今回は大﨑威久馬(スポ4=神奈川・桐光学園)、白石崇大(スポ3=広島・沼田)、平河楓(スポ3=福岡・筑陽学園)へのインタビューだ。夏休み中も同じチームで活動をし、常に切磋琢磨している。早大平泳ぎを代表するこの三選手が抱く、インカレに向けた思いとは。
※この取材は9月13日に行われたものです。
「先輩が安心できるようなレースをしたい」(白石)
――他己紹介と言うことで、まず大﨑選手について紹介をお願いします
平河 大﨑選手は誰もが知っている、小学生からのスーパーエリートで、僕は小学生の時から大﨑選手の名前は知っていて、常に全国のトップで泳いでいるという印象があります。僕が初めて戦ったのは多分中学3年の国体の決勝で、天と地くらい離れて、すごくトップアスリートだなという印象です。水泳以外の面で言うとすごく物知りで、誰もが知らなさそうなことを知っているので、いつも驚いています。
――物知りな面に関して何かエピソードはありますか
平河 鉄道とか飛行機とかの知識が深いなという印象です。
――大﨑選手は鉄道や飛行機がお好きなんですか
大﨑 乗り物全般が好きで、自分が好きなもの・興味があるものはとことん調べてしまうので、少し気持ち悪いですけど(笑)
――白石選手はいかがですか
白石 大﨑選手は、競技面に関しては平河が言ったように小さい時から有名な選手で、多分僕が初めて一緒に泳いだのは高校3年の愛媛国体で、その時は楓とも隣で泳いでいて、そのレースでは威久馬さんが優勝されていたというすごいレースでした。この人すごいなと思いながら大学に入って、渡辺一平さんだったり、大﨑さんだったり、すごい人と練習をできていて毎日いい刺激をもらっています。競技面以外ではやはり物知りで、エピソードとしては僕の高校の先輩の名前を、かつて一緒に泳いだだけなのに覚えていて、記憶力はすごいなという印象を持っています。
――このエピソードについては大﨑選手いかがですか
大﨑 ここだけ切り取ったら気持ち悪いやつみたいになってしまうんですけど(笑)。水泳はもちろん自分の興味あることに対しては覚えていたりするので、そういうところで他人を驚かせたりする部分は多いかなと思います。その分勉強はできないんですけど(笑)
――次に平河選手についてお願いします
大﨑 平河選手は僕の一個下なんですが、幼少期から平泳ぎの選手で全国大会にも出続けてはいたのですが、第一線に出てきたのは中学3年から高校くらいでした。例えば全日本の合宿でも一緒に練習したことがあるんですけど、彼は僕が出会ったスイマーの中で一番努力する人間です。数々の人間を見てきましたけど、どんな選手よりも努力を重ねられる選手で、人づてに聞くとかではなく目に見える努力度というのは水泳界の中でぶっちぎっているかなと思います。自分に妥協をしないので、大学の成績も良かったりとか、勉強面でも負けず嫌いがうまく作用していて、本当に真面目で模範的な選手というイメージです。私生活でも10時くらいに寝てしまうくらい真面目なのですが、ふざけるところはふざけるというそういう塩梅、オンオフの切り替えも上手かったりして、完璧に近い人間かなと僕は思います。
――その努力は質と量どちらもですか
大﨑 3人は全然違って、白石はどちらかというと量を重ねられる選手で、僕は質で高めていくタイプなんですけど、その2人の量と質をぶっちぎって超えていくのが平河で、渡辺一平選手も認めるレベルなので、本当に日本トップレベルで努力を重ねられる選手だと思います。
――平河選手はそれを聞いていかがですか
平河 めちゃくちゃ恥ずかしいですね(笑)。これをやっておかないと試合に自信を持って臨めないと思うことが多くあって、心配性な部分もあるので、結構やってしまうのかなと思います。あれやらないとこれやらないととなって、レース前に疲労が溜まってしまうこともあるんですけど、逆に上手くいくこともあるので、これまでの積み重ねが生きているのかなと思います。
――白石選手から見て平河選手はいかかですか
白石 大﨑選手に全部持っていかれてしまった感じなんですけど(笑)、言うとすれば計画性があって、完璧にできているにもかかわらず謙虚でというのが僕からの印象ですね。
――白石選手と平河選手は同期ですが、コミュニケーションは頻繁にとられるんですか
白石 そうですね、同期男子は結構仲が良くて頻繫にコミュニケーションはとっています。
親しみやすいと言われる白石
――最後に白石選手の紹介をお願いします
大﨑 白石選手と平河選手は平泳ぎの選手として早大に入学したんですけど、良い意味で2人は対極な選手かなと思っていて、こう話していると真面目に見えるんですが結構おちゃらけていて、親しみやすさという面では僕にちょっとなめた態度をとってくるんですけど、そういったところがかわいらしくて、僕も色々助けてもらったりしています。白石は芯が強いので、僕だったら諦めてしまうような状況でも最後出し切っているというイメージがあります。僕は練習遅いタイプで、2人で僕を引っ張ってくれている部分があるので、感謝しかないです。
