水泳部にとって2017年の幕開けとなったアリーナ杯東京六大学冬季対抗戦(冬六)。新体制になってから初めて臨んだ対抗戦で、男子部は2年ぶりの総合優勝を果たした。前年覇者として臨んだ女子部は惜しくも2位に終わったが、日本選手権やジャパンオープンの参加標準記録を突破した選手も多く、冬のトレーニングの成果を出せた一戦となった。
昨年、リオ五輪で多くの経験を積んだ二人がことしも大活躍の予感だ。最高学年となった坂井聖人(スポ3=福岡・柳川)は9種目に出場。レース間隔が短く厳しい状況の中、専門種目のバタフライを中心に男子200メートル背泳ぎなどでも1位に輝き、多くの点数を稼ぐ。一方、平泳ぎを専門とする渡辺一平(スポ2=大分・佐伯鶴城)は、50メートル、100メートル、200メートルの全てで大会新記録を樹立。最優秀選手賞に輝く活躍でチームに大きく貢献した。そんな二人の活躍に引っ張られるように、他の選手も結果を残す。大芦知央(スポ1=大阪・関大北陽)が男子100メートル背泳ぎで、また試合後のチャレンジレースでは池江毅隼(スポ1=東京・日大豊山)が男子50メートルバタフライで日本選手権の参加標準記録を突破。各々が冬のトレーニングの成果を発揮した早大は、明大との熾烈(しれつ)な争いを制し、2点差で総合優勝に輝いた。
3つもの大会新記録をたたき出した渡辺
一方の女子部は、少ない人数ながらも一人一人の活躍が光った。大きな原動力となったのは伊藤愛実(社2=東京・早実)。この日最初の種目である女子400メートル自由形でベストタイムに近い記録を残すと、続く2種目も確実に泳ぎ切り、女子優秀選手賞を受賞した。山口真旺女子主将(スポ3=兵庫・須磨学園)は5種目に出場。「専門の背泳ぎでは全部優勝できたのでそこはよかったかなと思っています。」と振り返ったように、着実に得点を積み重ねた。また志賀珠理奈(スポ2=埼玉・武南)も6種目に出場する厳しい状況の中、安定した泳ぎでチームをけん引。惜しくも総合優勝は逃したが、チーム全員で戦えた一戦となった。
OB会長賞を獲得した川畑
新体制として初めての対抗戦。目立ったのはチームの雰囲気の良さだった。今回けがの影響で出場の叶わなかった渡部香生子(スポ2=東京・武蔵野)は、応援でチームを盛り上げた。「多分応援がなかったら僕自身心が折れていたと思う。うれしかった」(渡辺)と語るように、選手の数が少なく一人一人の種目数が多くなってしまう早大には、仲間の応援が不可欠だ。全員で切磋琢磨(せっさたくま)しながらさらに強くなっていく水泳部を予感させる大会となった。
集合写真
(記事 吉田優、写真 大谷望桜、佐藤慎太郎、杉野利恵)
結果
総合成績
▽男子 優勝
▽女子 2位
個人各賞
最優秀選手賞 渡辺一平
優秀賞 坂井聖人
優秀賞
OB会長賞(新人賞) 川畑志保(教1=東京・早実)
コメント
阿久津直希主将(スポ3=埼玉栄)
――きょうの試合を振り返って
きょうは坂井(聖人、スポ3=福岡・柳川)、渡辺(一平、スポ2=大分・佐伯鶴城)の頑張りがすごかったの一言につきますね。
――男子としてはチームで優勝という結果でしたが
男子としては総合優勝をもともと目標にしてやっていたので、目標達成出来た点では素直に嬉しかった。ですが、ほとんど坂井と渡辺に頼りっぱなしになってしまったのは事実なので、他の選手がもっとレベルアップして、チームで優勝をできるようになりたいと思いました。
――きょうのチーム全体の結果について
きょうは大芦(知夫、スポ1=大阪・関大北陽)や池江(毅隼、スポ1=東京・日大豊山)が日本選手権突破したり、あと3年生の坂田(匠、スポ3=新潟第一)がジャパンオープンを突破したり、みんな目標としていたタイムを切ることか出来ていたので、そこはよかったと思います。また、基準を狙ってて切れなかった人も課題を確認して、次の大会で基準を切れるように頑張っていきたいと思います。
――前回のウィンターカップにて、チームとして自由形強化を課題にあげていましたが
今回はリレーはなかったんですが、渡辺一平が自ら1500(メートル自由形)に出るって言ってくれたり、僕とか井上(奨真、スポ2=県岐阜商)も本来100メートル(自由形)は専門じゃないんですけど出ていたりとか、何人か積極的に自由形の色々な距離の種目に出ようというのはありました。
――今後の目標をチームとしてご自身としてお願いします
