【連載】インカレ直前特集『DARE』第3回 今牧まりあ×松本信歩

競泳

 第3回は今牧まりあ(スポ2=長野・飯田)と松本信歩(スポ1=東京・東学大学付)へのインタビューだ。唯一の2年生女子スイマーである今牧は日本選手権、ジャパンオープン共に自己ベストを更新し絶好調。一方の松本は受験によるブランクを乗り越え、徐々に調子を上げている。若きスイマーが早大女子部をけん引する時も近い。

※この取材は9月20日に行われたものです。

「一レース一レース無駄にしたくない」(松本)

――早速ですが、お互いの他己紹介をしていただきたいです。まずは松本選手の紹介をお願いします

今牧 普段、信歩ちゃんはクラブ練習、私は学内練習を行っているので、練習の姿を見ることはないんですけど、試合の結果だったり高校までの実績を見たりすると、トップ選手だなって(笑)。私よりも年下なんですけど尊敬する部分も多くあって、頼りになる後輩だなと思います。

――具体的に尊敬する部分はどこでしょうか

今牧 大舞台で活躍している姿ですね。世界ジュニア選手権で優勝していたり、ジャパンオープンで優勝していたり、実績があります。そういう姿を一ファンみたいな感じで尊敬しています。

――松本選手は今牧選手の印象についていかがですか

松本 すごく優しく接してくださいます。水泳とは関係ないんですけど、科目登録の時とかすごく丁寧に教えてくださったりとか(笑)。女子ミーティングの時も話を振ってくださって、優しくて頼りになる先輩だと思います。試合でも入学する前からレースを何度か見ていましたが、50メートルが速いのはかっこいいなと思います。

今牧 ありがとうございます(笑)。

――科目登録のお話も出ましたが、学部が同じということで入学してからお話しすることもあったのですか

松本 入学する前に連絡先をつなげてもらって、科目とか何もわからないところから(教えてもらいました)。(履修)科目の表を作って「これでいいですかね?」みたいなことを伺ったり、「この科目をとった方がいいですかね?」ということは相談しました。

――コロナ禍ということで難しい部分はありますが、お二人で交流はあるのですか

今牧 週に1回のオンライン女子ミーティングで他の部員を交えて雑談したり、士気を高める活動で話す機会は何度かありました。

 

インカレ初出場となる松本

――最近ハマっていることはありますか

今牧 夏休みはほとんど出掛けずに家で過ごすことが多かったので、ネットフリックスで話題のドラマを見ていました。韓国ドラマの「わかっていても」を自粛期間に見ていて、結構ハマってしまいました(笑)。

松本 高校の時にできなかった水泳漬けの毎日だったですね。資格試験の勉強とかをしていました。簿記とTOEICとか。

――高校から大学で練習に変化はありましたか

松本 同じクラブでずっとやっているんですけど、午前中に授業がなければ練習するとか、日常の練習回数も増えて、(大学は)夏休みも長くなったので2回練習を多くしています。

――大学生としての生活には慣れてきましたか

松本 始めは大学に通うのに1時間半かかるので本当にきつかったです。2回練習が週に3回入ることもあってきつかったですが、少しずつ慣れていました。

――今牧選手は夏休みの練習スケジュールはどんな内容でしたか

 五輪期間中に早稲田大学でイタリアの選手団が練習していた影響もあって、夏休みの半分くらいは練習時間も普段と違いました。例えば朝早くだったり、普段4時から(の練習)が夜の6時から8時半になったりして慣れるのには少し時間がかかりました。でも、一日一回(練習)でも質の高い練習をして回数を言い訳にしないように、時間を無駄にしないようにという意識で取り組んでいました。

――学内ではグループ練習をされているそうですが、どなたと練習されていますか

今牧 主将で4年生の村上雅弥さん(スポ4=香川・坂出)と3年生で自由形の今野太介さん(スポ3=山形・羽黒学園羽黒)とバタフライの峯野友輔さん(スポ3=大阪・太成学院大高)と一緒に練習させていただいています。

――グループに分かれることで普段とは違う刺激はありましたか

松本 一緒に練習できるメンバーが少なくなって、他のチームの選手とはほとんど接点がなくなってしまったのは寂しいですし、「向こうのチームはどんな感じなんだろう」と思うことはあるんですけど、それでも同じ目標に向かって、インカレに向けて頑張っているチームの一員だと思っています。私のチームのコーチから教わった『一味同心』という言葉があるんですけど、そういう気持ちで練習を頑張っています。

――夏休み期間中に修正した課題や力を入れた練習はありますか

今牧 私はパワー出力が足りないのが課題なので、スプリント練習やウエイトトレーニングの重量を上げたりしていました。

松本 日本選手権とジャパンオープンで思ったような成績が出せなくて、スピードも出ていないし体力も最後まで持たないレースが続いてしまったので、最後までスピードを維持することを意識して練習していました。ウエイトトレーニングも毎週2回ずつあって、徐々に重さを上げています。