――白石選手はこれを聞いていかがですか
白石 やるべきことは一回一回の練習で最大限やれていたらなと思って練習には取り組んでいます。
――平河選手から白石選手への印象をお願いします
平河 昔から知っている存在で、僕の最初の印象は僕の弟と張り合っているイメージだったんですけど、中学に入ってタイムを伸ばしてきて、中高では隣で泳いだ回数が多いなと思います。私生活では同期なので色々おちゃらける部分が強くて、一番はゲーム好きという印象です。部屋に入ったらいつもゲーム実況を見ている印象があります。
「インカレでは絶対にできる」(平河)
――練習の話に移っていきたいと思うのですが、夏休みに入ってどのようなスケジュールで練習されていますか
平河 今は色々な規制があって、練習も完全に2グループ制になっています。僕たちはインターグループとして練習しているのですが、インターグループはインターグループのみで練習を行っていて、僕たちが終わる頃にスプリントチームやロングチームが来て入れ替わるという感じです。なかなか他チームの状況を見られなくなったというのが現状なのですが、練習は朝と午後で2回できたりしていて、十分に取り組めているかなという印象です。
――グループ間のコミュニケーションやミーティングというのは行っているんですか
大﨑 練習でのグループ分けの他に、寮内でもご飯を食べる時間を分けたりとか、クラスターが起きにくくする対策をしています。コロナ以前ならば、練習前後や入浴中などの他愛のない会話を通してチーム力を高めていけるということがあったのですが、強制的にそれができない状況なので、今4年生を主体として週1でオンラインでできる内容でチームレクをやったりして、異学年間のコミュニケーションを担保したりですとか、LINEのオープンチャットを通して匿名という特性を生かして、練習の感想を話し合ったりする場面を設けたりしています。後はスマホのアプリを用いて部内でラジオを配信して、人の声を聞く機会を増やそうということでそういうアクションを起こしています。コロナ前に戻すのではなく、自分たちのニューノーマルな形を作ろうと方針を決めて、頑張っているところです。
――ここからはレースに関して、今シーズンを振り返っていかがですか
大﨑 オリンピックイヤーでしたので、4月に日本選手権、五輪代表選考会があったのですが、その選考会の決勝に駒を進めるという目標がありました。ただあと一歩のところで届かず、また今シーズン一度も自己ベストが出ていない状況なので、目標に対して届いていないというのが続いているのが現状です。またコロナの影響で出場試合数が限られてしまっていて、モチベーション維持や目標達成の確認というところがすごく難しいシーズンにはなっているのですが、以前の形に型をはめるのではなく、この時代だからこそ経験しうる経験と考えて、このニューノーマルな形で大きな試合が開催されることを願いつつ、気持ちを切らさずにトレーニングを積んでいるというのが現状ですね。
笑顔の平河
――何か課題として力を入れている練習はありますか
大﨑 私自身タイムの目標としては、日本水泳連盟が定めるインターナショナルのタイムに自己ベストがあと0・07秒くらいなので、目と鼻の先ではあるのですが、来月その記録を突破して自己ベストを出して引退できればいいかなと思っているので、その基準に向けて以前から継続しているトレーニングに加えて、最後の詰めの甘さが出ないように、妥協しないように。小さな積み重ねを継続することが目標達成につながると思うので、継続という部分が自分として取り組んでいるところです。
――次に平河選手お願いします
平河 自分は4月の日本選手権では100と200で決勝に進むことを目標としていて、僕自身、予選準決勝決勝と同じ種目を3回泳ぐことが初めてだったので、何としても経験をしたいというのがありました。そして日本選手権ではうまく調子が上がって3回泳ぐことができ、良い経験ができました。それから2週間オフを挟んでもう一度頑張ろうと思ったのですが、なかなか泳ぎがつかめない時期が長くなってしまって、そこからまだ自己ベストを更新できていないので、夏のインカレでは2種目とも自己ベストを更新したいという意気込みで今はやっています。昨年はコロナで試合の経験を積むことができなかったので、今年こそは行われる試合はほとんど出ようと思っていたのですが、やはりコロナの影響でうまくいかず、結局昨年と同じような状況になってしまっているので、一回一回の試合を大切にしなければいけないなという気持ちで練習に取り組んでいます。インカレは1、2カ月ぶりの試合になってしまうのですが、そこで良い結果を残せるように頑張っていきたいなと思います。