チームとしては、男女総合優勝です。女子は今回準優勝だったので、次は男女揃って優勝できるようにしたいです。あとは、今後また1月、2月、3月と大会があるのでそこで1人でも多く、日本選手権、ジャパンオープンの参加記録を切れるように少しでも多く参加出来るようにしたいなと思います。また、自身としては参加記録をまだ切っていないので、記録を切って日本選手権で活躍できるように頑張ります。
坂井聖人(スポ3=福岡・柳川)
――優勝おめでとうございます。この結果についてはいかがでしょうか
優勝するために僕と一平(渡辺、スポ2=大分・佐伯鶴城)で点数を稼ごうと思っていたので、優勝できたことはすごくうれしいですね。
――明大とは2点差という僅差の勝負でしたね
まさかそんなに競っているとは思っていなかったです。ですが、男子1500メートル自由形のレース前に(明大と競っている)という話を聞いていて、他もみんなはばてていると思ったので一平と二人でやるしかないと思っていました。二人で(上位を)とろうという話をして、優勝できたので結構うれしかったですね。
――男子1500メートル自由形では2位の渡辺選手と0秒36差で勝ちましたね
一平が2組目で14分50秒台で泳いでいたので、まずいと思って(笑)。さすがに先輩ですし、プライドもあるので負けられないなという気持ちで臨みました。その結果、勝てたので良いかたちで今大会を締めくくることができました。
――9種目の出場となりましたがご自身のレースを全体的に振り返っていかがですか
正直最初の4フリ(男子400メートル自由形)は体があまり動いていなくて不安もありつつだったのですが、2バック(男子200メートル背泳ぎ)や2バタ(男子200メートルバタフライ)と良い流れでいくことができたと思います。最後の男子1500メートル自由形までばてずいけたので、良いトレーニングにもなりましたし、良い感じで終わることができたと思います。
――レース間隔が短い場面もありましたが、一番きついと感じたのはどのレースでしょうか
2フリ(男子200メートル自由形)が終わってからの半バック(男子50メートル背泳ぎ)ですね。1組しかあいていなかったので、そこが一番苦しかったです。
――新チームが始動してから少し経ちましたが、きょうはチームとしていかがでしたか
最上級生になってチームを引っ張る立場になっているのですが、非常に良いかたちでいけていると思います。主将の阿久津(直希、スポ3=埼玉栄)を筆頭にチームとしても良い雰囲気でできています。今後も六大学(春季対抗戦)やインカレ(全日本学生選手権)とか色々な大会が続いていくので、団結していきたいと思います。水泳は個人種目なのですが、インカレなどでは団体戦になるので、しっかりとチームとして戦って頑張っていきたいと思います。
――最後に今年の目標や意気込みをお願いします
2017年は世界選手権があるので、そこでリオ五輪の悔しさをぶつけて金メダルをとって帰ってきたいです。
山口真旺女子主将(スポ3=兵庫・須磨学園)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
そうですね、チームとしては応援もしっかりできて、レースの数も多かったんですけどみんなしんどいとも言わずに泳げていたのでよかったかなと思います。結果としてはちょっと残念だったんですけど、その部分は春六(東京六大学春季対抗戦)で取り返すしかないかなって感じですね(笑)。
――ご自身の泳ぎについてはどう考えていますか
私自身初めての5種目で、専門の背泳ぎは全部優勝できたのでそこはよかったかなという風に思っています。でもタイムとしてはまだまだで、200(メートル背泳ぎ)は最初から日本選手権の標準記録を切っていこうと思っていたので、そこは足りていなかった部分かなと思いました。
――この大会に向けてどのような調整をしてきましたか
200(メートル背泳ぎ)の方に調整していた部分があって、調子はよかったと思うんですけど、最後はやっぱり足りてなかったのかなと思いました。
――以前この大会の目標を人数が少ないので全員で頑張ることとおっしゃっていました。その結果総合2位ということですがそれについてはどう考えていますか
