【連載】『インカレ直前特集』 第3回 池江毅隼×伊東隼汰×村上雅弥

競泳

 今回は、池江毅隼(スポ3=東京・日大豊山)、伊東隼汰(社1=東京・早大学院)、村上雅弥(スポ1=香川・坂出)というスプリント種目が専門の3選手にお話を伺った。短い距離の中で最大限のパフォーマンスを出すため、普段から取り組んでいることとはーー。日本学生選手権(インカレ)への意気込みなどを含め、思いを話していただいた。

※この取材は8月20日に行われたものです。

「自分の目の前にあるレースに集中できるようになった」(池江)

後輩からアドバイスをもらうこともあるという池江

――伊東さん、村上さんは学校には慣れましたか

伊東 慣れましたね。

村上 慣れました。でも本キャンパスに行ってないので、ワセダに通っている実感はないです(笑)。

――テストの手応えはいかがでしたか

村上 僕は先輩方からしっかりと情報を聞いていたのでそんなに困ることもなくスムーズにいけたと思います。

池江 たぶん大丈夫だと思います。

伊東 僕駄目っすね(笑)。

一同 (笑)。

――ワセダに進学した経緯を教えてください

村上 僕自体はスポーツ推薦で、高校2年生の春から声をかけていただいてて、最後3年生の4月には返事をしたような感じですね。最初は先輩の中村克さん(平成28スポ卒=現イトマン東進)の印象が強くて、大学がワセダということで、1番に考えました。他の大学も見に行く中で、練習の雰囲気とか環境とか、あとは奥野監督(奥野景介総監督、昭63教卒=広島・瀬戸内)は監督だけでなくて教授としても尊敬している方なので、それもあって選びました。

池江 僕はネームバリューという面が大きかったですね。

伊東 僕は(早大)学院なので、中学からワセダです。

――昔から水泳をやっていたのでしょうか

伊東  僕は小学5年生の時に1回水泳をやめてて。そこから受験勉強して、もう続けるつもりはなかったんですけど、中学に入って今のコーチに遊びに来いよと言われて、そこで行って、また今まで続けているという感じですね(笑)。

――アジア大会では幌村さんがメダルを取りましたが、何か連絡は来ましたか

池江 特になかったよね(笑)。

村上 テレビの前でみんなで見てましたね。

――先日のパンパシフィック選手権を観に行かれたそうですが

池江 そうですね、この3人で行きました。

村上 やっぱり日本代表の選手もすごいなと思ったんですけど、アメリカチームなど、体も大きくてパワーで押し切れるような選手も間近で見れて、日本人はその面で劣っているなというのは感じましたね。逆にその分、技術で補っていることも知れて、いい経験になりました。

――他に何か驚いたことなどはありましたか

伊東 やっぱり会場の雰囲気が違いましたね。日本選手権でもやっぱり歓声はありますけど、国際大会になってくると歓声の大きさが全然違いましたね。

――オフの日にはどんなことをして過ごしていますか

村上 あー、ほぼ寮で過ごしていますね(笑)。他の部活ともオフの時がかぶらないことが多いので、あまり遊べないなというのはありますね。高校時代仲良かった友達は香川で浪人していたりするので(笑)。

――上京してきて東京観光などはしましたか

村上 この前、パンパシ行く前に(池江)毅隼さんに銀座に連れて行ってもらいました(笑)。

池江 懐かしいな(笑)。

村上 ちょっとお上品なところに行ってきましたね。街並みとかも、人の層とかも全然違いました(笑)。

――池江さんはオフの日とかは何をしますか

池江 僕は実家が東京なので、実家に帰って家族とご飯を食べたりだとか、他の部活の友達と飲みに行ったりしますね。

――伊東さんはいかがですか

伊東 僕は今スプラトゥーンにはまっていまして・・

一同 (笑)。

伊東 いや、あれちょー楽しいんですよ(笑)。ただ、ゲームして寝てるとすごい1日を無駄にした感じにはなりますね。だから午後は散歩するとか、他に何かをしたってことにしないと、1日終わって夜を迎えた時に、俺は一体何をしたんだっていう(笑)。

池江 友達と遊びにいったりしないの?