「チーム一丸となって同じ気持ちで練習からインカレまで戦っているということを表したい」(今牧)

――今季の成績について、現時点での振り返りをお願いします

今牧 日本選手権とジャパンオープンで、両大会とも自己ベストを更新できて、ジャパンオープンでは一つの目標であった決勝進出を達成できました。でもその後で行われた試合では思うような結果が出せなくて悔しかったです。主要な大会で自己ベストを出せたことは自身にしたいんですけど、コンスタントに自己ベストの99パーセントをどんな試合でも出せるようにしたいという感想を持ちました。

――ジャパンオープン後は少し苦しい時間を過ごしたのですか

今牧 練習でも思うようなタイムが出せなかったり、思うような練習内容ができなかったりというのが自分の中でありました。それで悔しい結果になってからは、どんな練習でもその日できる100%の内容をしたいと思って、次の日から行動を変えるようにしました。

――意識の変化で改善されていることは体感していますか

今牧 最近、どんな練習でも自分の力を最大限出しているなと感じこともあって、練習のタイムも徐々に向上してきているので、その勢いでインカレに乗り込めればいいかなと思います。

――松本選手は大会を振り返っていかがですか

松本 (昨年の)12月から受験で練習を3か月くらい休んでいて、日本選手権の1ヵ月前くらいに復帰しました。そこからは必死に頑張ったのですが、日本選手権は全然だめで、ジャパンオープンもその悪い流れのまま終わってしまいました。本当に練習で頑張らないと試合でタイムは出ないことが身にしみてわかったので、そこからは練習を頑張るようにしています。このあいだ早慶戦に出させていただいたんですけど、その時も泳ぎの調子が良くなくて、タイムもそんなに良くなかったですけど、インカレと同じように一日に何本も泳ぐという経験ができたので、それはインカレにつながると思っています。

――受験期間はどのくらい水泳から離れていたのですか

松本 週に1回1時間泳ぐくらいでした。

――元に戻すのにかなり苦労されたのですか

松本 受験から戻ってすぐ合宿をしたんですけど、ハード一本だけだと悪いタイムは出ないのですが、だからと言って試合ではタイムが出なくて、積み重ねがやっぱり試合に出るんだなとは思いました。

――試合を重ねて良くなってきているという感覚はありますか

松本 練習でもただがむしゃらに頑張るんじゃなくて、どうしたら楽に泳げるのかなということも考えるようにしています。早慶戦は、すごく調子が悪かったのですが、同泳ぎを調整したらもとに戻るのか、いい方向に行くのかということを考えながらドリルを工夫するようにしています。

――改めてインカレでの出場種目を教えてください

今牧 50メートル自由形と100メートル自由形に出場させていただきます。

松本 50メートル自由形と200メートル個人メドレーに出場予定です。

――順位やタイムの具体的な目標を聞かせてください

今牧 50メートル自由形では、自己ベストの25秒57を更新して決勝に進出することと、決勝でタイムを上げてチームに少しでも高い得点を与えられるようにすることが目標です。100メートル自由形も決勝に進出することと自己ベストの更新は確実にしたいなと思っています。

松本 どちらの種目も2年くらいベストを更新していないので、どちらも更新するというのが最低限の目標かなと思います。50メートル自由形は今回すごくレベルが高い争いになると思うのですが、決勝進出を目指して頑張りたいと思います。200メートル個人メドレーがメイン種目だと思っていて、インターナショナルCの2分12秒10を出したいと思っています。3位以内に入れればいいなと思っています。

――今牧選手は昨年のインカレで「100メートル自由形メドレーリレーで決勝進出ができず悔しかった」とおっしゃっていましたが、振り返っていかがですか

今牧 あ、今ですか(笑)。その悔しさは今も持っているんですけど、去年は何もわからずにただ一日一日を追うことに必死で余裕を持てなかったです。今年は2年目で後輩も入ってきたので、先輩にもいい姿を見せられるように、後輩のお手本になれるようなレースをしたいと思っています。

――昨年は初めてのインカレでしたが、他の大会と雰囲気が違うという感覚はありましたか

今牧 チーム対抗なので大学の結束力が見られますし、チームメートを必死で応援するのもインカレが一番だと思います。チームとして戦う試合なのでプレッシャーももちろんありますが、楽しいです。昨年は、今まで自分が持っていると思えなかった力をチームのおかげで発揮できた経験をしたので、特別な試合かなと思います。

――松本選手は初めてのインカレですが、大会にどのような印象を持っていますか

松本 YouTubeの中継でインカレを観たことはあるのですが、高校生だった私には水泳にかける思いや大学のために戦うという思いが見えて、リレーを必死に応援する姿も見えて、本当に鳥肌が立つというか、かっこいいと思って見ていました。

