新戦力がチームに加わり迎えた第25回東京六大学春季対抗戦(春六)。日本選手権から一週間後と万全な状態でない選手が多い中で、坂井聖人(スポ4=福岡・柳川)、渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)の世界選手権内定組や惜しくも世界選手権出場を逃した渡部香生子(スポ3=東京・武蔵野)などが圧巻の泳ぎを見せ、男女ともに2位。9月の日本学生選手権(インカレ)へ向け、地力の高さを示した大会となった。
男子は1年生から4年生まで幅広く活躍した。坂井聖人(スポ4=福岡・柳川)が11レース、渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)が10レースと半分以上のレースに出場。「11レースも泳いだのは初めてだったのでしんどかった」と全レース終了後に振り返った坂井だったが男子200メートル背泳ぎや男子1500メートル自由形を含む6種目で優勝。渡辺も男子100メートル個人メドレーなど5種目で優勝。得意種目のみにに出場する選手が多い中でのきょうの結果には手ごたえを感じたようだ。そんな上級生の活躍に下級生も刺激を受けた。日本選手権では表彰台を逃した竹内智哉(スポ1=神奈川・湘南工大付)が200メートル、400メートルの個人メドレーで渡辺らを抑えての優勝。ワセダの層の厚さを知らしめた。総合成績ではわずか3点差で明大に敗れ、2位。「総合力で負けたということなので、インカレではこんなことがないようにチーム力の底上げをしていきたい」と阿久津直希主将(スポ4=埼玉栄)はインカレでのリベンジを誓った。
二つの個人メドレーで優勝した竹内
一方、女子部は上級生の奮起が目立った。初めに行われた女子400メートルメドレーリレーには、山口真旺女子主将(スポ4=兵庫・須磨学園)、渡部、志賀珠理奈(スポ3=埼玉・武南)、伊藤愛実(社3=東京・早実)が登場。渡辺の平泳ぎでトップに躍り出ると、そのまま逃げ切り、幸先のよいスタートを切った。女子主将として最上級生としてチームを引っ張る山口は、けがあけの不安を感じさせない泳ぎで、背泳ぎの3種目で見事に優勝を果たした。また、1月の六大学冬季対抗戦をけがで欠場し、1レース1レースを大事にすることを意識していた渡部。出場した全種目で見事に優勝、女子50メートル自由形、女子100メートル平泳ぎでは大会新記録を樹立。楽しんでレースに臨む姿勢は昨年からの復調を感じさせた。3年生・4年生が安定した活躍を見せるも法大に敗れ、男子と同じく2位でこの大会を終えた。
この大会で最優秀選手賞に選ばれた坂井
春六に臨んだ各選手はそろって『チームのために』という言葉を口にした。本来競泳は個人競技。いかに他の選手・以前の自分より速いタイムをたたき出すかという競技である。しかし、この春六やインカレはそれだけではない。チーム一丸となって補い合って戦う。応援やマネージャーなどさまざまなかたちでチームを献身的に支える姿勢が求められる。「みんなで団結してみんなで同じ方向を向いてやっていきたい」。(阿久津)その先には素晴らしい結果が待っている。
新体制での活躍に期待が高まる
(記事 石田耕大 写真 大谷望桜、大島悠輔、吉田安祐香)
結果
総合成績
▽男子 2位 ▽女子 2位
個人各賞
最優秀選手賞 坂井聖人 優秀選手賞 渡辺一平 優秀選手賞 渡部香生子
コメント
阿久津直希主将(スポ4=埼玉栄)
――きょうのレースを振り返って
個人の結果としては3種目ともよくなかったです。
――どのあたりがよくなかったですか
チームとしては優勝を目標としてやっていたので、個人としての目標設定が上手くいってなくてどれもイマイチな結果になってしまった。
――個人的に力を入れてやってきた種目はありますか
200メートルの自由形に関してはまだジャパンオープンの記録を突破してないので、突破するためにスピードに力を入れてやってたんですけど、スピードがまだ活かせてなくて、あまりよくなかった。
――チームとして力を入れてきたこと
