2019―2020年シーズンに女子部の主将を務めた小峯由香梨主将兼マネジャー(社4=埼玉・早大本庄)。チームに直接得点を持ち帰ることはできないマネジャーという立場でしたが、全体に気を配り、例年以上に結束したチームを作り上げました。今年の日本学生選手権(インカレ)では、女子は「シード死守」という目標の8位を超える総合6位。好成績を収めたチームを影から大きく支えました。
※この取材は10月13日にリモートで行われたものです。
「チーム全員の力が発揮できた」
マネジャーながら女子部主将を務めた小峯(右)
――今年のインカレは自身にとって、また女子部にとってどんな大会になりましたか
今年のインカレは1年生を含めて全体で練習できる機会が少なかった割には、私のこの4年間の中でも結構団結して、全員で勝ちに行ったという試合だったなという風に思いました。
――チーム全員ができることや求められていることをやってる女子総合6位という結果だったのかなと思いますが、この結果は嬉しいものでしたか
結果もすごく嬉しいんですけど、結果だけじゃなくて、今まで早稲田って1人が1位をとって得点を稼ぐっていうパターンが多かったんですけど、今年は女子の場合ほとんど全員が点をとって、全員で勝ち取った6位という感じです。リレーの得点も大きいんですけど、それ以上に個人の点が例年よりもとれて、チーム全員の力が発揮できた試合だなと思いました。
――女子部は今年ミーティングを例年に比べてたくさん行なっていたとお聞きしました
実質チームで練習できなくなったのが4月からなんですけど、そこから毎週固定して週に1度女子だけのミーティングを開くようにして、その結果そのときってまだ1年生と私も会ったことなかったですし、他の学年も会っていなかったんですけど、話す機会を設けることで実際に会ったときに緊張しないようなコミュニティだったり、1年生からしたら上級生って怖いと思いますし試合も緊張すると思うんですけど、そこをうまく4年生だけじゃなくて2年生3年生も含めてそういう会話でできるようなことをして、緊張をほぐして団結を高められたのかなと思います。練習の状況も結構話し合ったので1人じゃないっていうことをみんなの気持ちに託しました。
――マネジャーが主将を務めるというのは他の部活ではあまり見られないケースかと思いますが、自分が試合に出ずに全体を見られるという立場でまとめるのも案外良いのではないかという印象を受けました
泳ぎで引っ張るというのが本来の主将像だとは思うんですけど、マネジャーだからこそ誰よりも上からみんなの姿を見ることができるので練習の状況とか私が1番みんなの練習を見ているので、みんなの背中をちゃんと根拠を持って押すことができたんじゃないかなと思っていて、試合前に一人ひとりに手紙を書いたんですけど、それぞれの特性とかこういうところを頑張っているんだから自信持ってやってねっていう気持ちのサポートをできたんじゃないかなと思います。
――女子選手は今回全員良い泳ぎをしたと思いますが、あえて1人、今大会素晴らしかった選手を挙げるとしたらどなたですか
2年生の松浦優美奈(人2=沖縄・開邦)という200メートルの平泳ぎに出場した選手です。約3秒ベストを出してくれて、今年ちょっと2ブレの女子が速くて決勝には乗らなかったんですけど、例年であれば決勝に残れるタイムまであげてくれたので。昨年はただ出ただけで得点もとれていなかった選手なんですけど、そういう選手が例年であれば決勝ラインのところで、得点を大きく稼いでくれたのでそこがチームに勢いも与えましたし、自粛で練習ができない期間もあった中で3秒もベストなんて素晴らしいなと思います。
――チームにも良い影響があったと?
それがあったから3日目みんなノリに乗ったんじゃないかなと。女子のリレーもそうですけど、決勝でもタイムや順位を上げてくれた女子選手が多かったので、それも影響しているんじゃないかと思います。
「雰囲気を明るくして勝ちにいく」
――例年と比べて様々な制約があったと思いますが、マネジャーとしてはどんなところが大変でしたか
マネジャーが全日入れるわけじゃなくて、チームの中で限られた人しか入らなかったので、例年であれば人数が足りているのでまわせている業務を、少ない人数でカバーしていくというのがすごく大変であり、連絡を取ることが大事だなという感じのことも学びました。
――会場内の移動などがかなりあったんでしょうか
そうですね、ビデオを撮影するんですけどそのSDをスタンドからプールサイドまで運ばないといけなくて、それをダッシュでやったり。選手じゃないサポートの人たちにも協力してもらって、マネジャーだけでなく。そういった面でもチームとして戦えたかなと感じています。
――そういった制約があるからこそ気をつけていたことや、今までの経験をふまえて今年はこうしようと考えていたことはありますか
いちマネジャーとして選手が最高のパフォーマンスを発揮できるような雰囲気を作るであったり、アップの対応であったり、技術の面でもサポートするというのはもちろんなんですけど、それ以上に…昨年が少し雰囲気が悪かったんですよ、それも仕事ができなかったからただ怒る、みたいな。それってやっぱり試合、戦いに勝ちに行っているのにマネジャー勢が雰囲気悪くなったら終わりだと思ったので、雰囲気をとにかく大切にすることを心がけていて、もし下級生のサポートが困っていたらそこは自分なりに優しくカバーするであったり、少し違うような行動をしていたら優しく注意するであったり、何よりも明るい雰囲気というのを保ちながら円滑にまわすことを心がけていました。
――昨年はチームも苦戦していた部分がありましたが、マネジャーもそれに引きずられていたのでしょうか