――インカレで4年生は引退ですが、特にお世話になった選手はいらっしゃいますか

今牧 全員お世話になった思い出がありますが、1人挙げるとするなら主将の村上雅弥さんです。練習チームが一緒で、メニューも一緒にこなしてきたという思いもあるので、雅弥さんが普段の練習に対してどれだけの熱量を持っているかだったり、水泳に対してどれだけ本気で取り組んでいるかというのを間近で見てきたので、雄姿をぜひ見たいです。

松本 牧野紘子さん(教4=東京・東大付中教校)です。普段一緒に練習させていただいているのですが、本当に憧れの存在です。

――一緒に練習されているとのことですが、アドバイスや刺激になったエピソードがあれば教えてください

松本 難しい(笑)。本当に25メートルの練習でも100メートルの練習でも勝てないのはすごいなと思います。メドレーのどの種目にも抜けがないし、短距離も長距離も速いのはすごいなと思います。

――出場するにあたって意識している選手はいますか

今牧 私は特に意識している選手はいないです。意識しない方が自分に集中できるタイプなので。

松本 自分の調子とその人の調子があるので、あんまり人を意識していません。でも2個メで前半1位で入ってみたいなとは思います(笑)。

笑顔の今牧

――ここからインカレに向けて課題点を教えてください

今牧 スタートの局面でパワー出力を高めて、他の選手よりも一歩抜け出せるような練習をしています。50メートル(自由形)では、テンポが上がらずにストローク長が伸びるタイプだったので、他の選手よりはスローテンポで腕を早く回せないのですが、これからインカレ上位を目指すには、テンポを上げてストローク長を伸ばすのが重要になると思います。それもパワー出力に関するんですけど、テンポを上げる練習もして技術を高めていきたいと思います。

――現在パワー出力という点で調子はいかがですか

今牧 先日メイン練習で50メートルのダイブを2本行って、ベストプラス0.5秒くらいできていたので、日本選手権前の調子が良かった時期と同じくらいの内容でできるようになってきたので、調子は普通以上かなと思います(笑)。

――松本選手は詰めていきたい点はありますか

松本 今は50メートルに特化した練習はしていないので、50メートル自由形に向けては高いスピードで泳ぐ練習は必要かなと思っています。200メートル個人メドレーに関しては、普段短水路で練習しているからかもしれませんが、壁の手前10メートルで泳ぎが維持できなくて、長水路の練習もしていますが、短水路でも最後落とさないようにするというのが課題かなと思います。

――現在の調子はいかがですか

 早慶戦の頃が低かったのですが、そこからちょっとずつ工夫して直して、せんせいからもアドバイスをもらったりして少しずつ上は向いていると思います。

――チーム内で注目している選手はいますか

今牧 うーん(笑)。平泳ぎの4年生の大﨑威久馬さん(スポ4=神奈川・桐光学園)です。練習チームが離れているので、威久馬さんが練習している姿を最近は間近で見ていないのですが、インカレにかける思い、絶対に最後のインカレで結果を出したいという気概は普段の生活から感じられます。いろんな話を聞いてもらったり他愛もない話もたくさんしてもらって、お世話になった先輩でもあるので、とても楽しみだなと思っています。

松本 あんまり学内選手と会う機会が少ないので、牧野さんですね。ずっと一緒に練習をしてきて、最後のインカレに向けて練習している姿を見ています。早慶戦でも連戦でしたがいいタイムで泳がれていたので、(インカレでも)タイムも出るんじゃないかなという期待と応援という気持ちです。

――ご自身の注目ポイントを教えてください

今牧 最後まで目を離さずにレース展開を見てほしいなと思います。私は出だしが(他の選手)より遅くてだんだん追い上げるというレーススタイルなので、後半追い上げてタッチの差で勝てるか勝てないかというのは見ていただきたいと思います。

松本 メインの200メートル個人メドレーなんですけど、私は前半型なので、前半何秒で何番で来るのかを見ていてほしいです。後半はちょっとずつ落ちてくるかもしれないですが、どこまで粘れるか見てほしいなと思います。

――もし色紙があるとしたら、どんな言葉を書きますか

今牧 先ほども言いましたが、『一味同心』を書くと思います。チーム一丸となって同じ気持ちで練習からインカレまで戦っているということを表したいです。

松本 一レース一レース無駄にしたくないので、意味のあるレースをしたいです。何か一つでも得るものがほしいというか、どの種目も平凡なタイムで終わってしまったら意味がないと思うので、毎レース「ここだけは絶対にやる!」ということを決めてやりたいです。

――最後に、改めてインカレに向けて意気込みを教えてください

今牧 インカレでは1日目からレースがあるので、自分たちのレースの結果次第でチームの流れは、いくらでも変わっていくと思うので、一本目からタイムを出していきたいなと思っています。頑張ります。

松本 四日間のレースで、すごくタフなレースになると思いますが、早稲田のチームとして励ましたり励まされたりしながら乗り切れたらと思います。私個人としても、さっきの目標を達成できるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材 小山亜美、編集 手代木慶)