渡部(香生子、スポ2=東京・武蔵野)が急きょ棄権になったので、優勝という部分は本当に厳しかったんですけど、思ったよりも接戦だったので、そこは個人が意識しながら頑張ってくれたのかなと思いますね。
――主将という立場から見て現在のチームの雰囲気はいかがですか
まだ始まったばかりでまとまりは少ないんですけど(笑)。ちょっとずつ応援とかそういう部分でまとまりが見えてきたのかなとは思います。
――今後に向けて一言お願いします
チームとしてはもっと団結して、これから個々でも伸ばしていって、インカレ(全日本学生選手権)とかでいい結果で終われるようにしたいなと思います。個人的にはしっかり結果を残してチームに貢献できるようにしたいと思います。
伊藤愛実(社2=東京・早実)
――この大会にどのような意気込みを持って挑みましたか
新年1発目の試合だったので、自分の調子を試すのと幸先の良いスタートを切れるように精一杯泳ごうと思っていました。
――きょうの調子はいかがでしたか
この試合に完璧にペーパーをかけているわけではなくて、練習の一環として出たので、絶好調というわけではなかったんですけど、年末もしっかり泳ぎ込めたので自信を持って挑めました。
――きょうは1日に多くのレースに出られましたが、その点についてはいかがですか
同期の志賀(珠理奈、スポ2=埼玉・武南)とかもたくさんの種目に出ていて、ワセダはとても人数が少ないのでレースが多くてもしっかり1本1本を集中して頑張ろうと思いました。
――女子優秀選手賞も獲得されていましたね
今回同期の渡部(香生子、スポ2=東京・武蔵野)がケガをしてしまって出れていなかった分、自分が頑張らなくちゃいけないと思っていたので、そういう賞をいただけてとてもうれしいです。励みになります。
――きょうのレースのなかで良い意味で印象に残ったレースはありますか
1種目目の400メートル自由形です。年末にあったウインターカップという試合では、いまいちなタイムでしたが、久しぶりにベストに近いタイムで泳げたので良かったかなと思います。
――課題点などは見つかりましたか
シーズンが始まってスピードをつけるような練習をしていたんですけども、それがあまりレースに生かせていなかったので、もう一度レースのビデオを見直して、今までの練習を振り返って、4月の日本選手権に向けてまた練習にしては励みたいと思います。
――次の試合への目標をお願いします
1月末の東京都選手権では200メートル自由形でベストを出します。
渡辺一平(スポ2=大分・佐伯鶴城)
――きょうのレースはどのような位置づけをして臨みましたか
あまり調整もしていなくて、強化の一環としてきょうのレース9種目にエントリーして臨みました。
――きょうのレースを振り返っていかがですか
いろんな自己ベストを更新できたりだとか、満足のいくレースも多々あったんですけど、たとえば50メートル自由形で日本選手権(の参加標準記録)を切れていないとか、100メートル自由形で明大の松本(克央)に負けているとか、100メートル平泳ぎでイエン選手(ジベイ、中国からの早稲田への一時的留学生)に負けているとか、悔しい結果もあるので、そういうのもまた何が悪かったのか見直して、次勝てるように頑張りたいと思います。
――最優秀選手賞を受賞されたことに関して、いかがでしょうか
200メートル平泳ぎは勝つだけのレースをするか、最優秀選手を取りにいくかというのはすごく迷ったんですけど、200メートル平泳ぎは2分3秒という僕としても満足のいくレースができましたし、結果として最優秀選手賞も取れたので、すごく良かったと思います。
――3種目で大会新を出されましたが
大会新という、今までの中で一番速い記録で泳げたということは、すごいうれしいですし、また来年、その僕自身の記録を塗り替えられるように頑張りたいと思います。
――男子400メートル個人メドレーでも日本選手権の参加標準記録を切られました
4個メ(男子400メートル個人メドレー)は朝イチであまり飛ばすつもりはなくて、あまり頑張ってはいないんですけど、しっかり優勝もできましたし、タイム的にはもっといけたんですけど、そんな中でもタイムは自分が思っていた以上に速かったんで、良かったんじゃないかなと思います。
――きょうは多くの種目に出場されていましたが、特に印象に残っているレースはありますか