チームとしては、雰囲気をよくしていこうってことで、練習中も声を出したりとか日本選手権が先週まであって疲れているところでもあるんですけど、集中力切らさないようにみんなでこの大会頑張ろうって感じで頑張りました。
――3点差で2位という結果になりましたが
誰が悪いとかじゃなくて総合力で負けたってことなので、結果を受け止めてインカレ(日本学生選手権)では2点差、3点差で負けるようなことがないようにチーム力の底上げをしていきたいです。
――一年生が入ってきましたが、一年生の雰囲気は
一年生はまだ入ってきて、本格的に試合が始まってから一週間、二週間なんですけど、上級生もなじみやすいような雰囲気を作って楽しく盛り上がってやろうって感じなので、一年生も四年生と話す機会なんかも多いです。
――新しいチームをどうしていきたいか
9月に代が変わってから3月まで一年生がいなくて、一年生が入ってようやくチームの人数がそろったので、もっと大所帯になるんですけど、みんなで団結してみんなで同じ方向向いてやっていきたいです。
――インカレに向けての意気込み
インカレに向けてチーム一人一人が活躍できるようにそれぞれで練習していって総合3位という目標を達成できるように上級生としてもチームを引っ張っていけるように頑張ります。
山口真旺女子主将(スポ4=兵庫・須磨学園)
―― きょうの種目の中で、特に力を入れたのはありましたか
力を入れるというよりも、私は1番を取ることが重要だと考えていました。ケガの影響もあって優勝できるか不安だったんですけど、そこは意地でも頑張らないとなと思いました。
――きょうの収穫は何でしたか
日本選手権よりも泳げてるので、足は回復してきてると思います。ちょっと安心したので、来月のジャパンオープンも自信を持って臨めるかなと思います。
――女子主将として、どういうチームを作っていきたいですか
女子は普段学外練習なので、まとまることは少ないんですけど、インカレとかもきょうのように盛り上がって、チーム感を出したいです。みんなが応援し合えるようなチームを目指したいです。
――新入生が入学してきたこの時期、チームの雰囲気はどうですか
レベルの高い選手がいるので、レベルの低い選手はそれに追いつこうとしてますし、練習でも隣のレーンの人と競うなどしています。レベルの高い選手が、いい刺激になってると思います。
――ご自身ではジャパンオープンまでに何を強化したいですか
私はスタートが課題なので、しっかり練習をと思ってます。
――最後に全体の振り返りをお願いします
チーム目標は達成できなかったんですけど、収穫はあったと思います。ただ、女子は早稲田基準を切れてない選手も多くいるので、みんなで高めあいながら、多くの人が基準を突破した状態で、インカレに臨みたいなと思ってます。
坂井聖人(スポ4=福岡・柳川)※囲み取材より抜粋
――きょうのレースを全て終えていかがですか
そうですね、とてもタフなレースでした。11レースというのは今までないですね。初めてこんなに泳ぎました。最初はいけるかどうか不安だったんですが、いい経験になりました。冬の六大学で既に9レースは経験していたので、それにリレーを2つプラスするかたちでやりましたが、相当身体はしんどかったです。
――選手権の決勝と今大会とではどちらがよりハードでしたか
きょうの方がキツイです。選手権の決勝はその次にまだ泳げるくらいの身体ができていました。きょうはダウンしても全然疲労が取れないので、相当キツかったですね。
――そんな中で最後1500メートル自由形を泳ぎきっていました
正直に言うと、1500メートル自由形はもう諦めようと思っていました。でもやはり、チームに貢献したいという思いがあって、最低でも1位をとって、ワセダにいい流れを作ることができたらと思っていたので、それは達成できました。
――最後の400メートルフリーリレーの前は口が「やばいやばい!」と動いてましたね(笑)
動いてましたか!他に言葉がなくて…(笑)。タイムはとても遅いですが、今後インカレでも4強とかに入ってくるので、それに向けてはいいトレーニングになったと思います。