――苦しかった時期というのはジャパンオープン前の段階ですか
平河 そうですね、夏のシーズンは五輪の影響で一人暮らしをする時期があって、慣れない環境でうまく対応できず練習に身が入らなかったりとか、タイムもなかなか出ずに悩んでしまった時期が続いてしまいました。最近でもコロナの影響で2週間くらい泳げない時期があって、今やっと泳ぎ始めたという感じで今年の夏はうまくいっていない部分が多くあるのですが、その時期があったからこそ見つめ直す部分もあったかなと思うので、夏のインカレはあまり気負わずに、威久馬さんとのラストレースなので、しっかり良い勝負ができるようにと思って練習に取り組んでいます。
――今特に課題として修正しているところはありますか
平河 平泳ぎというところが自分の中で感覚をつかみにくい種目だと思っていて、やっぱり水感を取り戻さないとスピードだったり軸だったりとつなげることができないので、まずは感覚を取り戻すというところでフォームだったりドリル練習だったりを、気を付けて行っています。
――白石選手、振り返りをお願いします
白石 まず日本選手権なんですけど、日本選手権の目標が準決勝に行くことで、その目標は達成したのですが準決勝でタイムを落としてしまって、1回しか良いタイムで泳ぐことができなかったので、自分は力不足だなということを痛感したというのが日本選手権でした。それからはジャパンオープンも思うような結果が出ず、和歌山の大会にも出させてもらったのですが、そこでは個人メドレーに重きを置いて、自分が目標としていたタイムより1秒くらい早く泳げたので、その大会は自分としては良かったのではないかなと感じています。
――個人メドレーで感覚を取り戻されたという感じですか
白石 日本選手権は良かったのですが、ジャパンオープンまでに気落ちしてしまった部分もあってあまり良くなかったのですが、その和歌山の大会で少し自信を取り戻すことができて、今は良い感じに練習できていると思います。
――白石選手は現在力を入れている練習はありますか
白石 数日前に水中でどれだけパワーを発揮できているかを計測する機会があったんですけど、その時に大﨑さんや楓よりも強いパワーが出ていて、パワーは出ているので抵抗を減らせばもっと早く泳げるんじゃないかということで、ストリームラインを綺麗にしたりだとか、ボディポジションを高めたりだとか、自分で気を付けられるところなので、日頃から気を付けて練習をしているところです。
――インカレに関して、出場種目とその目標を教えてください
大﨑 100メートルと200メートルの平泳ぎ2種目に出場します。競技人生最後の試合になりますので、1歳から水泳を始めて、初めて試合に出たのが5歳くらいでそこから17年くらい試合に出続けて、第一線から退くタイミングで有終の美を飾れるように、水泳人生としてはベストを出して引退したいという部分が大きいです。ベストを更新するという目標と、現状として平泳ぎは近年まれに見るハイレベルなレースが予想されますので、そういった中でもしっかり食らいついていって、平河と白石含めて3人で決勝の舞台で泳げたらというのが自分の中での今一番大きい目標ではあります。
平河 自分は100メートルと200メートルの平泳ぎに出場します。大﨑選手と一緒に練習して試合で勝つというのが目標で早大に入学したのですが、今回のインカレは泣いても笑っても威久馬さんと戦う最後のレースになるので、良い勝負ができるようにというのが目標です。具体的な目標で言うと、優勝を狙える位置にいるので、優勝して威久馬さんと一緒に表彰台に乗れたらなと思います。
新井 お二方と同じで、100メートルと200メートルの平泳ぎに出場します。目標としては、100メートルは得点を取ること、200メートルは私生活から競技面に至る全てをリスペクトしている威久馬さんと一緒に決勝で泳ぎたいので、何としてでも決勝に残ってというのがあります。
――リスペクトされているということですが、大﨑選手いかがですか
大﨑 いつもこうやって手のひらで転がされているんですけど(笑)、彼は口だけじゃないというところを結果で示してくれると思うので、勝負の世界ではあるんですが、3人で力を合わせて勝負をして、早大の平泳ぎの強さを決勝で示せたらなと思います。
「目に焼き付いて離れないレースをしたい」(大﨑)
――現在のご自身の調子についてはいかがですか
大﨑 直近の試合が8月頭くらいで、1カ月くらいレースに出ていない状況です。引退まであと1カ月なので調子が悪いとは言えないという現状ではあるのですが、最後1カ月だからこそできるパワー発揮だったりとか、練習の姿勢だったりというのが見せられているかなという風には思うので、調子は比較的良い状態をキープできているかなとは感じています。