1500メートル自由形ですかね。聖人さんに負けたのはすごい悔しいんですけど、1500メートルという自分が泳いだことない未知のレースに出場してみて、ある程度泳げるんだなっていうことに、すごい嬉しかったです。きょうは結構満足のいくような種目ばっかりだったので、良かったと思います。
――対抗戦の雰囲気はいかがでしたか
男子で総合優勝というのを掲げてこの試合に臨んだんですけど、僅差ではあったものの、僕と聖人さんたくさん出ましたし、そういうのが繋がって総合優勝できたというのは嬉しいです。来年の冬六から僕たちが最上級生という形になるので、そういう中でも、総合優勝を目標に頑張っていきたいと思います。
――仲間の声援というのもやはり力になりましたか
そうですね。きょう香生子(渡部、スポ2=東京・武蔵野)が出られなくて、ずっと応援とかもしてくれていたんですけど、多分応援がなかったら僕自身心が折れていたと思います。うれしかったです。
――ことしの目標をお聞かせください
ことしの目標というか、僕の中でスローガンを「常勝」を掲げているので、今回200メートル平泳ぎは勝ちましたけど、100メートル(平泳ぎ)と50メートル(平泳ぎ)でイエン選手に負けたりだとか、自由形で松本とか、徹さん(丸山、明大)に負けたりとかもあるので、常にどのレースに出場するにあたっても、すべて勝つ気でレースに臨むという意味を込めているので、そういうふうに思えるような練習をして、「絶対勝ってやる」というふうに思ってレースに臨んでいきたいと思っております。また、4月の選考会も絶対優勝して、代表を獲得したいと思っていますし、それからのハンガリーで行う世界水泳も、「常勝」の一環として優勝を目標に頑張っていきたいと思います。
大芦知央(スポ1=大阪・関大北陽)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
目標がまず100メートル(背泳ぎ)の日本選手権の標準記録を突破することだったので、それは突破できたのはよかったんですが、50メートル(背泳ぎ)や200メートル(背泳ぎ)でチームに貢献できなかったことが課題かなというのはあります。
――100メートルのタイムについてはご自身としてはどのように感じていますか
高校2年生の春に53秒3っていうベストが出てそこからベストが出てなかったので、そのときのタイムに少し近づけたのでこれからもっと記録を徐々に上げて、ワセダに貢献できるようになりたいです。
――男子50メートル背泳ぎ、男子200メートル背泳ぎについてはどのようなことを目標にしていたのでしょうか
200メートルは聖人さん(坂井、スポ3=福岡・柳川)とワンツーフィニッシュというのを目標にしていたので、残念な結果になってしまって本当に申し訳ない気持ちがあります。50メートルに関しては、100メートルにつながるようにスピード強化の一環として出ていたので、そこで少しベストを更新できたのはよかったと思います。
――きょうは新体制になってから初めての対抗戦でした。チームの優勝という結果に関してはいかがですか
まず総合優勝できたのはうれしかったんですけど、僕が50メートルや200メートルで点数を取れていたらもっとラクに勝てたと思うので、少し申し訳ない気持ちはあります。でも素直にみんなで勝てたっていうのはうれしいです。
――新体制になってからのチームの雰囲気はいかがですか
阿久津さん(直希主将、スポ3=埼玉栄)を中心に聖人さん、一平さん(渡辺、スポ2=大分・佐伯鶴城)たちも夏にすごい経験をしてそれをみんなに伝えてくれたりして、いい練習ができていると思います。
――2017年のチーム、個人両方の目標をお願いします
チームとしてはインカレ(日本学生選手権)でみんなで力を合わせていい順位を獲ることで、個人としては僕の地元である大阪でインカレがあるので、そこで必ず決勝に残ることです。僕の個人の結果がちゃんと出せればそれがチームの結果につながってくると思うので、チームに貢献できたらなと思います。
――日本選手権に向けてはいかがですか
まず100メートル(背泳ぎ)で2回泳ぐというのが僕の目標で、去年ベストが出ていないので55秒台を出すことです。200メートルではインカレに出るためにはワセダ基準を突破しなくてはいけないのでまずそれを突破することです。それを突破したら自然と200メートルもいい結果がついてくると思うので頑張りたいと思います。