去年は結構マネジャーもマネジャーの仕事を徹底するという感じで、全て競技を円滑に進めるためという風に業務に集中しすぎていて。それを今年はうまく変えてカバーできたのかなと思っていて、悩んでいたり落ち込んでいる選手がいたら、「次だよ」とか「次頑張ろうね」という風に声をかけたりしていました。落ち込んでいる選手がいると、周りも気を遣う感じになってしまってあまり良くないので。円滑にまわすことも業務的にすごく大事なんですが、それよりも雰囲気、声かけをと。私は点をとれない主将でみんなの気持ちを押すことしかできなかったので、より「おめでとう」だったり、「あともうちょっとだったね」というプラスの声かけをして、雰囲気を明るくして勝ちにいくということを心がけていました。
――先ほどの質問と少し被ってしまうかもしれませんが、インカレの期間中に1番印象に残っている出来事や種目はなんですか
先ほども言った通り、松浦優美奈の2ブレのレースですね。泳ぎ終わった後に組で1番だったんですよ。それで水面叩いて小さくガッツポーズをしていた姿がすごく印象的で、「本当に頑張ってよかったね、おめでとう」という風に自分のレースじゃなかったんですけど、自分のことのように嬉しかったです。
――200メートル平泳ぎは最終日でしたが、会場にも入れていたんですね
4年生は一応3日入れて、下級生は2日だけだったり1日だけだったり、うまく回していました。
「4年間、ちゃんとやり切ったと言える」
――4年間水泳部でマネジャーを務めて、成長したなという部分はありますか
1年生のときはマネジャーとして入部したとはいえ、私も高校まではスポーツをやっていたので、基本的には自分が自分がというタイプだったと思うんですよ。だから何が人のためかとか自分ってそもそも必要なのか、とか選手ってマネジャーいなくても速くなるんじゃないかなとか考えていたんですよ。でも、みんなすごい練習を頑張っていて、顔を真っ赤にして取り組んでいる姿を見たら、自分もその人たちに尽くしたいという気持ちが芽生えて、この人たちのためになるならどんなことでもしようっていうスタンスにまず変わって。朝とか4時半とかに起きてすごく早かったんですけど、それも全然苦痛じゃなくなっていて、選手が目標を達成する度に自分のことのように嬉しかったですし、選手が自分に感謝してくれるというのもあって、人に尽くすって本当に喜ばしい、楽しいことだなと心から思えるようになったという点が成長したことだと思います。
部旗に『尽くす』という言葉を刻んだ
――4時半に起きる生活というのは全然想像つかないのですが、もともと早起きは得意だったのでしょうか
そうですね、でも週3で4時半に起きるのは次元が違うと思うんですよ、早起きが得意っていう人でも。私はキャンパスが早稲田だったので、朝は練習をしに所沢に行って、昼は勉強をしに早稲田に行って、また午後練をしに所沢に戻って、みたいな。家は別に西武線でもなかったので、移動とかすごく大変だったんですけど、そういった大変なこともあるけど、それ以上に楽しかったのでやることができたんだなと思います。
――選手の中にはマネジャーさんの姿を見て、人のためにという気持ちが芽生えたという方々も多いです
でもマネジャーも選手と同じですよ、多分。人のために、と考えるようになったというか。そのレベルが上がるとかですかね、はっきりわからないですけど(笑)
――マネジャーの忙しく大変な活動を4年間続けられた原動力はなんだと思いますか
先ほども言ったんですけど、まず目の前で本当に頑張るみんながいて、それを見たら自分もサポートとして精一杯頑張りたいという風に思えて、選手が苦しんでいる習慣も1番見ているので、そういった選手が半年後か1年後かわからないですけど成長した姿を見るのが、1番嬉しいですね。具体的な選手ですと、簑田選手(圭太、スポ2=大阪・太成学院大高)がちょっと去年の冬あたりは調子が上がらないと悩んでいたのが印象に残っているんですけど、それを自分なりに努力して頑張った成果が出て、今年のインカレではベストを連発してリレーでも大活躍だったので、そういった選手の成長を見るときに1番サポートして良かったな、1番近くで見ていて良かったなという風に思いましたね。
――選手層がある程度厚いということで、そういう瞬間に立ち会えることも多いのではないかと思います
早稲田はレベルの高い選手が多いので、そういった選手の苦しい瞬間だったり、頑張っている瞬間だったり、そういうどんなときも近くで見てきたから、良い結果が出たときはめちゃくちゃ嬉しいし、あんまり良くない結果が出たときは自分も悔しいし、という感じですかね。
――今季は活動できない期間もあり大変だったと思いますが、どんなシーズンになりましたか
今季というか4年間含めて、ちゃんとやり切ったと言えるかなという風に思っています。ちゃんと目標も達成しましたし、女子主将として何ができたかというのが、あんまりよく分かっていなかったんですけど、意外と終わった後に色んな人からゆかりさんが女子主将で良かったですって言葉をかけてもらったり、女子選手から1〜3位に入った選手だけがもらえるパチャポっていうぬいぐるみにサインを書いたものをもらって、そういうのを含めて順位もそうですし、女子主将としての活動も満足いくくらいやり切れたかなと思えるし、3年半ちゃんと逃げずに毎日練習にも行っていたので、やり切ったと思える活動でした。
――ありがとうございました!
(取材・編集 青柳香穂)
◆小峯 由香梨(こみね・ゆかり)
埼玉・早大本庄高出身。 社会科学部4年。マネジャーながら2019―2020年シーズンは女子部主将に就任。チームのメンバーをサポートし、女子総合6位という好成績につなげました。
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