平河 自分は泳ぎ始めてから1週間弱なので、調子が良い悪いというのはまだはっきりしていないのですが、日に日に調子が上がってきている感じはするので、残り3週間あればしっかりと調整できて良い感じに泳げるのではないかなと思います。ここは焦らずに一日一日やれることをやっていきたいなと思っています。
白石 和歌山の大会で調子が良くて、8月末にワクチン接種を終えてから副反応がしんどくて腕の筋肉が少し落ちてしまっていて、調子はあまり良くなかったのですが、最近になってやっと自分の思うような泳ぎができ始めてきて、少しずつですけど調子は上がっているという感じです。
――チーム全体の雰囲気はどのように感じられていますか
大﨑 チーム別の練習になってしまっていて、全員で集まって「よし行くぞ」とワイワイ集まってというのができないので、言葉として良い状態ですということすらもできない状況にあるのですが、個別に所属しているチームでは非常に勢いを持って、全員が目標に向かって順調にトレーニングを積めているかなというのは僕の目から見て感じています。レベルが高い集団なので、各々のタイムが他の選手に影響を与える部分も大きいので、そういったところで文字のごとく切磋琢磨して良い状態で迎えられる状態にあるのではないかなと見受けられます。
平河 インカレまで残り3週間ということで、チーム的にはすごく盛り上がってきている状況かなという感じはしています。ゴールセットのタイムもみんなハイレベルなタイムになってきていると思うので、誰かが早いと自分もやらなきゃとなるので、威久馬さんが言ったように切磋琢磨できていて、日に日にインカレに向けて良いチームづくりができている状況かなと感じています。
白石 インターグループでは唯一の4年生である威久馬さんを筆頭に盛り上げてくださっているので、僕たち3年生も食らいついて一緒に盛り上げていけたらなという状況で、お二方が言ったようにみんな良い感じで調子が上がってきて、お互い切磋琢磨しながら練習できているので良い感じなんじゃないかなと思います。
今年がラストイヤーとなる大崎
――最後に、もし今色紙に書くとすればどんな言葉を書きますか
大﨑 引退レースになるので、有終の美を飾れるようにという部分で、『魅せるレース』と書きたいかなと思います。僕自身、1年生の時に当時複数人部屋の寮に住んでいたのですが、その時の部屋長の4年生の方が最後のインカレで優勝して引退されるという姿を目の当たりにして、今でもその勝った時のガッツポーズが目に焼きついて離れないので、そういう先輩になれるような『魅せるレース』。僕なりに最大限の結果を出して『魅せるレース』ができたらなと思います。
白石 うまく言葉にはならないんですけど、先輩たちはインカレで終わって僕たちの代になると思うので、何の気負いもなく安心できるようなレースをしたいなと思っています。
平河 僕は好きなアーティストがいるので、そこの曲名の一つに『いつかできるから今日できる』というのがあって、僕はそれを書きたいなと思います。というのも歌詞から勇気をもらっていて、『いつかできるから今日できるよ』という歌詞があるんですけど、いつも試合前聞いていて、今日絶対できると自信持っていけるようにと毎回聞いているのですが、この3人同じアーティストが好きなので、そういった意味からでもインカレでは絶対できるよという意味も込めてその言葉にしたいなと思います。
――インカレに向けて意気込みをお一人ずつお願いします
大﨑 僕にとっては引退レースになりますので、引退レースがすごい大きな舞台になるということで、結果はどうであれ2人が僕についてきてくれた部分もあったりするので、そこへの恩返しだったりとか、2人の先輩として良い形でレースを終えられたらな、レースが終わった時に2人と熱い握手をしてこれからの早大を託せるような形にして、自分自身の結果はベストを出して追われるようにという部分もあるんですけど、この3人で早大の平泳ぎを引っ張っている部分があるので、終わった後3人でお疲れ様と言えるようなレースをしたいと思います。
平河 泣いても笑っても威久馬さんと白石と3人で泳ぐレースは最後になってしまうので、この3人で必ず決勝に残ること。そして決勝でベストパフォーマンスをすることが目標なので、威久馬さんも言われたように、タッチして電光掲示板を見て2人でガッツポーズするところとか、そういうところを達成できるようにしたいなと思います。
白石 僕の目標は出し切るということで、自分の力を出し切りさえすれば3人で決勝、最後に威久馬さんと泳ぐことができると思うので、自分なりに出し切って最高のパフォーマンスをしたいなと思います。
――ありがとうございました!
(取材 小山亜美、編集 長村光)