伊東 友達、、、いないから(笑)。学院の友達はいますけど、他にはあんまり。次の話にいきましょう(笑)。

「(世界ジュニア選手権の経験は)刺激になった(伊東)

春の日本選手権では、あと一歩で決勝というところまで進んだ伊東

――では春シーズンを振り返っていきたいと思います。池江さんは50メートル、100メートルのバタフライに主に出場されましたが、どういうところに目標を定めていましたか

池江 僕は基本的にレースになると不安が大きくて、後半バテたらどうしようとか考えてしまうので、あんまり自分がどうしなきゃいけないかということを考えられずにいたんですけど、ワセダのスポ科(スポーツ科学部)って、メンタルトレーナーの先生もいらっしゃって、そういう方と面談して、自分が何をしなきゃいけないのかなどに気づかせてもらいました。そういう機会もあって、しっかり自分の目の前にあるレースに集中できるようになったのが今年の春からかなと思います。

――村上さんは、ジャパンオープンの50メートル自由形がベストに近いタイムでしたが、感覚とタイムは一致していましたか

村上 そうですね、あの時は泳ぎを変えていて、今まではテンポ型というか、かいてかいてスピードを上げるような泳ぎをしていたんですけど、そこからストロークを伸ばすような泳ぎ方に変えていた中の試合でした。すごい伸びよく泳げて、今までの4番目くらいのタイムで泳げたので、あのレースは自分の中で一つレベルアップできた試合かなと思います。高校1年生の時から50メートル自由形でベストが出ていない状況なので、5月のあの時期にあのタイムを出せたのは少し自信にもなりました。

――今年から小島毅コーチに指導を受けるようになって、今までのメニューなどと違いは感じていますか

池江 だいぶ違いますね。スプリントチームなので50、100メートルの選手が多いんですけど、200メートルとか400メートルとか泳ぐ選手とそんなに変わらない距離とかを泳いで、やっぱりメンタル面とかでも、小島さんのケアはすごいなと感じます。

――けっこうお話しはされますか

村上 そうですね。常に選手のことを考えてくれて、次の試合に向けてどういうふうに練習していくかとか、予定を立ててくださるので、本当にすごい方ですね。

池江 あとは個人に合わせて、ここはやらなくていいとかそういうことが多いですね。個人個人で体力差があるので、助かります。小島さんは、駄目な時でもプラスに捉えてくれることが多いですね。「大丈夫だよ」みたいな。

村上 小島さんは、自分の弱点を自分で見つけられるような選手になってほしいというような考え方なので、逆に自分が悪いところというのを自分で気づかないと駄目なので、そういうところは逆に難しいですね。

――伊東さんは、去年の世界ジュニア選手権に出場されましたが、その時の経験は現在にどう生きていますか

伊東 世界ジュニアは良い意味でも悪い意味でも刺激をもらいましたね。個人的にはあの後に、泳ぎなどを変えたんですね。そうしたらハマってしまって、過去一番くらいの低調ぶりになりまして、そこでいろいろ考えることもあったんですけど、それでいろいろ変えてみて、腹をくくれた部分はあったかなと思います。

――そんな中で、日本選手権の100メートル自由形では、あと一歩で決勝というところでしたが、振り返っていかがですか

伊東 あれは、練習の感覚は良かったんですけど、練習のための練習をしていたということに気づかされたレースでしたね。練習タイムがいくら速くても、レースに生かせる泳ぎができなかったら駄目、というすごい大切なことに気づかされたレースでした。ベストタイムではなかったので、個人的に良かったとはいえないですが、収穫もあった試合でした。

――早慶戦はいかがでしたか

村上 応援がすごいというのは感じました。あと、早慶2校しかいないのに辰巳(国際水泳場)を貸し切って泳げたことは、改めてワセダの重みを感じましたね。あとは、人数が少ない大会なので、レースもしやすいなと感じました。

池江 水球が楽しかったですね。普段同じ寮で生活していても、お互いに何をやっているかよくわかっていないので、頑張っている姿を見ると刺激を受けます。

――伊東さんは高校時代から出場されていたと思いますが、高校と大学では変化はありましたか

伊東 大学生は応援してくれるんですね。高校生は応援されないんですよ(笑)。それは仕方ないことなんですけど、あくまでも大学メインの試合なので、大学生になって応援されると、またちょっと違った景色が楽しめました。