――では今回は試合というよりはトレーニングという意識で臨まれたということでしょうか
そうですね。今回は試合と思わずに、ただの練習だと思って臨みました。
――きょうを通して見えてきた課題などはありますか
最低限自分のスタイルとして目標を立てていたものが達成できました。すごく調子がよいとは言えませんが、いいかたちで締めくくることができたので、今後につながるレースだったと思います。
――200メートルバタフライでご自身が立てた目標とはなんですか
まず優勝ということと、最低でも52秒台前半は出したいと思っていました。100メートルバタフライは相当しんどくなった後だったので、よくいけば51秒台が出たらいいなくらいに思っていたら、51秒78でした。今後につながるレースができました。
――渡辺一平選手は「身体よりも精神的に疲れた」と仰ってました
本当ですか!僕はもう身体ですね。確かに精神的にもキツかったですけど。精神よりも先に肉体の方に疲れが出てしまって、いかにダウンの時間にそれをとれるかという練習として、きょうはやっていました。今回学んだことをふまえてこれからもやっていきたいと思います。
――その疲れが200メートルバタフライでのラストにきたということでしょうか
はい。とてもつながっていると思います。ラスト接戦でいい感じで来ていたので、僕も力を振り絞って気合いでやっいました。
――レースを終えて一番の収穫を教えてください
意外とバックが調子良かったです。インカレの400メートルメドレーリレーでは僕が背泳ぎを泳ぐことになりそうなので、きょうはいいかたちで終えることができました。自由形は持久力が大分ついてきて、200メートルバタフライの後半につながるようになってきているので、そこも今後もう少し色々考えながらトレーニングに臨みたいです。
渡辺一平(スポ3=大分・佐伯鶴城)※囲み取材より抜粋
――きょうは何レース泳いだのでしょうか
リレーも含めて10レースです。
――日本選手権から1週間しか経ってませんが、このタフな1日はいかがでしたか
この1週間は代表合宿とかもあって、身体的には万全な状態ではないんですけど、調整した日本選手権の後ということで、コンディション的にはある程度高いところにあると思います。きょうは身体よりも気持ちの方がキツかったと思います。
――途中しんどそうな表情も見えましたけど
もちろん負けるのは嫌いなんで、全力を尽くそうと思っていました。でも身体がきつい中でのレースも今、すごく楽しめてるかなと思ってます。
――きょう特に大事にしてる種目とかありましたか
特に大事にしてた種目とかは無いんですけど、ブレストは余力を残して泳いだ中で、その割には結構タイム的に良くて、50メートルで初めて26秒も出ました。ブレはすごいいい泳ぎができてるんじゃないかと思います。
――きついレースをこなしていく上で、どういう所に気をつけていますか
身体の疲れも抜けてないですが、その中でなんで頑張れているかっていうのは、やっぱりチームのためを思ってです。いろんな人に応援してもらってますし、期待もしてもらっているので、こういうチーム対抗戦というのはなかなか無いので、こういう機会を楽しみたいなという気持ちはあります。いい雰囲気の中でいいレースができたと思います。
――専門以外の種目に出ることで、平泳ぎにいい影響はありますか
もちろん自由形を泳ぐのも楽しいですし、キツイっていつのもあるんですけど、平泳ぎを泳いでる時が水泳している中で楽しい瞬間なんだというのを思い起こさせます。
――監督からは何か言われましたか
50メートル平泳ぎでベストが出たことについては、褒めてもらいましたし、僕自身監督からは気に入られてると思っているので、怒られるとかは無いですね。
――日本選手権を振り返って
悔しい大会だったとも言えるんですけど、それ以上に課題を明確にすることができました。200メートル平泳ぎでも、前半からいくというのを実践できたので、そこは良かったです。うまく自己ベストを更新しにいった小関さんと、課題を見つけようとした僕っていうイメージなので、負けたレースの後でも、清々しさはありました。