆山本拓武(やまもと・ひろむ)

2002(平14)年3月19日生まれ。172センチ。千葉県・成田高出身。スポーツ学部2年。専門はバタフライ。浪人生活を経て早大に入学した山本選手。競技力だけでなく人間力も磨くことが目標だそうです!