「自分がどれだけ大学生の中で通用するのか挑戦したい」(村上)

インカレでは自己ベスト更新を狙う村上

――自分の泳ぎの中で、他の人と比べて強みにしている部分はどこですか

伊東 言います?それ自分で(笑)。

池江 いいじゃん(笑)。

伊東 一つは、呼吸は人と違うかなと思いますね。それが大きいです。基本的に口は半分以上出さないですね。

村上 (伊東)隼汰って息継ぎしてるかわからないくらいだよね。

池江 えー、そうなんだ。水入ってこないの?

伊東 入ってくるんですけど、そこは割り切って(笑)。

――池江さんはいかがですか

池江 僕は、そんなに強みはないんですけど、見ての通り筋肉量が多くて(笑)。エネルギー消費量は誰よりも多いですね。進んでいるかは別にして(笑)。

一同 (笑)。

池江 すぐにバテますね。

――村上さんはいかがですか

村上 僕は腕を回す回転が他の人より速いところですかね。今はそれを出さずに速くなろうとやっているのですが、後々はストロークを伸ばして、テンポを上げてというようなやり方にすると思います。なのでストロークの速さは強みです。

――練習において、高校時代と1番異なるところはどこですか

村上 スイミング練習だと、施設が25メートルプールで、水深も1メートルくらいですし、平泳ぎの選手の後ろでクロールを泳いだりするので、あんまり自分にあった練習をできていませんでした。でもこっちに来て、種目ごとに分かれて練習できているので、今まで体験できなかったものができていますね。

池江 環境はいいですね。

伊東 そうですね。短水路にはそのいいところもあるんですけど、やっぱり長水路でしか練習できないこともあるので。

――池江さんは、上級生になることで部を見る目線などは変わりましたか

池江 そうですね。後輩が純粋に可愛いですね。

村上、伊東 あざっす(笑)。

――日本代表の選手と練習できていることについてはいかがですか

村上 練習を見に来た時は、聖人さん(坂井、平成30スポ卒=現セイコー)や一平さん(渡辺、スポ4=大分・佐伯鶴城)といった代表の選手は遠い存在に感じていたんですけど、一緒に練習する中で同じ学生なんだと親しみが湧きましたね。練習の様子などを見れることで、自分の意識は変わりましたね。

――クラブでの練習と学校での練習では、どういった部分が異なりますか

伊東 仲間がいる中で練習して競い合えるのは、やっぱり力が出ますね。いつものもう少し先まで力を出せる環境が、学校にはあると思います。

――1年生同士のコミュニケーションはいかがですか

村上 いい感じですね。一人一人の個性も強くて(笑)。練習前の準備の時は、田中航希(スポ1=埼玉・春日部共栄)がアイディアを出してくれたり、古畑(海生、スポ1=兵庫・市川)が場を和ませてくれたりだとか。

――池江さんは、先ほど筋肉の量が多いという話がありましたが、食べる量も多いのでしょうか

池江 それがけっこう少ないんですよね(笑)。

伊東 そうなんすか?

池江 少食って言われますね。筋量にあった食事量ではないからエネルギー切れすることも最近気づいたので(笑)。無理して食べる量は増やしてます。今更なんですけど(笑)。

――部内では誰がたくさん食べるのでしょうか

池江 渡辺一平さんですね。あの人はレベルが違います(笑)。

先輩後輩問わず、互いに刺激を与え合う仲だ

――ではインカレに向けてお話を伺います。今のコンディションはいかがですか

村上 体の疲労は完全に取りきれていないんですけど、水の感覚がよくなってきていると思っていて、あとは筋肉のキレですね。朝からも動かせる体になってきているので、本当に自分の中ではインカレでベストが出るようにしていきたいです。

池江 まだ良くなくて、不安な部分はあるんですけど、SP(スプリント)で練習している(伊東)隼汰や(村上)雅弥や小島さん(毅コーチ)とかの存在のおかげで、なんとかなるだろうと思ってます。

一同 (笑)。

池江 この二人(伊東、村上)がけっこう水泳オタクで、水泳のこととか教えてくれて、奥深さとか面白さとかにも改めて気づかされることも多くて助かってます。

伊東 恥ずかしいですね(笑)。

池江 本当に研究熱心で、後輩ながらに尊敬していますね。

伊東 僕はまだ2週間前までは、最後の追い込み期間だと思っていて、残りの期間でコンディションを作っていくものだと思っています。それまではいくら疲労があってもよくて、そこから徐々に切り替えて、パフォーマンスを上げるために練習していきますね。今は筋肉痛がすごいです(笑)。

――1年生は初のインカレですが、今はどんな心境ですか

伊東 複雑な感じですね。楽しみであるとかちょっとした心配もありますけど、だからこそいいパフォーマンスもできると思うので、そのいろんな感情を含め、まあ楽しみです。

村上 まだ実感が湧かなくて、どういうものかわからない状態で乗り込んでいくのは怖さもあります。でもチャレンジャーという気持ちで臨めるので、チームに貢献したいので緊張もあるんですけど、自分がどれだけ大学生の中で通用するのか挑戦したいです。

――池江さんは去年のインカレで印象に残っているレースはありますか

  

池江 特に自分のレースではないですね(笑)。リレーと個人に出させていただいたんですけど両方駄目で、個人に加えてリレーでも駄目だったのはふがいなかったですね。

――インカレではリレーの勝敗がポイントに大きく関わってきますが、みなさんリレーは好きですか

村上 好きですね。中学生の時にフリーリレー、メドレーリレーともに全中(全国中学校水泳競技大会)で優勝することができたんですけど、その時にリレーの面白さというのを感じましたね。

伊東 やっぱりアンカーとかだと火事場のバカ力というか、いつも以上の力が出るので楽しいですね。

――インカレではどの種目に出場しますか

村上 50メートルと100メートルの自由形です。

池江 50の自由形と100のバタフライです。

伊東 50、100の自由形とメドレーリレーと400メートルフリーリレーですね。

――インカレだけではなく、長い目でみた今度の目標を教えてください

村上 やっぱりオリンピック選手を見ているので、オリンピックという舞台には魅力を感じますが、まずは日本選手権のためにも、インカレという舞台で優勝できるよう頑張りたいです。

池江 何秒出したいとか、この試合に出場したいというのはないんですけど、一年後の引退の時に、水泳楽しかったなと思えるようにしたくて。そのためにはベストとか出したり、記録を残さないとだなと思っていて、あと一年と少しですけど頑張りたいなと思っています。

伊東 人に言うとあれなんで、とにかく頑張ります(笑)。

――最後になりますが、インカレに向けて意気込みをお願いします

村上 もう単純にベストを出せるように、あとは楽しめるようにしたいと思います。

池江 僕は闘争心を持ってインカレに臨んでいきたいと思います。

伊東 インカレの面白さといったそういうものを体験したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 大島悠輔)

短距離種目を制し、ワセダに勢いをもたらします!

◆池江毅隼(いけえ・たけはや)(※写真中央)

1997(平9)年4月13日生まれ。175センチ。78キロ。O型。東京・日大豊山高出身。スポーツ科学部3年。普段から、日本代表で活躍する妹の璃花子さんと連絡を取り合っているという池江選手。好調な璃花子さんからもパワーをもらい、インカレでは会心のレースを期待しています!

◆伊東隼汰(いとう・はやた)(※写真右)

1999(平11)年7月5日生まれ。188センチ。79キロ。B型。東京・早大学院高出身。社会科学部1年。普段はクラブで練習をしているという伊東選手。自らの息継ぎについてのお話のときには、どのように呼吸しているのかその場で実演してくれた伊東選手。持ち味を生かしてインカレでも活躍してくれるでしょう!

◆村上雅弥(むらかみ・まさや)(※写真左)

1999(平11)年9月4日生まれ。177センチ。67キロ。AB型。香川・坂出高出身。スポーツ科学部1年。普段から水泳について研究熱心だという村上選手。対談では1年生ながら、とても丁寧に受け答えをしてくださいました。初めてとなるインカレの舞台ですが、きっと自己ベストを更新してくれるでしょう!